寄付マーケティング
通信販売各社が、
「寄付付き商品」
に力を入れ始めています。
日経MJ(2009/10/26)の記事によれば、
通販大手「ディノス」は11月1日、
全商品に寄付をつけたカタログを発行予定です。
50代女性向けをメインターゲットにした
同カタログには、衣料品から化粧品、
アクセサリーまで約160点の多様な商品が
掲載されます。
ディノスでは、
同カタログ掲載の1商品が売れるごとに、
小児マヒのワクチン1人分相当の金額を
NPO法人「世界の子どもにワクチンを 日本委員会」
に寄付するとのこと。
また、食品通販の「オイシックス」では、
今年9月、売上げの10%をアフリカの貧困救済活動に
寄付するお菓子の販売を開始しています。
このお菓子の売上げは好調で、
10月中旬には商品の種類を増やしています。
オイシックスでは、上記企画の以外に
08年7月から約30点の食料品を対象に
売上の3%を寄付する企画を展開してきており、
これまで約4万点を販売。
同社によれば、
「同じ価格なら、寄付付きの商品のほうが
4倍以上売れている」
とのことです。
(同じく日経MJ、2009/10/26)
最近ご紹介した、
『幸福の方程式 新しい消費のカタチを探る』
(山田昌弘+電通チームハピネス著、
ディスカバートゥエンティワン)
『「ワタシが主役」が消費を動かす』
(日野佳恵子著、ダイヤモンド社)
といった文献では、
・社会とつながっていたい
・社会に対してなんらかの貢献をしたい
という消費者意識の高まりを背景として、
社会貢献に結びつく消費行動が顕著になってきていると
強調されていました。
通販各社もこうした消費行動の変化への対応に
積極的に対応しようとしているわけです。
もちろん、通販業界に限らず、
あらゆる業界の企業が、社会貢献に関連した
様々な企画を展開しつつありますね。
さて、商品購入に付随したオファー、
あるいは、蓄積したポイントの交換対象などに
「寄付」
を提示する施策をとりあえず、
「寄付マーケティング」
と呼んでみたいと思います。
それで、この寄付マーケティングの
「効果」
についてですが、
大きくは以下の2点があると言えます。
1 販売促進効果
オイシックスの例でわかるように、
消費者の購買意欲を後押しすることができる
2 ブランディング効果
社会貢献意識の高い企業であるという
好ましいブランドイメージ形成に役立つ
従来、商品購入に付随するオファーとしては、
消費者になんらかの景品を直接提供する
「クローズド懸賞」
が主流でしたが、今どき、
オマケ的な安物の景品をもらっても、
たいしてうれしくありません。
しかも、ブランディング効果は、
ほとんどないでしょう。
ですから今後は、
奇をてらったクローズド懸賞よりも、
販売促進とブランディングの一石二鳥が
期待できる
「社会貢献に関連したオファー」
がますます増えていくのではないでしょうか?
もちろん、
「寄付」
を販売促進のための小手先の手段として、
安易に採用するのは止めるべきでしょう。
そもそも、企業活動全体との
整合性や一貫性
に留意する必要があります。
社員に対して、
「ブラック企業」
などと言われてしまうような劣悪な
処遇をしている企業が、偉そうに
「寄付マーケティング」
に取り組んでも、消費者は、
その企業の浅はかさを
すぐに感じ取ることでしょう。
また、早速始めたはいいが、
・さほどの効果がなかったから
・あるいは企業収益が低下してきたから
といった理由であっさり止めてしまうと、
かえって消費者の不信を買い、
ブランドイメージの低下
につながること必至でしょうね。
(参考文献)
『幸福の方程式 新しい消費のカタチを探る』
(山田昌弘+電通チームハピネス著、
ディスカバー・トゥエンティワン)
『「ワタシが主役」が消費を動かす-
お客様の“成功”をイメージできますか?』
(日野佳恵子著、ダイヤモンド社)
『ソーシャル消費の時代 2015年のビジネス・パラダイム』
(上條典夫著、講談社)
投稿者 松尾 順 : 2009年10月27日 14:51
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コメント
突然のコメントで失礼します!
寄付つき商品の手法は、
「コーズ・リレイテッド・マーケティング」
略してコーズマーケティングと呼ばれています。
これに関する記事としては、
以下の竹井さんの記事が参考になりますね。
http://globalgoodnews.way-nifty.com/blog/2009/08/post-1146.html
日経MJは購読していないので、
今回ご紹介いただいた記事は全く知りませんでした。
ご紹介ありがとうございます!
投稿者 小堤 : 2009年10月29日 23:35
小堤さま、コメントありあがとうございました。
「寄付マーケティング」は、「コーズ・リレーテッド・マーケティング」の手法の一つと位置づけられるでしょうね。
「コーズ・リレーテッド・マーケティング」については、
社会貢献が消費者に「いいことをした感」を与えることから、
「フィールグッド・マーケティング」
と呼ぶこともできるかなあと思い、こんな記事も以前書いています。
フィールグッド・マーケティング>http://www.mindreading.jp/blog/archives/200904/2009-04-13T1247.html
投稿者 松尾順 : 2009年10月30日 08:47
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