ブルーオーシャン戦略の要諦
このところ注目を集めている新しい経営戦略、
「ブルーオーシャン戦略」
はどんなものか、ご存知ですか?
関連書籍を読んでみたけど、
けっこう難しくて、あまり理解できた気がしない
という人もいらっしゃるでしょう。
そこで、ブルーオーシャン戦略(以下「BO戦略」とします)
についての理解を深める上で役に立ちそうなポイントを
私なりにまとめて、ご紹介したいと思います。
なお、参考にしたのは、末尾に示した参考図書2冊と、
池上重輔氏(早稲田大学大学院商学研究科 准教授)
の夕学五十講での講演内容です。
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(1)BO戦略は、「戦略理論」である。
BO戦略は、30を超える業界で過去20年の間で見られた
150以上の戦略の打ち手を調査・研究した中から抽出された
「新たな市場創造ための基本的な成功パターン」
です。すなわち、「抽象化された理論」であり、
決して「必勝」を約束するものではありません。
しかし、この成功パターンを自分の業界・業種に適用し、
再現する確率を高めることを可能にする各種ツールが
用意されています。
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(2)BO戦略は、「市場創造戦略」である。
私たちがこれまでなじんできた戦略は、
マイケル・ポーターが確立した「競争戦略」です。
競争戦略は、既存の市場の中で、
他社と同じ競争の軸で戦うための理論ですね。
競争戦略の枠組みでは、
企業は血みどろの戦いを続けるため、
ブルーオーシャンと対比して、
「レッドオーシャン」
呼んでいます。
一方、BO戦略では、新たに市場の線を引き直し、
競争のない市場を創造することを狙います。
競争戦略の理論は既に確立されていますし、
ツールは既に豊富に存在していますよね。
しかし、市場創造のための戦略理論やツールは
ほとんど存在していませんでした。
しかし、BO戦略は、経営史上初めて、
市場創造のための明快な理論とツール群を
提供しているといえるものです。
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(3)BO戦略では、価値向上とコストダウンの両立を実現する
BO戦略では、競合他社が提供していない、
独自の価値を生み出そうとします。つまり、
新たな付加価値創造を狙うのです。
これは、競争戦略の枠組みで言う「差別化戦略」と同じです。
しかし、差別化戦略では、価値を高めることによって、
必然的にコストが上昇するため、販売価格が上昇することを
前提としています。
したがって、「高くてもいいものを買う」と考える限定された
顧客が対象となります。場合によっては、「ニッチ戦略」と
呼ばれることもあるでしょう。
ところが、BO戦略では、付加価値を生み出すと同時に、
なくてもいい価値、よけいな価値を除去したり、
減らしたりする取り組みを行うのです。
こうすることによって、顧客に取っての価値を上げつつ、
トータルでのコストダウンを実現していく。
BO戦略で、これを「バリューイノベーション」と呼んでいます。
バリューイノベーションは、
基本的に、競争戦略ではありえない考え方です。
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(4)BO戦略は、マス(広大な需要)を狙う
BO戦略では、新たな付加価値を生み出すことによって、
それまで逃していた新しい顧客を獲得しようとします。
つまり、市場の線を引き直すというのは、
これまでターゲットとしていなかった層(ノンカスタマー)
を狙うということなんですね。
ただ、前述したように、
並行してコストダウンを図ることで、
新規顧客の多くが魅力的と感じる価格を設定します。
留意して欲しいのは、
最安値を提示するわけではない点です。
他社にはない新しい価値を示しつつ、
最大限に利益を確保できる適切な価格設定を行う。
これにより、売上げ拡大と同時に、
利益率向上も実現できるというわけです。
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(5)BO戦略は、「共通点」(コモナリティ)に着目する
BO戦略では、マスを狙うため、
「セグメンテーション」(市場分割)
という考え方をしません。
新規顧客の多くが共通して抱える問題やニーズを
敏感に嗅ぎ取って、それらを解決・充足できるものを
新たな付加価値として提示するのがBO戦略です。
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(6)BO戦略は、「オルタナティブ」を考慮する
BO戦略においても、
もちろん競合の存在を意識します。
ただし、直接に競合する「代替品」(サブスティチュート)
ではなく、「オルタナティブ」(他の選択肢)を考慮します。
例えば、「レストラン」の代替品(直接競合)は
他の飲食店ということになります。
しかし、単に食欲を充たすのではなく、
「楽しい時間を過ごす」という目的であるなら、
映画館や演劇も競合しますね。
これらが「オルタナティブ」です。
オルタナティブは、形態も機能も違うけれど、
顧客の目的(=充足したいニーズ)は同じというものです。
オルタナティブを考慮することによって、
既存の市場の枠組みにとらわれない発想が可能になります。
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BO戦略のポイントは他にもいろいろとありますが、
だいたい以上のことで基本はおさえられるのではないか
と思います。
さて、結果的に、つまり後付け的に分析してですが、
ブルーオーシャン戦略で成功した事例として、
最もわかりやすいのは、任天堂のゲーム機「Wii」でしょう。
「Wii」は、従来のゲーム機がマニア層をターゲットとして
どんどん高品質化、高機能化、高価格化をしていったのに対し、
ゲームをしなくなった社会人、ファミリー層、またそもそも
ゲームをしないシニア層にも受け入れられる、わかりやすさ、
簡単さ、楽しさを提供する一方、スペック的にはあえて
低品質化することによって手頃な値段を実現しましたよね。
また、ビジネスホテルの「スーパーホテル」も
まさにブルーオーシャン戦略の成功例と言えるでしょう。
広々としたベッドと6種類から選べる枕で、
従来にない快適な寝心地や、無料セルフの朝食、
天然温泉といった付加価値をビジネスパーソンに
提供する一方、自動チェックインの仕組みを始め、
客室電話を廃止するなどによって大幅なコストダウン
を実現。1泊5千円弱の手頃な価格設定を可能にしています。
最後に、池上先生による、
BO戦略の簡潔な定義をご紹介しておきましょう。
「ブルーオーシャン戦略」は、“広大な需要”を
主体的かつシスティマチックに創造する戦略理論
*参考図書
『ブルーオーシャン戦略 競争のない世界を創造する』
(W・チャン・キム、レネ・モボルニュ著、有賀裕子訳、
ランダムハウス講談社)
『日本のブルー・オーシャン戦略 10年続く優位性を築く』
(安部義彦、池上重輔著、ファーストプレス)
*関連記事
・意外!Wiiの真のライバルは○○だった!
(All About よくわかるマーケティング)
・スーパーホテル 顧客満足の秘密 「選択と集中」編
(Kanamori Marketing Office)
投稿者 松尾 順 : 2009年05月19日 14:40
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コメント
マイケル・ポーターは誤解されている。
彼は「共創戦略の本質は競争しないことだ!」と言っているし、ポジショニングだけでなく、本質はオペレーションにあるとも言っているが、全員がそれを無視しています。
投稿者 コイデ : 2011年02月24日 06:43
コイデさん、毎度!
マイケル・ポーター、そんなこと言ってたんですね。
私も読み込みが足りなかったなあ・・・
投稿者 松尾順 : 2011年02月24日 09:06
人のことは言えないのであって、
私もご本人の講演を聴くまで誤解しておりました。
でも、『ストーリーとしての競争戦略』先生さえも
(もしかしてわざとかもかもしれませんが)
ポーター説に誤解がありましたから。
お忙しい松尾さんでしたら、
『戦略の本質』
ハーバードビジネスレビュー 1997.Feb.-Mar.
"What is Strategy?"
Harvard Business Review 1996.Nov.-Dec.
が短く、かつエッセンスが詰まっていると思います。
Marketinglishでもつかえるのでは、と思います。
投稿者 コイデ : 2011年02月25日 23:29
ポーター教授は気になっていました。
まだまだ勉強中ですが、難しいことを分かりやすく理解できるツールはないものでしょうか?
投稿者 貴重な意見ですね : 2011年06月19日 09:14
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