ビジネスパーソンの情報収集力

私はマーケティングリサーチを専門としており、
『営業はリサーチが9割!』なんて本も書いております。

それで、常日頃、リサーチの仕事をしていて
つくづく思うことがあります。

それは、必要な情報を効率的に収集することは当然。

もっと重要なことは、収集した情報をいかにうまく加工し、
価値ある情報に仕立て上げるか、という点です。

つまり、

「情報を集め、分析した結果はこの通りです」

というレベルで終わるのではだめなのです。

さらに踏み込んで、

・分析した結果がどんな深い意味を持ちえるのか

・また、その情報を元にして、今後の戦略展開においては、
 どんな意思決定の選択肢があるのか

を示せるのが理想であり、目標とすべきところでしょう。


ボストンコンサルティンググループの北沢真紀夫氏は、

「ビジネスパーソンに求められる情報収集力には2段階ある」

と述べています。(日経産業新聞2011/01/05)

すなわち、以下の2段階です。

1.目的に合致した情報を集めることができるかどうか
2.集めた情報に付加価値をつけられるかどうか

第1段階では、情報収集の「設計力」が重要ですね。
的確な仮説設定、そして仮説検証に必要な情報の見極め
が求められます。

一方、第2段階では、
収集した情報の「解釈力」が必要になってきます。


情報を解釈するというのは、
情報から多様な「意味」を抽出することと言えます。

そして、どんな意味が抽出できるかは、
解釈を行なう人の「脳力」次第です。

ここで「脳力」というちょっと広い表現を使ったのは、
以下のような複数の能力が含まれているからです。

・知識の深さ(当該分野について詳細な知識がある)
・知識の広さ(幅広い、異質な分野の知識がある)
・実体験の多さ(情報が生まれる現場を体験している数)
・多様な知識を柔軟に組み合わせる能力

情報を細かく分けていくこと(文字通り分析)や
また情報を整理・分類する作業はかなりの部分、
論理的思考で解決できますし、コンピュータが
支援してくれます。

分析者が変わることによって、
結果にそれほど大きな差はでません。


しかし、情報の「解釈」はより具体的に言えば、

・データの奥にあるものを透かしてみること
・情報の行間を読むこと
・複数の情報を適切に組み合わせて新たな情報を生み出すこと

なのです。

ですから、解釈者の「脳力」の高低によって、
同じ情報を元にしていても、その情報に与えられた
「付加価値の大きさ」が随分違ってくるということに
なります。


さて、北沢氏は、
情報に付加価値をつける力を高めるためには、

「思考を深めるための情報を積極的に集めること」

と指摘しています。

単に目先を流れていく雑多な情報を漠然と捉えるのではなく、

「なぜこうなっているのか、他の情報との関係は何か」
といった思考を働かせつつ、
必要な関連情報を集めていくということでしょう。


つまり、

「興味を持ったことを時間をかけて調べる」

と北沢氏も述べているのですが、ある意味、効率を無視し、
情報とじっくり向き合う時間を持つことによって、
「脳力」が向上し、情報の付加価値を高める力が付くのです。


成熟した情報化社会に生きる現代、
日々、膨大で雑多な情報が通りすぎていきます。

ビジネスパーソンとって、
2段階の情報収集力を高めることは最重要課題の
一つと言えますね。


*類似記事

・情報料理人(1)
・情報料理人(2)
・情報料理人(3)

投稿者 松尾 順 : 2011年01月13日 14:07

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