『メディアマーケティング進化論』
ブーズ・アンド・カンパニーのコンサルタント、
岸本義之氏の著作、
『メディアマーケティング進化論』
は、ビジネス・ブレークスルー757chで
放送された番組内容が元になっています。
タイトルには、
‘メディア’
と言う言葉が含まれていますが、
メディアにとどまらず、
マーケティング領域に生息する関係者、
すなわち、
・消費者
・広告主マーケター
・メディア企業
・広告代理店
など、生態系全体を俯瞰しながら、
大きな変化を示している
昨今のマーケティング進化の基本方向が、
手際よくまとめられています。
具体的なノウハウを解説したものではないため、
即効性を期待してはいけません。
様々な場所に生息するマーケターが、
「生き残りのためにはどんな変化に適応し、
自分を進化させていくべきか?」
についてのヒントを得るために有用な本です。
本書を読んで、
私が特に気になったポイントを
2点お伝えしておきます。
-------------------------------------------
[パーチェス・ファネル]
これは、端的には
「消費者行動モデル」
のこと。
すなわち、消費者(ターゲット)が、
ある商品を認知して購入するまで、
また、その先にある利用や口コミに
至るまでにどのような段階を踏むのか、
を概念化したものです。
古くは‘AIDMA’や‘AMTUL’などがあり、
最近なら、電通が提唱した
‘AISAS’
などがよく知られた
消費者行動モデルでしょう。
本書によれば、
ブース・アンド・カンパニーは、
以下のようなパーチェスファネル
を提唱しています。
-----------------------------
Awareness(認知)
↓
Consideration(考慮)
↓
Trial(試行)
↓
Occasional(一過性)
Regular(定期的)
Penetration(固定的)
なお、最後の3つ、
Occasional、Regular、Penetration
のことを
「Conversion/Retention(顧客維持)」
と総称。
*正確なモデル表現は同書をご覧ください。
-------------------------------
ネット革命(デジタル革命)以降、
消費者行動が詳細に把握できるように
なったこともあり、現代のマーケターは、
自社商品が購入され、利用され、あるいは
口コミされるまでの一連のプロセスである、
「パーチェス・ファネル」
をまず明確に把握・理解した上で、
マーケティング施策を立案する必要性が
ますます高まっています。
すなわち、
・消費者行動のどの部分に着目し、
そこをどのように変化させるのかを決め、
・そしてその変化を起こすためにどんな
コンセプトやアイディアが有効か考え、
・さらに、上記のコンセプトやアイディアを
最も有効に展開するためにはどんなメディア、
ツールを組み合わせかを決める
という手順で、
施策立案を進めるべきである
ということです。
「メディア・ニュートラル」
という言葉を最近よく聞きますが、
媒体ありき、あるいはツールありき
でマーケティング施策を考えてしまうと、
ターゲット特性やマーケティング目的との
適合性が低く、失敗する可能性が高くなります。
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[マーケティングROI(Return On Investment)]
マーケティングにおける
投下コスト(Investment)に対して、
どれだけの収益(Return)が得られたか、
定量的に示すことの重要性も、
ますます高まってきましたね。
この点もまた、
ネット革命(デジタル革命)の進展によって、
販売データだけでなく、消費者のWebサイト
アクセスデータなど、ROI分析に必要なデータが
容易に得られるようになってきたことが背景に
あります。
「ROI」とは、ひとことで言えば、
マーケティングコスト
の妥当性を検証するものです。
ただし、経営全体としては、
財務的な最終結果である売上や利益に
どれだけ貢献しているかが最も重要とは言え、
マーケティング活動は売上に直結したもの
ばかりではありません。
例えば、新商品発売の場合、
まずは、商品名や商品の特徴を認知・理解
していただくという段階をクリアしなければ
次に進めません。
ですから、当初のマーケティング活動では、
消費者の認知を高めるための広告施策が
当然中心になってくるわけです。
しかし、残念ながら、認知さえ上がれば、
即販売につながるような楽な商品は現在、
ほとんどありません。
このため、広告活動と販売=売上との関係性、
言い換えると広告の販売貢献度をダイレクトに
示すのはなかなか難しいのです。
ここにマーケティングROIの課題があります。
実は、この課題を乗り越えるために
上述した「パーチェスファネル」が再び
重要になってくるのです。
マーケティングROIはあくまで、
売上・利益に対するマーケティング活動の
「費用対効果」を示す最終ゴールです。
ですから、ROIを算出したところで、
マーケティング活動をどのように変えれば
ROIが改善できるのかはわかりません。
そこで、そのゴールに到達するまでの
中間指標として設定し、測定すべきものが、
KPI(Key Performance Indicators)
になります。
このKPIは、
パーチェス・ファネルの各段階において、
定量的に把握すべき消費者行動そのものであり、
数値的な目標設定箇所ともなります。
したがって、パーチェス・ファネルに沿った
KPIを設定し、定期的に測定することで、
マーケティング活動の精緻なコントロールが
可能になるというわけです。
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『メディアマーケティング進化論』
(岸本義之著、PHP研究所)
本書の構成(「部」レベル)
第1部:進化の最前線
第2部:生態系レベルの変化
第3部:マーケティングROI
第4部:広告メディア業界の統合と進化
第5部:インタラクティブ・マーケティング戦略
投稿者 松尾 順 : 2010年01月26日 13:17
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