包括的進化論 - GET( General Evolution Theory) - 後編
ダーウィンが提唱した「進化論」では当初、
自然淘汰を通じて、生命の種の進化は段階的に起こる、
つまり‘少しずつ’変化していくと考えられていました。
このことについて、ダーウィンは、
植物学者のリンネに倣って、
“自然は跳躍しない”
と断言しています。
しかし、研究が進むにつれ、
「進化は跳躍的である」
という説の方が有力となってきています。
既存の種は存続している間、
ほとんど変化(=進化)しないのです。
そして、外部環境の変化に伴い、
それまで優勢だった既存の種が適応困難となり、
絶滅の危機へと追いやられます。
一方、周辺部で偶然に出現した新種や亜種が、
新しい環境で優勢となっていくのです。
こうして、既存種から新種・亜種へと
「進化の跳躍」
が起こるというわけです。
では、社会全体の進化について考えてみましょう。
社会の場合も、生命と同様、
次のような進化のプロセスが観察されるのです。
中心部に居座り、優勢な大多数を占める
「変化しない人間」
が大きな環境変化に直面して不安定な状況になります。
(しかしなかなか変わろうとはしない)
一方で、周辺部に孤立させられていた
「少数の人間」(おそらく奇人・変人と呼ばれた人たち)
が、環境変化に乗じて多数派に挑戦し、
中心部へと侵入して、ついに多数派を追い出して
しまうのです。
これは企業の栄枯盛衰をイメージすると
わかりやすいでしょうね。
以前、日経ビジネスが、
「会社の寿命30年説」
を提唱しましたが、実際、ひとつの企業が
その時々の環境変化に柔軟に対応し、
段階的な進化を長期的に続けるケースは、
あまり多くありません。
ほとんどの場合、既存の企業は滅び、
新しい時代に適応可能な新興企業が取って
代わります。
アーヴィン・ラズロ氏は、
社会の変化もこのように跳躍的であり、
稀にしか起こらないこと、
そして、進化を引き起こす
「きっかけ」(誘引)
としては、大きくは以下の3種類がある
と述べています。
*新しい種の誕生をもたらすという意味で
「分岐」という言葉をラズロ氏は用いています。
1 T分岐
新しい技術の登場によって、
既存の社会が不安定となります。
そして、新しい技術を積極的に導入した
人間たちが形成した新しい社会が古い社会
を呑み込んでしまうものです。
いわゆる産業革命が典型的なもの。
20世紀末から始まったデジタル・インターネット革命
もまた、私たちの社会を根底から作り変えつつあります。
2 C分岐
様々な紛争によって誘引された進化。
いわゆる政治的な革命です。
国際的な戦争や内戦が伴う場合もあります。
「革命」は、
「旧体制」
を不安定化させた脅威や難問に対応できるような、
制度、行動、価値観を作り出すという機能を
担っているようだ、とラズロ氏は指摘しています。
3 E分岐
経済危機や社会危機によって誘引される進化。
まさに今、私たちが経験している経済危機も
そのひとつかもしれません。
しかし、目先の「経済危機」以上に深刻であり、
適切な「社会の進化」(さらに言えば「精神の進化」)
が求められる誘引があります。
それが
「地球環境問題」
です。
地球は、ひとつの生命体であり、
自己調節機能を持っているという考え方があります。
これは「ガイア理論」と呼ばれるもので、
地球の環境(空気の組成や気温など)を
生命に適した一定のレベルに維持する力
を地球全体として持っているというものです。
ところが、人間は、社会の進化の過程において、
まるで、地球は人間の占有物であるかのように扱った結果、
地球が持っていた自己調整機能を破壊しつつあります。
その悲観的な末路はもちろん人類滅亡ですね・・・
私たちは、自らがもたらしたものですが、
人類史上最大の危機といえるE分岐上にいます。
周辺部にいた地球環境保護を重視する人たちが
中心部へと勢力を拡げ、利己的な利益を重視し、
むやみな経済発展を推進してきた多数派の人々を
蹴散らしつつある。
私たちは、E分岐による跳躍的な社会進化を
今体験し、また目撃しているのだと言えるのかもしれません!
(参考書籍)
『進化の総合真理』
(アーヴィン・ラズロ著、吉田三知世訳、バベル・プレス)
『ガイアの復讐』
(ジェームズ・ラブロック著、竹村健一訳、中央公論新社)
投稿者 松尾 順 : 2009年07月24日 13:35
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