行動経済学と「精緻化見込みモデル」
行動経済学の権威、ダニエル・カーマンは、
私たちの「思考(判断や意思決定)方法」には
「2つのシステム」
があることを示しています。
2つのシステムとは以下の通り。
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・システム1
直感的な情報処理を行なうもの。
多くは過去の行動、経験や記憶、ちょっとした手がかり
に基づいて簡便に迅速に判断します。
消費行動であれば、「いつも購入しているから」と
いう理由で選択する場合は、システム1を採用しています。
「ちょっとした手がかり」というのは、単に、
「友人が持っているから」「好きなタレントが宣伝してるから」
といった、表面的な選択理由のことです。
・システム2
合理的・論理的情報処理を行なうもの。
様々な情報を多面的に評価・検討し、熟慮した上で
できるだけ合理的に判断する方法です。
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人は、時と状況に応じて「システム1」と「システム2」を
使い分けています。なぜなら、思考すると時間とエネルギーを
節約するためです。
例えば、「歯ブラシ」を買い換えるたびに、
「今回はどのブランドにしようかな?」
と熟考する人は少ないと思います。
ほとんど思考停止状態で、「いつものやつ」を
買い物カゴに入れるのではないでしょうか?
(システム1)
一方、「自動車」を購入するとなったら、
即金で買えるリッチマンを除き、どのメーカー・車種に
するか、じっくりと時間をかけて検討するはずです。
(システム2)
行動経済学では、直感に頼った簡便な意思決定方法である
「システム1」が、意思決定に対して様々なバイアスを
与えていることを指摘し、こうした様々なバイアスを
生み出すものを「ヒューリスティック」と呼んで研究対象と
しているわけです。
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さて、消費者行動研究でも類似の仮説がありました。
「精緻化見込みモデル」(Elabration Likelihood Model)
です。
これは、広告などのマーケティングコミュニケーションに
対する消費者の情報処理方法についての理論。
以下の通り、やはり「2つの方法」を
私たちは使い分けているという考え方です。
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・周辺的処理ルート
対象商品(カテゴリー)に対する関与度(関心やこだわりの
強さ)が低く、かつ(あるいは)情報処理能力があまり
高くない場合に採用されやすい。
直感的、経験的、表面的な手がかりに基づいたブランド選択。
システム1に対応
・中心的処理ルート
対象商品(カテゴリー)に対する関与度が高く、
かつ、情報を的確に評価できるだけの情報処理能力が
ある場合に採用されやすい。
合理的、論理的にブランドを選択する。
システム2に対応
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この「精緻化見込みモデル」は、
様々なカテゴリーの商品に対して意思決定プロセスが
異なることを説明するモデルとして有益でした。
ただ、実際に、マーケティングコミュニケーションを
組み立てることにはそれほど役立たなかったのが実情です。
しかし、前述したように、行動経済学では、
意思決定に影響を与える様々なヒューリスティックス、
バイアスについての豊富な知見があり、実は、
マーケティングコミュニケーションでは、行動経済学的
知見を意識的(あるいは無意識的)に活用してきたのです。
したがって、消費者行動の理解を深めるためには、
積極的に行動経済学を学ぶことをオススメしたいと思います。
*参考記事
『デュアルプロセッサ・ブレイン』
http://www.mindreading.jp/blog/archives/201207/2012-07-01T1325.html
投稿者 松尾 順 : 2012年07月05日 12:06
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