ホンネが読める?ニューロマーケティング(1)

先日、ある社会人向けの研究会からの依頼で、
最近ますます関心が高まっている

「脳(神経)科学」

の「マーケティングへの応用」の最新動向について
お話をする機会がありました。


これまで私は、

心理学の視点からマーケティングを考える

といった内容で過去2回ほど
別の会などで講演をやらせてもらっています。


最後にお話したのは3年ほど前でした。
当時はいわゆる

「ニューロマーケティング」(脳科学のマーケティング応用)

はまったくと言っていいほど注目されておらず、
私もご紹介するネタがほとんどありませんでした・・・


しかし現在は、特に経済学分野やマーケティング分野に
おける人間行動・心理研究に

「脳科学的なアプローチ」

が積極的に取り入れられ、
たくさんの研究事例が生まれていますね。


さて、脳科学的アプローチというのは、端的には

「fMRI」(機能的磁気共鳴画像法)

のような数億円する測定装置を使って直接、

「脳の中の反応」

を把握することです。


このアプローチのメリットは、
くだいて言えば、

「人のホンネが正確に読める」
(現状では、その可能性を秘めている)

ということになります。


従来の心理学的アプローチでは、

・人がなぜその商品を購入したのか(購入しないのか)?
・人はなぜその商品が好きなのか(嫌いなのか)?

といった行動の背景にある理由や態度(気持ち)を
知るためには、

アンケート、インタビュー

などの調査手法によって本人から‘言葉で’
聴いていました。


しかし、この方法には限界があるんですよね。


ひとつは、実験・調査協力者が、
正直に本当のことを言っているという確証が
もてなかったこと。

立ち入った内容(セックス経験だとか・・・)だと、
いくら心理学の研究とはいっても、なかなか本当のことは
しゃべりにくいですよね。


もうひとつは、そもそも私たちは、
自分の行動の理由を常に深く考えず、

半自動的、無意識的

に生活しているため、理由を聴かれると
その場に応じたもっともらしい説明をしてしまう
という点です。

これは、ゴマかしたり、ウソをついているわけでは
ないだけに最初の限界よりもタチが悪い。


例えば、仮の話ですが、
夕方、スーパーに買い物にいって、
夕食用に

「カレールー」

を購入した主婦がいたとします。


彼女に、今晩の料理をカレーにした理由を聞くと、

「店頭でたまたま目についたから」

といった答えが返ってきました。

もちろん、それもひとつの理由でしょう。


しかし、実は昼間テレビで見たカレーの
コマーシャルが引き金になっていたのです。

ただ、夕方の時点では、
彼女はそのコマーシャルを見たことを
すっかり忘れてしまっているので、

「店頭で目に付いたから」

という理由しか出てこない・・・。

だとすると、この回答を鵜呑みにするのは、
リスクが高いですよね。


様々なメディアを通じて届けられる

マーケティングメッセージ

は、たとえ消費者が意識的に覚えていなくても

「潜在意識」

に着実に刷り込まれ、自分でも気づかないうちに
特定の商品を購入するという行動に結びついている
可能性があります。

こうした「潜在意識」の働きについては、
過去の心理学のさまざまな実験において検証されて
きたことでした。


しかし、近年台頭著しい「脳科学的アプローチ」では、
人から言葉で聴くことが難しい無意識の行動や心理を
「fMRI」等を用することによって正確なデータとして把握し、
実証することができる

様々な分野の研究者が、
脳科学に注目するのも当然というわけですね。


では次回は、ニューロマーケティングにおける
最新の研究事例をいくつかご紹介しますね。

投稿者 松尾 順 : 2009年02月02日 16:05

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