マグロ船のゲーム理論

マグロ船は、一度出航すると40日位、
一度も港に立ち寄ることなく漁を続けます。

その間、マグロを求めて漁場を移動し続けるのですね。


このマグロ船で一番偉いのは、船のオーナーである

「親方」

です。親方は、マグロのいそうな海域を予想します。

そして、親方が予想した海域に船を動かすのが

「船長」

の役割だそうです。


さて、親方は、マグロのいそうな海域を
どのようにして予想するのでしょうか?

近くの船と無線による情報交換を
通じて行うのです。

つまり、
+

「お互いの船ではどのくらいマグロが
 取れているか」

ということをお互いに教えあうわけです。


詳細はよくわかりませんが、おそらく、
それぞれの船が漁を行っている場所での
マグロの取れ具合から、マグロの群れの大きさや
移動する方向を読むのでしょうね。


マグロ船は、このように
お互いに助け合って漁をしているのですが、
強欲な親方になると、他の船にウソの情報を
流すことがあるそうです。

こうして、
マグロが取れる漁場を独り占めするのです。

仲間に対する裏切り行為ですよね。


最初は儲かるかもしれません。

しかし、これを繰り返していると、
他の船からの信用を失い、
有効な情報がもらえなくなるため、
長期的には売上が低迷することになるそうです。


一方、正直にマグロ情報を共有しあうマグロ船は、
結果的に同じ海域で共に漁をすることになるため、
1隻あたりの水揚げは減ることになります。

しかし、マグロが全く取れないというリスクを
減らすことができるため、情報共有をしない船よりは
売上げがよい傾向があるとのこと。


ご存知の方も多いと思いますが、
ゲーム理論の枠組みで紹介される有名な戦略に

「しっぺ返し戦略」

と呼ばれるものがあります。


これは、相手が協調してきたら、
こちらも協調する。

逆に、相手が対立(裏切り)してきたら、
こちらも同様に対立する

という戦略です。

この戦略を採用するのが、
最も「利得」が多くなることが、
コンピュータ・シミュレーションの結果から
実証されているのです。


マグロ船同士の情報共有は、この

「しっぺ返し戦略」

が現実においても有効な戦略であったことを
わかりやすく説明できる面白いケースではないか
と思います。


以上、マグロ船の話は、

『会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ』
(齊藤正明著、マイコミ新書)

を参考にしました。

本書は、齊藤氏のマグロ船乗船記ですが、
読み物として面白いだけでなく、
ビジネス、キャリアについての学びも大きい内容です。

一読をオススメします。


『会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ』
(齊藤正明著、マイコミ新書)

投稿者 松尾 順 : 2009年03月30日 11:23

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