‘めんどうみ活動’に見る関係づくりの目的化

「CRM(Customer Relathiship Management)」

については様々な定義がありますが、
顧客接点の現場においては、

「顧客との関係づくり」

をすることによって「販売」に結びつける、
という説明が一番、わかりやすいものでしょう。


従来のように、お客さんが誰であれ、

「自社が売りたいものを売りつける」

というのではなく、
顧客のニーズをしっかり聴き、
顧客にとって最善の提案をすることで
信頼を培いつつ、モノを売る。

上記の考え方では、当然ながら、
「関係づくり」が手段であり「販売」が目的です。


ところが、近年ではさらに‘進化’してというか、
「関係づくり」自体を目的とする企業が登場しています。

つまり、(営業)スタッフは、
お客さんが困っていること、役に立つことなら、
本業と関係のないことでも喜んでやってあげる。

こうしてお客さんとの関係を深めることで、
お客さんは進んでそのスタッフからモノを買う。

ここでは、

「販売」-むしろ「購入」と言ったほうがいい-

が手段化しています。


すなわち、お客さんはスタッフとの関係を
維持するために、他店より割高でも、喜んで
「購入」してくれるというわけです。


こんなお店の具体例として有名なのは、
東京・町田市の電器屋さん、「でんかのヤマグチ」です。

でんかのヤマグチは、

「遠くの親戚より近くのヤマグチ」

と言われるほど顧客から頼りにされており、
留守番や犬の散歩をお願いされることもあるとか。

結果として、カカクコムの最安値と比較したら
2倍近くにもなる家電製品が売れるのです。


実は、でんかのヤマグチのようなお店が
ほかにもあったんですね。

パナソニックの系列販売店チェーン

「セブンプラザ」

でも、スタッフは「売らなくていい」のです。

むしろ、顧客のために徹頭徹尾働くことを
重視しています。

家電製品の設置や操作方法の説明、
アフターサービスにきめ細かい対応を
するだけでなく、

「牛乳買って来て」
「ケガしたから代わりに料理して」

といった依頼にも対応する。


同店ではこうした顧客のための活動のことを

「めんどうみ活動」

と呼んでいます。

スタッフの評価も、売上ではなく、
「めんどうみ活動」をどのくらいきちんと
やったかで行なわれるのだそうです。

こうして、近くの大手量販店に行けば、
はるかに安く買える製品が売れていく。

お客さんが進んで購入してくれます。

そして、粗利益はでんかのヤマグチ並み
の30%後半を達成しているのです。


現在、セブンプラザの加盟店は50店舗ほど。

加盟前は赤字で苦しんでいたお店が8割を
占めていたそうですが、加盟後は9割が
黒字転換しているとのこと。


このような関係づくりに力を入れる、
言い換えるとサービスを最重視するお店が
成立する背景には、近年の製品の高度化・複雑化と、
高齢化が進んでいることがありそうです。

しかし、この環境変化は多くの業界に
共通していることですね。

とすれば、セブンプラザ、
またでんかのヤマグチのように、
「関係づくり」自体を目的化する取り組みは、
今後のマーケティング&セールスのあり方に
大きな示唆を与えているのかもしれません。


*セブンプラザについての出所:
日経ビジネス(2011.1.10)特集“非効率経営”の時代

投稿者 松尾 順 : 2011年01月19日 11:42

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