どれだけ手間と時間かけてますか?

お客さんの心を掴みたいなら、
楽しよう、手を抜こうとしちゃいけません。

また、効率性を考えすぎてはいけません。

可能な限り、手間と時間をかけた
コミュニケーションが必要です。


世界的なベストセラーである、

『説得力の武器』

では、相手を説得するための効果的な

「コミュニケーションテクニック」

が実証研究に基づいて解説されています。

同書では主要なテクニックとして

「6つの原理」

が示されていますが、
最もパワフルな原理はやはり

「返報性の原理」

でしょう。

これは、

「受けた恩は返さずにはいられない」

という心理を利用するもの。

具体的には、こちらがまず相手にとって
何らかの得になることを提供して、

「恩義」

を感じさせ、その後の説得を有利に
展開しようとすることです。


人間は社会的動物です。

すなわち、集団で生活を営む動物であり、
お互いに助け合うことで社会が円滑に回る。

したがって、「恩義」を大切にすること、
「借りはきちんと返したい」という欲求は、
人間社会において、最も根底にある心理だと
考えられます。

だからこそ、「返報性の原理」は、
極めて効果の高い説得テクニックに
なりえるわけで、仮に相手が自分に対して
あまり好意を持っていなくても一定の効果が
あるほどです。


さて、「返報性の原理」は、
ビジネスにおいては、

・無料サンプルの提供
・プレゼント(記念日など)
・グリーティングカード(誕生日など)
・試食販売
・試着
・無料レンタル(一定期間後に販売)

といった形で採用されています。

どれも一定の効果があるのは確かです。

しかし、より効果を高めたければ、

「できるだけ手間と時間をかけること」

です。

しばしば、

「心のこもった贈り物」

という表現をしますが、これは、
贈り主がいろいろと考えてくれたり、
手間や時間をかけてくれたことが
伝わる贈り物のことです。


ですから、お誕生日のお祝いを
プログラムで自動送信しているだけのeメールや、
印刷された文面だけのカードをもらっても、
私たちはちっともうれしくない。

恩義を感じることはない。
なぜなら、人手がかかってないことがわかるから。
心がこもっていないから。

以前もご紹介しましたが、
ある通販企業には、お礼状を1枚1枚手書きで
書く人々が雇われています。

手書きの礼状やお祝い状は、
一定の時間や手間をかけたことがわかるので、
うれしいのです。恩義を感じるのですね。

そして、

「また買ってあげなきゃ(悪いな)」

という気持ちにさせるため、
リピート率の向上につながっています。


また、試供品の無料提供は文字通り、

「試してもらう」

ための方策としては有効ですが、
大量生産された商品をばらまいているだけでは、
やはり「ありがたみ」は少ない。

しかし、ちょっとした手書きのメッセージを
付け加えるだけで効果がまるで違ってきます。

そういえば、経営危機を乗り越え、さあ再出発
という時期のJALでは、客室乗務員の自筆の
メッセージを搭乗客全員に渡すといった工夫を
していましたね。


実は、ビジネスとして「返報性の原理」が
応用できるにも関わらず、それほど実施されて
いないことがあります。

それは、企業が持つ

「専門知識やノウハウ」

の積極的な公開です。

企業にとって、自社内にある専門知識やノウハウは、
あまりにも身近なもの。このため、たいして価値を
感じなくなっています。

しかし、外部の人々にとって、
それはとても価値が高いかもしれないし、
その知識やノウハウのおかげでなんらかの
問題解決につながることもある。

そうすれば、なによりも「恩義」に感じて
もらえるわけです。


自社がもつ専門知識やノウハウは、
あまり外部に出したくないという意識が働きますし、
わかりやすく伝えようとすれば、
手間と時間がかかるため、正直面倒だと感じるでしょう。

専門知識やノウハウの公開が、
それほど実施されていない理由はおそらく
こんなところでしょう。


しかし、だからこそ、
積極的に公開すれば、「返報性の原理」の効果が
大きく高まるのです。

なお、コンサルティングなどの専門サービス企業に
おいては、知識やノウハウは収益を生み出す商品です。

それでも、一定の範囲で積極的に公開することで、
評価が高まり収益向上につながるケースがしばしば、
見られます。

「返報性の原理」を自社ビジネスに応用するなら、
できるだけ手間と時間をかけること、効率性を重視
しすぎないことをぜひ心がけてください。

投稿者 松尾 順 : 2012年09月12日 12:41

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