ゴリラの「ドラミング」とリーダーシップ

先日、ゴリラを中心とする霊長類の研究を
30年以上続けてこられた

山極寿一氏(京都大学大学院理学研究科 教授)

の講演を聴く機会がありました。


山極氏のお話の中で特に面白いと感じたのが、
ゴリラが自分の胸を両こぶしでドコドコと叩くゼスチャー、
すなわち、

「ドラミング」

の本当の意味です。


ゴリラの「ドラミング」と聞いて、
私たちが思い浮かべる典型的なイメージは、
群れの縄張りに侵入してきた外敵に向かって、
リーダーゴリラが立ち上がり、
胸を打ち鳴らしている姿でしょう。

この姿はまるで、

「オレが相手になる。かかってこい!」

と争いを挑発しているように見えますよね。

実際、昔はそのように考えられていたため、
ゴリラは凶暴な動物としてみなされ、
ハンターたちの「野獣狩り」の対象となったのでした。


しかし、ゴリラの生態についての研究が進んだ結果、
ドラミングの本当の意味は違っていたのです。

外敵に対するリーダーゴリラのドラミングは、
そのような危機的状況において自分という

「リーダー」

の存在を示すことが目的。

つまり、

「さっさと立ち去れ!」

といった威嚇に過ぎず、積極的に「争い」を
しかけているのではないことがわかっています。


荒々しい外見に似つかず、
ゴリラはできるだけ争いを避ける平和的な動物
なのです。

というのも、興奮してドラミングしている
リーダーゴリラには群れの別のゴリラが近寄り、
体を軽くポンポンとたたいたりして、
なだめる仲裁役が現れるのです。

「まあまあ、落ち着いて・・・」

人間ならそういう言葉をかけているところでしょうか。


群れを率いるリーダーとしては、
厳しい局面では、率先して矢面に立つことが必要です。

そうでなければ群れの仲間の信頼を失います。


しかし、無益な争いをあえてしたくはない。

かといって、自分から引くのはできないけれど、
タイミングよく仲裁役が現れることで丸く収まると
いうわけです。


ゴリラに限らず人間社会も同じですが、
危機的状況は、リーダーの真価、いいかえると

存在価値

が問われるときなのです。


実際、不祥事などのトラブル発生時に、
組織のリーダーが堂々と矢面に立てるかどうか、
そこを社員や世間は見ていますよね。


企業ではしばしば、社会を揺るがすような
大きな問題を起こしたにも関わらず、
広報担当や副社長などに記者会見を任せて、
社長本人は表に出てこないことがあります。

こうした社長に対して、私たちは直感的に

「なんと情けない」「リーダー失格」

という感想を抱くものですよね。


リーダーのあなた、
いざという時、立派にドラミングができますか?


*上記内容は以下の講演を元にしました。

慶応丸の内シティキャンパス 夕学五十講

「暴力はなぜ生まれてきたのか~人間性の起源~」
  山極寿一、京都大学大学院理学研究科教授

↓受講生レポート有り
http://www.sekigaku.net/intro/report.asp?ID=477

投稿者 松尾 順 : 14:05 | コメント (0) | トラックバック

『ナンパを科学する- ヒトのふたつの性戦略』

‘ミラーマン’こと、元大学教授、
植草一秀氏の痴漢行為に対する実刑が確定しましたね。

植草氏自身は、「えん罪」を主張してきましたが・・・


私は、以前から

「なぜ、人(主に男性ですが)は痴漢行為をするのか?」

という疑問で夜も眠れないことがあります。


ほとんどの男性は、

「異性(人によっては同性)に触れたい!」

という性的欲求に起因する思いを
しばしば持つでしょう。


しかし、公衆の場で知らない異性(同姓)の体を
許可も得ず、勝手にタッチするなんて、
良識に照らせばとてもできることではありません。

そんなこと、相手に対してとても失礼だし、
迷惑千万じゃないですか。

痴漢の被害を何度か受けたことのある友人(男性)が
いますが、電車の中などで、知らない手が伸びてきて
局部をまさぐられたりしたら、たとえ男性でも、
ぞっとする体験でしょうね。
(幸い、私は痴漢を受けたことはありません。)


また、痴漢はれっきとした「犯罪行為」であり、
刑罰はそれほど重くはないものの、逮捕されただけでも
家族がいじめを受けたり、勤務先をクビになるなど、
当人の人生に与える影響は極めて大きい。

ですから、大多数の男性は、
実際に痴漢を行うことはありません。

(私を含め!)


結局のところ、痴漢をやる人は、
ある種の病気に罹っているのではないかとも
言われているようですが、

「痴漢の心理」

について詳しい方がいらしたら、
ぜひ教えてください。


さて、痴漢の被害者になりやすい女性の視点で、

「痴漢やナンパを受けやすい女性には、
 何らかの共通した特徴があるのか?」

を研究テーマに取り上げたのが、

坂口菊恵氏(進化心理学者)

です。

渋谷路上などでの実験等を含む、坂口氏の研究の結果は、

『ナンパを科学する- ヒトのふたつの性戦略』
(坂口菊恵著、東京書籍)

に収録されています。


研究結果の中で興味深いのは、
ナンパや痴漢にあいやすい女性の特徴のひとつとして、

“動き方がスムーズではなく、ぎこちない”

という点が浮かび上がってきたことです。

これは、ひったくりなどの
路上強盗の被害にあいやすい人の特徴とも
ある程度共通しているようですが。


また、

“姿勢の悪い歩行者”

が痴漢の標的と見られやすく、
実際によく被害にあっているとのこと。


痴漢にあいやすい人は、

“服装や髪型がファッショナブル”

という点も、
被害者の共通する特徴のひとつとして
抽出されていますが、

「歩き方や姿勢」

が痴漢を誘発している可能性がある
というのは驚きの結果ですよね。


もうひとつ興味深い点は、
一般に、痴漢にあいやすい人として、
イメージされやすいのは

「内向的(神経症的)な女性」

つまり、

「おとなしそうな女性」

ですが、実際に痴漢にあうのは、
そうした人とは限らないことです。


坂口氏は前掲書の中で、研究の目的について、

“自分(女性)が性的な対象として見られる可能性が
 あることを認識させ、どのような状況がリスクを
 高めやすいのかについて客観的なデータを蓄積する
 ことが即効性のある対処法だと思われる”

と述べています。


坂口氏のこれまでの研究では、
まだ確固たる結論は得られてはいないようですが、
痴漢の被害をなるべく避けるための対処法として、
女性の方は、服装・ヘアスタイルだけでなく、
歩き方や姿勢にも留意されることをお勧めします!


おそらく、これは男性にも有効なんでしょうね。
くだんの友人男性にも教えてあげようかな・・・


『ナンパを科学する- ヒトのふたつの性戦略』
(坂口菊恵著、東京書籍)

投稿者 松尾 順 : 17:18 | コメント (2) | トラックバック

赤白ワイン混合は、‘ロゼ’ではない

今年は、「ロゼワイン」の人気が
盛り上がりつつあるようです。


赤、白に比べて存在感の薄いロゼ。

しかし、甘みを抑えたものが登場するなど、
ユーザーのニーズに応える製品を導入すれば、
市場規模が小さいだけに、逆に拡大余地は
たっぷりあると考えることが可能ですね。


さて先月、
白と赤のワインを単に混ぜただけのものを

「ロゼワイン」

として正式に認めるかどうかという議論が、
EUで続いていることを記事に書きましたが、
ようやく決着したそうです。
(日経MJ、2009/06/26)


結論は、

「混合しただけのものは、ロゼワインと認めない」

というもの。


既に市場では、
オーストラリアなどの競合国で生産された、

「混合ロゼ」

が安価で販売されており、
価格的には、ホンモノのロゼはかないません。


しかし、ここで混合するだけの安易な製法を認め、
競合国と同じ土俵に立ってしまったら、

「価格」

でしか競争できなくなります。

すると、利益率が低下するだけでなく、
モノづくりの喜びも失われてしまったことでしょう。


厳しい判断ではあったようですが、
今回のEUの結論は正しいと言えますよね。


*「ブレンドワイン」とでも呼んだらいかが?

投稿者 松尾 順 : 10:52 | コメント (0) | トラックバック

ブランディング成功事例・・・ライオンの『キレイキレイ』

新型インフルエンザで大騒ぎした今年の冬。

現在はいったん収まってますが、
秋以降、再び感染が広がる可能性があるため、
予断を許しません。


さて、家庭でできる、
インフルエンザ感染予防策のひとつが

「正しい手洗いの励行」

ですね。

おかげで石鹸やハンドソープなどの売上が
伸びたようですが、ハンドソープの

No.1ブランド

はなんだかご存知ですか。


それは、ライオンの

『キレイキレイ』

です。


『キレイキレイ』は、1997年に登場。

わずか3年後の2000年にトップシェア
(金額ベースでの市場シェアは、現在40%超)
を獲得し、以降も王座を堅持しています

売上高は、2007年に100億円を突破しています。
(ライオンのアニュアルレポート2007、2008より)


キレイキレイが登場するまでのハンドソープ
といえば、「薬用ミューズ」の独壇場でした。

ところが、キレイキレイがわずか数年で、
ハンドソープのトップシェアを奪い、
その地位を磐石なものにした背景には

・絶妙なネーミング
・物語(ストーリー)性

の2点があると言えそうです。


<絶妙なネーミング>

「キレイキレイ」というネーミングは、
帰宅後、お母さんが小さい子どもに、

「おてて、キレイキレイにしましょ!」

と話しかけるところから取ったもの。

ハンドソープのメインターゲットが、
小さい子どもを持つ主婦層であることを考えると、
実にわかりやすく、かつ親しみやすさを感じさせる
ネーミングでした。

なにしろ、しょっちゅう「キレイキレイ」と
自分で口にしている言葉ですからね。


<物語(ストーリー)性>

同製品は、発売当初から、
イラストレーター上田三根子氏が描く、

「キレイキレイファミリー」

すなわち

・キレイママ
・よしおくん
・よしこちゃん

の3人のキャラクターを軸とした、
パッケージデザインやコミュニケーション施策
が展開され、独自の世界観を生み出していました。


また、子どもたちが
自主的に手を洗ってくれるように、

「キレイキレイの絵本」
「キレイキレイ手洗いの歌」

などの啓蒙的なコンテンツを作成。

購入者である母親の好意や購入意欲を
高めることに成功したんですね。


ちなみに、パッケージデザインには
細かい工夫が凝らされているそうです。

(日経デザイン、July 2009)

同製品のハンドソープには、
液状タイプと泡タイプとの2種類があります。

汚れ落ちの強い液状タイプは、
外遊びの手洗いに向いているため、
ボトルに描かれたよしおくんは
野球のユニフォームを着ています。

一方、軽い汚れに向く泡タイプでは、
よしおくんはスリッパを履いており、
室内にいることを示しています。

また妹のよしこちゃんには、
ぬいぐるみを持たせていますが、
これは、ぬいぐるみで遊んだ後も、
手洗いが必要なことをさりげなく
伝えているのだそうです。


キレイキレイは、近年、

情緒価値(エモーショナルバリュー)

の付加にも力を入れています。


例えば、2008年には、

・マスカット
・チューリップ

の香りのハンドソープを限定販売。

また、2009年3、4月には、
泡タイプのハンドソープに、

「かわいい泡がつくれるキャップ」

を組み合わせた販売をスタートしています。


このキャップ、
ライオンの包装技術研究所が約10ヶ月を
かけた力作で、

・くまさん
・お花

の2種類の形状をした泡が出せるように
なっています。


香りをつけようが、
かわいらしい形をつけようが、
キレイキレイが本来持つ

殺菌、消毒

といったハンドソープの基本的価値には
変わりがありませんよね。

しかし、「楽しさ」「心地よさ」といった

情緒的価値

を付加することにより、
理屈を超えたところでの、新たな購入理由を
消費者に与えることができるため、競合対策上、
極めて有効な施策だと言えます。


こうしてパワーブランドに成長したキレイキレイは、
そのパワーを活かしてブランド拡張を図っていますね。

最新の製品ラインアップを眺めてみると、
「石鹸」や「ボディソープ」「消毒液」「うがい薬」
といった関連性の強いアイテムだけでなく、

・除菌&漂白(漂白剤)
・除菌スプレー
・生ゴミ消臭スプレー

などキッチンまわりの製品が増えていて驚きました。

家庭用品は、言うまでもなく

主婦

がターゲットですから、このブランド拡張も
大きな成果をもたらしているようです。


*参考文献・資料など

『日経デザイン(July 2009)』
特集:家族回帰が生む新市場をデザインで先取り!
Part 1 家族に届くコミュニケーション

・ライオン アニュアルレポート

*『キレイキレイ』ブランドサイト
http://kireikirei.lion.co.jp/

投稿者 松尾 順 : 13:50 | コメント (0) | トラックバック

電池交換スタンド

トヨタ・プリウス、ホンダ・インサイトといった
ハイブリッド車は、エコカー(環境対応車)と呼ばれ、
減税の対象となっていることもあって売れ行き好調ですね。


さて、この状況を渋い顔で見ているのは、
他の自動車メーカーだけではありません。

ガソリンスタンドのオーナーもまた、
先行きに対する不安を募らせているようです。

エコカーが増えれば、ガソリンの消費量が減って
商売上がったりですからね。


将来、ハイブリッドではなく、
純粋な「電気自動車」が主流になった時、
果たしてガソリンスタンドの生き残る道は
あるのでしょうか?

かなり絶望的かと思いきや、
生き残りの光明が見える新技術が、
最近日本に紹介されていますね。

米ベンチャー企業、「ベタープレイス」は、
電気自動車の電池をわずか1分で自動的に
交換できるシステムを開発しています。

(日経産業新聞、09/06/22)


電気自動車は、
家庭のコンセントからでも充電できるとはいえ、
時間がかかってけっこう面倒そう。

特に旅行中などは困りますね。

急速充電で、仮に「1時間」程度で充電完了
としても、その間ぼんやり待っているのはイヤです。


でも、充電するのではなく、
電池丸ごと1分くらいで交換できるのなら
ガソリンを入れる感覚と同じ。


まだかなり先のことでしょうけど、
街中のガソリンスタンドは、

「電池交換スタンド」

に生まれ変わるということになるでしょうか。

投稿者 松尾 順 : 14:56 | コメント (2) | トラックバック

費用対効果が見える広告

新聞・雑誌などに掲載されている、
健康食品や化粧品、自動車保険などの広告にはたいてい、

・無料サンプル(試供品)1万名様プレゼント
・もれなく詳しい資料をご提供

といったオファーと共に、

‘0120’‘0800’

などから始まるフリーダイヤル番号(着信課金サービス電話)や、
WebサイトのURLが大きく記載されていますね。


このような広告は

「レスポンス広告」

と呼ばれています。
(「ダイレクト・レスポンス広告」とも言う)


レスポンス広告は、当該広告を見た人から、

なんらかの反応(レスポンス)

を取ることを最大の目的としている広告です。

究極的な反応は、当該商品の「購入」になりますが、
広告を見てすぐに購入に踏み切るにはハードルの高い
商品の場合には、前述したように、まず無料サンプルや
詳細資料の請求といった反応を得ることを目的に置くこと
が多いです。


レスポンス広告としては、
冒頭のようなマスメディアを使ったものに加えて、
以下のようなメディア・ツールも含まれます。

・折込チラシ/ポスティング
・ルートメディア(セグメントされたターゲット層が
 集まる先[ゴルフ場、書店など]でのツールやサンプル配布)
・ダイレクト(e)メール
・インターネット(Webサイト、メールマガジンなど)


なお、広告目的の違いから見て、
レスポンス広告と対極にあるものが、

「イメージ広告」

です。


イメージ広告は、「ブランド広告」、あるいは
「純粋広告(純広)」、「一般広告」などとも
呼ばれますが、その目的は文字通り、商品の

「ブランドイメージ」

を形成することです。

つまり、広告を見た人からのダイレクトな反応を
得ることではなく、商品の認知や理解、関心、好意
を得るために打つのがイメージ広告ですね。


さて、今月(09年6月27日)に発刊される下記書籍は、
レスポンス広告についての本です。

『費用対効果が見える広告 レスポンス広告のすべて』
(後藤一喜著、翔泳社)


著者の後藤氏よりいち早く献本いただいたので、
さっそく私も読んでみました。

同書は、レスポンス広告を通じて、
より多くの反応を得るための方法論を語ったもの。


後藤氏は同書の中で、
レスポンス広告の「3つの極意」を披露しています。
(同書、145-146ページ)

-------------------------------------------

[極意1]集客

欲望に火を点ける広告、思わず通行人を
立ち止まらせる広告であること! 

最初に言葉あり。自分は無関係と思い、
そのまま通り過ぎようとしているただの通行人の
心の中に眠っている欲望をわしづかみにし、
思わず立ち止まらせるような“つかみOK!”の
強いキャッチコピーを、広告の“頭”の部分に
配置すること


[極意2]説得

行動阻害要因を排除・解決する広告であること!

“買う理由”、商品の品質や価格の妥当性、
効果・後納を伝えるだけでなく、広告の力だけで、
行動を抑制しようとするターゲットの意識、
ターゲットが抱えている疑問や課題を解決し、
行動へと促す広告。

情報量や表現方法、レイアウトにも工夫を凝らし、
パッと見、斜め読み、精読と三回の接触に値し、
また堪えられる広告であること。


[極意3]レレバンシー(適切性、妥当性、関連性)

ターゲット・インサイトに根ざした納得・共感を呼ぶ
広告であること!

ターゲットの興味関心、価値観に適合した
(ターゲット・インサイトに根ざした)、心の琴線に
触れる“レレバンシー”の高い広告。

集客のポイントや説得のポイントだけでなく、
情報の伝え方や演出においても適切であり、全体としての
バランスのとれた共感や納得を引き出す広告であること


----------------------------------------------

これら3つの極意をメインに、
豊富な具体例を元にした詳細でわかりやすい説明が
なされています。


後藤氏は、私がダイレクトマーケティング
専門広告会社に在籍していた時の先輩にあたります。

彼は、当時から、前職の「カタログハウス」での
カタログ制作を通じて学んだ、優れたレスポンス広告
制作力に定評がありました。


今回の著作は、後藤氏が蓄積してきた知識、経験、
ノウハウを惜しげもなく注ぎ込んだ力作となっており、
掛け値無しですばらしい内容だと思います。

広告を通じて、
より多くの顧客をダイレクトに獲得するノウハウを
知りたい方はぜひ読んでみてください!


『費用対効果が見える広告 レスポンス広告のすべて』
(後藤一喜著、翔泳社)

投稿者 松尾 順 : 11:38 | コメント (0) | トラックバック

アサヒビールの「目利き調査」

アサヒビールでは近年、
ビール系の新製品を出す際に、

「目利き調査」

を必ずやることになっているそうです。


「目利き調査」の協力者である一般消費者は、
新製品の「プレスリリースの内容」を見ただけで、

当該製品が売れるかどうか

を高い精度で判断できる人たち。


アサヒビールでは、こうした、いわゆる

「目利き」

の人たちをオンラインで組織化し、
新製品の早期の需要予測に活用しています。


例えば、「クリアアサヒ」は、
目利き調査の結果によれば、高い確度で、
ヒットすることが予測されていたそうです。


さて、当調査の、
実際の調査内容は以下の通りです。

--------------------------------

[発売前調査]

・当該商品が売れるかどうかの判断をしてもらう
・当該商品の評価ポイントや印象を聞く(自由回答)

[発売後調査]

・発売後の商品評価を同一人物に再度行ってもらう

---------------------------------

アサヒビールの委託を受けて、
目利き調査の研究を担当したのは、
慶応大学商学部教授、清水聰(あきら)氏。


清水氏によれば、
従来の新製品の需要予測調査には、
次のような問題がありました。

・発売後13-26週間の実売データからわかる

 「トライアル率・リピート率」

 に基づく予測精度は高いが、コンビニなどでは
 売れ行きが良くないと4週間ほどで撤去されて
 しまうため、発売早期での予測はできない。
 (13週間以上も店頭に置かれている時点で既に
  ヒット商品である・・・) 

・そもそもどんな人が買っているのか、
 またなぜ買っているのかがわからない。


しかし、目利き調査の場合、
プレスリリースの段階で新製品の売れ行きを
予測することができます。

目利きの人たちが「売れる」と判断した商品が、
発売後どの程度売れたかを検証した結果を見ると、

相関係数:0.91

という商品もあり、予測精度は極めて高いそうです。


したがって、発売初期における生産過剰や、
逆に品不足による機会損失のリスクを低下させる
ことが可能です。

また、競合他社の新製品の売れ行き予測だけでなく、
その商品のターゲット層や評価のポイントなども
把握できるため、競合対策を踏まえた自社新商品の
改良やコミュニケーション施策の修正にも十分間に
合う可能性があるのです。


ところで、目利きな人たちは、
商品カテゴリーに関わらず買い物好き、新製品好き。

つまり、豊富な消費経験を持っていることに加えて、
当該商品カテゴリー(例えばビール系飲料)に
詳しく、単に「自分なら買う」という主観的な判断だけでなく、

「自分は買わないけど、大衆には受け入れられるだろう」

といった客観的な判断ができる人たちだと、
清水氏は指摘しています。


なるほど・・・!

私に言わせると、目利きな人たちとは、
的確な批評眼を持つ

「プロの消費者」

とでも呼べる方々ですね。


考えてみれば、従来の新商品に対する消費者調査は、
基本的に、無作為抽出した消費者を対象として調査を
行ってきましたが、その予測精度や信頼性は必ずしも
高いものではありませんでした。

おそらく、こうした調査の予測精度や信頼性が
高くなかった理由としては、調査対象者に、
よく考えず、衝動的な理由で買ったり、漠然と購入
してしまう、

「アマチュアな消費者」

が多く含まれていたからではないかと、
私は考えています。


アマチュアな消費者は、十分な評価能力を持たないため、
たとえ新商品を見たり、また実際に試してみたとしても、
感覚的判断や思いつきだけで商品評価をしてしまうのです。

そして、「買いたい」と調査では答えておきながら、
発売後に購入することはほとんどしない・・・


ところが、プロの消費者は、
新商品のコンセプト、ネーミング、パッケージング
など様々な視点から的確に良し悪しを判断し、

大衆に受け入れられるかどうか

を総合的に評価できる力を持っている。


アサヒビールの「目利き調査」では、
こうしたプロの消費者に絞って組織化することで、
新製品需要調査の予測精度、信頼性を高めることに
成功したと言えますね。


さて、アサヒビールでは6月16日に第3のビール、

「アサヒ 麦搾り」

の9月15日発売が予告されたばかり。

当然、麦搾りも目利き調査をパスした商品で
しょうけど、果たして売れるでしょうか?


今回の記事は以下の講演内容を元に作成しました。


*夕学五十講(2009/06/17)

「[目利き][聞き耳][死神]の消費行動」

 清水 聰、慶応大学商学部教授

投稿者 松尾 順 : 16:44 | コメント (4) | トラックバック

著作権侵害にご注意!

あなたは、メルマガやブログに書いた自分の文章を
盗作されたことありますか?


「盗作されたことがあるよ」という方が、
けっこう多いんじゃないでしょうか?

デジタルなネット系文章だと、
コピペで簡単に真似されやすいですからね。


盗作された経験は、私にも何度かあるのですが、
そのたびに思うことがあります。

「これは、盗作と知りつつやった確信犯なのか、
 それとも、著作権の知識・常識を知らない、あるいは
 軽く考えていたための意図的でない行為なのか?」

どちらにせよ、盗作、すなわち

「著作権侵害」

であるという事実は揺るがないのですが。


さて、つい最近も、
メルマガ&ブログで私の書いた記事が
著作権侵害を受けました。

最終的には、盗作した側の責任者から、
真摯な謝罪をもらいましたので一件落着はしています。


ただ、私自身も含め、文章を書き、
ネットなど通じて公表する機会が多い方のために、

自分自身がうかつに著作権侵害を起こさないためのポイント

を一度整理しておいたほうがいいと思いました。


というわけで、直近に起きた私の盗作被害を
具体事例として示しながら説明してみたいと思います。


まず、私のオリジナル記事の冒頭と、
盗作記事の冒頭を並べてみますね。

------------------------------------

[オリジナル記事]
タイトル:裁判員になる方へ・・・目撃証言の信頼性

従来、刑事裁判は、
裁判官3人だけで評議し評決していました。

しかし、裁判員制度の実施後は、
裁判官3人に加えて、国民から選ばれた裁判員6人
の合計9人で、評議・評決をすることになります。

裁判員候補者としては、
社会人のほとんどの人が対象となりますね。

もし裁判員候補者に選ばれたら、
所定の理由がない限り辞退することはできません。

ですから、いつかは自分も裁判員になる日が来るかも
しれないという、心の準備はしておいたほうがいいでしょう。

------------------------------------

[盗作記事]
タイトル:裁判員制度の留意点

従来の刑事裁判では、裁判官3人で評決しましたが、
新制度では、国民から選ばれた裁判員6人が加わり、
計9人で評決することになります。

社会人のほとんどが対象となる裁判員制度ですが、
所定の理由がない限り、辞退することが出来ません。

いつかは、自分が選ばれる日が来るかもしれない、
という心の準備が必要でしょう。

------------------------------------


盗作記事の場合、全体の文章が短く、
また表現・言い回しが変えてありますが、
私の記事の「引用」ではなく、
あたかも自分の文章であるかのように書いた、

「剽窃(ひょうせつ)」

であること、要するに、「盗用」したことが、
著作権の専門家でなくとも一目瞭然ですよね。
(そもそも、出典の明示もなしでした)


さて、当初、盗作記事を掲載した側の責任者の
謝罪の文章は次のようなものです。
(重要箇所のみ抜粋)

------------------------------------

5月XX日に書かれた記事が松尾様の記事
「裁判員になる方へ・・・目撃証言の信頼性」を
もとにして書かれているにもかかわらず、出典の明記が
なされず、オリジナル記事であるように書かれていました。

(中略)

今後は出典の明記を義務づけ、再発しないよう周知徹底
してゆく所存ですので、今回に限り、どうかお許し
くださりますと幸いでございます。

-------------------------------------


この文章を読むと、盗作記事は、

「出典の明記」

が行われていなかったことのみが問題という、
間違った事実認識を責任者が持っていたことが
わかります。

このため、出典の明示がなかったことについての
謝罪に止まっていますね。


しかしこの記事の場合、
出典が明記されているかどうかに関わらず、

「著作権侵害」

に該当するのです。


なぜかという理由については、

「引用」の目的と許容範囲

をご説明すればおわかりになるでしょう。


そもそも「引用」とは、

自分の考えを展開したり、
説明・証明するために他人の文章や事例を引くこと

です。

しかし、当該盗作記事の場合、
私の記事をそっくりなぞり、表現を変えただけの
内容でした。つまり、

書き手の持論・自説

が全く含まれていなかったのです。


したがって、「引用」には該当せず、
「剽窃」=「盗用」になってしまうというわけです。

もし仮に出典が明示されていたとしても、
変な話ですが、

盗作先の明示

に過ぎなかったことになりますね。


ですから、引用については、
以下の原則を常に意識しておく必要があります。
それは、

「主従関係の原則」

です。

自説を展開した部分と、引用箇所を比べた時に、
自分の文章が「主」であり、引用が「従」とみなせる
場合にのみ正当な引用として認められるという原則です。

当該盗作記事の場合、
自説ゼロですから、引用100%ですね。
「アウト」。

「主従の関係」の見極めは、
基本的には自説と引用の文章量の比較に、
双方の内容の質を加えて判断されますが、
明快な線引きは難しいのが現実ではあります。

実は私も、うかつにも引用箇所が主と感じられるような
記事を書いてしまい、読者の方から叱られた経験があります・・・


さて、もうひとつ、著作権侵害を避けるために
知っておくべきポイントがあります。

それは、

著作権は「表現」を保護することが目的である

いう点です。

特許は、発明=アイディアを保護することが
目的ですが、著作権はオリジナルの書き手の

「表現」

を守ることが目的。


ですから、盗作記事の場合も、
裁判員制度における留意点を「自分の言葉」で
表現してあれば、問題はありませんでした。
(後はもちろん、適切な引用と出典の明示)


ちょこっと言い回しを変えただけではダメです。

他人の文章を元にしており、
かつその文章と明らかな類似性があり、

「実質的に同一」

と判断されるようであれば著作権を
侵害したことになるからです。


まとめます。

著作権侵害にならない文章を書くために、
最低限おさえておきたいポイントは以下の3つです。


・自説を自分の言葉で表現する。

・自説と引用のバランスに注意し、
 引用が主にならないようにする。

・出典を明記する。


掘り下げれば、上記以外にも様々な留意点がありますが、
詳細は参考文献等をご参照ください。

私自身も、細心の注意を払って、
記事を書いていきたいと思います。


*参考文献

『引用する極意 引用される極意』
(林紘一郎、名和小太郎著、勁草書房)


『デジタルコンテンツの著作権Q&A 第2回』
‐自社のWebページをまねたとしか思えない他社のWebページを発見。
 削除を要求できるか?
(広報会議、2009/07)

投稿者 松尾 順 : 09:58 | コメント (3) | トラックバック

スパムメールのコンバージョン率 - Spamalytics

ある調査によれば、2008年に、
世界11ヵ国で発信されたスパムメールの総数は

62兆件

に上るそうです。

まあ、こんな天文学的数字を見せられたところで、
日々、押し寄せるスパムメールにうんざりする現実は
変わりませんが・・・


以前、どこかで読んだのですが、
日本の某スパム当事者によれば、

数百万通のスパムメール

を発信すると、1回当たりおよそ

“500万円の売上”

があるとのことでした。


送信先メールアドレスリストの入手コストは
極めて安価ですし、またメールを発信するためのコストも、
第三者のサーバを乗っ取って勝手に使うので無料!!


だから、「ボロもうけ」。
スパムメールが年々増え続けるのも無理はありませんね。


それにしても、スパムメールは、
どのくらいの人が反応しているのでしょう。

つまり、スパムメールの誘い文句に釣られ、
記載されたURLをクリックして、なんらかの商品を
購入してしまう人の割合(コンバージョン率)は
何パーセントくらいなんでしょうか?


この疑問に「実証研究」で答えたのが、
カリフォルニア大学の研究者らです。


当研究論文の概要をご紹介しましょう。


この研究では、彼ら曰く、

“法律上・倫理上の問題”

をうまくかわし(sidestepping)ながら、
スパムメールで宣伝されていることの多い

医薬品ECサイト
(バイアグラなどを販売)

などを真似したサイトを実際に立ち上げ、
3本の「スパムキャンペーン」を実施、

約5億通

のスパムメールを発信しています。


3本のキャンペーンは以下の通り。

・医薬品販売
・電子ポストカード販売
・エイプリールフール

*実際にお金をいただくわけではありません。
 購入ボタンを押すとエラーメッセージが
 返るようにしてありました。


キャンペーン別の詳細は
当論文を見ていただくとして、
3本合計の数値をお見せしましょう。


・スパムメール総発信数:471,381,355
・対象者への到達数:113,900,000
・サイト訪問者数:17,070
・購入者数:569


スパムメールの多くが、
メールアドレスの間違いや変更・消滅、
あるいはブラックリストに送信者が掲載されている
など理由により、メールが正常に送信されません。

このため、スパムメール対象者への実際の到達率は

24.1%

になっていますね。

(注)これはユーザーのメールボックスにまで
 ちゃんと届いたという数字ではありません。
 相手のメールサーバまでの到達数・率です。


さて、いちおう、上記の到達数を
実際にメールが届いた人の数だとみなすと、
サイトに訪問した割合は、

・到達者数ベースで0.0150%
・総発信数ベースで0.0036%

です。


さらに、実際にサイトで購入した人の割合、
すなわちコンバージョン率を計算すると、

・サイト訪問者数ベースで0.033%
・総発信数ベースでは0.00012%

となりますね。


要するに、約5億通のスパムメールで、
購入にまで至った人はわずか500人余り。

コンバージョン率(総発信数ベース)では、

0.00012%

という極めて小さな数字なのです。


とはいえ、500人の顧客を
ほぼゼロに近いコストで獲得できる
ということ!


客単価は商品の種類によりますが、
仮に5,000円/人だとすると、

250万円

の売上げとなりますね!


コンバージョン率は決して良くない、
というか極めて悪いスパムメールですが、

費用対効果

はやはりすごい・・・


スパムメールがなくなるためには、
私たちがスパムメールの誘いに乗らないことが
肝要ですが、ほんのほんの一握りの人が反応して
しまうだけで儲かってしまう以上、
スパムメールがなくなる日はきそうもないですね。


ちなみに、eメールをGメールに集約することにより、
Gメールの強力なスパムフィルターにより、
スパムメール数は激減するそうです。
(これは、当論文で書かれていることではありませんが)

私もやってみようと思います。


出典:Spamalytics:An empirical Analysis of
Spam Marketing Conversion
http://www-cse.ucsd.edu/~klevchen/kklevps-ccs08.pdf

投稿者 松尾 順 : 19:18 | コメント (3) | トラックバック

体重計付バス待合所

あなたは、毎日自分の体重をチェックしてますか?

ここだけの話ですが、
私は5年くらい前から毎日自分の体重を記録しています。

最近、ダイエットもさぼり気味。

「やや肥満ぎみ」

のメタボ体質ではありますが、
なんとかギリギリ

「真性肥満」

にならず済んでいるのは、
自重をこまめに確認することで
自制ができているからだと思います。

実際、しばらく体重計に乗らないでいると
食生活が乱れますし、乗るのが怖くなりますね・・・


さて、オランダ・アムステルダムには、
野外広告(OOH:Out Of Home)として、
面白い、というか日本では物議を醸しそうな
バス停広告があります。

広告の掲示スペースに数字が表示される
電光掲示板があり、待合所のベンチに座ると、
その人の体重が計測されるようになっている
というものです。

さすがのアイディア!すばらしい!

体重を気にしている人は、
恥ずかしくて座れない。結果として座るよりも
カロリーを消費することになりますよね。

あるいは、勇気を出して毎日座る。
最初は人に笑われるかもしれませんけど、
ダイエットがんばって徐々に数字が小さくなって
いったら、毎日乗り合わせる人から喝采を受けるかも!

日本のバス停にも登場して欲しいOOH広告ですね。

youtubeに動画がありました。

bushokje met weegschaal van Fitness First

このきれいなお姉さんは、
厚着しているせいでしょうけど、
体重は私とほぼ同じです・・・

やっぱりごついなあ。ゲルマン系ビジョ。

投稿者 松尾 順 : 20:30 | コメント (0) | トラックバック

なかなかいいね、キリンフリー!

残業で飲みに行けない日が続く夜の飲み物。

最近、私は「キリンフリー」です。

ラフな企画・アイディア出しの時は、
固い頭を緩めるために(笑)、軽く飲みながら
夜なべ仕事をすることもありますが・・・

しかし、細かい数字を見なければならない
データ分析作業などの時には飲むわけにはいきません!

「それでも飲みたいよ・・・うー」

という気分を紛らわしたい。

そこで、キリン・フリー。


まさにあるようでなかった製品、
こんなの欲しかったよ、という製品です。

キリン・フリーは、発売当初から売れ行き好調。
定番化の道を進んでいますね。

いち消費者の感想として、
私がなぜキリン・フリーを選ぶのか。

理由は2つあります。

1.味が良い

これまでも低アルコール飲料(アルコール度数1%程度)を
あれこれ試してみましたが、どれもあまりおいしくない。

キリン・フリーも、まあ「酸化したビール」のような味。

ビールと単純比較してはいけませんが、
なかなかいけるじゃん、と思える味です。

意外にクセになります。

苦味が少ないので、
ビールが苦手な女性にも飲みやすいようですね。

見た目の色、泡のたち具合なんかも、
ビールそっくりで、従来の類似品とは明らかに違います。

アルコールゼロなのに、
心持ち酔った気分になるのが不思議です。


2.ローカロリー

キリンフリーはカロリーオフ。

ミネラルウォーターやお茶系飲料じゃものたりない。
かといってジュースなどの清涼飲料はカロリーが気になる。
甘いモノは飲みたくないし。

キリン・フリーは、
ビールのような飲みごたえがありつつ、
カロリーが低いので躊躇なくゴクゴク飲める。

メタボが気になる人、ダイエット中の人にも
受け入れられやすい製品でしょう。


さて、キリンさんによれば、

「高速道路でも飲めるビールテイスト飲料

というコンセプトで開発されたようですが、
こんな「スキマニーズ」でこれだけ売れるはずは
ありません。

結果的に、ノンカスタマー(非顧客)に焦点を定める
ブルーオーシャン戦略的な製品だったのかなと
感じてます。

つまり、そもそもアルコールがあまり飲めない人たち、
ビールが苦手な人たち、でも、ジュースとかじゃない、
「オトナな飲み物」が欲しかった消費者層の心を
つかんだのではないかと・・・

マーケティング・リサーチャーの私としては、
実際の購入者層に対するアンケート調査結果などを
早く公開してほしいなあと思います。

キリンさん、よろしくお願いします!


そういえば、ドイツのサッカー選手は、
ハーフタイムにビールをゴクゴクと何リットルも
飲むそうですね。

アルコールの影響で、
後半戦は明らかに身体能力が落ちるはずですが、
昔からの習慣なので禁止するわけにもいきません。

彼らに、キリンフリーを勧めてみたらどうかと思います。

相手は、ビールの本家本元と言えるドイツですから、
さらなる味の改良が必要でしょうけど・・・!

投稿者 松尾 順 : 10:58 | コメント (0) | トラックバック

もんじゃ焼きは儲からない?

先日、友人たちと久しぶりに月島に

「もんじゃ焼き」

を食べに行きました。


メニューを見て、改めて思ったこと・・・

「もんじゃ焼き、お好み焼きって、結構高いなあ!」


私が行ったお店は、
月島の中でも有名店のひとつでしたが、
ほとんど具(トッピング)が入っていない
もんじゃ焼きで700円。

それ以外のもんじゃは、
ほとんどが1000円前後です。

一番高いのは、
もち・チーズ・明太子入りで1,450円!

お好み焼きも同様。


もんじゃ焼き・お好み焼きのおよそ7-8割は、

小麦粉とキャベツ

であることを考えると、

「原価率」(売上に占める原材料費の割合)

はめちゃくちゃ低いのは間違いないですよね。


飲食業では、

「粉モノは儲かる」

ということを聞きますが、

「いいショウバイしてるなあ」

ともんじゃを食べながら思っていました。
(とてもおいしかったですけどね!)


でも、飲食業界のプロに言わせると、
私の理解は間違っているんですね。


『「お通し」はなぜ必ず出るのか』(新潮社)

の著者、子安大輔氏によれば、
必ずしも大儲けできる業態ではなさそうです。


子安氏が挙げる理由は以下の通り。

1 客単価があまり高くない

もんじゃ焼きや、お好み焼きは腹にたまるので、
あまり食べられない。飲み代を含めたとしても
客単価はそれほどではない。


実際、私たちが月島のもんじゃ店で
支払った金額は1人当たり4千円程度でした。
(酒豪が揃っていたので酒代がほとんど・・・)

女性だけのグループも多かったのですが、
酒豪・大食漢の人がいない限り、
客単価はもっと安くなるでしょうね。


2 客が回転しない

客席に鉄板が備え付けてある店では、
客の滞在時間が長いので、客の入れ替わり
度合い(=回転率)が低いのです。

したがって、1日に受け入れられる客数が
少なくなってしまいます。


飲食店のような、
基本‘待ち’のビジネスでは、
売上の上限は、

客席数x回転率x客単価

で決まります。

フランス料理店のような高級店も、
回転率は良くないのですが、その代わり、
客単価が高いのでそれなりの売上げに
なります。


しかし、もんじゃ焼き・お好み焼き屋の場合、
売上を構成する回転率、客単価に限界が
あるので、そう簡単に儲かるわけではないんですね。


3 差別化が難しい

もんじゃ焼きやお好み焼きは、
商品に特徴のつけにくいジャンルです。

気をてらいすぎれば敬遠され、
かといって王道を行き過ぎるとつまらない。


月島の場合、
「月島」という地名がブランドになって
他エリアのお店と明確な差別化に
成功したことで多くの客を集めています。

しかし、味は正直、
どこもたいした差は感じられません。
(通い詰めれば微妙な差が
わかるようになるんでしょうけどね)


というわけで、もんじゃ焼き、お好み焼きは、
脱サラしたい人が気軽に始められそうな粉モノ
商売ですが、決して甘いものではないことを
知っておいた方が良さそうです。


なお、

『「お通し」はなぜ必ず出るのか』
(子安大輔著、新潮社)

は、とてもわかりやすい平易な解説で、
飲食ビジネスの本質がすっと理解できる本です。

飲食ビジネスに興味のない人が読んでも、
様々なビジネス・経営についてのヒントが得られると
思います。

ぜひ一読をオススメします。


『「お通し」はなぜ必ず出るのか』
(子安大輔著、新潮社)

投稿者 松尾 順 : 13:18 | コメント (3) | トラックバック