階数偽装って・・・
最近、夕刊を読む人は、
ずいぶん減ったみたいですが。
でも、朝刊よりも力が抜けた記事が多くて
コネタ探しに役立つのが夕刊だと思います。
例えば、日経夕刊のコラム
「ところ変われば・・・」
は、海外のちょっと変わった風習や出来事を
紹介する、毎回「へぇーそうなんだ」の記事です。
先日のコラムでは、
香港のマンションでは
「階数偽装」
が当然のように行われている
ということが紹介されていました。
日本でもそうですが、
マンションは高層であればあるほど
格が上というか、イメージが良い。
高い値付けが可能ですし、
住居者も転売時に高く売れるわけです。
そこで、縁起の悪い4のつく階数を省いたり、
本来1階なのに大胆に5階から始めたりして、
階数を水増しするんですね。
実際、昨年秋に完成した88階建ての
高層マンションは、実質49階建てとのこと。
2倍近い水増しですが、
どう偽装すればこんなに増やせるのか
不思議です。
現地に行って確かめてみたい・・・
投稿者 松尾 順 : 09:13 | コメント (0) | トラックバック
『マーケティング・メトリクス』
『マーケティング・メトリクス』
は、マーケティング活動を
‘定量的’
に、すなわち、‘数字’で
評価・検証するために有効な
様々な指標(●●率みたいなもの)
を解説した本です。
いわゆる
「財務諸表データ」
(損益計算書、貸借対照表など)
を使った経営分析の本は、
多数出版されていますよね。
本書は、こうした経営分析の
「マーケティング活動特化版」
といった内容になるかと思います。
マーケティング活動は、
収益を得るためのメイン業務ですから、
当然ながら、その最終成果となる収益に
関わる指標が必要です。
例えば、次のような指標です。
・事業資産営業利益率
・粗利益率
・売上販管費率
ただし、経営分析では主に、
ミクロな企業活動
にフォーカスするのに対し、
マーケティングメトリクスでは、
対象市場の規模やシェア
といった、マクロ・社外的要素も
分析対象に含めます。
具体的には、以下のような指標も
算出し、活用することになります。
・市場成長率
・市場集中度
・市場シェア
本書の著者、田村氏は、
“メトリクスとは数量化された
判断指標のことである”
と説明されていますが、
「判断指標」
というのは、
重要な意味を含んだ良い表現ですね。
というのも、メトリクスは、
・対象市場を決めたり、
・商品のポートフォリオを考えたり、
・広告出稿先メディアを絞り込む
といった判断のために役立つ
客観的な数値として使えるからです。
(客観的であるが故に社内説得もしやすいわけで)
また、田村氏は、
“どのようなメトリクスを使えるかによって、
マーケターの能力は大きく変る”
と書いています。
マーケティング活動は、
きわめて複雑で多様な形を
取って展開されています。
したがって、
マーケティング活動全体を
常時把握することは困難です。
ネット(デジタル)革命以降、
その複雑さ、多様さは増大しました。
ですから、
マーケティング担当者がやるべきことは、
マーケティング活動の良し悪しを
判断するために使える指標(→「KPI」)は
何かを見極め、その指標を活用することです。
ここで、どんな指標を活用できるかによって、
コントロールできるマーケティング活動も
決まってきますから、まさにマーケターの能力
にも直結するというわけです。
本書は、財務諸表や経営分析の知識が
若干ないと難しい内容も含んでいますが、
マーケティング担当者としては、
ぜひ繰り返し読み、「知識」としてではなく、
「使える」レベル
を目指して欲しいと思います。
『マーケティング・メトリクス』
(田村正紀著、日本経済新聞出版社)
本書の構成(「章」レベル)
序章:マーケティング・メトリクスがなぜ必要なのか
1章:魅力的な対象市場を選ぶ
2章:市場シェアを確保する
3章:売上の収益性を高める
4章:顧客創造で売上を積み上げる
5章:バリュー顧客を狙う
6章:ブランド化で競争力を持続させる
7章:広告で市場普及を加速する
8章:強い販路を構築する
9章:営業力を強化する
終章:組織型ダッシュボード
投稿者 松尾 順 : 11:08 | コメント (0) | トラックバック
『メディアマーケティング進化論』
ブーズ・アンド・カンパニーのコンサルタント、
岸本義之氏の著作、
『メディアマーケティング進化論』
は、ビジネス・ブレークスルー757chで
放送された番組内容が元になっています。
タイトルには、
‘メディア’
と言う言葉が含まれていますが、
メディアにとどまらず、
マーケティング領域に生息する関係者、
すなわち、
・消費者
・広告主マーケター
・メディア企業
・広告代理店
など、生態系全体を俯瞰しながら、
大きな変化を示している
昨今のマーケティング進化の基本方向が、
手際よくまとめられています。
具体的なノウハウを解説したものではないため、
即効性を期待してはいけません。
様々な場所に生息するマーケターが、
「生き残りのためにはどんな変化に適応し、
自分を進化させていくべきか?」
についてのヒントを得るために有用な本です。
本書を読んで、
私が特に気になったポイントを
2点お伝えしておきます。
-------------------------------------------
[パーチェス・ファネル]
これは、端的には
「消費者行動モデル」
のこと。
すなわち、消費者(ターゲット)が、
ある商品を認知して購入するまで、
また、その先にある利用や口コミに
至るまでにどのような段階を踏むのか、
を概念化したものです。
古くは‘AIDMA’や‘AMTUL’などがあり、
最近なら、電通が提唱した
‘AISAS’
などがよく知られた
消費者行動モデルでしょう。
本書によれば、
ブース・アンド・カンパニーは、
以下のようなパーチェスファネル
を提唱しています。
-----------------------------
Awareness(認知)
↓
Consideration(考慮)
↓
Trial(試行)
↓
Occasional(一過性)
Regular(定期的)
Penetration(固定的)
なお、最後の3つ、
Occasional、Regular、Penetration
のことを
「Conversion/Retention(顧客維持)」
と総称。
*正確なモデル表現は同書をご覧ください。
-------------------------------
ネット革命(デジタル革命)以降、
消費者行動が詳細に把握できるように
なったこともあり、現代のマーケターは、
自社商品が購入され、利用され、あるいは
口コミされるまでの一連のプロセスである、
「パーチェス・ファネル」
をまず明確に把握・理解した上で、
マーケティング施策を立案する必要性が
ますます高まっています。
すなわち、
・消費者行動のどの部分に着目し、
そこをどのように変化させるのかを決め、
・そしてその変化を起こすためにどんな
コンセプトやアイディアが有効か考え、
・さらに、上記のコンセプトやアイディアを
最も有効に展開するためにはどんなメディア、
ツールを組み合わせかを決める
という手順で、
施策立案を進めるべきである
ということです。
「メディア・ニュートラル」
という言葉を最近よく聞きますが、
媒体ありき、あるいはツールありき
でマーケティング施策を考えてしまうと、
ターゲット特性やマーケティング目的との
適合性が低く、失敗する可能性が高くなります。
-------------------------------------------
[マーケティングROI(Return On Investment)]
マーケティングにおける
投下コスト(Investment)に対して、
どれだけの収益(Return)が得られたか、
定量的に示すことの重要性も、
ますます高まってきましたね。
この点もまた、
ネット革命(デジタル革命)の進展によって、
販売データだけでなく、消費者のWebサイト
アクセスデータなど、ROI分析に必要なデータが
容易に得られるようになってきたことが背景に
あります。
「ROI」とは、ひとことで言えば、
マーケティングコスト
の妥当性を検証するものです。
ただし、経営全体としては、
財務的な最終結果である売上や利益に
どれだけ貢献しているかが最も重要とは言え、
マーケティング活動は売上に直結したもの
ばかりではありません。
例えば、新商品発売の場合、
まずは、商品名や商品の特徴を認知・理解
していただくという段階をクリアしなければ
次に進めません。
ですから、当初のマーケティング活動では、
消費者の認知を高めるための広告施策が
当然中心になってくるわけです。
しかし、残念ながら、認知さえ上がれば、
即販売につながるような楽な商品は現在、
ほとんどありません。
このため、広告活動と販売=売上との関係性、
言い換えると広告の販売貢献度をダイレクトに
示すのはなかなか難しいのです。
ここにマーケティングROIの課題があります。
実は、この課題を乗り越えるために
上述した「パーチェスファネル」が再び
重要になってくるのです。
マーケティングROIはあくまで、
売上・利益に対するマーケティング活動の
「費用対効果」を示す最終ゴールです。
ですから、ROIを算出したところで、
マーケティング活動をどのように変えれば
ROIが改善できるのかはわかりません。
そこで、そのゴールに到達するまでの
中間指標として設定し、測定すべきものが、
KPI(Key Performance Indicators)
になります。
このKPIは、
パーチェス・ファネルの各段階において、
定量的に把握すべき消費者行動そのものであり、
数値的な目標設定箇所ともなります。
したがって、パーチェス・ファネルに沿った
KPIを設定し、定期的に測定することで、
マーケティング活動の精緻なコントロールが
可能になるというわけです。
-------------------------------------------
『メディアマーケティング進化論』
(岸本義之著、PHP研究所)
本書の構成(「部」レベル)
第1部:進化の最前線
第2部:生態系レベルの変化
第3部:マーケティングROI
第4部:広告メディア業界の統合と進化
第5部:インタラクティブ・マーケティング戦略
投稿者 松尾 順 : 13:17 | コメント (0) | トラックバック
期待の新進男性ジャズボーカリスト!牧野竜太郎
先日赤坂で、
若手ジャズボーカリスト、
牧野竜太郎さんのライブを
聴きました。
日本では数少ない、
男性ジャズボーカル。
比較的有名なのは、
小林桂さんくらいですかね。
小林桂さんは、
ちょっと線が細いものの、
柔らかい歌声が魅力ですね。
牧野さんは太い声質、
伸びやかで、かつ膨らみのある
歌声がGOOD!でした。
オリジナルを聞くと、
ソウル、ゴスペルっぽい雰囲気も
感じられますが、実際、米国留学時代
にブラックミュージックの影響受けてる
そうです。
まだ30歳の牧野さん。
熟成してくればさらに魅力的な歌声
になるんじゃないでしょうか。
これからがますます楽しみなので、
勝手ながら、応援したいと思います。
*牧野竜太郎 Official Web Site
http://www.jazz-r.com/
*ファーストアルバム『RM』
これも良かった!
*『Stand by me』(鎌倉ダフネ 2009年大晦日 カウントダウンパーティ)
投稿者 松尾 順 : 00:23 | コメント (0) | トラックバック
「ニューハイボール」の秘密
ウイスキーが
見直されるきっかけとなった、
「ハイボール」
が飲める居酒屋やバー、
このところどんどん増えてますね。
実は、「ハイボール」は従来、
ウイスキー「1」に対して、
ソーダ(炭酸水)「2.5」の割合で
ミックスしていたそうです。
しかし、ウイスキーを
飲み慣れない層にとっては、
従来の比率ではちょっと濃いし、
アルコールも高すぎる。
そこで、サントリーでは、
昨年秋から比率を
ウイスキー:1、ソーダ:4
と、かなり「薄め」に作ることを
飲み屋に推奨したようです。
おかげで、
口当たりがよくて飲みやすく、
また酔いにくいということで
ハイボールを注文する人が増えた。
ハイボールは、
広告宣伝もうまく行きましたけど、
実は、現場でも知られざる工夫が
あったというわけです。
ハイボールを薄めに作ることは、
使用するウイスキーが少なくて済むわけ
ですから、利益率も改善します。
飲み屋としては、
願ったり叶ったりの
「ニューハイボール」
なのですね。
投稿者 松尾 順 : 09:32 | コメント (0) | トラックバック
様々なビジネスに活用されるアンカリング効果
前回、アンカリング効果の力を踏まえると、
売り手側が、価格交渉を有利に進めたければ、
「ふっかけた方が得」
ということをお話しました。
では、買い手側が、
売り手のこうした策略を避けるためには
どうしたらいいでしょうか?
最初に相手が提示してきた金額が、
とんでもないものだったら、
具体交渉に入らず、いったん席を立って
時間を置き、改めて再交渉を行うのが正解。
なぜなら、ありえない金額だと
わかっていても、提示された金額に
影響を受けてしまうのです。
なんとか調整しようと交渉を始めたら、
その瞬間から、アンカリング効果の罠に
落ちることになります。
だから、ふっかけられたら、
まず席を蹴って数字をリセットし、
再交渉の機会を持つべきなのです。
さて、アンカリング効果は、
ビジネスのあらゆる場面でまさに
‘効果的に’使われています。
たとえば、寿司屋のメニュー、
にぎり寿司(セット)の価格は
たいてい
「松」「竹」「梅」
の3種類ですね。
価格設定としては、
松・・・2800円
竹・・・2100円
梅・・・1500円
といったところでしょうか。
お客さんの懐の具合もあるでしょうけど、
多くの場合、「竹」が選ばれます。
おそらく、
この選択プロセスの背景には
こんな心理が働いているのです。
↓
「梅」だと、なんだか
安さだけで選んだみたいで、
ちょっと恥ずかしい。
でも、「松」は高いなあ。
それに比べると「竹」は
安いから「竹」のにぎりにするか。
つまり、「松」が基準点(アンカー)
となって、実はそれほど安くもない
「竹」
が安く見えてしまうというわけです。
様々な物販店でも、
客層からみてめったに売れそうもない
値段高めの高級品
を陳列することで、
店舗の格を上げると同時に、
他の本当に売りたい商品を
相対的に安く見せるという手法が
採用されています。
いわゆる
「見せ筋」
ってやつですね。
また、これは倫理的にどうかなと
思いますが、新築の住宅を売り出す際、
最初に短期間だけ、あえて高い価格を
設定して売り出し、顧客の反応を
見ながら徐々に下げていくという
住宅販売を採用するところがあります。
例えば、立地や物件内容的には、
明らかに割高な1億円といった価格で
売り出すのです。
ここでは、1億円が基準点となり、
値下げした場合には、
「3千万円値下げして7千万円で販売」
などとチラシで訴求できます。
すると、お客さんは、
本来、当物件の妥当な価格はいくらか
という判断をする以前に、
元値より3割も安くなってお得だなという
印象を受け、購買意欲が刺激されます。
当初の1億円で売れることはないにしても、
売り手としては、利益の大きい価格で
売れる可能性が高くなるというわけです。
米国の不動産王、ドナルド・トランプは
以前、次のような告白をしたことがあるそうです。
“部下がやってきて、(建築見積)価格は、
7500万ドルになりそうですという。
そこで客には、「1億2500万ドルかかりますよ」
と言っておいて、結局は1億ドルで建ててやる
わけです。
要するにずるいことをやってきたわけです。
でも相手は、いい仕事をしてくれたと思っている。”
アンカリング効果とは、要するに
比較可能な「基準点」を示すことで、
相対的な「差」が際立って見える効果です。
ですから、価格以外にも使えます。
例えば、自分が痩せてるように
見せたければ、自分より太めの友人と
歩くとか(笑)
ただ、アンカリング効果は、
価格において最も顕著に見られることが、
行動経済学では判明しているので、
買い手側はほんと要注意です。
また、商売(売り手)としては、
倫理的な問題をクリアしつつ、
うまく活用したいところです。
(参考文献)
『プライスレス 必ず得する行動経済学の法則』
(ウィリアム・バウンドストーン著、松浦俊輔、小野木明恵訳、青土社)
『経済は感情で動く』
(マッテオ・モッテルリーニ著、泉典子訳、紀伊國屋書店)
『予想どおりに不合理』
(ダン・アリエリー著、熊谷淳子訳、早川書房)
投稿者 松尾 順 : 12:36 | コメント (0) | トラックバック
「ふっかけた方が得」のアンカリング効果
近年注目を集めている
「行動経済学」
は、人間が必ずしも‘合理的’に判断したり、
行動したりできるわけではないことを
実験等を通じて検証してきました。
既に「行動経済学」についての書籍が
何冊も出版されていますのでご存知の方も
多いと思いますが、
「人間の意思決定や行動」
に関する様々な「効果」や「法則」が
発見されています。
さて、こうした効果の中で、
最もビジネス、というか商売に
活用されてきたのが
「アンカリング効果」
です。
これは、最初にある数字を示されると、
無意識にそれが基準(アンカー)となってしまい、
その後の判断が影響を受けてしまうというものです。
よく引用される実験としては、
以下のような質問に答えてもらうものが
あります。
---------------------------------------------
a)国連にアフリカ諸国が占める割合は、
65%よりも高いか、それとも低いか?
*「65」の数字はルーレットを回して出たもの。
協力者によっては「10」になるように細工されていた。
b)国連にアフリカ諸国が占める割合は何パーセントか?
----------------------------------------------
a)の質問文には、
65%
という数字が含まれています。
これは、ルーレットを回して出ただけの、
なんら根拠のない数字です。
実験に協力した回答者も、
そのことがわかっています。
それにも関わらず、
ルーレットが「10」=10%となった場合に
アフリカ諸国の国連に占める割合を
推測した結果は、
平均25%
でした。
一方、ルーレットが「65」=65%で
あった場合には、
平均45%
という回答になったのです。
つまり、根拠があろうがなかろうが、
最初に示された数字が無意識に基準と
なってしまい、回答が影響を受けて
しまうわけです。
なお、数字を示さない
(つまりアンカリング効果のない)
b)の質問に対する答えは、
平均45%
でした。
(正解:国連に占めるアフリカ諸国の割合:23%)
興味深いのは、
最初に示される数字が
突拍子もないもの
であったとしても、
影響力を発揮するという点です。
例えば次のような質問。
・サンフランシスコの平均気温は、
「摂氏292度」よりも高いか低いか。
サンフランシスコの平均気温は何度くらいか?
摂氏292度なんて、
ありえない平均気温ですよね。
もちろん、
この質問を見せられた実験協力者も、
実際のサンフランシスコの平均気温が、
3桁(100度以上)になるはずはなく、
2桁の数字を推測しました。
それでもやはり、このありえない数字を
示された人の方が、そうでない人よりも
高い平均気温を回答したのだそうです。
アンカリング効果は、
これほどまでに人の判断を左右する力を
持っているわけです。
そして、商売人たちは、
行動経済学で検証されるずっと以前から、
アンカリング効果の存在を経験を通じて
わかっており、
プライシング(価格設定)や価格交渉
において活用してきています。
端的に言えば、
アンカリング効果を考慮するなら、
売り手側が価格交渉を有利に進めたければ、
「ふっかけた方が得」
ということなのです。
外国の個人商店では、
しばしば値札がなく商店主との
価格交渉で購入金額を決めますよね。
この時、よほど善良な人でないかぎり、
商店主が最初に提示する売値は、
あきらかに「ふっかけ」の高過ぎる値段です。
なぜなら、その数字が基準となって、
利益幅の大きい高値で取引が決着する
可能性が高くなるからです。
ですから、買い手の立場からは、
よほど注意して商談しないとバカをみる
かもしれないということでもあります。
今、個人商店を例に挙げましたが、
国際間の企業対企業の大型の商談でも、
同様のふっかけがしばしばみられます。
日本人はある意味正直すぎるため、
不利な価格で契約に至るケースが多い
ようですね。
信頼関係が既にできている相手は
別として、価格交渉では、
最初に提示された数字は、
相当疑ってかかるべきでしょう。
このアンカリング効果、
ほかにも様々な場面で応用されています。
明日も引き続き、アンカリング効果を
活用している具体ケースご紹介します。
(参考文献)
『プライスレス 必ず得する行動経済学の法則』
(ウィリアム・バウンドストーン著、松浦俊輔、小野木明恵訳、青土社)
『経済は感情で動く』
(マッテオ・モッテルリーニ著、泉典子訳、紀伊國屋書店)
『予想どおりに不合理』
(ダン・アリエリー著、熊谷淳子訳、早川書房)
投稿者 松尾 順 : 16:02 | コメント (0) | トラックバック
3D映画はすごい。
この年末年始、
近場で済む手頃なレジャーとして
映画館に足を運ぶ人が増えたようですね。
しかも、通常版ではなく、
「3D(3次元)版」
を選択する人が多く、
シネコンのTOHOシネマズでは、
興行収入が43%の大幅増だそうで!
(日経MJ、2010/01/06)
3D作品は、
大きな立体視用メガネを
かけなければなりませんし、
長時間、ずっと3Dを観続けるのは
結構疲れます。
でも、画面が飛び出してくるのは
迫力満点。とても新鮮な体験です。
初めての人はみんな、
「すごい、すごい」
と口に出して驚いてますね。
まだ3Dを体験されていない方は、
ぜひ一度トライしてみてください!
投稿者 松尾 順 : 10:13 | コメント (0) | トラックバック
『イマジン』大合唱
日刊メールマガジン『JMM』(2010年1月2日号)
において、冷泉彰彦氏が執筆されている
『from 911/USAレポート』(第439回)
によると、ニューイヤーのカウントダウンに
たくさんの人々が集まることで知られる
ニューヨーク・タイムススクエアでは、
ジョンレノンの
『Imagine』
の大合唱が起きたそうです。
ご存知かと思いますが、
『Imagine』の歌詞をひとことで言うなら、
「世界は元々一つだよ」
というものですよね。
従来の米国の風潮的には、
『Imagine』
が唄われることは、
とても考えられなかったこと。
オバマ政権への移行によって、
米国にも新しい風が吹き始めたこと
もあるでしょうけど、同時に
「大いなる地球意識の覚醒」
が広がりつつある兆候とも
言えるんじゃないでしょうか?
(ちょっとオオゲサかな・・・)
投稿者 松尾 順 : 14:59 | コメント (0) | トラックバック
リサーチとプロモーションを連動させたコミュニティ活用事例
今日は、昨年末に開催された
『AvecDAY20009 WINTER オープンハウスセミナー』
(株式会社エイベック研究所主催)
において報告された、
ユーザーコミュニティ(企業運営CGM)活用事例
を簡単にご紹介しますね。
「進研ゼミ」でご存知の
株式会社ベネッセコーポレーション
では、
「任天堂DS」
に中学生を対象とした、
教科書対応の学習コンテンツを
組み込んだ新商品、
『得点力学習DS』(以下「学習DS」)
の導入に当たって、
体験モニターを募集しました。
08年1月の初版第一弾のための
初期フェーズにおけるモニター数
は100名強でした。
応募してきたモニターには、
エイベックが提供するインターネットの
コミュニティシステムに登録してもらい、
継続的なリサーチを行う仕組みを構築。
結果として、
次のような成果を上げています。
------------------------------------------
・発売以前には収集困難な利用者のナマの声、
すなわち、「利用体験記」を数百件収集できた。
(初期フェーズでは約240件)
・また、モニター自らが語る同商品の
「推薦文(リコメンド)」も初期フェーズで
60件ほど集まった。
・モニターを対象とするリアルなグループインタビューの
の実施に当たっても、1週間程度で簡単に協力者を
集めることができた。
・上記の体験記やリコメンドをダイレクトメールを
始めとする各種広告・販促施策に組み込むことで、
説得力の高い効果的なコミュニケーションを展開できた。
・モニターの利用実態から『学習DS』を利用することによって、
従来の紙の添削教材の利用促進にもつながることが判明した。
・上記の事実のおかげで、『学習DS』導入によって従来商品が
喰われるのではないかというベネッセ社内の不安を払拭できた。
・『学習DS』を子どもだけでなく、
親も利用してみることで、『学習DS』を通じた
親子の対話が増えるといった予想外の効果も発見できた。
・体験記を書いてくれたモニターには、
調査期間終了後、同商品の買い取りを奨めたところ、
約7割の方が購入してくれ、コミュニティ運用費用に
充当することができた。
--------------------------------------------
企業が運営するユーザーコミュニティ(CGM)は、
多くの場合、「費用対効果」が見えにくいため、
新たなコミュニティ構築とその継続は容易ではありません。
しかし、上記ベネッセの事例のように、
対象商品や目的を絞り込み、運営期間も限定した上で
ユーザーコミュニティを展開するのであれば、
費用対効果も示しやすく、比較的導入しやすいかと思います。
また、販売促進における、
「口コミ効果」
の高さはいまさら申し上げる必要はないと思いますが、
能動的に「口コミ」を創出するためのコミュニティ活用として、
この事例はおおいに参考になるのではないでしょうか。
*エイベック研究所
http://www.aveclab.com/
*株式会社ベネッセコーポレーション
『得点力学習DS』
http://ds.benesse.ne.jp/
投稿者 松尾 順 : 11:18 | コメント (0) | トラックバック
既存客への投資
「釣った魚にはエサをやらない」
すなわち、購入してくれるまでは、
熱心に見込み客にアプローチするけれど、
顧客になったとたん見向きもしなくなり、
新たな見込み客のハンティングに執心する。
これは、いまだ多くの企業における
営業・マーケティング活動の実態でしょう。
もちろん、近年は、
CRM(Customer Relationship Management)
の思想や、CRMを実行可能にする
顧客統合データベースなどのITシステム
の浸透によって、
「釣った魚にも十分にエサを与える」
こと、つまり、既存客との関係性を
深めることで安定した収益につなげている
企業も増えてきてはいますが。
留意すべきなのは、
「顧客第一主義」
といったスローガンを掲げて、
どんなに強くCRMの重要性を社内に訴え、
また、最新型のCRMシステムを導入しようと、
営業やサービス部門など、顧客接点の最前線
にいる人たちの実際の行動が変わらなければ
成果にはつながらないということです。
では、どうやって最前線の人たちの
実際の行動を変えたらいいのでしょうか?
一番効果的なのは、
評価体系を変更することですね。
例えば、資生堂の場合では、
美容部員の販売ノルマをなくし、
「顧客満足度」
を核とした評価体系に変更しています。
これによって、
製品をガンガン売ることではなく、
お客様に満足していただけるような
接客サービスに自然と力が入るよう
になります。
もちろん、接客サービスの向上が、
結果的に販売にもつながるという
ロジックですが。
中古車買い取り事業の
ガリバーインターナショナル
でも、09年4月頃から、
興味深い評価体系を導入しています。
(日経情報ストラテジー、FEBRUARY 2010)
同社では、
「SP-PRO=スマートカーライフプランナープロ」
という営業担当職を新設しました。
彼らは、毎月20件くらいまでは
来店客(新規客)の対応ができます。
しかし、それ以外は、
過去の取引客からの紹介を通じて
商談しなければならないということに
なっています。
ただし、紹介を通じた販売については、
来店した新規客に対する販売の2倍の評価を
与えるのだそうです。
たとえば、紹介で10台販売したら、
新規販売20台分の販売実績と同等とみなし、
給料にも反映されます。
ですから、SP-PROの人たちは、
これから取引するお客様に対して、
「売ること」ではなく、むしろ喜んで
いただくこと、信頼を得ることに尽力する
でしょうし、既存客との関係性を深めるため、
フォローサービスにも身が入るようになると
いうわけです。
同社代表取締役会長、羽場兼市氏も
認めていますが、この仕組みは、
「非効率」
なやりかたではあります。
(あくまで短期的には)
なぜなら、一つの商談に十分な時間を
かけるようになるでしょうし、目先の売上げ
にはなりにくいフォローサービスに、より多く
の時間を割くことになるからです。
しかし、この仕組みの狙いは、
“5年、10年先にはSP-PROの力が
大きく発揮されているだろうと思います” (羽鳥氏)
ということなのです。
すなわち、長期的なリターンを狙う
「既存客への投資」
を行っているのが、
SP-PROだと言えます。
実は、いわゆる
CRMに成功している企業の共通点は
「既存客への投資」
に踏み切り、
その成果が顕在化してくるまでの
およそ5-10年の間、
目先の業績向上
を我慢した点にあります。
既存客への投資は、
当初は販売実績の停滞や利益率の低下
にどうしてもつながりやすい。
したがって、目先の効率を犠牲にしても、
顧客サービスに力を入れる企業体制の
構築を主導できるのは経営トップだけです。
ガリバーの例、また資生堂の例も同様ですが、
CRMへの成功には、経営トップの強い意志が、
不可欠だということを痛感せざるをえません。
投稿者 松尾 順 : 11:24 | コメント (2) | トラックバック
「こだわり」の発信
長引く現在の景気低迷期においても、
着実に成長を果たしている企業に
共通点はあるのか?
あるとしたらそれは何なのか?
お正月、私は改めて
この素朴な疑問を考えてみました。
共通点は確かにあると思います。
抽象的なレベルではありますが、
成長企業の共通点として挙げられるのは、
その企業ならではの
「明確なこだわり」
があることです。
端的にいってしまえば、
・ビジョン
が極めてクリアに定義されている
ということです。
ただし、掲げるビジョンは、
「1兆円企業になる」
といった利己的なものだけで終わらず、
「社会や人々にとっての幸せ」
のために当該企業がどのように
貢献できるかを示していることがポイント。
(そもそも、数値的な目標は「ビジョン」
とは言えません)
そして、このビジョンを本気で
実現するために、とことんこだわっています。
そこで、成長企業を率いる経営者は、
自社のビジョンを単なるお題目に終わらせないため、
社外・社内に向けて繰り返し語り続けます。
つまり、自社が掲げるビジョンの実現に
コミットしていることを積極的に発信することで、
そうせざるをえない状況にあえて追い込んでいます。
例えば、私たち消費者は、
ユニクロ、無印良品、サイゼリヤ、オーケーストア
といった、
こだわりの発信に積極的な企業のビジョンを
頭(理性)で、あるいは肌感覚で理解していますよね。
また、彼らのビジョンに共感し、
一定の信頼を彼らに持っていますよね。
だからこそ、数ある競合製品の中から、
彼らの製品・サービスが優先的に選ばれるわけです。
逆に、こだわりがない(見えない)企業、
要するに、
・流行に乗っているだけ
・他社を真似しているだけ
・消費者にこびているだけ
の企業は、まぐれで成功することはあっても、
継続的な成長はありません。
なぜなら、こだわりがないので、
そもそも社内外に向けた発信ができませんし、
消費者の共感や信頼
が醸成されないからです。
企業としてはもちろん、
・トレンド・流行
・競合の動き
・消費者ニーズ
を常々把握することは不可欠ではありますが、
それ以前に、時代や消費者に左右されない
ぶれない軸=こだわり
が企業の存在基盤としてあり、
また、それを社内外に積極的に
発信し続けることが成長の必要条件なのです。