恐山とイタコ

青森県恐山院代の

南直哉(じきさい)さん

から聞いた話です。


青森県・恐山にある「恐山菩提寺」(恐山院)は、
永平寺と同じ曹洞宗のお寺。つまり禅寺ですね。

恐山と言えば、死者の霊を呼び寄せる(口寄せ)

「イタコ」

が有名です。

南和尚の話で初めて知ったんですが、
お寺と恐山にはなんの関係もないんですね。

イタコさんは普段は自宅で

口寄せ

をやっているそうです。

ただ、「恐山祭」など、
たくさんの参拝客、観光客が
恐山に押し寄せる時期は、
いわば

「出張営業」

の形でイタコさんが
恐山にやってくる。

お寺としては、
歴史的経緯も踏まえて

彼らの存在を拒まない

というだけのことだそうです。

お寺とイタコさんの間に、
雇用関係や契約関係などは
一切ないのです。

ただ、私も含め一般人は
この真実を知りませんよね・・・

だから、恐山が開山する5月になると、
お寺にたくさんの電話がかかってくるそうです。

「あのお、イタコさんは今いますか?」
「イタコさんの予約できますか?」
「口寄せの料金はいくらですか?」

お寺としてはいい迷惑でしょう。


また、テレビ局などからも、
イタコに絡んだ番組企画の話が
しばしば持ち込まれるそうです。

お寺としては、

・イタコ関係
・幽霊関係

企画案件は一切お断りとのこと。

ただ、いちおう企画内容を
聞いてみることもあるそうです。

以前、東京のキー局の若い男性(たぶんAD)
からかかってきた電話の内容は、
次のようなものでした。

「あのお、イタコさんに織田信長を
 呼んでもらうことはできますか?」

「恐山で信長の霊を呼んで、
 その前で芸人にネタやらせて信長を
 笑わせるという企画なんですが・・・」

投稿者 松尾 順 : 09:50 | コメント (2) | トラックバック

アシュリー療法

村上龍氏運営の

「JMM(Japan Mail Media)」

の記事で知ったんですが、

「アシュリー療法」

というのがあるんですね。


これは、身体や精神に重度の障害を持って
生まれてきた子どもに対し、小さいうちに
女性ホルモンを投与するなどして、
強制的に成長を止めてしまうもの。

実際にこの療法を用いた子どもの名前が、

‘アシュリー’

だったので「アシュリー療法」と
名づけられています。


成長しない治療?が施されたアシュリーの場合、
年を重ねるにつれ身長が伸び、体重が増したために、
大きな車椅子になって自由に動き回れなくなったり、
親の介護負担が重くなることもありません。

ですから、アシュリー療法を用いれば、
重度障害を持つ人と家族の

「生活の質(Quality of life)」

が高まるとされています。


治癒する見込のない障害を持つ子どもの面倒を
ずっと見続けなければならない家庭にとって、
「アシュリー療法」は、やむをえない選択
でしょうけど。


さすがにそこまでやっていいのかという、
印象がありますよね・・・

投稿者 松尾 順 : 11:08 | コメント (0) | トラックバック

「ナショナルFF式石油暖房機を探しています」の季節

今年も、

「ナショナルFF式石油暖房機を探しています」

の季節がやってきました。


このチラシが新聞などに入ると、

「ああ、そろそろ冬も本格的だな、年末だなあ・・・」

と思います。


同製品の回収は2005年から始まってますから、
今年で5年目。

ナショナルさんとしては、
最後の1台まで回収する決意でしたよね。

となると、チラシ配布は、
今後もずっと続けられるんでしょうね。


以前も書きましたが、
莫大なコストをかけているこのチラシ、
単に不祥事の後始末ということだけでは
終わりません。


企業としての社会的責任をしっかり
取るという企業姿勢が伝わるので、
優れた企業広告の役割も果たしています。

すなわち、消費者の共感を得て
ブランドイメージ向上にプラスになる

「コミュニケーション広告」

に図らずもなっているというわけです。

投稿者 松尾 順 : 16:39 | コメント (0) | トラックバック

コカ・コーラのブランドマーケティング(1)共感を得る広告

「コカ・コーラ」

という商品名を知らないという日本人は、
赤ん坊を除いてはまずいないですよね。

世界規模でみても、
コカ・コーラの「認知率」は実質100%でしょう。


それにも関わらず、
毎年莫大なコストをかけて広告を展開しています。

なぜなんでしょうか?


もちろん、この理由を端的に言えば、
商品はただ知られている(認知)だけで
売れるわけではないから・・・ですね。

商品の特徴を理解してもらい、
好ましいイメージを形成し、好意を高め、
購買意欲を刺激し続ける努力を続けないと、
すぐに飽きられ、競合商品にシェアを
奪われてしまうからです。


ただし、コカ・コーラについては、
名前だけでなく、どんな色や味をしているのか、
などについて誰でもよく知ってます。

つまり、商品の特徴も
十分に理解されているロングセラー。


ですから単に

「こんな製品ですから、もっと買って!」

という「理解」や「説得」を目的とする

「プロモーション広告」
(「広告リレーション理論」に基づけば)

は、もはやあまり機能しません。


むしろ、時代のトレンドや
その時々の消費者の気分を的確に読み取り、

「共感」

を得られる広告、すなわち

「コミュニケーション広告」

を展開することが有効です。


実際、コカ・コーラでは、
上記のような

「コミュニケーション広告」

を主体としたマーケティング活動が
行われてきています。

そして、コカ・コーラの
マーケティングの基軸となる考え方が、

『こころを動かすマーケティング
 コカ・コーラのブランド価値はこうしてつくられる』
(魚谷雅彦著、ダイヤモンド社)

で解説されています。


魚谷氏によれば、
ブランドの価値は次の2つに分けられます。

----------------------------

(1)intrinsic value

基本的な価値。
機能やスペックの価値のこと

(2)extrinsic value

1に付帯的に加わる価値。
エモーション、情緒や感性の価値

----------------------------

そして、魚谷氏は、

マーケティングにはこの両方が必要

だと考えています。

理屈だけではなかなか共感は生まれない。

「心に届くコミュニケーションをしなければ!」

という意識がきわめて強いのが、
コカ・コーラなのだそうです。


コカ・コーラは、

「intrinsic value」(基本的価値)

については100年以上変わっていません。

しかし、

「extrinsic value」(付帯的情緒的価値)

は時代に合わせて大きく変えてきたのです。


魚谷氏は次のように書いています。

“ココア・コーラは、その時代時代に応じて
 メッセージを変え、常に共感を獲得してきました。”

“自分自身の気持ちと呼応し、自分自身に訴えかけてくれる、
 自分をサポートしてくれていると思えるような関連性を、
 数年おきに、時代のあり方に合わせて変えてきたのです。”


ロングセラーを生み出す秘訣、
それは、商品自体を変えることではなく、
ターゲットに届ける

「メッセージ」

を時代に合わせて変えていくことなんですね。


*関連記事
『広告の役割再考「広告リレーション理論」』


『こころを動かすマーケティング
 コカ・コーラのブランド価値はこうしてつくられる』
(魚谷雅彦著、ダイヤモンド社)

投稿者 松尾 順 : 09:39 | コメント (0) | トラックバック

コカ・コーラのブランドマーケティング(0)

今年読んだマーケティング本のうち、
一番面白く、かつたくさんの学びが得られたもの、
それは、

『こころを動かすマーケティング
 コカ・コーラのブランド価値はこうしてつくられる』

(魚谷雅彦著、ダイヤモンド社)

です。


著者の魚谷氏については、
ご存知の方も多いと思いますが、
ライオン、クラフトジャパンを経て
日本コカ・コーラ(株)に入社。

当時はまだそれほどの人気ではなかった
タレントの飯島直子を起用して、
社会現象となるほどの人気を集めた
ジョージアの

「男のやすらぎキャンペーン」

などを主導したのが魚谷氏です。

2001年には、日本人としては26年振りとなる
同社代表取締役社長に就任しています。
(現在は、同社会長)


さて、冒頭の本では、
魚谷氏がコカ・コーラで手がけた、
様々なマーケティングコミュニケーション
の現場の様子が生々しく描かれています。

しかも、単なるケーススタディではなく、
コカ・コーラのマーケティングの基軸と
なっているブランドの考え方や基本方針に
ついても詳しく説明されています。

ですから、マーケティングの教科書と
しても大変役に立ちますよ。


実は、私は広告会社時代、
ジョージアのキャンペーンに関わった
時期があります。

本書を読んで、コカ・コーラ社内部で当時、
担当の方々がどのような考えでキャンペーンを
発想・企画し、業務を遂行していったのかを
知ることができ、感慨深いものがありました。


とういうわけで、しばらくは
この本の内容から興味を引いた話を
拾いながら記事を書いていきたいと思います。


本日は前フリということで・・・!


『こころを動かすマーケティング
 コカ・コーラのブランド価値はこうしてつくられる』
(魚谷雅彦著、ダイヤモンド社)

投稿者 松尾 順 : 12:59 | コメント (0) | トラックバック