「町の理容店」の徹底したデータ活用

日経ビジネス(2011.2.21号)に掲載されていた、
千葉市・稲毛区にある地場の理容店、「オオクシ」は
すごいです。

独自のIT技術を駆使し、顧客行動を分析することにより
リピート率84%を達成しています。

理容店業界では、リピート率70%を超えれば、
業界紙で特集が組まれる(参考事例として取り上げられる)
ということなので、オオクシがいかにすごいかわかりますね。


まだ42歳の現社長は、父親が経営していた理容店を
1990年代半ばに引き継ぎますが、当時は競争激化のため、
倒産寸前でした。

打開策に悩んだ末、現社長は19歳の頃アルバイトしていた
コンビニのPOSシステムを思い出し、病院のカルテを
参考に独自のITシステムを構築しました。

そのシステムは、どんな客が来て、誰が対応し、
どんなカットにしたのかといったデータが記録できるもの。

そして、システムに蓄積されたデータを分析すると、
ベテランの理容師が実はたいして稼いでいないといった
真実が如実に把握できた。

現在は、社員(理容師)の技術力、すなわち、
誰がどんなカットが得意か、不得意かということも、
ヘアスタイルを126通りに分類して分析しているそうです。


オオクシのお店で興味深いのは、
理容店でありながら、男女比率が5:5であることです。

つまり、ターゲット層を既存の利用店よりも、
大きく広げることができているわけです。

もちろん、当初は男性が大半だったわけですが、
女性も入りやすいお店作り(かつ男性にも抵抗のない)
に注力したおかげで、男性と女性の利用客数を同率に
することができた。

これは、個人客でなく、家族みんなで
来てくれる客を増やしたことも寄与しているようですが、
理容店としては斬新な発想ですよね。


そしてまた、オオクシが目指す最適なお店づくり
に活用しているのが顧客アンケートです。

40万件の顧客から約4000件のアンケートが、
集まるそうですが、その基本的な活用法は

「顧客の声をどれだけ無視できるか」
(全部聴いていたら破綻するから)

という視点に基づいて行なわれています。

これは記事を読むと、
どうやら次のようなことだと思われます。

・顧客の満足度、リピート率を本当に高めることに
 つながる改善にはお金をかけるが、そうならない
 ことに無駄なお金・努力をかけない。

要するに「過剰品質」にならないように、
顧客の声を上手に聴き、また上手に無視することで、
顧客満足度・リピート率を上げつつ利益を出せる
強靭な店作りをやっているようです。

実際、お客様の様々な要望に対して、
無差別にすべて対応していたら経費や手間が
かかりすぎて利益が飛んでしまうということがおきます。

しかも、その改善策のおかげで必ずしも顧客が増える、
リピート率が高まるとは限らないわけですし。


お客さまアンケートは基本的に、

・何を改善すべきか

を把握するために分析を行なうわけですが、

・何は改善しなくてよいか

という視点での解釈も必要なんですね。

投稿者 松尾 順 : 2011年02月25日 13:56

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