アマゾンがライバル?の「F&B良品」
佐賀県武雄市が2011年11月に開始した、
自治体通販、
「F&B良品」
が注目すべき成果を収めており、
今後、全国の自治体にも拡がる勢いです。
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佐賀県武雄市と言えば、
日本で初めて市の公式Webサイトを
フェイスブックぺージに完全移行したこと
で知られていますね。
同市フェイスブックページは現在、
・いいね数:約2万人
・月間アクセス数:約380万
と人口5万人の市としては、
桁外れの人気を集めています。
さて、このサイト集客力を活かそうと
2011年11月7日、同市は、
「F&B良品」
https://www.facebook.com/FunBuytakeo#!/FunBuytakeo
と称する通販サイトをオープンしています。
フェイスブックを通じて商品閲覧・購入が
可能なサイトであり。いわゆる
「ソーシャルコマース」
と呼ばれる形態。
「F&B良品」は、自治体が運営する
ソーシャルコマースとしても日本初と
なっていますね。
ちなみに、F&Bは、
楽しく(Fun)& 買う(Buy)
の意味。
ただし、このネーミングについては、
「S&B食品と無印良品が絶句した・・・」
(武雄市長、樋渡啓祐氏談)
とのこと。
当初、わずか2アイテムの販売から始まったF&B良品は、
現在70品目まで増え、今年の年商は1千万円を突破する
見込みだそうです。
今後の事業展開について、
「アマゾンがライバルだと思っています」
(武雄市長、樋渡啓祐氏談)
と、樋渡氏の鼻息も荒い!(笑)
「F&B良品」は、民間の
ネットショッピングモール
と異なり、出店者は、
売上に応じた手数料を支払うだけ。
売れなくても払わなければならない
固定の出店料
がゼロのため、地元の中小企業にとっては
大変ありがたい仕組みです。
「民業圧迫」という声もあるようですが、
F&B良品は、ネット上の
「道の駅」「特産品販売所」
のようなものです。
大手ショッピングモールに出店するだけの
資金力のない中小企業の受け皿として、
F&B良品は、民間との共存を目指しています。
樋渡市長によれば、F&B開設の目的として、
・地域の所得向上(=税収アップ)
・地域ブランドの創出
が挙げられています。
ただ、上記だけでなく、地元の人々が
丹精込めて作った農産品や特産品が、
全国の消費者に購入されることを通じて
得られる、
・他者とのつながり
・感謝や評価
といった
親和欲求や承認欲求
が充足されるというメリットも大きいようです。
現在、樋渡市長は、
全国の自治体にF&B良品を展開することに
熱心に取り組んでいます。
現時点で、武雄市を含め、
既に以下のサイトが開設済み。
・佐賀県武雄市
・鹿児島県薩摩川内市
・岩手県陸前高田市
・福岡県太刀洗町
・新潟県燕・三条市
・栃木県那須市
年内にはさらに2自治体が参加予定。
F&B良品に参加している自治体のページを
まとめて紹介する、
F&B良品のポータルサイト
もまもなく開設されるとのこと。
まだ、ソーシャルコマース自体の
成功事例もほとんどない中、
自治体が運営する
「F&B良品」
の今後の展開は、
地域振興に与えるインパクトも含め、
目が離せないですね。
投稿者 松尾 順 : 11:35 | コメント (0) | トラックバック
ますます重要になる「目利き機能」
企業は、売りたい商品を一方的に提示するのではなく、
個々の消費者にとって最適な商品を選び出す手助けを
しなければならない。
今、企業に求められているのは「目利き機能」です。
私たちは、一方的な押し付けよりも、
複数の選択肢から自分で選べたほうが
うれしいものです。
なぜ自分で選べるとうれしいのか
というと、私たちは、
自分の意思で自分のことは決めたい!」
という意識を根源的に有しているからです。
心理学の分野では、
「自己コントロール感」
と呼ばれています。
実際、自己コントロール感(の強さ)は、
幼児のころから見られますね。
(自分で服を着たがることなどもそのひとつ)
ところが、選択肢が多くなりすぎると、
比較検討する能力的限界、また時間的制約のため、
どれかを選択することが難しくなる。
結果的に、なにも選ばないで済ませるという
「選択のジレンマ」
に陥ってしまいがちです。
今の私たちは、あらゆる状況において
「選択のジレンマ」
に直面していると言えるかもしれません。
あらゆる商品カテゴリーにおいて、
多数の選択肢がある。
かつ、溺れてしまいそうなほどの情報で
あふれている。
じっくりと考えて選ぶことはほとんど不可能。
そんな状況で、購入すべき商品を
どうやって選ぶかとなると、
「いつも買ってるから」
「有名だから」
「友だちがいいと言ってたから」
といった、ある意味安易な、
「表面的なてがかり」
に基づいたものになってしまうわけです。
近年、「ブランド構築」がますます重要に
なってきている理由がここにあります。
では、企業側は、選択のジレンマ状態の消費者に
対して、ブランド力を高める以外にどんな施策を
打つべきでしょうか?
それは、ひとことで言えば、
消費者が自ら選択しやすくなるような情報や機能、
サービスを提供することですね。
もっと言えば、ある程度商品を絞り込み、
消費者一人ひとりにとって最適な少数の選択肢を
提示してあげることです。
例えば、今秋開設のWebサイト、
Stylepick
http://stylepick.jp/
では、若い女性を主な対象に毎月、
5種類の靴を提案し販売するサービスを
提供する予定。
会員登録の際、気に入った靴を3択で選ぶ質問を
十数回繰り返してもらい、ヒールの高さや、
デザインの傾向など10項目の視点から、
登録者それぞれの好みを把握する仕組みです。
また、服とのコーディネートの好みについても、
流行のファッションを着たモデルの写真を並べて
選んでもらうことで把握するようです。
上記Webサイトは「ソムリエ」などと同様、
「あなたは、これかあれがお好きなのでは?」
と相手の好みを踏まえて提案してくれる、
「目利き」
としての役割を果たしてくれるわけですが、
今後、消費者の選択を手助けする情報や機能、
サービスに対するニーズがますます高まるのは
間違いないでしょう。
私たちが直面する選択肢は増えこそすれ、
経ることはまずないからです。
実のところ、これまで
多くの企業が取り組んできた
「CRMサイト」
は顧客を登録会員化し、
購買履歴やコミュニケーション履歴を蓄積・分析
することで、個々の顧客に適した商品やサービス
提案を行なうことが主目的のはず。
ですから、CRMサイトは、
「目利き機能」
を的確に果たしてこそ、
顧客に喜ばれ満足度を高めることができる。
だからこそ、極めて有効な
「顧客維持施策」
となりうるのです。
ところが、現状のCRMサイトは、
まだまだ、既存顧客に対する手軽な
セールスコミュニケーション
のツールに止まっているところが多く、
十分な
「目利き機能」
を果たせていないように思えます。
企業が売りたい商品を一方的に押し付けるのではなく、
消費者が求めている商品を選択しやすくしてあげるために、
企業としてどんな情報・機能、サービスを提供すべきか、
改めて熟慮する必要があるでょう。
*「Stylepick」については、
日経産業新聞、日経MJ(2012/09/03)から引用しました。
投稿者 松尾 順 : 10:23 | コメント (0) | トラックバック
企業は、プロとしての専門的情報をネットに流し、見つけてもらいやすくしろ!
ヤマハのフェイスブックページ、
「ヤマハ音楽部」
では、ヤマハ社内で餅を食べるイベントの写真を
投稿したらファンが減ってしまったとのこと。
(日経MJ、2012/08/06)
同ページでは、顔出ししている運営者3名が、
それぞれニックネームを持ち、音楽に関連した情報や
メンバーの音楽関連の活動を紹介しています。
現時点(2012/08/07)でのファン数は5,200人です。
ヤマハとしては、自社宣伝をやりすぎないように、
また話題を音楽に限定せず、幅広い投稿をしてきた。
しかし、ひとつ大きな勘違いをしていたのです。
それは、フェイスブックページに「いいね」を
してくれている人たちは、
「音楽部のファンではなかった」
だということ。
失礼ながら、運営されていた3人の方は、
それほどキャラが際立っているわけではない
のかもしれません。(ごめんなさい)
「音楽部」ページが、音楽好きが集まっている
ページであることは間違いないでしょう。
しかし、「音楽部」自体に対するロイヤルティは、
まだ十分に形成されていなかったものと思われます。
そこで、ヤマハは運営方針を転換。
投稿内容を「音楽」に絞り、
1日当たりの投稿本数も5本から3本に減らしました。
ネタを厳選し、ファンからの投稿数などの活性化度を
示すエンゲージメント率を高めるのが狙いとのこと。
さて、フェイスブックや、ツイッターなど、
ソーシャルメディアにおける自社公式アカウントの
運営方針については、ヤマハさんに限らず、
まだまだ手探り状態という企業が多いかと思います。
ただ、おおむね、「視聴者(!)受け」を狙って、
軽い内容、おちゃらけたスタイルがベストという
思い込みがあるようです。
このこと自体は、決して間違ってはいません。
ただ、軽い内容、おちゃらけたスタイルで
ファンの心を掴むのはとても難しい。
芸人並みの、高度なお笑いのセンスが
必要になってくるからです。
私が思うのは、「芸人ぶる」以前に、
なぜ、それぞれの企業が持つ専門分野の知識を
積極的に提供することで
「お役に立つ」
という方向を狙わないのかということです。
企業はそれぞれの分野の専門家であり、
豊富な知識を抱えている。当事者にとっては、
当たり前でも、一般の消費者にとっては
「目から鱗(うろこ)」
の情報がたくさんある。
そうした情報を提供している企業こそが、
消費者から感謝され、信頼や尊敬を勝ち取り、
「ブランド(企業)ロイヤルティ」
を高めていけるのではないでしょうか。
その上で、軽いタッチの投稿を行い、
「親近感」
を高めることができればさらに良い。
そもそも、従来の企業のネットでの情報提供は、
「買って買って!」という下心見え見えの、
「商品情報」「キャンペーン情報」
ばかりが目立ち、対象顧客のお役に立つ情報の
掲載に積極的な企業は少数派です。
(コストがかかる割に、売上に直結するわけでは
ないというのが最大の理由。)
また、せっかく対象顧客に有益な情報を掲載して
いても、検索エンジン対策(SEO対策)が不十分で、
利用者が必要としている時に
「うまく見つけてもらう」
ことにもあまり成功していません。
残念ながら、見つけてもらえない情報は、
「存在しない」に等しいのです。
実のところ、検索エンジン対策が最優先でもない。
『ウェブで儲ける人、損する人の法則』の著者、
中川淳一郎氏は、
“適切な広報活動はSEO対策に勝る”
と喝破しています。
中川氏は、その分野の専門集団である企業が、
プロとしての情報を広報的に流せば、
「ヤフー・トピックス」
のようなニュースサイトに掲載され、
多くのアクセスを集めることができると主張しています。
(しかも、その結果、多くのリンクが貼られるため、
検索エンジン対策に結びつきます。)
玉石混交の情報、真実か嘘かわからない情報があふれる
インターネットにおいて、その道のプロである企業が
提供する情報は、基本的に信頼できる情報として、
消費者に大いに喜ばれるでしょうし、また、競合との
差異化を実現することにもつながる。
そろそろ、企業は、ネットを通じて提供する情報の
「内容のあり方」および「情報の見つけられ方」を
厳しく見直す必要があるのではないでしょうか?
*ヤマハのケースは、日経MJ(2012/08/06)の記事を
引用しました。
『ウェブで儲ける人、損する人の法則』
(中川淳一郎著、ベストセラーズ)
<主催セミナーのご紹介>
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投稿者 松尾 順 : 08:51 | コメント (0) | トラックバック
「エクスペディア」にクマのキャラクターがいるわけ
このところ、世界最大のオンライン旅行会社、
「エクスペディアジャパン」Expedia.co.jp
http://www.expedia.co.jp/
の広告が目立ちます。
日経新聞でも15段全面広告とか打ってるし。
さて、最初に目を引くのはやはりなんといっても、
あのクマさんですね。
彼(彼女?)は、
「エクスベア(Exbear)」
という名前らしいですが、
昨年(2010年)リニューアルが行なわれた際に
新たに登場したキャラクターです。
彼(いちおうオスとしておきます)は
“かしこく、めんどくさがりや”
な性格なので、便利なエクスペディアを使う、
という設定になっています。
実は、海外本サイトに、エクスベアくんはいません。
日本だけの独自キャラクターなのです。
そもそも、リニューアルされた新サイトのデザイン自体、
海外の本サイト、Expedia.comと最低限のトーン&マナーは
合わせてありますが、日本人向けの大きなカスタマイズが
行なわれているのです。
先日の「グローバルWebサイト構築上の問題・課題点」
でも書きましたが、日本人は色彩豊かで賑やかなデザイン
が好きです。
しかし、エクスペディアジャパンが2006年に日本に進出、
最初のWebサイトをリリースした時、ほぼ海外本サイトを
踏襲したデザインだったそうです。
本サイト(Expedia.com)のデザインの基本方向は、
「スタイリッシュ、クールかつシンプル」
というもので欧米人好み。
日本人が見る印象としてはちょっとそっけない感じ。
そこで、昨年に実施したサイトリニューアルでは、
日本人の嗜好を研究し、現在のような比較的カラフル
で楽しげなデザインに変更されたのです。
(純粋な日本のサイトに比べると、それでもまだまだ
おとなしめですよね・・・)
海外本サイトとエクスペディアジャパンのサイト、
ちょっと比較してみてください!
Expedia.co.jp
http://www.expedia.co.jp/
Expedia.com
http://www.expedia.com/
さらに、クマのキャラクターも登場させたのは、
日本人はこうした可愛らしい動物系のキャラクター
がとりわけ好きだからです。
エクスベアがいることで、
日本人はエクスペディアにより親しみを持ってもらえる、
そう考えての起用だったようです。
もちろん、欧米でもキャラクターが採用されている
サイトがありますが、どちらかというと大人っぽく、
かわいげのないものが多い。
なぜなら、かわいすぎるキャラクターを登場させてしまうと、
子供向けというイメージを与えてしまうからなんですね。
(元々、子供向けならOKですが)
ですから、本サイト、Expedia.comに、
エクスベアくんが出演することはまずないでしょうね。
*以上は、エクスペディアの日本ローカライズを担当
しているBrandon K. Hill氏の取材記事を参考に書きました。
(出所:Web Site Expert #34)
投稿者 松尾 順 : 09:01 | コメント (0) | トラックバック
グローバルWebサイト構築上の課題・問題点
‘Google’のトップページに初めてアクセスした時、
「なんとそっけない画面なんだ」
といった印象を持ちませんでしたか?
‘Yahoo!Japan’の賑やかで楽しげなトップページに
慣れていた日本人にとって、Googleの「シンプルさ」
は驚愕ものでしたよね。
もちろん、当初は「検索機能」だけに絞り込んだ
Googleの使い勝手の良さ、検索結果の精度の高さで
たちまち、ビジネスユーザー中心に浸透していきましたが。
さて、日本企業のグローバル展開に当たって、
Webサイトも当然ながらグローバル対応を充実させていく
必要がありますが、ここで課題となるのが、
日本人と外国人の認識の違いです。
特に、パッと見のデザインに対する好みには、
日本人と外国人(とりわけ欧米人)と大きな差が
あるのです。
端的に言えば、日本人は色使いが派手で賑やかな
デザインを好みますが、外国人は、シンプルな色使い
のデザインを好む。
問題は、外国人の好みをわかっているデザイナーが提案した
シンプルなデザインに対し、日本人の担当者が、
「こんな平板なデザインはつまらない」
などと、自分の好みで判断し、デザインを
変えさせるといったことがしばしばおきることです。
デザイナーとしては、
「いや、あなたが見るサイトじゃないでしょ?」
と言いたいところでしょうけど、
結局押し切られてしまって、外国人にとっては
あまり好きになれないWebサイトがリリースされて
しまうことがあるようです。
日本人の場合、多様な民族、宗教、文化、価値観に
普段から接する機会が少ないため、自分自身の基準で
判断してしまいがちなんでしょうね。
これから海外向けWebサイトの立ち上げ、
もしくはリニューアルを担当される日本の担当の方は
ぜひ、外国人の嗜好がわかってるデザイナーさんの感性
を信じて任せてあげてください。
投稿者 松尾 順 : 09:25 | コメント (0) | トラックバック
リサーチとプロモーションを連動させたコミュニティ活用事例
今日は、昨年末に開催された
『AvecDAY20009 WINTER オープンハウスセミナー』
(株式会社エイベック研究所主催)
において報告された、
ユーザーコミュニティ(企業運営CGM)活用事例
を簡単にご紹介しますね。
「進研ゼミ」でご存知の
株式会社ベネッセコーポレーション
では、
「任天堂DS」
に中学生を対象とした、
教科書対応の学習コンテンツを
組み込んだ新商品、
『得点力学習DS』(以下「学習DS」)
の導入に当たって、
体験モニターを募集しました。
08年1月の初版第一弾のための
初期フェーズにおけるモニター数
は100名強でした。
応募してきたモニターには、
エイベックが提供するインターネットの
コミュニティシステムに登録してもらい、
継続的なリサーチを行う仕組みを構築。
結果として、
次のような成果を上げています。
------------------------------------------
・発売以前には収集困難な利用者のナマの声、
すなわち、「利用体験記」を数百件収集できた。
(初期フェーズでは約240件)
・また、モニター自らが語る同商品の
「推薦文(リコメンド)」も初期フェーズで
60件ほど集まった。
・モニターを対象とするリアルなグループインタビューの
の実施に当たっても、1週間程度で簡単に協力者を
集めることができた。
・上記の体験記やリコメンドをダイレクトメールを
始めとする各種広告・販促施策に組み込むことで、
説得力の高い効果的なコミュニケーションを展開できた。
・モニターの利用実態から『学習DS』を利用することによって、
従来の紙の添削教材の利用促進にもつながることが判明した。
・上記の事実のおかげで、『学習DS』導入によって従来商品が
喰われるのではないかというベネッセ社内の不安を払拭できた。
・『学習DS』を子どもだけでなく、
親も利用してみることで、『学習DS』を通じた
親子の対話が増えるといった予想外の効果も発見できた。
・体験記を書いてくれたモニターには、
調査期間終了後、同商品の買い取りを奨めたところ、
約7割の方が購入してくれ、コミュニティ運用費用に
充当することができた。
--------------------------------------------
企業が運営するユーザーコミュニティ(CGM)は、
多くの場合、「費用対効果」が見えにくいため、
新たなコミュニティ構築とその継続は容易ではありません。
しかし、上記ベネッセの事例のように、
対象商品や目的を絞り込み、運営期間も限定した上で
ユーザーコミュニティを展開するのであれば、
費用対効果も示しやすく、比較的導入しやすいかと思います。
また、販売促進における、
「口コミ効果」
の高さはいまさら申し上げる必要はないと思いますが、
能動的に「口コミ」を創出するためのコミュニティ活用として、
この事例はおおいに参考になるのではないでしょうか。
*エイベック研究所
http://www.aveclab.com/
*株式会社ベネッセコーポレーション
『得点力学習DS』
http://ds.benesse.ne.jp/
投稿者 松尾 順 : 11:18 | コメント (0) | トラックバック
花王のネットコミュニティ‘GO GO pika★pika MAMA’
花王のWebサイト、
‘GO GO pika★pika MAMA’
- ゴーゴー ピカ★ピカ ママ -
は、2007年4月に開設された、
新米ママさん向けのネットコミュニティ。
(以下、「ピカママ」)
「ピカママ」は、大きくは、
・プレママコミュニティ(出産予定の女性対象)
・0歳コミュニティ
・1歳コミュニティ
・2歳以上コミュニティ
の4つに分かれています。
そして、0歳と1歳は、
さらに月別に細分化されています。
生まれたては、
驚くほど成長の早い赤ちゃん。
同月生まれの赤ちゃんを抱え、
ほぼ同じ悩みに直面するママさん同士で、
助け合える場が提供されているというわけです。
登録ユーザー数は、
16,000人(09年07月)
を突破しています。
さて、花王のWeb作成部長、石井龍夫氏によれば、
同社におけるサイトの主な役割は時と共に
変化してきています。
花王が初めてWebサイトを開設したのは94年。
それから10年ほどは、新聞・雑誌などと同様、
企業から消費者へ一方的に情報を伝える
「メディア」
としての役割がメインでした。
しかし、03年以降になると、
ブロードバンドが普及したこともあり、
消費者とのインタラクティブな
コミュニケーションが活発化。
サイトの役割は、
消費者の疑問・要望に応える
「コンシェルジュ」
的な役割が強くなっていきました。
そして、07年以降は、
‘mixi’などのSNSに代表される
「ソーシャルメディア」
が伸長、消費者間のコミュニケーションが
日常のものとなり、いわゆる「口コミ」の影響が
注目されるようになっていきます。
この動きに対応して開設された「ピカママ」は、
いわば
「ショールーム」
のようなものです。
商品を見るだけでなく、
ショールームを訪れた消費者同士が
交流する機会も提供できる場というわけです。
では、「ピカママ」の話に戻りましょう。
「ピカママ」では当初、
新米ママさん向けのコミュニティのみを提供し、
「花王製品について語れるコミュニティ」
はあえて作っていませんでした。
企業臭を出しすぎないように
控えめに振舞っていたのです。
しかし、登録ユーザーの方から、
なぜ花王製品のコミュニティがないのか
という要望が寄せられたため開設したのが、
・柔軟仕上げ剤
・お尻フキ
などの製品について語るコミュニティです。
花王では、こうした製品コミュニティでの発言を
分析することにより、多くの知見を得ています。
まず、コミュニティを通じて、
花王製品のブランドサイトに行くユーザーが
確実に増えることが確認されています。
要するに、製品情報を提供しているサイトへの
集客効果があるというわけですね。
柔軟仕上げ剤のコミュニティについては、
参加したユーザーのうち、実際に発言した人が
なんと66%に上りました。
つまり、3人に2人は、
なんらかのコメントを投稿したということです。
(逆に言えば、ROM:Read Only Memberは3人に1人)
アクティブな人がそれだけ多く
存在したということですね。
一方、お尻フキのコミュニティでは、
ユーザーが別のユーザーを説得するという
現象が見られました。
あるメンバーが、
“花王のお尻フキは、
フタが固くて開けにくい・・・”
と問題視する投稿をしたところ、
別のコミュニティメンバーが、
“花王さんのことだから、
むしろ簡単に空いてしまわない
ようにあえて固めにしてあるのでは・・・?”
などと援護するような発言があったそうです。
また、お尻フキにはトイレに流せるものと
流せないものの2種類あるそうですが、
コミュニティで得た知識を元に、小売店に対し、
ないほうの製品を置いてくれるように頼む人が
現れました。
つまり、消費者が花王のセールスマン
の代わりをしてくれたわけです。
以上のように、花王では、
「ピカママ」の運営を通じて、
ネットコミュニティがもたらす
マーケティング効果
をきっちり検証し、製品づくりに
反映させているのですね。
そういえば、花王のWebサイト(全体)は、
(株)日本ブランド戦略研究所の
「Web Equity(ウェブ エクイティ)2009」
の「再訪問意向ランキング」において、
トイレタリー・製薬業界で
No.1
になっています。
以前、同社に転職した元同僚も言っていましたが、
消費者と真摯に向き合い、目先の利益を追わず、
腰を据えて取り組む生真面目な社風がWebサイト全体、
そして
「ピカママ」
にも現れているようです。
*以上の内容は、
‘ad:tech tokyo 2009’のセッション、
『広告主によるブランドコミュニティの必要性』
(2009年9月2日5:00pm-5:55pm)
における石井龍夫氏(花王株式会社、Web作成部長)
のプレゼンテーションを元にしました。
*GO GO pika★pika MAMA
- ゴーゴー ピカ★ピカ ママ -
http://www.c-player.com/pikamama
投稿者 松尾 順 : 09:33 | コメント (4) | トラックバック
Webユーザビリティ失敗事例・・・新宿ピカデリー
今年(08年)7月19日にオープンしたばかりの映画館(シアターコンプレックス)、
「新宿ピカデリー」
に行かれた方います?
新宿・伊勢丹のすぐそばです。
丸の内線、副都心線、都営新宿線の
「新宿三丁目駅」
から徒歩1分。
私も今夏、新宿ピカデリーに何度か足を運びましたが、
最寄駅から近いのは便利です。
雨にもほとんど濡れなくてすみます。
複数のスクリーンを持つ
「シアターコンプレックス」
って、たいてい「ショッピングセンター」に
入居しているため駅からは結構離れていますよね。
昔ながらの映画館も、
駅からそこそこ離れていることが多い。
でも、新宿ピカデリーくらい駅から近いと、
やっぱり気軽に行きやすいです!
また、他の映画館とちゃんと比べたわけではありませんが、
シートとシートの間もゆったりしていて座り心地もグッド!
おそらく座席部分のせりあがり(傾斜)をかなり大きめに
取ってあるのだと思いますが、前の人の頭が全く邪魔に
ならないので快適に映画が楽しめます。
価格体系も斬新です。
マスメディアでも盛んに取り上げられていますが、
お金持ちをターゲットとした
「プレミアムルーム」
は、2名様でなんと3万円/1本・回。
「プレミアムルーム」は、専用エレベータで行く
個室仕様のバルコニー席です。
カッシーナのソファにゆったりともたれながら
映画が楽しめる空間になっているそうです。
また、メンバー(無料)になると、
平日A列の当日券が、先着5名/回まで1,000円で購入可能。
スクリーン最前列の席で首が多少痛くなっても、
安上がりに映画を観たいというお客さん向け。
とまあ、施設自体は言うことなしなんです。
ところが、新宿ピカデリーのWebサイトは、
残念ながらユーザビリティの設計に一部失敗しています。
けなしたり、茶化すつもりはありませんが、
わかりやすい「失敗事例」として皆さんの参考に
してもらうため、ここで取り上げてみたいと思います。
さて、何がいったい問題なのでしょうか。
それは、
「上映時間が確認しにくい(できない)」
という点です。
なぜ、こうなっちゃったのか。
その理由は次のようなものではないかと考えられます。
・映画館での映画視聴に関わる消費者行動シナリオを
想定していない
・そのため、映画館サイトに消費者が訪問する目的と、
その優先順位(重要度)を理解できていない
まず、消費者行動シナリオですが、個人差はあるとはいえ、
おおよそ次のような流れになるでしょう。
1.マスメディアや口コミを通じて新作映画のことを知る
↓
2.興味を持ったので当該映画の公式サイトにアクセスして、
詳細情報を得る
↓
3.観たいと思ったので、上映している映画館を調べる
↓
4.当該映画を観に行きたい映画館のサイトにアクセスして、
上映時間と、行ける日時を確認する。
↓
5.ネットでチケットを購入したり、街中のチケット屋で
安い前売鑑賞券を購入、あるいは当日購入する
↓
6.当該映画を観る
↓
7.映画についての感想をブログに書いたり家族や知人に話す。
このシナリオに基づけば、
「映画館のサイト」に訪問する最大の目的は、
「上映時間を調べる」
ことです。
したがって、
サイト訪問者が、上映時間のページにすぐにたどり着ける
サイト設計が必須だと思われます。
ところが、新宿ピカデリーのサイトでは、
メインメニューにありませんし、作品一覧からも行けません。
上映時間のページは、画面左上部の
「チケット購入ボタン」
からしか行けないのです。
つまり、新宿ピカデリーの現状のサイトでは、
「上映スケジュール」
が、
「オンラインでのチケット購入プロセス」
のひとつとして組み込まれているわけです。
「チケット購入ボタン」の下には、
>>上映スケジュールもこちら
というテキストが小さく添えられてはいますが、
あまり目立ちません。
この「チケット購入ボタン」は、
全ページに常時表示されているものです。
しかし、いきなりチケット購入ではなく、
まずは上映時間を調べたい人にとっては無意識に
無視してしまうボタンです。
そんな方は、最初どこに上映時間が表示されているのか
わからず、探し回る羽目になるのではないかと思います。
(私もそんなひとりでした・・・)
また、上映時間表示が
「オンラインでのチケット購入プロセス」
に組み込まれていることで、
さらに大きな問題を生んでしまっています。
当サイトでのチケット購入は、
1週間先までしかできないことになっています。
例えば、今日(9月5日)時点で予約できるのは、
9月12日(金)までです。
チケット購入ボタンを押すと、
まずカレンダーが表示されるのですが、
日別の上映スケジュールが確認できるのは、
チケット予約が可能な9月12日までです。
したがって、9月13日(土)以降にここで映画を
観たいと思っても、13日以降の上映スケジュールは
確認することができないのです。
ご存知の通り、映画は封切り後の集客度合いによって、
上映回数、上映時間がたまに変更されますよね。
行きたい日の上映時間が確認できないと不安です。
ですから、現在のサイト設計だと、
1週間以上先に映画を観たいと思っている消費者を
最悪、取り逃がしてしまっている可能性がありますよね。
新宿ピカデリーさん、
早いとこ、この部分リニューアルお願いしますね!
*新宿ピカデリー
http://www.shinjukupiccadilly.com/index.html
投稿者 松尾 順 : 11:29 | コメント (4) | トラックバック
結局中身が決め手のSEO対策
グーグルやヤフーで
「印刷会社」
のキーワードを入力して検索すると、
という、大変失礼ながら、
聞いたこともない印刷会社が、
検索結果の最上位に表示されます。
業界大手の「大日本印刷」などを抑えての一位。
まあ、大手はSEO対策なぞしなくても、
十分に仕事があるのでしょうか。
そもそも、検索結果の上位には
大手の印刷会社はそれほど表示されていませんね。
恒信印刷では、
「SEO(サーチエンジン最適化)」
に自力で取り組んできました。
(日経MJ、208/04/07)
トップページの右上に顔写真が掲載されていますが、
同社の吉田社長が専門書やセミナを通じてSEOを学び、
自ら陣頭指揮を取って自社サイトを作成したようです。
吉田社長によれば、SEOで大事なのは
「中身の量」
です。同社のページは650ページもあります。
その他、吉田氏が自らの実践を通じて学んだ
SEOのポイントは次のとおり。
・「同人誌」「小冊子」などの適切なキーワードを盛り込む
・キーワードは全体の文章の5%が適切。多すぎてはだめ
・デザイン会社など印刷関連の有力ページとリンクを張り合う
・自ら多くのホームぺージを作りリンクを張る
(同社では「印刷用語集などのページを作成して相互リンク)
印刷会社は繁閑の差が激しい業界ですが、
検索エンジンでトップに表示されるようになってからは、
注文件数が以前の20倍に増加。
繁閑の差がなくなり、得意領域に仕事を絞り込むことが
できるようになって収益性が大幅に高まったそうです。
なお、サイトのコンテンツ自体も、
「お客の目線でわかりやすく、専門用語を使わない」
ことをモットーに作成しており、
サイトに来てもらったユーザーをできるだけ
長くつなぎとめようと努力しています。
恒信印刷のホームページを見ると、
デザイン的には洗練されているとは言えませんが、
なんとなくにぎやかで楽しい雰囲気が感じられますし、
豊富なコンテンツに圧倒されます。
なにより、吉田社長のサイトに対する強い思い入れが
にじみ出ているようです。
SEO対策というと、安易な発想と、
こて先のテクニックでなんとかしようと考える企業が
あいかわらず多いようですが、多数の競合企業が
検索結果トップを目指してしのぎを削っているのです。
恒信印刷さんのような継続的で膨大な注力が
不可欠なんでしょうね。
「恒信印刷」
http://www.ko-sin.co.jp/index.htm
投稿者 松尾 順 : 13:18 | コメント (0) | トラックバック
Webサイトの分割戦略
多様な分野の製品・サービスを数多く扱っている企業が
Webサイトを開発する際、最初に悩まされるのは、
来訪するユーザーの種類が多岐にわたる点です。
なぜなら、
Webサイトのコンテンツやデザインの方向性を左右する
「ターゲット設定」
が難しくなるからですね。
要するに、
「誰をメインターゲットにサイト開発をすべきか」
で頭を抱えるということです。
標準的なサイト開発プロセスでは、
ターゲット設定にあたり、まずどんな種類の人々、
すなわち
「ユーザータイプ」
がサイトにやってくるかを明らかにします。
例えば、仮の事例として、
ゴルフ、テニスなどのレジャー・スポーツ施設に加えて、
結婚式場、会議場などを擁する大規模リゾートのWebサイト
の場合のユーザータイプを考えてみます。
・一般旅行客(家族中心)
・ゴルフ客
・結婚式を挙げたいカップル
・会議開催を考えている法人客
・旅行会社
・その他取引先
・入社希望者
・マスコミ
・投資家
などが想定されますね。
上記のそれぞれの人たちは、
サイト来訪の目的が異なるのは当然として、
年代も関心・嗜好などもバラバラです。
あるユーザータイプにとって好ましいデザインが、
別のユーザータイプにとっては不快感を与えてしまう
可能性もあります。
例えば、結婚式を控えたウキウキ気分のカップル向けに
明るい軽めのデザインを施したとします。
すると、ビジネスモードで訪れた法人客は、
このリゾート施設の会議場を利用すべきかどうか、
ちょっとためらってしまうかも知れません。
もちろん、各ユーザータイプ向けコンテンツのカテゴリー
ごとにデザインのトーン&マナーをチューニングすること
でこうした問題を回避するわけですが。
ただ、全体の統一感を維持する必要がありますから、
どうしてもデザイン上の制約が発生しますね。
また、目的のコンテンツも
ユーザータイプごとに大きく異なるにも関わらず、
ひとつのサイトに統合しようとすると、
多くの場合、情報構成に無理が生じやすいものです。
そこで、ユーザータイプが多岐にわたる場合は、
ひとつの解決策として、ユーザータイプごとに異なる
独立したサイトを立ち上げるのも手です。
最近の具体例として、「明治乳業」があります。
同社では、リニューアルに当たって、
各種リサーチ、ログ解析を通じた効果測定を行ったそうです。
その結果、消費者の約9割が
商品・キャンペーン情報しか閲覧していないこと
がわかりました。
(PRIR、2008 APRIL)
逆に言えば、同じサイト内にあった
「明治乳業」
という企業自体についての各種情報は
ほとんど見られていなかったということです。
食品を扱うメーカーとしては、
企業の姿勢や活動を紹介することを通じて、
企業や商品に対する安心感・信頼感を醸成したかった。
ところが、そのためのコンテンツが
十分に活かされていなかったことになります。
この原因のひとつが、
ユーザーのターゲットを絞りきれていなかった
ことだそうです。
さまざま情報がウェブサイト内に乱立し、
情報が複雑に入り組んでしまい、
消費者に見てほしい情報が伝わりにくく
なっていました。
そこで同社では、
サイトリニューアルに当たって、
まず、会社としてのウェブサイトの位置づけを
明確化。
そして、
・どんな目的で、
・誰を相手に
・どんなコミュニケーションを図っていくか
を整理しました。
そうしてたどり着いた結論が、
・ターゲット
・機能
・役割
によってサイトを分割することだったそうです。
結局、リニューアル後の同社のサイトは、
・商品情報サイト( www.meinyu.jp )
・企業情報サイト( www.meinu.co.jp )
の独立した2つのサイトに分割されて
運営されています。
ちなみに、「商品情報サイト」は、
消費者をメインターゲットとにしたコンテンツ、
一方、「企業情報サイト」は、ビジネスパーソン、
投資家を対象としたコンテンツをメインに揃えています。
大手企業の中には、
・ターゲット
・機能
・役割
の違いに応じて、
多数のサイトを同時並行的に立ち上げ、
自在に運用しているところも増えてきました。
しかし、その域まで達している企業は
まだまだ少数派でしょう。
コミュニケーションツールとしての
「Webサイト」
をどう使いこなすかについては、
まだまだ様々なトライアルが必要な時期かなと思います。
投稿者 松尾 順 : 10:42 | コメント (2) | トラックバック
ケータイで服を売る
「試着ができないのに、ネットで服が売れるわけがない」
というのが、EC(電子商取引)が始まったばかりのころの
「常識=思い込み」でしたね。
でもよく考えてみれば、ネット以前から、
セシール、ムトウ、千趣会、ニッセンといったカタログ通販でも、
同様に試着ができないアパレルが山ほど売れていた。
カタログ通販で服を購入する場合、
試着→買う
という流れではなく、
買う→試着→気に入ったらキープ、気に入らなかったら返品
のが実質的な消費者の意識であり購買行動だと言えます。
我が家でも、気楽に通販でモノを買い、
気に入らなければ気楽に返品するという女性(妻)の行動を
目の当たりにしていました。
(ご存知かと思いますが、返品は基本着払いでOK)
それでも、カタログやPCならまだしも、
画面の小さいケータイで服が売れるというのは、
いまだに素直に信じるのが難しいですね。
さて、ケータイで服が売れることを実証した、
携帯向け女性専用サイト
「ガールズウォーカー」
を運営するゼイヴェルの今期(08年3月期)は、
携帯通販だけで100億円を突破する見込みだそうです。
(日経MJ、2007/12/10)
同社社長の大浜史太郎氏によれば、
ゼイヴェルの成功の鍵は、
「クロスメディア戦略」
でした。
ガールズウォーカーの立ち上げは2000年4月。
当事業では当初、主に「広告収入」を見込んでいました。
携帯通販は、大手衣料メーカーに相手されなかったため、
中小の在庫処分を扱うしかなかったとのこと。
しかし、神戸コレクション(リアルなファッションショー)
を協賛。また、「CanCam」などの雑誌と連動させた商品販売方法が
奏功して実績を上げたおかげで商品の取り扱いが広がっていった
のです。
特に、2005年から開催しているリアルなファッションショー、
東京ガールズコレクション(TGC)
のインパクトが大きく、携帯通販に服は卸せないと
言ってたメーカーの態度が変わったそうです。
「TGC」は、複数の女性誌のモデルが横並びで登場し、
リアルクローズ(普段着として使えデザインが斬新な
高級感のある服)を世界に発信する場。
そして来場者は、
山田優や押切もえなどの人気モデルが着ている服を見て
欲しいと思ったら、即座に手元のケータイで発注ができます。
このTGCの第2回には、東京コレクションに来たことのない
グッチの総裁が来場したほど。
今年(2007年)3月に開催された第3回TCGには、
延べ2万2千人が来場。うち3千5百人が購入し、
購入単価は平均1万1千円だったそうです。
今後も同社の基軸は「クロスメディア戦略」。
全国の百貨店や雑誌といかに連動するかが重要だと
大浜氏は述べています。
ゼイヴェル自体も初の携帯発女性ブランドを立ち上げ、
全国に22店舗を展開。
これは近年、女性層の集客力が衰えつつある百貨店に
依存しすぎないための戦略なのかもしれません。
ガールズウォーカーは現在、
F1層(20-34歳の女性)を中心に700万人の会員を
抱えています。
ゼイヴェルでは、この巨大な顧客資産をベースに、
情報やトレンドを売るマーケティング会社を目指しています。
不安定なECが売り上げの大半を占める現状から、
若い女性層への有力媒体として収益率の高い広告販売を強化、
ブランドのコンサルティングを主要な事業として育てていく
方針だそうです。ブランド再生事業も開始してます。
投稿者 松尾 順 : 13:35 | コメント (4) | トラックバック
ネットビジネスの勝者:オートバイテル・ジャパン
「インターネットで、家や自動車は売れるのか?」
90年代後半、インターネットが普及し始めた頃、
こんな議論が盛んに行われましたよね。
実際のところ、こうした高額商品は、
やはり自分の目で確かめ、試してみた後じゃないと
購買を決めるのは難しい。
ネットで見つけた家(部屋)を買い物カゴに入れて、
ポンと購入ボタンを押すなんてことはできませんよね。
なので、インターネットでできることは、
基本的に情報収集、比較検討段階、モノによっては
価格交渉までということになります。
とはいえ、ネットによる消費者の情報収集や比較検討行動が
企業のマーケティングのあり方を大きく変えてしまったのは
確かです。
さて、当初多くの企業が参入した
「インターネットによる自動車販売仲介サービス」
ですが、現時点で唯一の勝者となっているのが、
「オートバイテル・ジャパン」
http://www.autobytel-japan.com/
です。
私は最近まで知らなかったのですが、
すでに他の競合企業は撤退してしまっていたんですね。
(I.M.Press Vol.139(2007-12)、トップインタビュー)
やはり、この業界でも
「Winner takes all」
の法則が当てはまったということでしょうか。
「オートバイテル」では、
現在発売されている400-500車種のカタログ情報を掲載。
メインのサービスは、
「新車見積もり仲介サービス」
で、複数車種の比較検討、見積もり依頼、eメールによる商談
までを簡便に行えるのがウリです。
現在、同社に加盟しているカーディラーは900社以上、
店舗数では約5,000店に達しているそうです。
上記インタビュー記事の中で、
同社代表取締役社長、加登吉邦氏は、
次のような数字を披露してくれています。
---------------------------------
・日本における年間の新車販売台数(軽自動車含む)は、
500-550万台程度(2007年度)
・見積もり依頼者の2人に1人は新車を購入、つまり、
年間で1000-1200万人の方が新車購入を検討
(同社アンケート調査の結果に基づく推定値)
・オートバイテルのWebサイトユーザー数は年間2000万人、
月間で150-200万人
・上記ユーザーの10%が新車見積もりボタンをクリック
・ユーザープロフィールは、性別で見ると
男性7割、女性3割。女性ユーザーの比率が増加傾向にある
--------------------------------
加登氏は、
「インターネットによる自動車の販売仲介サービス」
において、同社だけが生き残れた要因は、
「継続」
という言葉に尽きると答えています。
このサービスの成功のカギ(KFS:Key Factors for Success)は、
「見積もりを提出できる加盟ディーラーの数」
ですよね。
利用者としては、最終段階で現物を見に行ける
近場のディーラーから見積もりが取れなければ意味ないですから。
結局、1999年のサービス開始からこれまでの8年もの間、
風雪に耐えながら(加登氏の言葉)、地道な訪問営業を通じて
900社まで加盟社を増やすことができたのが同社だけだったのです。
ところで、同社には
「567の法則」
というものがあります。
・見積もり依頼者の商談への移行率:50%
・うち、店舗への来店につながる率:60%
・来店者が、最終的に成約に至る率:70%
のことですが、これらを掛け合わせた
「21%」
を
「目標成約率」(見積もり依頼者が実際に購入する率)
としているそうです。
加登氏によれば、
この3つの数字のうち最も大切なのは、
「新車見積もり依頼から商談への移行」
です。
見積もり依頼が行われてから、
6時間以内にeメールを返信した商談の成約率を100とすると、
24時間以内では60%
48時間超では20%
に成約率が激減するというデータがあるのだそうです。
最初のユーザーからのコンタクトに対する反応スピードの速さが
いかに後々に大きな影響を及ぼすかを実感できる数字です。
投稿者 松尾 順 : 11:04 | コメント (0) | トラックバック
星野リゾート「白銀屋」のサイトリニューアル事例
ある企業さんのプレゼント企画に応募したら、運よく当選して賞品の
「日経ネットマーケティング」創刊号(2007.11)
をいただいたので、早速読んでみました。
事例が豊富に掲載されていて、
なかなかいい専門誌に仕上がっていると思います。
さて、同誌の事例のひとつとして、
星野リゾートのユーザビリティテストの詳細が
紹介されていました。
ちょっと前に書いた記事、
で、星野リゾート代表取締役、
星野佳路氏の講演内容をご紹介しました。
この中で、星野氏は、同社が運営する宿泊施設のWebサイトに
対して行ったユーザビリティテストの結果、
・想像以上に、写真のインパクトが大きいこと
・一生懸命書いた文章にはあまり目を向けてもらえないこと
・アクセスマップも非常に重要だということ
・デザイン的に素晴らしいホームページが、
予約獲得に直接結びつかないケースがあるということ
などがわかったと話されているのですが、
具体的に、どのサイトにどんな問題点が発見できたのかを
日経ネットマーケティングの事例記事で知ることができます。
対象サイトは、山代温泉の「白銀屋」です。
*白銀屋
http://www.shiroganeya.co.jp/
このWebサイトではユーザビリティテストの結果を基に、
現在のWebサイトにリニューアル(2006年11月)したところ、
予約率55%増(2007年8月の前年同期比)
という成果を収めています。
リニューアル前のWebサイトは、白銀屋の新装オープンに
合わせて2005年8月にオープンしたばかりでした。
旧サイトのデザインは、残念ながらネット上で
閲覧できない(archive.orgでも表示されず)ので、
日経ネットマーケティングの記事をぜひ見てください。
確かに、旧サイトは、
洗練されたカッコいいデザインではありました。
しかし、星野リゾートが、
サイトの効果測定や設計、開発を行っている「ビービット」
に依頼して、サイト上のユーザーの視線を追う
「アイトラッキング調査」
を旧サイトを対象に行ったところ、
以下のようなことがわかったそうです。
・写真から写真へと目線が移動していた
・「時の旅人になる」といった抽象的なキャッチフレーズは
ほとんど目に留まらずスルーされていた
また、ユーザーインタビューの結果、
旅館サイトに求めている情報は、
食事、客室、風呂
の3つに集中していることが確認できています。
これらの結果を受けて、星野リゾートでは、
92項目のユーザビリティガイドラインを作成し、
サイトのリニューアルを行ったわけです。
記事で紹介されている改訂のポイントは次の3つです。
1.トップページの改善
関心が高い、「食事」「客室」「温泉」を目立つ位置に置く。
現サイトをみていただくとわかるように、画面中央に
大きくこれらの見出しが置かれていますよね。
旧サイトでは、「北大路魯山人ゆかりの宿」といった
コンセプトの解説がメインに置かれており、上記のような
見出しは左下に小さく表示されていてあまり目立たなかった
のです。
2.ナビゲーションの改善
すべてのページに、宿泊予約へのリンクを
上部、下部、右サイドの3箇所に表示
こうすることで、ユーザーの予約行動を容易にしています。
旧サイトでは、予約は右下に1つだけ控えめに置かれて
いただけでした。
3.泊まりたくなる演出
ユーザーの目線で写真を選択。おいしそうな料理や清潔感
あふれれう広々とした風呂の写真を掲載。
旧サイトでは、木々の間から部屋を望む構図や、
照明を落とした食事処を遠巻きに撮影したものなど、
えん曲なイメージがほとんどでした。
確かに、こんな写真ばかりでは、ユーザーの泊まってみたい
という欲求をかきたてるのはなかなか難しいでしょうね。
結局のところ、白銀屋の旧サイトでは、
“ガイドラインに沿って旧サイトを見ると、
デザインの良しあし以前に、ユーザーが期待する情報が
提供できていなかった”(サイトを手がけた黄日錫氏)
ということです。
Webサイトにおける「デザイン」は、
そもそも、ユーザーの求める「情報」や「機能」を
的確に提供するための
「手段」
であるという基本が、
旧サイトでは押さえられていなかったということでしょうね。
最後に、この事例記事に掲載されている
星野リゾートの「ユーザビリティガイドライン」(要旨)
の一部を引用しておきます。
---------------------------------------------------
・全ページから宿泊予約のページにアクセスできる
・注目度の高い「客室」「食事」「風呂」のメニューが
目立っている
・写真は抽象的なものでなく、被写体が明確になっている
・写真の近くに訴えたいフレーズ(言葉)が置かれている
・Flash 動画などでの再生待ち時間がストレスにならない
---------------------------------------------------
投稿者 松尾 順 : 10:22 | コメント (4) | トラックバック
「ユーザビリティ」から「デザイアビリティ」へ
昨年(2006年)11月1日、
「日本で始めて」という触れ込みで、
「ペルソナデザインセミナー」
が開催されました。
私も、「これは見逃せないぞ!」と
満を持して当セミナーに参加したのですが、
「ペルソナ」
をデザイン(作成)するための基本的な知識と、
最新の動向を知ることのできたすばらしい内容でした。
さて、当セミナーの講演者、
フォレスターリサーチ社のハーレー・マニング氏が詳述した
「ペルソナデザインの基本的な手順」
については、
にも紹介されていますので省略します。
ここでは、
「導入企業は、どのようにペルソナを使用しているのか」
について、マニング氏の話などを元に再度確認し、
さらに最近の新たな視点も併せてご紹介します。
マニング氏は、ペルソナを導入している欧米企業として
次のような著名企業を示しています。(講演当時)
--------------------------------
・Chrysler
・Ford
・Mini Cooper
・Bank of America
・Discoverer
・Fidelity
・Amazon
・Best Buy
・Staples
・FedEx
・UPS
・Adobe
・Microsoft
・SAP
---------------------------------
そして、こうした企業がペルソナを利用する目的としては、
次の4点を挙げています。
・ユーザーに対する間違った認識を改める
・デザインについての議論を短縮できる
・機能要件の優先順位づけ(削除)
・品質の改善
架空の存在ながら、
最も重要で象徴的な顧客像をリアルに描いた
「ペルソナ」
は、企業の担当者にとって異なる
ユーザーに対する認識の違いを埋めてくれます。
そして、
デザインの方向性や要件の絞込み、製品改良
を行うにあたっての
「統一された判断基準」
となるというわけです。
さて、最近はさらに別の視点が提示されています。
それは、Webサイトのデザインについてです。
フォレスターリサーチ社のアナリスト、
ケリー・ボーディン氏によれば、
従来の企業サイトは、
・役に立つ(useful)
・使いやすい(Usable)
という概念が中心にありました。
ここで、
「役に立つ」
というのは、
「価値の提供」
であり、
「使いやすい」
というのは、
「提供供する価値への簡単なアクセス」
を意味します。
というのも、これまでは企業サイトの目的が、
企業や製品の紹介、あるいは
買い物、各種予約といった取引機能を提供するものであり、
とりわけ
「利便性」
が重視されたためです。
しかし、近年は単に使いやすい、つまり
ユーザビリティが高いだけではだめで、
「望ましい」(Desiable)
なものでなければならなくなってきたと、
ボーディン氏は主張しています。
「望ましい」とは、端的には
「感情へのアピール」
ができていることです。
たとえば、ダンスビデオなどの動画が
ふんだんに使われている
「ナイキ」
のサイトは、単なる商品紹介やeコーマスに止まらず、
ユーザーの気持ちをかきたてることを意識した
「望ましいサイト」
のひとつです。
すなわち、「望ましいサイト」とは、
「理想的な顧客体験」(カスタマーエクスペリエンス)
を提供できるサイトです。
ただ、従来の
「粗いターゲットセグメント」
では、「理想的な顧客体験」を
設計することが困難でした。
そこで、「ペルソナ」の登場となります。
まるで実在の人物であるかのように詳細なプロフィールを
生き生きと描く「ペルソナ」を中心に置くことによって、
「理想的な顧客体験が提供できるWebサイト」
の設計が可能になるというわけです。
ちょっと気取った言い方をさせてもらえば、
サイト構築のトレンドは、
「ユーザビリティ」から「デザイアビリティ」
へと移りつつあるということでしょうか。
*ケリー・ボーディング氏の話は以下の記事から
投稿者 松尾 順 : 11:06 | コメント (2) | トラックバック
村ぶろ・・・和歌山県北山村発
紀伊半島の南東部に位置する小さな村。
村面積48平方キロの97%を山林が占めています。
北山村は、136年前の廃藩置県の際に和歌山県残留の道を
選びました。このため、周囲を三重県と奈良県に囲まれた
全国で唯一の飛び地自治体だそうです。
この村もご多分に漏れず少子高齢化、過疎化が進み、
今の住民はわずか516人です。(2007年5月31日現在)
同村の基幹産業となっているのは、柑橘類の「じゃばら」生産。
近年、「じゃばら」は、花粉症に効果があることがわかり、
人気が高まっています。
また、ダム建設によって中止を余儀なくされた、
600年の歴史を有する「筏流し」の伝統技術を継承した
「観光筏下り」
を復活させることで、観光事業を中心とした地域づくりに
取り組んでいます。
この取り組みの一環として開始されたのが、
北山村が主催する自治体初のブログポータルです。
今年3月からテスト版がオープンしてましたが、
6月21日にグランドオープン。
「村ぶろ」には、北山村の住民以外の誰でも、
「村人(むらびと)」・・・仮想村民
として登録することで、
無料のマイブログを開設することができます。
テスト版オープン以来、これまでに登録した
仮想村民は、約5,900人。(5月17日現在)
なんと、仮想村民は住民の10倍以上に膨れ上がっています!
現在はコミュニティ機能も追加されており、
地域SNS的な「仮想村」として発展していく可能性が
ありますね。
もちろん、単にネット上の活動だけでなく、
北山村の村人としての意識が醸成されることによって、
「じゃばら」の直販サイトの売上増につながるでしょうし、
「私のもうひとつのふるさとに帰りたい」
(東京生まれの人にとっては、新たなふるさとになる!)
という気持ちから、そうでもなければわざわざ行く気には
ならない不便な場所にある同村に観光に行く(帰る)人も
増えてくるでしょう。
北山村に永住したいという人も間違いなく出てきます。
「村ぶろ」の今後の展開は、
少子高齢化・過疎化に悩む地方の活性化に効く、
ネット活用例として要注目でしょう。
あ、私も早速、村人になってみました。
登録は簡単ですね。
巨大すぎて無個性化した大手の無料ブログポータルよりも、
手作り感があっていい感じです。
投稿者 松尾 順 : 10:09 | コメント (0) | トラックバック
歯医者さんのトップクラスWebマーケティング事例
我慢に我慢を重ね・・・
しかし、とうとう痛みに耐えかね駆け込んだ歯医者さん。
私の事務所から徒歩30秒。
飛び込み初診でしたので、どんな歯医者さんか心配でしたが、
かなりの腕前でほっとしました。
初回こそ、神経まで達していた虫歯のために麻酔を打ったりと、
ちょっとつらかったですが、今は治療の痛みはまったくといって
良いほどありません。安心して身を委ねられます。
院長先生は、開業30年のベテラン。スタッフはいるものの、
歯科医師としてはお一人でやってこられたようですね。
50代の結構なお年のはずですが、先取の精神高しです!
Webサイトも立ち上げてます。
早速のぞいてみると・・・
すごい。感動しました。
これは、間違いなく「プロ」がサポートしてますね。
シンプルなデザインながら、ヘッダーには「青空のイメージ」を
配して、歯医者に行くブルーな気分を紛らわせてくれます。
トップページを開くと真っ先に目に入ってくるキャッチコピーは
「歯は削らなくても大丈夫です」
と不安を解消してくれる一言。
さらに、
「○○歯科医院の理念」
が続きます。
たとえば、
「患者さんの要求に応えられる歯科医院」
など全3か条で、当院のポリシーを明確に伝えています。
その下を見ていくと、患者さんからの喜びの声を掲載!
-------------------------------
○山○人さん(33歳)
私は5歳のころから○○歯科医院に通ってます・・・
成人してから久々にいくと、5歳の時のカルテが残っていて
感動しました・・・云々。
-------------------------------
なるほど、地元に根付いた歯医者さん、
ホームドクターのように信頼できますよ、
というウリをしっかり代弁してもらってますね。
そして、別ページに掲載されている院長の、
親しみを与える柔和な笑顔の写真もなかなかいいのですが、
その下のメニューの「スタッフ紹介」を見ると、すごい、
美人揃いです!
とりわけ、受付の女性は、
「元モデルですか?」「今夜空いてませんか?」
と思わず聞いてみたくなりました。(笑)
いやほんとに、美しい方・・・
しかし、今のところ、なぜだかいつも受付の女性は
体調を崩していて休んでいます。まだお会いできてません。
(受付の女性は本当にいるのか、ちょっと疑い始めてます・・・(^_^;)
というわけで、院長先生自ら受付業務もやってくれてますが、
精算はできないらしく、今のところ医療費は「ツケ」です。
「よくある質問」もしっかりあります。
-------------------------------
Q 治療期間はどの位かかりますか?
A 大変難しい質問です。
それぞれの・・・(以下略)
Q 歯石を取る回数はどれ位ですか?
A これも大変難しい質問です。
歯石の・・・(以下略)
-------------------------------
思わず笑ってしまいましたが、
この率直な物言いも、なかなか好感もてます。
さらにさらに、なんと「院長ブログ」もやってるではないかあ!
あまりマメに更新されてませんが、実直そうな人柄が
伝わってきました。
また、熱烈な巨人ファンであることもわかりました。
(後楽園球場、というか東京ドームまで徒歩10分で
いける場所に開院したのは、巨人ファンだから?)
といった具合でして、
歯医者さんのWebマーケティングの取り組みとしては
トップクラスの事例でしょう。
Webサイトのおかげだけではないと思いますが、
予約はいつも満杯の、人気の歯医者さんであることは確かです。
なお、受付の女性の写真、あるいは院長先生のお顔を
拝んでみたいという方は、私まで直メールをお送りください。
あなただけに、こっそりURLをお教えします。(*^_^*)
投稿者 松尾 順 : 00:59 | コメント (0) | トラックバック
なぜ、mixiとGREEの利用者数に差が生まれたのか?
「GREE」の誕生は、2004年2月29日。
一方、「mixi」は、2004年3月3日。
つまり、両者のサービス開始日はわずか3日しか違いません。
しかし、現在の利用者数は、GREEが40万人ほどなのに対して、
mixiは600万人とも言われ、その差は実に15倍です。
ほぼ同時にスタートを切った2つのSNSにこれほどまでの差が
開いた理由について、伊地知晋一氏は、「CGMマーケティング」
の中で次のように書いています。
“サービス開始当初にあったいくつかのほんの少しの違いが
後に大きな会員数の差になって表れるため、その違いが
見えにくいのだ”
そして、その違いとして次の3点を挙げています。
(1)オピニオンリーダー
(2)双方向参加型のアーキテクチャ
(3)軽さ(0.1秒単位の表示速度の違い)
mixiには、早くから音楽に関するオピニオンリーダーが
多かったそうです。
米国最大の「My space」も音楽関係の
オピニオンリーダーとファンが集まっていたことが急成長の
理由のひとつだと言われていますね。
「双方向参加型のアーキテクチャ」というのは、
オピニオンリーダーとフォロワーの関係が固定的にならず
テーマによって役割が入れ替わることが、
場の活性化に貢献するということのようです。
これは、利用者数の増加につれて、さまざまなコミュニティが
立ち上がることによって実現されていくことであり、
端的にいえば、多種多様なコミュニティが多ければ多いほど
さらに場が盛り上がるという良循環が起きると考えられます。
さて、もうひとつの「軽さ」ですが、
これは、GREEとmixiの雌雄を決する最大の要因だったかも
知れません。
GREEの立ち上げ初期から利用しているZ会の寺西さんは
当時起きたことを生き証人的に語ってくれました。
(寺西さんは、Z会会員の子供、親などを対象とするSNS
「パルティオゼット」を構想、立ち上げた方です)
以下、寺西さんの言葉を許可を得て引用します。
----------------------------------------------------------
2004年3月下旬にGREEに入った私
(その頃の利用者数は約3万人)ですが、
SNS、GREEなんて言葉を知っている人の方が
(Webをちとかじっている人間の中でも)圧倒的に少なく、
また、その頃巷では「ブログ」の方がメディアとして
注目を浴びていたので、Web関係者の興味は
「ブログが商売になる」あるいは
「(ブログを使った)アフィリエイトが効果が高い」
に向かっていたと思います。
必然、「仲間がいなければつまらない」GREE、Mixiがそこまで
活性化するわけもなく、Greeの私の利用は開店休業、Mixiは
「名前は知ってるけどどうせGREEと同じでしょ」
程度でした。
当時はキヌガサも同列でしたね。
どれが秀でていたわけでもなく。
Mixiに入ったのは同年8月上旬で、この時のユーザーが約8万人。
ここまではMixi、Gree利用者数の伸び方が同程度だったと
記憶しています。
3月に3万、8月に8万ですから、私のような「開店休業」
だけど「話題を聞いたからちょっと招待してよ」という人
だけを招待するユーザーがボチ、ボチといる状態
だったんじゃないですかね。
こうしてぼちぼちと競っていた時期に、GREEには問題が
起こりました。
まず1つが、プロフィールなどが検索エンジンに
引っかかってGree利用者じゃなくても見れてしまうことが
顕在化。
そして、これ以上に問題だったのが、
「Gree、重~~~い!」
です。
早い話、ユーザー数の増加により、Greeがなっかなか
開かないサイトと化しちゃったんです。
あほらしいのでMixiを主戦場に徐々に切り替え始めたのが
この年の末です。
で、「知り合いが知り合いを呼ぶ」構造上、
GREEがもたついている間に世の中の情勢が
「ブログに変わる次のもの」
を求めていた。
その情勢に「軽い」Mixiが乗ったんですよね。
また、「ミクシィ」というネーミングとデザイン、
ほとんどが女性の開発チームで(意図的に)開発したと
笠原さんから直に伺っていますが、これもインフエンサー
となりやすい女性の心をガッチリつかんだわけです。
自分の話を申しますと、2005年1月には「どちらか紹介して」
と言われるとMixiにしていました。
(それまではGREEが多かったんですけど)
余談ですが、Z会の「パルティオゼット」
の構想を社内に答申したのがこの時期で、
その答申事例で取り上げたのもMixiの方でした。
まだこの時期、GREEは重かったのと、
素人には淡白な(硬派な)デザインだったのが抵抗感を
強めたようです。
そして、「知り合いが知り合いを呼ぶ」構造のSNSに
圧倒的な差ができました。チャンチャン、です。
ブレイクポイント(=ここで加速した方が勝ち)の
ユーザー数は10~15万人じゃないでしょうかね。
論点をまとめると、Mixiが差をつけた理由は
・重くなかったこと
・「知り合いが知り合いを呼ぶ」構造上、GREEの隙が
利用者数の増加の加速度をつけるときに致命傷になったこと。
(もっとも、Greeの田中さんは、利用者数の増加にはこだわって
いなかったようですが)
・「いちげんさん」が入り込みやすいネーミングとデザインに
したこと
----------------------------------------------------------
(引用終わり)
というわけで、ブレークポイントとなるタイミングで
技術的な問題でGREEがつまづいちゃったわけですね。
これが現在の利用者数に差が開いた最大の原因でしょう。
もちろん、寺西さんが指摘しているように、
ターゲットとデザインの差も目に見えないところで
効いていたんだと思います。
投稿者 松尾 順 : 10:07 | コメント (2) | トラックバック
旅行のクチコミサイト フォートラベル
先日、@NBC勉強会で、現在急成長中のネットビジネス、
の社長、津田全泰さんの講演を聴く機会がありました。
フォートラベルの設立は2003年10月。
2005年に「カカクコム」の傘下入りをした新興ネットベンチャー。
現在、スタッフ数は、契約、アルバイト含み21名です。
売り上げは年商3億円を超え、儲かってます!
同社の収益源は広告。
いわゆる純粋な広告掲載からの売り上げが半分、残り半分は、
クリック課金型や成約ベースの広告(アフィリエイト)です。
フォートラベルのWebサイトは、
「旅行情報」
を提供することで旅行好きのユーザーを集客し、
JTBなどの旅行会社や、ホテル、航空会社などの
「旅行予約サイト」に誘導する各種広告を掲載する
というのがビジネスの基本的な仕組みです。
要するに、「旅行情報誌」のネット版です。
既に、このカテゴリーでは、
大手の「るるぶ.com」「AB-ROAD.net」などを抜き、
最大のユーザー数を獲得しているそうです。
さて、同サイトの場合、旅行情報は、旅行会社などから
提供されたものではなく、基本的に一般消費者の
「旅行体験記」で構成されているというのが特徴です。
同サイトの「トラベラー会員」として登録すると
自分専用の「旅行ブログ」が開設でき、
自分が行った旅行の体験を書いて公開することができます。
また、ブログという形ではなく、ハワイなど観光地について
自分が知っている情報を「クチコミ情報」として投稿すること
ができます。
つまり、旅行者自身の「クチコミ」が集積されているのが、
フォートラベルなんですね。
トラベラー会員は、現在2万5千人ほどですが、
掲載されている旅行記は10万件(冊)、旅行写真は150万枚、
クチコミ情報は4万件の規模に達しています。
一見、ユーザー数はそれほど多いとは感じられません。
しかし、それでもこれだけのクチコミ情報が集まり、
メディアとして十分な広告収入を生み出すことができるんですね。
フォートラベルのような、
多種多様、ある意味雑多なクチコミ情報をベースとするビジネス
の成功のカギは何かおわかりでしょうか。
それは「情報編集力」です。
そのままでは使いづらい生のクチコミ情報を
わかりやすい切り口で整理し、参照しやすい、検索しやすい形に
情報を加工してサイト訪問者に見せてあげることが重要だという
ことです。
この点について津田さんは、次のように言ってました。
会員から投稿された情報はそのままでは
「CGC(Consumer Generated Content)」
に過ぎない。
つまり、ただ情報が溜まっているだけの状態であり、
フォートラベルでは、こうした情報を自動・手動編集することに
よって、「メディア」としての価値を持つ
「CGM」(Consumer Generated Media」
に変えていくノウハウが強みです。
なお、類似の先行事例には化粧品のクチコミサイト
「@コスメ」
がありますね。
蛇足ながら、実は、フォートラベルとほぼ同じビジネスモデル
を構想していた友人がいました。
企画書を見せられたのは2002年頃だったように思います。
仮のサイトもいちおう立ち上げてましたね。
当時彼は大手企業に勤めていて、片手間にやろうとしていたよう
ですが、やはり両立は難しかったようです。
フォートラベルは、最初の1年半くらいは、
津田さんともう一人の創業者の2人でがんばっていたそうです。
事業成功のもうひとつの鍵は、当事者の熱意、覚悟にあることを
痛感させられますね。
「e託販売サービス」は何の前兆か?
アマゾンユーザーの方はお気づきかも知れませんが、
「e託販売サービス」
が開始されてます。
これは「委託販売」のオンライン版。
委託販売は、リアル版だと、
古着のリサイクルショップが典型的ですね。
リサイクルショップでは、通常、売主が持ち込んだ古着を
一定期間店頭に陳列します。そして、売れた分だけ、
委託手数料を差し引いた売上を売主渡します。
売れなかった分は売主に戻すので、店舗側は
在庫費用を負担するだけで済みます。
アマゾンでも同様に、インディーズCDや自主出版物など、
あまり大きな売上は望めない、いわゆる「ロングテール商品」
を委託販売していこうというわけです。
「ロングテール商品」とは、大手の卸やリアル小売店構成される
従来の販路(チャネル)では、仕入・在庫コストと比較して、
たいした収益が望めないのでなかなか扱ってくれなかった、
ニッチな商品のこと。
巨大な顧客ベースを抱えて圧倒的な販売力を誇るアマゾンが
委託販売をやってくれるのは、
「販路開拓」が最大のボトルネックとなっていた「ニッチ商品」
にとって大きなチャンスになりますよね。
「e託販売サービス」の場合、売上額の6割を売主に還元する
ということですから、委託手数料は4割ということになります。
さて、このサービスは、出版業界、特に卸会社には結構な波紋を
投げかけているようです。
元々自分たちはあまり扱いたくなかった商品とはいえ、
中間業者の卸を中抜きして直接小売店と取引するという動き
だからです。
実は、出版業界は、実質的には委託販売型。
本屋で売れなかった本の大半は、出版元にあっけなく返品
されてしまう。
なので、アマゾンのような巨大小売店が在庫管理と販売を
やってくれるなら、出版社としては「卸」を通す意義が
なくなってしまうわけですね。
今回の動き、
今はダムの壁にあいた小さな穴に過ぎないように見えますが、
本格的なミドルマン淘汰への前兆なのかもしれません。
投稿者 松尾 順 : 10:52 | コメント (2) | トラックバック
Web2.0早分かり
最近ネット関連の情報を収集していると、
やたらと「Web2.0」という言葉にぶつかります。
メディア的には、今まさに「旬」の言葉ですからガンガン
使われてしまうわけですが、以前も書いたように、
「Web2.0」という言葉がすっかり消費されつくして、
メディアから消えた頃、「Web2.0」的なものが本格的な成長期、
展開期に入る時期です。
逆に言えば、今は導入期に過ぎず、まだまだ試行錯誤が続く時期
ということです。だから話題にもなる。
しかし、これだけあちこちで目にすると気になります。
正体がはっきりしない、よくわからないだけに、
なおさらもやもやした気持ちが残ります。
皆さんはどうですか。
でも、見つけました。「Web2.0」の早分かりができそうなやつ。
とりあえず、これだけ抑えてけば「Web2.0」の輪郭が
見えてくるものです。
それは、マイネット・ジャパンの上原仁氏が、Tim O'Reilly氏の
「What is Web2.0」に掲載された「Web2.0 meme Map」を元に、
日本のインターネット業界的解釈を加えてローカライズした
「Web2.0の要素マップ」です。
「Web2.0の要素マップ」は、
Web2.0の主たる構成要素と代表的なサービスを7分類して
示したもので、とても分かりやすいですよ。
詳しくは、「ITセレクト2006.07号」をご覧になるか、
ネット検索など調べていただいきたいのですが、
ここで7分類の説明部分のみご紹介しますね。
--------------------------------------------------------
1 Rich User Experiences
・Gmail, GoogleMap, Goo地図
・AJAX,DHTML、Graeasmonkey等と駆使し、
ページ上で直感的操作
2 Folksonomy
・Flicker, はてなブックマーク
・Tagづけ、階層分類学でなく、
ユーザーの手で自由に分類する思想
3 User as Contributor
・PageRank, eBayのユーザー評価, Amazonのレビュー
・ユーザー体験の蓄積をサービスに転化
4 Participation
・ブログ, mixi
・ユーザー参加方開発、ユーザー生成コンテンツ
5 Long tail
・Google Adsense
・ユーザー・セルフサービスの提供で
ロングテールを取り込む
6 Radical Decentralization
・Winny, BitTrrent
・進歩的分散志向、ネットワークの外部性
7 Radical Trust
・Wikipedia, はてなダイアリーキーワード
・進歩的性善説、知のオープンソース
---------------------------------------------------------
要するに、この7つが「Web2.0」という大きなコンセプトに
含まれるサブコンセプトということです。
これらのコンセプトを眺めているだけでも、
いろいろアイディアが湧いてくるような気がしますね・・・
ほかにも、「Web2.0」の理解に役立ついい情報源とかあったら
ぜひ教えてください!!
投稿者 松尾 順 : 06:00 | コメント (4) | トラックバック
オンライン店舗生き残りの鍵は独自の商品開発力
「無印良品」のネットストアは、昨年度「35億円」の売上げを
記録しているんですね。(日経情報ストラテジー JUNE 2006)
ネットストアをひとつの店舗とみなすと、売上げのトップの
有楽町店に続くナンバー2の売上げを誇る巨大店舗に成長した
ことになるそうです。
今年度は、47億円の売上げを見込んでおり、2000年9月の開店
から約6年で、有楽町店も抜いてナンバーワンになる見通し。
ネットストアは実店舗より経費が少ないので利益率が高く、
しかも、客単価は12000円と、リアル店舗の6倍。
商圏、品揃えに制限のないバーチャル店舗ですから、
これからも、どこまで成長するのか計り知れないですね。
さて、ご存知のように「無印良品」はオリジナルブランド。
同社以外の店では購入することはできません。
ですから、「無印良品」の商品を買いたいと思ったら、
同社のネットストア、またはリアル店舗に行くしかありません。
つまり、同社は「製造小売業」です。
生産そのものは外部委託するとしても、移ろいゆく消費者ニーズ
を捉える商品企画・開発力と、マーケティング・販売能力の
どちらも強化していかなければなりません。
様々なメーカーが製造した商品を仕入れて売るだけの「小売業」
とは違って、格段に経営が難しい。
しかし、このハードルを越えることのできた「無印良品」の
良品計画は、ネットエコノミーの中でさらに存在感を増していく
ように思います。
なぜなら、どこでも手に入るような商品なら、
どのお店で買っても同じだから。
リアル店舗の場合は、まだ近くに住んでいるとか、
物理的な制約条件が大きいですが、ネットの場合はそれがない。
既に私たちは、Yahoo、Googleなどで商品名をダイレクトに検索し、
検索結果に並んだ複数の店舗の中から、総合的な評価を行って
購入先を決めるという購買行動を取るようになってきてますよね。
極端に言えば、欲しい「商品」さえ手に入れば、
購入先はどこでもよいのがネットエコノミーの消費者です。
もちろん、アフターサービスが重要な商品ジャンルは、
店舗の選定も重要です。
また、オンライン店舗側としても、
様々なCRM施策によって購入客のストアロイヤルティを
高めていくというアプローチは依然として有効です。
ただ、明確なのは従来型の仕入れて売るというだけの小売手法を
ネットに持ち込んだだけでは、アマゾンのような巨大資本や
SEO対策に長けた企業は勝てない。
消費者の店舗への流入経路が、検索エンジンや比較サイトに
絞られつつある今、どの店舗もそこその売上げで仲良く「共存」
ということが起きず、勝ち負けがはっきり出てしまう。
そんな厳しい環境で、オンライン店舗が生き残る鍵は、
良品計画のような、独自性の高い商品の企画・開発力を
磨くことになっていかざるを得ないでしょうね。
そういえば、「ユニクロ」のファーストリーテイリングも
製造小売型ですが、オンライン店舗のショーバイは
上手くいってるんでしょうか?
投稿者 松尾 順 : 10:50 | コメント (2) | トラックバック
カップリングのロングテール
最近のビジネス・バズワード(流行り言葉)のひとつに、
「ロングテール」
があります。
縦軸に、売上げを取り、横軸に、売上の高い商品アイテムから
順番に並べたグラフは、ゴジラが左側に顔を向けたような形に
なります。
ゴジラの頭から急な背中の斜面を下っていくと、
長い尻尾(ロングテール)が続きますよね。
それで、ゴジラの頭のあたりの商品は、
企業収益に大きく貢献している「売れ筋商品」、
いわゆる「ヒット商品」です。
一方、尻尾のあたりにある商品は、売れ行きのパッとしない
「死に筋商品」と呼ばれてきたもの。
これまで、「死に筋商品」は、売上げに対する販売管理コストが
上回り、利益がマイナスになることが多く、しばしば
取り扱いカット(販売停止)の対象にされたものでした。
でも、インターネットのおかげで、販売管理コスト、
すなわち、「広告・プロモーションコスト」、「販売コスト」
(決済手続きなど)、「在庫コスト」などが劇的に下がりました。
したがって、ヒット商品でないモノでも、
安定した利益をもたらしてくれる商品となりました。
それどころか、競合との価格競争に巻き込まれることのある
ヒット商品より、尻尾の商品の方が儲かることもある。
もはや、取り扱いをカットすべき「死に筋商品」とは
呼べなくなってきました。
これを「ロングテール現象」と呼びます。
さて、この概念、男性と女性(あるいは同性でもいいんですが)
の結びつき=カップリングにも有効です。
複雑になるのを避けるため、一応異性のカップリングに
ついて考えますが、客観的に見て、多くの人が好きになる
魅力的な異性というのは、いつの世にも存在しています。
そういう人は、大体においてパートナーには苦労しないのが
現実です。いわゆる売れ筋の人たち。
(うらやましいですよね・・・)
でもそんな人たちはほんの一握りです。
それ以外のフツーの人たちは、
相性のいい人とめぐり合わない限り、
なかなかカップルになることはできません。
ところが、人間関係の希薄化で、
お節介だけどありがたい仲人好きおばさんはほとんど絶滅。
職場でも、社内結婚相手として採用されてきた事務系正社員が、
IT進展で削減され、またパートや派遣社員で置き換えられて、
出会いの場や恋愛関係を進展させる機会も激減。
いわゆる、従来型の結婚相談所、結婚仲介サービスは
効果が高いかもしれませんが、それなりに高い。
誰でも利用できるわけではない。
フツーの人たちは厳しい状況に立たされています。
でも、すでに、
ネット上の結婚仲介サービスが
「カップリングのロングテール」
を生み出してくれているはずです。
ネット上のサービスなら、
男女が出会うための様々なコストがはるかに低いですから。
こうしたネットの結婚仲介サービスの中でも面白いのが、
ウェブサーカス(株)の「Will Bride」のサービスでしょう。
男性が、自己紹介ムービーや、結婚ブログ=日記を書いて
自己PRをし、女性の方が、関心を持った男性に交際を
申し込むという、「ねるとん」(古い!)とは逆、
プル型のスタイルが斬新ですね。
このサイトを紹介している、日経アソシエ最新号(2006.04.03)
の白川桃子氏の記事にあったウェブサーカスの社長コメントが
興味深く、
“女性が男性に申し込む方がカップルになる確率が、33.4倍”
だそうです。
これ、恋愛心理学で言われる、
「男性は、出会った女性の6割を交際対象として考えるが、
女性は、出会った男性の3割しか交際対象として考えない」
(それだけ男性より女性の方が選別が厳しい)
という法則に基づいても正しい仕組みです。
昨今、男性も女性もやたら独身者が増えてますが・・・
またそれが少子化を促進してるわけですが・・・
それが自らの意思であればなんら異議を唱える気は
ありません。
でも、やっぱりカレ・カノジョが欲しい、
結婚したいとお考えなら、
ネットのロングテール現象に相乗りした方がいいです。
誰もが、その人ならではの魅力を備えているのですから、
大事なことは、いかにして数多くの人に、できるだけ低コストで
手間をかけずに、それを知らしめるか、じゃないでしょうか。
投稿者 松尾 順 : 14:45 | コメント (2) | トラックバック
実体化するオンラインゲーム
ネットを通じて多数の参加者が共同して敵と戦ったり、
街づくりを行う、多人数参加型のオンラインゲームを
やったことありますか。
私は、まだ未体験です。(始めたらはまりそう)
今日の日経産業新聞(06.01.26)記事には、
オンラインゲームの実体化が進んでいることが伝えられています。
特にゲーム内の取引によって動くお金が莫大になりつつある
という点に驚きました。
つまり、
「オンラインゲーム・エコノミー」
が立ち上がりつつあるんです。
ゲーム内の金銭取引は、敵をやっつけると獲得できる武器を
手っ取り早く、「お金」で手に入れるというところから
スタートしたようです。
おそらく当初はゲームマニア同士の取引だったんでしょうけど、
そのうち、人気のある武器(アイテム)を販売することを目的に
ビジネスとしてアルバイトを雇い、組織的に敵をやっつけ、
武器を手に入れるハンター的集団が登場します。
(象牙のために象狩りをするやつらを連想しますね。)
最近では、「ディベロッパー型」が誕生しています。
ゲーム内の架空の不動産をゲーム運営者が販売し、
購入者がその土地を開発し、付加価値をつけて販売するのです。
例えば、10万ドルで架空の島を購入した人は、
次のような事業モデルを構想しています。
「魅力的な音楽や、戦いがいのあるモンスターを提供して
プレーヤーをひきつけ、参加するプレーヤーから
税金を徴収する」
年間売り上げ予測は、少なくとも168万ドルとか。
こうしたオンラインゲーム・エコノミーの市場規模は、
2億ドル~10億ドルと推定されています。
さて、オンラインゲーム内の経済・社会活動は、
より現実の社会に近づいているわけですが、
そもそもなにをもって「実体化」と呼ぶんでしょうね。
オンラインで取引されるのは、まさに、物理的には存在しない
架空のモノゴトです。しかし、現実(オフライン)の社会も
IT化の進展によって、実体を伴わない情報だけのやりとりが
増えています。
オンラインとオフライン、どっちがリアルでどっちがヴァーチャル
なのかだんだん区別がつかなくなってきましたね。
おそらく、将来はオンライン・オフラインの区別をすることなど
意味がなくなるほど、完全に一体化するんじゃないでしょうか。
気になるのは、人間心理・行動はどのような変化を受けるのか
ということ。
オンラインエコノミー、オンライン・ソサエティという、
これまで経験したことのない新たな世界に
足を踏み入れてしまった人類は、
どのような新たな心理・行動様式を身につけていくのでしょうね?
投稿者 松尾 順 : 10:32 | コメント (0) | トラックバック
Webサイトは自動販売機か?
インターネットが、もはや日常的なメディアへと成長を遂げ、
Webサイトが消費者との最も重要な接点のひとつと
言えるようになってきました。
なにしろ、24時間いつでも消費者とのコミュニケーションが
可能なのですから。
もちろん、Webサイトの情報(コンテンツ・機能)は
あらかじめ作りこまれた情報であって、ナマのコミュニケーション
ではありませんが。
さて、以前、インターネット広告の営業をする時、
こんなたとえ話をお客様にすることがありました。
「Webサイトは、砂漠の中にポツンと置かれた自動販売機です。
ただ自動販売機を置いておけば客がやってくるというわけでは
ないんです。
だから、インターネット広告を使ってWebサイトが置いてある位置を示し、
また誘導する必要があるんですよ」
最近は、Googleのような検索サービスの検索結果で、
上位に表示されることがとても重要になってきていますが、
上記の説明はいまだ有効だとは思います。
しかし、Webサイト=自動販売機というたとえは、
どうもあまり適切ではないと感じるようになってきました。
どちらも、24時間営業、お客さんの一定のニーズを
充足するモノ・サービス(情報)を提供しているという点では同じです。
しかし大きな違いが消費者の心理にあります。
それは、消費者は、自動販売機には「ひとの気配」を
期待しないが、Webサイトには「ひとの気配」を意識的・無意識的に
期待しているという点です。
ようするに、自動販売機は単なる機械、それ以上でもそれ以下でもない。
でも、Webサイトは最終的に人と人をつなぐメディアであるために、
単なる機械程度の対応しかできなければお客さんは
怒り出すということです。
だからこそ、Webサイトを立ち上げればOKというわけではなく、
問い合わせに対する迅速な対応ができるよう、
裏の仕組みも充実させておかなければならないのです。
また、サイトのデザインや使い勝手(ユーザビリティ)も、自動販売機
以上に「人」を感じさせることが必要になってきます。
これは当たり前のことのようで、まだまだ理解できていない人が
いらっしゃいます。
逆に、自動販売機には、人間らしくはなって欲しくないですよね。
人の声で「ありがとうございました」くらいまではいいですが、
開発が進められているらしい最新の自動販売機では、暑い夏には、
「暑いですね」といったり、夕方には「お仕事ご苦労様です、一本
おまけしときます」などと、状況に応じてカスタマイズされた声が
流れるようです。
やめてくださいよ、なんか気持ち悪いです。
そう思いませんか。