人はなぜ「クチコミ」するのか?

インターネットは、一般庶民の私たち誰もが、
いつでもどこでも、様々な情報を簡単に収集すること
を可能しました。

同時に、私たち個人がそれぞれ自由に、
社会に向けて「情報発信」することを簡単にしました。


さて、いち消費者、いち生活者としての個人が
発信する情報は、他者からみれば

「クチコミ」

にほかなりません。

クチコミは、
消費者行動に大きな影響を与えます。

なぜなら、私たちは、

「他の人々はどんなものを購入しているのか」

また、

「人々は、購入した商品についてどのような評価を
 しているのか」

を大いに参考にして、
自分が購入する商品の選択を行なうからです。

「なぜクチコミを参考にするのか」という
理由としては、大きくは2つあります。

------------------------------

1 失敗が少ない

他者の評価が高ければ、自分にとっても
満足できる商品である可能性が高い。


2 嘲笑されたり、非難されることが少ない

みんなが購入しているものなら、
多くの人に受容されているということであり、

 「変なもの買っちゃって!」

などと笑われたり非難される可能性が低い。

------------------------------

要するに、「長いものに巻かれる」ほうが、

「安心」

という心理が働くからです。

ちなみに、これは『影響力の武器』で
解説されている「カチッ・サー理論」では、

「社会的証明の原理」

と呼ばれているものに含まれます。


では、そもそも人はなぜクチコミをするのでしょうか?

クチコミをする、したくなる理由については、
これまでの心理学の研究によれば、
以下の4つの理由が提示されています。

------------------------------

1 購入した商品を好きになるしかないから

複数の競合商品から一つの商品を選んだら、
少なくとも、当面その商品を利用するしかありません。

せっかく貴重なお金を投じて購入した商品ですから、

「失敗した」

などと後悔はしたくない。むしろ、自分が購入し
所有している商品をできるだけ価値あるものと考えたい。

そのために、

「その商品がどれだけいいか、満足しているか」

を周囲の人に対して語る、示すことによって、
本人が購入後に(無意識に)感じている

「この商品選択は正しかったのか?」

という不安や緊張を解消しようとするのです。
(心理学では「認知的不協和の解消」と言われるもの)

すなわち、この口コミは、他人のためでなく、
あくまで、自分で自分自身を納得させる、
安心させるための情報発信です。

これは、じっくり比較検討する商品、
購入金額が高い商品においてとりわけ起きやすい
クチコミ発生の動機であり、最も基本的なものだと
言われています。

なお、購入した商品が大きく期待はずれだった場合、
「かわいさあまって憎さ百倍」ではないですが、
極めて強い、ネガティブな口コミが撒きちらされる
可能性が高くなります。


2 「良いものを選んだ自分は偉い」という自己顕示をしたいから

人は、各自の好み、価値観や感性に基づいて、
なんらかの製品を選択します。

したがって、ある製品を購入することは、
その人自身のパーソナリティやセンスの良し悪し
を示すものだと言えます。

映画や音楽、演劇などについて、
積極的にクチコミをしたがるのは、

「こんな良いものを楽しんでる私ってセンスいいでしょう?」

ということを周囲に知らしめたいという

「自己顕示欲求」

が根底にあります。

これは、フェイスブックなどのソーシャルメディア
において頻繁に観察されるクチコミですね。

自己顕示は、自分を良く見せたい、
認められたいという心理から行なわれるもの。

誰もが持つ

「社会的欲求」

であり、これを否定するものではありません。
(振り返ってみれば、私自身結構やってますw)


3 相手を喜ばせたい、相手の役に立ちたいから

1や2の理由のように、自分のためではなく、
他の人に教えてあげることで、

「相手に喜んでもらいたい、役に立ちたい」

という「利他意識」からもクチコミが行なわれます。

これもまた、社会という集団を形成・維持するために、
お互いを助け合うことが必須であることから、
私たちのDNAに深く刻み込まれた心理です。


4 その情報がとても興味深い、面白いから

オリンピックで、

「○○選手がメダルを取った」

といったことがクチコミされやすいのは、
オリンピック自体が4年に1度のスポーツの祭典
という希少価値あるテーマであり、そこで
「メダルを取る」というニュースは、
とても興味深く、面白い情報だからです。

あるいは、ソフトバンクの「犬のお父さん」
のような奇妙なテレビコマーシャルがクチコミ
されやすいのは、純粋に面白いからです。

要するに、とても興味深い情報や面白い情報は、
誰かに語らずにいられない力を持っています。

言い換えると、上記のような情報や広告こそが、

「話題性のある(クチコミされやすい)
 コンテンツやクリエイティブ」

と呼ばれるわけです。

--------------------------------

なお、近年は、

「クチコミに対してなんらかの報酬を支払う」

という仕組み・仕掛けが展開されているため、
口コミをする第5の理由として

「金銭的報酬が支払われるから」

も上がるようになっています。

ただ、前述した4つの理由は、
人の内側からわきおこる欲求に動機づけられたもの
であるのに対し、「金で買う」クチコミは、
外側から与えられる動機付けです。

したがって、どこか白々しく、本人の思いの弱い、
説得力に欠けたクチコミになりやすいため、
その効果はあまり高いとはいえません。


冒頭に述べたように、
クチコミは消費者行動に大きな影響力を
有しています。そこで、

「いかにクチコミを発生させるか、拡散させるか」

というのがビジネスにおける大きなテーマになっていますね。

ただ、いわゆる「クチコミマーケティング」や、
「バズマーケティング」と呼ばれる施策では、

「金で買うクチコミ」

で手っ取り早くクチコミを発生させようという風潮があります。

しかし、それ以前に、
人がクチコミをする基本的な4つの理由を理解し、
人が自然にクチコミしたくなるようになるためには、
どのような商品づくりや、コミュニケーションが
有効かをじっくり考えるべきでしょう。


*関連記事

カチッ・サー理論とは?

*参考文献

『雑談力 おしゃべり・雑談のおそるべき効果』
(川上善郎著、マイコミ新書)

投稿者 松尾 順 : 2012年08月13日 10:36

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