ますます重要になる「目利き機能」
企業は、売りたい商品を一方的に提示するのではなく、
個々の消費者にとって最適な商品を選び出す手助けを
しなければならない。
今、企業に求められているのは「目利き機能」です。
私たちは、一方的な押し付けよりも、
複数の選択肢から自分で選べたほうが
うれしいものです。
なぜ自分で選べるとうれしいのか
というと、私たちは、
自分の意思で自分のことは決めたい!」
という意識を根源的に有しているからです。
心理学の分野では、
「自己コントロール感」
と呼ばれています。
実際、自己コントロール感(の強さ)は、
幼児のころから見られますね。
(自分で服を着たがることなどもそのひとつ)
ところが、選択肢が多くなりすぎると、
比較検討する能力的限界、また時間的制約のため、
どれかを選択することが難しくなる。
結果的に、なにも選ばないで済ませるという
「選択のジレンマ」
に陥ってしまいがちです。
今の私たちは、あらゆる状況において
「選択のジレンマ」
に直面していると言えるかもしれません。
あらゆる商品カテゴリーにおいて、
多数の選択肢がある。
かつ、溺れてしまいそうなほどの情報で
あふれている。
じっくりと考えて選ぶことはほとんど不可能。
そんな状況で、購入すべき商品を
どうやって選ぶかとなると、
「いつも買ってるから」
「有名だから」
「友だちがいいと言ってたから」
といった、ある意味安易な、
「表面的なてがかり」
に基づいたものになってしまうわけです。
近年、「ブランド構築」がますます重要に
なってきている理由がここにあります。
では、企業側は、選択のジレンマ状態の消費者に
対して、ブランド力を高める以外にどんな施策を
打つべきでしょうか?
それは、ひとことで言えば、
消費者が自ら選択しやすくなるような情報や機能、
サービスを提供することですね。
もっと言えば、ある程度商品を絞り込み、
消費者一人ひとりにとって最適な少数の選択肢を
提示してあげることです。
例えば、今秋開設のWebサイト、
Stylepick
http://stylepick.jp/
では、若い女性を主な対象に毎月、
5種類の靴を提案し販売するサービスを
提供する予定。
会員登録の際、気に入った靴を3択で選ぶ質問を
十数回繰り返してもらい、ヒールの高さや、
デザインの傾向など10項目の視点から、
登録者それぞれの好みを把握する仕組みです。
また、服とのコーディネートの好みについても、
流行のファッションを着たモデルの写真を並べて
選んでもらうことで把握するようです。
上記Webサイトは「ソムリエ」などと同様、
「あなたは、これかあれがお好きなのでは?」
と相手の好みを踏まえて提案してくれる、
「目利き」
としての役割を果たしてくれるわけですが、
今後、消費者の選択を手助けする情報や機能、
サービスに対するニーズがますます高まるのは
間違いないでしょう。
私たちが直面する選択肢は増えこそすれ、
経ることはまずないからです。
実のところ、これまで
多くの企業が取り組んできた
「CRMサイト」
は顧客を登録会員化し、
購買履歴やコミュニケーション履歴を蓄積・分析
することで、個々の顧客に適した商品やサービス
提案を行なうことが主目的のはず。
ですから、CRMサイトは、
「目利き機能」
を的確に果たしてこそ、
顧客に喜ばれ満足度を高めることができる。
だからこそ、極めて有効な
「顧客維持施策」
となりうるのです。
ところが、現状のCRMサイトは、
まだまだ、既存顧客に対する手軽な
セールスコミュニケーション
のツールに止まっているところが多く、
十分な
「目利き機能」
を果たせていないように思えます。
企業が売りたい商品を一方的に押し付けるのではなく、
消費者が求めている商品を選択しやすくしてあげるために、
企業としてどんな情報・機能、サービスを提供すべきか、
改めて熟慮する必要があるでょう。
*「Stylepick」については、
日経産業新聞、日経MJ(2012/09/03)から引用しました。
投稿者 松尾 順 : 2012年09月03日 10:23
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