マグロ船のゲーム理論

マグロ船は、一度出航すると40日位、
一度も港に立ち寄ることなく漁を続けます。

その間、マグロを求めて漁場を移動し続けるのですね。


このマグロ船で一番偉いのは、船のオーナーである

「親方」

です。親方は、マグロのいそうな海域を予想します。

そして、親方が予想した海域に船を動かすのが

「船長」

の役割だそうです。


さて、親方は、マグロのいそうな海域を
どのようにして予想するのでしょうか?

近くの船と無線による情報交換を
通じて行うのです。

つまり、
+

「お互いの船ではどのくらいマグロが
 取れているか」

ということをお互いに教えあうわけです。


詳細はよくわかりませんが、おそらく、
それぞれの船が漁を行っている場所での
マグロの取れ具合から、マグロの群れの大きさや
移動する方向を読むのでしょうね。


マグロ船は、このように
お互いに助け合って漁をしているのですが、
強欲な親方になると、他の船にウソの情報を
流すことがあるそうです。

こうして、
マグロが取れる漁場を独り占めするのです。

仲間に対する裏切り行為ですよね。


最初は儲かるかもしれません。

しかし、これを繰り返していると、
他の船からの信用を失い、
有効な情報がもらえなくなるため、
長期的には売上が低迷することになるそうです。


一方、正直にマグロ情報を共有しあうマグロ船は、
結果的に同じ海域で共に漁をすることになるため、
1隻あたりの水揚げは減ることになります。

しかし、マグロが全く取れないというリスクを
減らすことができるため、情報共有をしない船よりは
売上げがよい傾向があるとのこと。


ご存知の方も多いと思いますが、
ゲーム理論の枠組みで紹介される有名な戦略に

「しっぺ返し戦略」

と呼ばれるものがあります。


これは、相手が協調してきたら、
こちらも協調する。

逆に、相手が対立(裏切り)してきたら、
こちらも同様に対立する

という戦略です。

この戦略を採用するのが、
最も「利得」が多くなることが、
コンピュータ・シミュレーションの結果から
実証されているのです。


マグロ船同士の情報共有は、この

「しっぺ返し戦略」

が現実においても有効な戦略であったことを
わかりやすく説明できる面白いケースではないか
と思います。


以上、マグロ船の話は、

『会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ』
(齊藤正明著、マイコミ新書)

を参考にしました。

本書は、齊藤氏のマグロ船乗船記ですが、
読み物として面白いだけでなく、
ビジネス、キャリアについての学びも大きい内容です。

一読をオススメします。


『会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ』
(齊藤正明著、マイコミ新書)

投稿者 松尾 順 : 11:23 | コメント (0) | トラックバック

「ソルトリーフ」 vs 「プッチーナ」

「アイスプラント」

呼ばれている
ヨーロッパ・アフリカ原産の野菜があります。


この野菜、地中から吸い上げた塩分を
葉の表面の液胞に蓄えるという、
不思議な性質があります。

だから、食べてみると、
ほのかな塩味がしてドレッシングいらず。


私も『農家の台所』で
何度か食べたことありますけど、
ホント、不思議な食感と味なんですよね。


さて、「アイスプラント」はあくまで通称。

「商品ブランド」としては、
現在以下の2つの名称が使われています。

・ソルトリーフ(国立ファームの登録商標)
・プッチーナ(佐賀市の総合商社アグリの登録商標)


さて、どちらのブランド名が、
一般名称化するほどの認知度を獲得するでしょうか・・・?

野菜の特徴が明快な「ソルトリーフ」か、

それとも

情緒性の高い「プッチーナ」か?

投稿者 松尾 順 : 10:20 | コメント (2) | トラックバック

ム○デ嫌いの克服法?

足がたくさんある「ム○デ」が
苦手な知人(女性)がいて、まあ、「ム○デ」が
ダメな人は私も含め、多いと思いますが、
彼女は、「ム○デ」嫌いを克服するために、
あえて大胆な取り組みにチャレンジしています。


「昆虫料理」、つまり、
虫系の生き物を油で揚げるなどして
食べる会があります。

日経新聞などでも紹介されてましたよね。


彼女の場合、そこに行ってみて、
あえてム○デを食べてみることにしたとか。

ただ、ム○デはなかなか手に入らないそうで、
まだ食べたという報告をもらっていません。

おいしいらしいですけど・・・

投稿者 松尾 順 : 11:13 | コメント (0) | トラックバック

「かたつむり」が怖い!

唐突な話ですいませんが、

「かたつむり」

が怖いという友人(女性)がいます。

世界で一番怖いのだそうです。名前を聞くだけでもダメ。


見た目はほとんど同じ(殻を背負ってないだけ)の

「ナ○○ジ」

は平気だという。

ピンポイントで「かたつむり」だけが
苦手というのはよくわからない。


かたつむりについてどんなトラウマを抱えているのか、
気になって夜も眠れません・・・

投稿者 松尾 順 : 23:07 | コメント (4) | トラックバック

「おなかに赤ちゃんがいます」バッジのジレンマ

首都圏の主な鉄道において、
2006年から無償配布が開始されている

「マタニティーマーク」

はご存知ですか?

ハートに包まれた母親と赤ちゃんの図と共に、

「おなかに赤ちゃんがいます」

の文字が書かれています。


このマタニティーマークは、

「バッジ」や「シール」

として配布されていますが、
文字通り、妊婦さんに身に着けてもらい、
周囲の人に知らせることを目的としたものです。


マタニティーマークが生まれた背景には、
妊婦さんだと明確にわかれば、席を譲りやすくなる
という発想があります。

実際、赤ちゃんが中にいるからおなかが大きいのか、
それとも単にセクシーな肉体をお持ちなだけのか、
外見からはなかなか見分けがつかないんですよね。

だから、

「あ、妊婦さんかな・・・」

と思って席を譲ったのに、

「私、妊婦じゃありません」

などと言われたらどうしようとか考えてしまい、
なかなか譲れないんですよね。

マタニティマークのおかげで、
この迷いを解消することができるようになりました。


ところが、
実際マタニティマークを付けていても
なかなか席を譲ってくれないのが現状らしいです。

なぜなんでしょうか?

主な原因としては3つほど考えられますね。

1 そもそも妊婦さんに席を譲る気がない
2 マタニティマークがどんな意味なのかわからない
3 そもそもマタニティマークのバッジに気づかない


まず、

1 妊婦さんに席を譲る気がない

というのは本人の良識の問題であり、
いかんともしがたい点ですね。

こんな人は少数派であると願いたいところです。


次に

2 マタニティマークの意味がわからない

というのは周知徹底の問題ですね。

この点については、
配布が開始された当初は、
確かに告知が不十分だったと思います。

でも、最近は大きなポスターが各駅構内に
貼ってありますから解消されつつある問題でしょう。

もっと、車両内の告知スペースを大きくすべきだと
思いますが。(現状は優先席周辺に小さく表示)


最後の

3 そもそもマタニティマークのバッジに気づかない

というのが最大の問題でしょう。


バッグなどにさりげなく付けている妊婦さんが
多いのですが、小さすぎて本当に目立ちません。

見つけるつもりで探さないと目に入らないくらいです。

マークに気づかないから妊婦さんだとわからない。
だから席を譲る人も増えない、というのが現状なんだ
と思います。


とはいえ、直径10センチくらいの

「デカバッジ」

にすればいいじゃん、
と安易に考えるのはNGです。

今度は、逆に目立ちすぎて恥ずかしいでしょう。

いくら妊婦さんとは言え、
女性としては外見をおろそかにしたくないはず。

デカバッジ一個つけただけで、
どんなコーディネートも台無しになるんじゃないでしょうか。

また、マークが目立てば目立つほど、
周囲の人に、「席を譲りなさい」と強制しているようで
気が引けるという気持ちも強くなるでしょうし。


つまり、マタニティマークは、
周囲の人にすぐに見つかるように目立つのが望ましいけど、
付けている女性としてはあまり目立ってほしくないという
ジレンマを抱えているわけですね。


さて、このジレンマを解決するアイディア、
何かありませんか?

思考トレーニングとして、
ちょっと考えてみたらいかがでしょうか?

投稿者 松尾 順 : 10:14 | コメント (0) | トラックバック

早大ラグビー部中竹監督の「対極視点法」

「自分のやりたい理想の仕事がわからない」

こんな悩みを訴える社会人の方に対して、
次のような質問を投げかける場合があります。

「では、あなたが絶対にやりたくないと思う仕事を
 挙げてみてください

 そして、なぜ、その仕事をやりたくないと感じるのか、
 その理由を考えてみましょう!」


「やりたい仕事」を挙げるのは難しい人でも、
「やりたくない仕事」は結構簡単に思いつけるものです。

しかも、なぜその仕事がいやなのか考えてもらうと、
例えば、

「決まりきった業務の繰り返しのように思うから」
「孤独に作業する仕事だから」

などと、やりたくない理由も明確に示せます。


そして、上記のような「やりたくない理由」とは
「真逆にある理由」に当てはまるような仕事が、
その人のやりたい、理想の仕事に近いことが多いのです。


このように、
なんらかの理想像を描くには、
まず理想でないものを描くように、
対極にあるものをイメージしながら対象物に
焦点を当てていく方法を

「対極視点法」

と早稲田大学ラグビー蹴球部監督、
中竹竜二さんは呼んでいるそうです。


わかりやすいネーミングですよね。

僭越ながら私も、
冒頭に示したキャリアに関する質問のような
テクニックのことを今後は

「対極視点法」

と呼ばせてもらおうと思います。


さて、中竹さんは、

『リーダーシップからフォロワーシップ』

の中で、
理想のリーダー像を考えるに当たって、
対極視点法を活用し、

「最悪なリーダー像」

を極力避けるという発想を提案しています。


そこで、具体的な「ダメリーダー像」として、
日経プラスワンが実施した

「働きにくかったり、愛想を尽かした上司や先輩」

についての以下のようなアンケート
調査結果を示しています。

1位:言うことや指示がコロコロ変わる
2位:強いものには弱く、弱いものには強い
3位:大事な局面で責任逃れ
4位:感情的で気分屋
5位:失敗を部下のせいにする
6位:上司自身が仕事ができない
7位:部下の手柄を持っていく
8位:部下指導をしない
9位:決断力がない
10位:無責任に部下に投げる


「あーいるいるこんな上司、先輩!」

と思った方も多いでしょうね。

私は、自分自身がこんな上司、先輩だったかもしれない
と反省(今さら遅いですが・・・)しきりです。


中竹さんは、上記の調査結果は、
ひとことでは、

「ダメな上司は、言動にブレがある」

と集約できるとし、
こうしたダメリーダー像に
自分がならないようにすれば、
理想のリーダー像に近づけるのではないか、
またそこまで言うのは語弊があるとしたら、
理想のリーダーの条件は、

「どんな状況でも、ブレないこと」

と最低限言い切ることができるのではないか
と言っています。


ふむふむ。

確かに、対極の視点から考えると、
理想=あるべき姿が導きやすいですね。


この「対極視点法」、
様々な分野の製品やサービスの改善にも
活用できる有効な手法であることには
お気づきでしょうか?


例えば、「レストラン」経営者が活用するなら、

「あなたにとって、理想のレストランとは?」

を利用者に答えてもらうより、

「絶対行きたくない最低のレストランって
 どんなところ?」

を教えてもらうほうが手っ取り早いでしょうし、
自店が対応すべき課題や問題点が
よりはっきりするのではないでしょうか?


『リーダーシップからフォロワーシップへ カリスマリーダー不要の
 組織づくりとは』
(中竹竜二著、阪急コミュニケーションズ)

投稿者 松尾 順 : 14:14 | コメント (0) | トラックバック

高橋がなり・国立ファームの今後の事業戦略

日本の農業を取り巻く問題には様々なものがありますが、
3年前、「国立ファーム」を設立し、日本の農業界に殴り込み
をかけた高橋がなりさんが解決しようとしている最大の問題は、

「優れた農産物を生産している農家が報われない」

ということだそうです。


あえてポイントを絞りますが、
上記の問題を生み出している最大の原因は以下の2点です。

・全ての農家に標準的で同質な農産物の生産を求めるJA(全農)

・バイイングパワーを駆使して、大量販売に適した納入形態を求め、
 また、仕入れ価格をとことん引き下げようとする大手小売店


要するに、農家と消費者の間に介在している

JAや小売店

の支配力が強すぎるのですね。

このため、農家の創意工夫によって、
他農家とは異なる品種を採用したり、独自の生産方法を開発して、
おいしいとか、栄養価が高いといった農産物を作り出しても、
市場に出すと、その他の農産物と同じ価格(=安値)でしか
売れないのです。


経営努力で、他者との「差別化」(差異化)を
いくら図っても、農家の経営努力に相応しい対価を
得にくいのが、日本の農業界なのですね。


ただし、近年、マーケティング力、販売力もある農家は
消費者との直接取引を開拓することで上記の問題を
解決しています。

また、「オイシックス」「大地を守る会」といった
有機の、あるいは安全な農産物を扱う通販会社の台頭によって、

「報われない農家」

という現状は一部改善されつつあります。


しかし、本来、職人的クリエーターである農家の多くは、
マーケティング力、販売力には長けていません。

農産物に強い通販会社も、
農家との緊密な関係を大切にしているとはいえ、
やはり軸足は消費者側にあるため、それほど高く売ること
ができません。


こうした現状を踏まえ、がなりさんは、
優れた農産物を作れる農家=篤農家の
マーケティングやセールスを支援するため、

「ブランド重視のコミュニケーション戦略」と
「自社独自の流通チャネル構築」

を通じて

「地位も名誉もお金もあるカリスマ農家」

を生み出そうとしています。


ブランド重視のコミュニケーション戦略と、
自社独自の流通チャネル構築は、
くしくも、AV業界で成功を収めた

ソフト・オン・デマンド(SOD)

のやり方でもありました。
(低価格を除いて)


SODでは、従来のAV商品とはまったく異なる、
斬新な企画の商品を開発、低価格で販売して、
ユーザーの支持を得ました。

そして、がなり氏自身がマスメディアに積極的に
登場することで高いブランドイメージを構築。

また、SODの主体は「販社(卸)」であり、
同社、および他社の商品を一括で扱うことによって、
小売店との交渉力を強化したのです。


SODのAV商品は当初、

「たくさん売ってるんだから、もっと仕入れ値を下げろ」

と小売店から言われたそうです。

しかし、お客さんがSOD扱いの商品が欲しいと店に
やってくるようになった今、SODの品揃えを失うわけに
いかない小売店は、もはや無理な取引は言ってきません。


同様に、消費者が、

・「国立ファーム」の野菜がほしい

また、例えば

・斉藤さんの作った「にんじん」がほしい

と指名買いしてくれるようになれば、
生産者と流通業者の立場が逆転します。

小売店としては、

売ってあげるのではなく、
ぜひとも商品を売らせてほしい

ということになるため、
それぞれの農産物の品質に相応しい価格設定が
可能になるというわけですね。


そこで、がなりさんは今後、
契約している篤農家をテレビなどのマスメディアに
今後積極的に登場させ、知名度、ブランドイメージ
の向上を図ります。

彼らの中には、早晩、「カリスマ農家」として
脚光を浴びる人も出てきそうです。


また、直営の野菜レストラン、

『農家の台所』

では、篤農家が作ったおいしい野菜を味わってもらい、
「ブランド体験」を提供すると同時に、野菜にもさまざまな
品種があり、それぞれ味が違うこと、また、どんな野菜が
おいしいのかといった、野菜についての知識を伝える、

「消費者教育」

の場としての活用を強化していくそうです。


『農家の台所』1号店の国立は、
いまだ赤字だそうですが、2号店の恵比寿店は
マスメディアで頻繁に取り上げられ、
たちまち人気店となっています。


今後、都内各地に出店が予定されている

『農家の台所』

は、「商品ブランド」として相応のブランド力を
形成しつつあるため、今後、レストランだけでなく、
食に関わる様々なパッケージ商品や惣菜販売などへの
横展開を考えているようです。


また、『国立ファーム』は、
ここに頼めば、篤農家、カリスマ農家のおいしい
農産物が手に入るというイメージ、すなわち

特選野菜の統一ブランド

となることを狙っているそうです。


がなりさんは、
街中のスーパーで安く手に入る野菜を
否定しているわけではありません。

数百円で食べられるファーストフードから、
数万円のカリスマシェフの店がある飲食業界のように、
農業界にも品質や価格、サービスに多様性が必要だと
考えているのです。


そして、がなりさんは、

「にんじん1本1,000円でも欲しい」

と消費者に思ってもらえるような篤農家を
生み出すことで、農業に対するネガティブな
イメージを払拭し、

「農業はかっこいい」

と人々が考えるようになる、すなわち、

農業を憧れの職業にすること

を国立ファームが目指すビジョンとして
掲げています。


3年前、10億円の資本を元手に
スタートした国立ファームの残金は
もはや9千万円足らず。

しかし、数多くの失敗を重ね、大金を失ったからこそ
はっきりと見えてきたのが以上ご紹介した、
国立ファームの今後の方向性です。


私の勝手な感想に過ぎませんが、
数年以内に、がなりさんは、ほぼ間違いなく、
農業界のスーパースターになっていそうです。


なお、国立ファームでは、
今後の同社の発展を担う人材を積極的に
募集しているそうです。


*以上は、2009年3月20日(金)に開催された
 高橋がなりさんの講演会(「私には夢がある」主催)
 を元にしました。

*がなりさんの話を私なりに咀嚼して書いています。
 したがって内容についての文責はすべて松尾にあります。


『国立ファーム』
http://www.kf831.com/

『農家の台所』(くにたちファーム本店)

『農家の台所』(恵比寿店)

*私には夢がある セミナー実施報告

投稿者 松尾 順 : 14:52 | コメント (1) | トラックバック

坂本龍一ニューアルバム『out of noise』

今月(09年3月)に発売された、
5年ぶりのオリジナルアルバム

『out of noise』

は極上のピアノ盤ということで、
サイトで試聴したところなかなかいい感じです。

買うかどうか迷ってます。


坂本龍一のアルバムはほとんど買ってますが、
大好きというほどではありません。

でも、基本的に受け狙いの曲は作らず、
常に新しいチャレンジに取り組んでいるので、
ついつい気になってしまうんですよね。


ともあれ、実験的な取り組みを続ける坂本龍一のアルバムが
ミリオンセラーになることはめったにありませんので、
所属事務所のエイベックスとしてはあまり儲かりません。

それでもいいのです。


エイベックス・グループ・ホールディングス社長、
松浦勝人氏が、

“坂本龍一は、後世に残る現代の大音楽家のひとりであり、
年間1億円とかの赤字は喜んで受け入れる”

といったことを以前、
ある講演で話していたことを覚えています。


『out of noise』

投稿者 松尾 順 : 08:28 | コメント (0) | トラックバック

丸ビルのエレベーター

私がよく行く、東京駅前の丸ビル。

小売店・飲食店が入っている側の
エレベーターには、

「ハコ」

が現在、何階を移動中なのかがわかる
表示がありません。

このため、ボタンを押して、
ハコが自分の階にやってくるまでの時間が
やたら長く感じられます。

いつ来るかわからないというのは、
本当にイヤなものです。

私も含め、エレベーターを待ちきれず、
すぐそばにあるエスカレーターに
向かう人が多いですね。


エスカレーターだと、
各階のお店が目に入るため
つい道草してしまうのですが、
ひょっとして、エレベーターの表示がないのは、
ビル内回遊率を高めるための作戦?

投稿者 松尾 順 : 09:17 | コメント (2) | トラックバック

『いい仕事ができる人の考え方 あなたの「働きモード」が変わる36のQ&A』

先日、インサイトナウのヴィジョナリーでもある、
キャリアポートレート代表、村山昇さんの最新著作、

『いい仕事ができる人の考え方
 あなたの「働きモード」が変わる36のQ&A』
(村山昇著、ディスカバー・トィエンティワン)

を読ませてもらいました。


同書は、悩める若きビジネスパーソンの様々な問いに、
村山さんらしい、包み込むようなソフトな語り口と、
巧みな説明で答えていくというスタイルになっています。


村山さんは、同書の中で、

「働き観」

を強く、はっきり持つことの必要性を強調しています。


「働き観」とは、

働くことに対する信条、主義、哲学、倫理、精神

など、その人の奥底に横たわる

「ものの見方・考え方」

のことだそうです。


「働き観」を強く、はっきりもっているかどうかが、
個人のキャリアが発展するか、それとも停滞するか、
また人生が楽しいものになるか、つまらないものになるか
を決めるというのが、村山さんの基本的な主張です。

私もここ10年ほどキャリアデザインを学んできましたが、
結論は村山さんと全く同じです。

要するに、1人ひとりの「ものの見方・考え方」が、
それぞれの生き方に反映されていくということなんですよ。

・自分のキャリアについて考えてみたい
・目からウロコのアドバイスがほしい

という方は、ぜひ本書を読んでみてくださいね!


『いい仕事ができる人の考え方
 あなたの「働きモード」が変わる36のQ&A』
(村山昇著、ディスカバー・トィエンティワン)

投稿者 松尾 順 : 11:59 | コメント (3) | トラックバック

早稲田ラグビー蹴球部、中竹竜二監督の「フォロワーシップ」

2007年、2008年の大学選手権を制し、
2連覇を成し遂げた早稲田ラグビー蹴球部監督、
中竹竜二さんに会ったのは、
監督就任の2年ほど前だったかと思います。


当時、中竹さんは三菱総合研究所の研究員。
まさか、その後、早稲田ラグビーの監督に就任される
ことになるとは思ってもみませんでした。


中竹さんは、自称、

「日本一オーラのない監督」

です。

前任者の清宮克幸氏が発揮していたカリスマ性、
強烈なオーラと比較すると、確かにそのギャップは
大きいですね。


実際、私がお会いした時も、
包み込むような人間性は若干感じたものの、
目立たないごく普通のサラリーマンという印象。

とても、学生時代、早稲田ラグビーのキャプテンを
務めた方という感じはしませんでした。
(中竹さん、ごめんなさい!)


しかし、その後、
中竹さんのキャプテン時代を追ったドキュメンタリー本、

『オールアウト‐1996年度早稲大学ラグビー蹴球部中竹組』

を読むと、中竹さんは、

・小さい頃から常に周囲から推されてなるリーダーであったこと

そしてまた、

・明快なリーダー哲学、ラグビー哲学を若くして持っていたこと

がわかりました。

つまり、ちょっと会っただけではわからない、
深い人間性を秘めた方だったのです。


さて、中竹さんは、早稲田ラグビー監督就任後、
「リーダーシップ」ではなく、「フォロワーシップ」の
重要性を学生たちに訴えてきています。

「フォロワーシップ」とは、端的に言えば、
リーダーたる監督の指示やアドバイスを待つのではなく、
学生自ら考え、行動することです。

日本一オーラのない監督としては、
無理して強力なリーダーシップを発揮しようとするよりも、
学生の自律性を高めることが、早稲田ラグビーの勝利に
つながると確信していたのですね。

清宮監督時代、リーダーとして神がかり的なパワーを持つ
清宮氏の指示するままに練習し、試合に臨んでいた早稲田
ラグビーの部員たちは、受身の姿勢、行動が染み付いていました。

したがって、清宮監督退陣後、
そのままではガタガタになるのははっきりしていました。


清宮監督ほどのカリスマ性のあるリーダーは
そうそういません。

となれば、「リーダーシップ」ではなく、
「フォロワーシップ」でチームをまとめることのできる
中竹竜二さん以外に、清宮監督の後任者はいなかったのです。

この判断が正しかったことは、
大学選手権2連覇が証明していますね。


おっと、本当はこの後、
中竹さんの独自の思考のスキルである

「対極視点法」

が面白いのでご紹介しようと思っていたのですが、
前段が長くなってしまいました。


「対極視点法」については次回にします。


『リーダーシップからフォロワーシップへ カリスマリーダー不要の
 組織づくりとは』
(中竹竜二著、阪急コミュニケーションズ)

『監督に期待するな 早稲田ラグビー「フォロワーシップ」の勝利』
(中竹竜二著、講談社)

『オールアウト‐1996年度早稲大学ラグビー蹴球部中竹組』
(時見宗和著、スキージャーナル)

投稿者 松尾 順 : 09:12 | コメント (2) | トラックバック

ネット口コミ施策~フェアとアンフェアの境界線

ブロガーに直接、新商品のニュースリリースを流す。
また新商品発表会に招待したり、あるいは試供品を提供し、
その体験記をブログの記事として取り上げてもらうよう
働きかける。

これが、現在、最も典型的な

「ネット口コミ施策」

だと言えます。

個人として情報発信を行っている
ブロガーの影響力を活用するわけですね。


この方法自体は、以前からやられてきた、
マスメディアの記者たちに対するコミュニケーション施策と
ほぼ同じ方法をブロガー向けに転用しているだけですから、
問題はないと思います。


しかし、以前も書きましたが、
上記の方法が、倫理上好ましくない行為と
みなすべき場合があります。

それは、

・記事掲載に対して金銭的な報酬を与えること

そして、

・金銭的な報酬をもらうことを条件に記事を書いている
 事実を記事中に明示しない(あるいは意図的に隠す)

場合です。


金をもらって記事を書くのですから、
その記事は、実質的に「広告」です。

実質的に「広告」であるにも関わらず、
あたかも自分の意志で書いたかのような記事を
掲載するのは読者を欺く「やらせ」になります。

つまり、「アンフェア」ですよね。

当然ながら、マスメディアの記者は、
金銭的な報酬を条件として記事を書くことは
ありません。(倫理感のない人はさておき・・・)

しかし、個人の立場で日記なものを書いているブロガーに
対しては、金銭的な報酬を与えて記事を書かせるという手段が、
倫理面に対する配慮を欠いたまま、なし崩し的に普及して
しまったのです。


とはいえ、私個人としては、

記事中に報酬をもらっていることを示す=広告だと認める

のなら「金銭的報酬有り」でもいいと思っています。
読者を欺いてはいないですからね。

その点で、これなら「フェア」と言えます。


ただし、「ちょうちんブログ記事」を
好んで読みたい人はそうそういないでしょうから、
そのブログへのアクセスは減ることになるでしょうけど。


報酬を条件に記事を書いてもらう方法は、

「ペイ・パー・ポスト」(Pay Per Post)

と呼ばれています。


この施策を実施するなら、前述したように

「報酬有り記事であることを明示する」

のが倫理的に望ましいはずです。


しかし、悩ましいのは、
報酬有り記事、すなわち

「広告」

であると認めた瞬間に、もはや

「口コミ」

とは呼べなくなってしまい、

口コミならではの効果

も低下するという矛盾をはらんでいる点でしょう。


このため、ブロガーを組織化して、
ペイパーポストを展開している事業者の中には、
ブロガーに対して、

「報酬有りの記事であること」

の明示を義務づけないところも
あるようですね。


現時点ではまだ、
ネットでの口コミ施策のどこまでがフェアで、
どこからアンフェアとみなされることになるのか、
共通認識が確立されていません。

関係者の間で議論が続いている状態です。


ともあれ、ブログは、個人が書いている記事とはいえ、
ネットを通じて多くの人に到達できることから、
立派な「メディア」だと言えますよね。

ですから、マスメディアの記者に対するコミュニケーション
と同様の考え方、倫理基準を適用してブロガーと対話するのが
最善策ではないでしょうか?


最後に、ブロガーを使ったネット口コミ施策の実例を
挙げましょう。(内容は一部変えています)

--------------------------------------

★お仕事(ブロガーに対する依頼は基本こう呼ばれます)

・「ABCレストラン」に指定期間中に行って食事してください。
 友人同伴OKです。

・レストランでは、グラスワイン1杯を人数分サービス、
 食事も半額でオーダーできます。

・後日、ABCレストランで食事を楽しんだ感想を
 写真とともにブログに掲載してください。

・記事掲載に対しては、
 御礼として5,000円の金券をお渡しします。

----------------------------------------

なかなか魅力的なお仕事です。

しかし、5,000円もお礼もらえるとしたら、
悪いことは書けませんね。

実は、レストランが自分の好みでなかったとしても
書かないと御礼がもらえないから、嘘八百を書くこと
になるかもしれません。
(実際すばらしい店だったのなら問題ないですけど)


先日、このブロガー向け施策を企画・運営している
事業者に対して、

このレストランについてのブログ記事には、
報酬をもらって書いたことを明示しなければなりませんか?

という質問を随分前に送ったのですが、
いまだ返事ありません・・・

投稿者 松尾 順 : 07:24 | コメント (3) | トラックバック

消費行動3つの喜び

やや素朴な説明となりますが、
製品・サービスの消費行動に関連して
消費者が感じる喜びには、大きくは以下の
3種類がありそうです。

・買う喜び
・使う喜び
・持つ喜び


まず、「買う喜び」ですが、
これはもう単に「お金を投じる」ということから得られるもの。

「買う」という行為自体が、脳にとっては報酬です。
つまりエンドルフィン(脳内麻薬)の分泌を促すのです。


ただ、これが行き過ぎると「買い物中毒」になります・・・

テレビ通販にはまってしまい、次々と商品を購入するけれど、
届いた商品は開封さえせず部屋の隅に積んだまま、という人が、
結構いるようですね。


次に「使う喜び」。

冷蔵庫や洗濯機、掃除機などの家電用品は、
毎日の家事を楽にしてくれるものの、
必要に迫られて使うものですから、それほど

「使う喜び」

は感じにくいですよね。

しかし、パソコンやケータイ、あるいは
自動車・オートバイのような、娯楽的要素も強いものは、
これらを文字通り楽しむことから得られる喜びがあります。

サービスで言えば、
飲食店やレジャー施設はまさに、
そこを利用することが最大の喜びです。


最後の「持つ喜び」。

所有していること自体が喜びを与えてくれる。
そんな商品もあります。

高級ブランドはその典型例ですね。


ただ、必要に迫られて購入するため、
一般には「持つ喜び」を感じることのない実用品の場合でも、
高いデザイン性を付与することによって、

「持つ喜び」

を感じさせることが可能になります。


例えば、工業デザイナーの深澤直人氏がデザインした
オリジナルの家電商品を開発・販売しているベンチャー企業、

「プラマイゼロ(±0)」

「加湿器(Humidifier)」

は、中央がくぼんだ丸い形状(水滴をイメージ)が魅力的。
他の加湿器にはない

「持つ喜び」

を感じさせることに成功していますよね。


もちろん、世界のトップブランドであるソニーやアップルは、
センスの良いデザインにこだわることで、どんな商品カテゴリー
においても

「持つ喜び」

を与えることに長けていますね。
(たとえ、性能が多少劣っていたり、故障しやすくて、
 「使う喜び」が少ないことがあったとしても・・・)


小売・飲食店舗やサービス・レジャー施設の場合、
お客さんが物理的に所有することはできません。

しかし、個々の顧客の好みや特性に応じてカスタマイズした
サービスやコミュニケーションを通じて

「ここは私のお店、施設」

という擬似的な所有感を与えることは可能です。


さて、あなたの会社の製品・サービスは、

・買う喜び
・使う喜び
・持つ喜び

のそれぞれをどの程度感じさせることができていますか?

投稿者 松尾 順 : 12:43 | コメント (4) | トラックバック

「私が、振り込め詐欺の犯人です!」

「私が、振り込め詐欺の犯人です!」

最近、銀行や郵便局のATMのところに、
こんなキャッチコピーとともに、
振り込め詐欺でだましとったお金をATMで引き出す
犯人たちの写真が貼ってありますね。


ご存知の方もいらっしゃると思いますが、
彼らは、お金を引き出すだけの役回り。

「出し子」(だしこ)

と呼ばれています。


出し子の多くは、
ホームレースや日雇いの人たちです。

その日の暮らしに汲々としているので、
犯罪に手を貸していると知りつつも、
やむを得ず悪の手先をやっているだけなんですよね。
(だからといって罪が許されるわけではないですが)


電話をかけまくってお金を振り込ませる振り込め詐欺の
張本人たちは、ウィークリーマンションを他人名義で
借りており、出し子が引き出した金はまた別の人間
(運び屋)が持ってきます。

というわけで、出し子をつかまえたところで、
悪の中枢につながる手がかりは得られないのが
現状のようです。


振り込め詐欺の被害額は昨年は276億円。
過去5年間の累計は1,300億円になるそうです。

だまされたお金はまずもどってこないので、
こちらが自衛するしかないですね。


まあ、私にはそもそも振り込むだけの余裕が
ありませんので大丈夫ですが(笑)

投稿者 松尾 順 : 14:05 | コメント (2) | トラックバック

情報力を高める参考本

『情報力を飛躍的に高める!実践ノウハウ講座』

が近づいてきました!

3月12日開催、時間は18時半~。懇親会あり。


効率的・効果的な情報収集方法を知りたい
若手ビジネスパーソン対象です。

とはいえ、現時点で参加申し込みされている方
の役職を拝見すると、意外に偉い方もいらっしゃいました。

というわけで、内容を多少修正中です。

本題の情報力を高める参考本は、
上記セミナー配布資料でも紹介していますが、
ブログでもご紹介しておこうと思います。

仕事に役立つインテリジェンス、北岡元著、PHP新書


ビジネスインテリジェンス、北岡元著、東洋経済新報社


人を動かす情報術、春木良且著、ちくま新書


日経新聞の裏を読め、木下晃伸著、角川SSC新書


情報のさばき方、外岡秀俊著、朝日新書


情報検索のスキル、三輪眞木子著、中公新書


統計数字を疑う、門倉貴史著、光文社


社会調査のウソ、谷岡一郎著、文藝春秋


統計はこうしてウソをつく、ジョエル・ベスト著、林大訳、白揚社


統計という名のウソ、ジョエル・ベスト著、林大訳、白揚社


統計でウソをつく方法、ダレル・ハフ著、高木秀玄訳、講談社ブルーバックス


視聴率の正しい使い方、藤平芳紀著、朝日新書


池上彰の情報力、池上彰著、ダイヤモンド社


3時間で「専門家」になる私の方法、佐々木俊尚著、PHP研究所


知的情報の読み方、妹尾堅一郎著、水曜社


ビジネスマンのための「発見力」養成講座、小宮一慶著、ディスカバー携書


調べる技術、書く技術、野村進著、講談社現代新書


「判断力の磨き方、和田秀樹著、PHPビジネス新書


使える弁証法、田坂広志著、東洋経済新報社


営業はリサーチが9割!、松尾順著、日本能率協会マネジメントセンター


先読みできる!情報力トレーニング、松尾順監修、TAC出版

投稿者 松尾 順 : 12:22 | コメント (5) | トラックバック

キリン・ザ・ゴールドの終焉

キリンさんが本格ビールとしては17年ぶり、
社運をかけて07年3月に発売した

「キリン・ザ・ゴールド」

ですが、今年(09年)2月で製造終了となりました。


私は、発売当初から

「このビールは厳しいのではないか・・・?」

という見方をしておりましたが、
予想通り定番化できませんでしたね。


不発に終わった最大の理由は、やはり

・味が平凡だった
・パッケージデザインのインパクトが弱い

の2点かと思います。


発売当初の立ち上がりはまずますだったものの、
売上が失速するのも早かったゴールドは、
途中、パッケージデザインをハデハデなものに変えるなど、
劣勢挽回の努力はしていました。


しかし、味自体の個性の弱さは
どうしようもありません。

要するに、

「ブランドポジションが不明確」

であったため、
十分な数の固定客をつかむまでには
いかなかったのでしょう。


しかも、レギュラービールなのに、
「ゴールド」という豪勢なネーミングや
上品なデザインが与える印象から

「プレミアムビール」

と勘違いされ「高い」というイメージを
持たれてしまったのも痛かったようです。


ところで、私は普段はサントリーの

「ザ・プレミアム・モルツ」

を愛飲しておりますが、
なぜかと言えばやはり、このビールの

「個性の強い味」

が好きだから。

一番最初に飲んだ時こそ、

花の香り

を思わせる味わいが気になりましたが、
飲み続けるとそれが際立つ個性として感じられ、
クセになりました。


そういえば、
いまだレギュラービールの王者として君臨する

「アサヒ スーパードライ」

も、それまでのビールになかった、

コク・キレのある爽快な味わい

が人々の心を掴んだのですよね。


私は思うのですが、結局のところ、
製品はその基本的な価値、ビールで言えば

「味そのもの」

が他のブランドとは明確に異なる
優れた特徴を持っていなければ、
どんなにデザインやマーケティングに力を入れても、
固定客を確保することはできないのです。


「キリン・ザ・ゴールド」の終焉は、
このことを教えてくれているように思います。


余談ながら、
今年5月にアサヒビールから発売予定の

「アサヒ ザ・マスター」

に期待しています。

「味わいビールの傑作」

と自ら謡っているくらいですから、
独特の味わいを提供してくれるんでしょうね?


これまで、一部の例外を除き、

ブラインドテスト(ブランド名を伏せた試飲)

をしても、
各社競合ビールの違いがほとんど区別できなかった

同質的な日本のビール市場

も少しずつ変わりつつあると言えますかね?


(関連記事)

*「キリン・ザ・ゴールド」は定番化するか?

*(続編)「キリン・ザ・ゴールド」は定番化するか?

*「キリン・ザ・ゴールド」の不発

投稿者 松尾 順 : 14:27 | コメント (5) | トラックバック

為末 大選手のブランドポジショニング

‘侍ハードラー’の異名を持つ為末 大選手。


為末さんは、2012年のロンドンオリンピックへの参戦を
表明していますが、競技活動以外にも、
2007年には東京・丸の内の公道を封鎖して

「東京ストリート陸上」

を企画するなど、
陸上競技の普及に力を注いでいます。

「投資家」としても有名ですね。


為末さんは、まさにサムライ!

陸上の賞金だけで生活している海外のトップアスリート
の厳しさを見た為末さんは、企業で働きながらの、
恵まれたアスリート生活では彼らと勝負できないと考えて、
大阪ガスを辞め、2003年にプロ選手として独立。

自ら自分を厳しい環境に追い込んだのです。


独立当時、為末さんは既に、

「陸上競技種目では日本人初のメダル獲得」

という実績を持っていました。

ところが、ある企業にスポンサーのお願いに
行ったところ、結果は「ゼロ円」でした。

為末さんは、
日本でプロとしてやっていくには、
競技能力だけでなく、何かプラスアルファがないと
生き残れないことを痛感したそうです。


そこで、為末さんは、

「世の中がスポーツ選手に求めているのは何か」

を以下の2軸のマトリックスで分析してみました。

・横軸:感性的⇔論理的
・縦軸:エンタテイナー型⇔マイスター(職人)型


この2つの軸で有名スポーツ選手を分類すると、

・感性的xエンタテイナー型は、長島茂雄さん
・感性的xマイスター型は、王貞治さん
・論理的xマイスター型は、野村克也さん
・論理型xエンタテイナー型は、・・・(いない)

となります。


このマトリックス分析に基づき、
為末さんは、空白地帯となっていた

論理的xエンタテイナー型

のポジションを目指すことにしました。


そして、生き抜くための手段として、

コミュニケーション

を重視し、スポーツを

論理

で語るようにしたそうです。


すなわち、為末さんは、
自らのブランドポジションを明確に設定し、
そのポジションに合うブランドイメージ構築
するためのコミュニケーションを実践したと
いうわけです。

まさにマーケティング・コミュニケーション!


以前私が書いた記事、

「天才マーケター島田紳助」

では、紳助さんもまた、
「紳助・竜介」コンビのデビュー当時、

「オール阪神・巨人」や「明石家さんま」

との競合を避け、

「ヒール」(悪役)

というブランドポジションを目指し、
そのためのイメージづくりを意識的に行ったことを
紹介しました。


為末さんに対しても、

天才マーケター

の称号を与えるべきなのかもしれませんね。


そういえば、漫画家の西原理恵子さんも、
一浪して「武蔵野美術大学」に入ったものの、
デッサンさえろくにうまくできない自分の画力のなさを
早期に自覚し、同期の仲間とは違う土俵(ポジション)で
生きることを模索したそうです。


独自のブランドポジションを目指すというのは、
要するに

「キャラがかぶらないようにする」

ということですが、
人に認められるための最大のポイントは
ここにあります。


*為末さんの話しは以下の記事を参考にしました。

私の広告観 陸上400mハードラー 為末 大選手
(宣伝会議、20009.3.1)


*「天才マーケター島田紳助」

投稿者 松尾 順 : 11:05 | コメント (0) | トラックバック

ニールセンのニューロマーケティング新手法

私がマーケティングの世界に踏み込むきっかけとなったのは、
24歳の時入社した世界最大の調査会社、

「ニールセン」(Nielsen)

の日本支社です。


当時、ニールセンの主力事業は、
全国の大手スーパーやコンビニエンスストア、
ドラッグストア、薬局・薬店、化粧品店、酒店、タバコ店
などの「小売店パネル」を使った

「消費財の販売動向調査」

と「テレビ視聴率調査」の2つ。


私は、消費財の販売動向調査の部門に属し、
フィールド調査員の仕事から始め、後に商品データベースの
運用・管理や、POSデータに基づく販売動向レポーティング
サービスの開発プロジェクトに関わったりしました。


さて、現在は、組織体制も事業内容も。
すっかり様変わりしたニールセンですが、最近、

「米ニューロフォーカス社」

を買収して、ニューロマーケティングの分野に
参入しています。


「ニューロマーケティング」とは、
簡単に言えば、脳内の変化を直接測定することで、
消費者の広告などへの反応をより正確に把握しようと
するもの。


ニューロフォーカス社の測定手法は、
一般に用いられている

「fMRI」(機能的磁気共鳴画像法)

ではありません。


「EEG」(エレクトロエンセファログラム)

という装置です。


「EEG」の場合、実験に協力する被験者は、
頭全体を覆うニット帽のような帽子をかぶります。

この帽子には、64個のセンサーがつけてあって、
脳内の64部位の「脳波」を1秒当たり

2,000回

測定できるのだそうです。


fMRIではなく、EEGを利用するメリットは、
ひとつは「脳波」を測定するため、

「脳内の血流」

の変化を測定するfMRIと違って、
広告などの外的刺激に対する反応における

時間的ずれ

が発生しにくいこと。


もう一つは、帽子をかぶるだけなので、
普段の生活に近い、自然な状態で測定テストを
受けることができる点です。


fMRIの場合、巨大な装置の中に、
横たわった形で入らなければならないため、
普段とは異なる不自然な環境での実験となります。

例えば、清涼飲料水を飲む時の脳の反応を探りたい場合、
横になっているので、ストローで飲んでもらうしかない
といったことになるのです。


さて、EEGで測定する指標は以下の3つです。

・注意力 Attention
・感情移入度/関与度 Emotional Engagement
・記憶保持度 Memory Retention
 


すなわち、広告などを見た時に、

・どれだけ注意を引かれたか
・どれだけ感情が動かされたか(関心や意欲が高まったか)
・どれだけ記憶に残ったか

の3つの視点で脳内の変化を見るということですね。


ちなみに、この3項目は、
ニューロマーケティングの手法以前から行われてきた

「消費者アンケート調査」

による広告評価でも当然ながら必須測定項目でした。


なぜなら、広告制作サイドとしては、

「AIDMA」

の考え方に基づいて表現を考えるからですね。


A → Attention(注意)
I → Interest(関心)
D → Desire(欲求)
M → Memory(記憶)
A → Action(行動)


以前の私のニューロマーケティングでも指摘しましたが、
調査票(質問紙)によるアンケートで、

・注意力 Attention
・感情移入度/関与度 Emotional Engagement
・記憶保持度 Memory Retention 

といった項目を自分で判断して答えてもらうのは
限界がありました。

自分自身のこととはいえ、
反応の強さを正確に答えるのは難しいですからね。


末尾に示した日経ビジネスオンラインの記事では、
日経ビジネスの記者が被験者になってEEGによる実験を
受けてみた様子が動画で見ることができます。

実験を受けた記者自身は、
あまり自覚できていませんでしたが、
脳波の動きを示すグラフを見ると、
視聴した広告に対する反応の強弱の変化が
一目瞭然!

広告のどのあたりが改善すべき点であるかが
把握しやすい調査結果が得られることがわかります。


消費者の立場としては
ちょっと怖いというか、いやだなあという不安が
よぎりますが、マーケターとしては実に興味深い。

バナー広告のニューロマーケティングによる
評価などぜひやってみたいです。


(参考)

*記者が体験した「広告評価」の“威力”

*特集「ニューロマーケティング」は万能か
 (宣伝会議、2008.12.1)

*ニールセン・カンパニー
http://jp.nielsen.com/site/index.shtml


(過去関連記事)

*ホンネが読める?ニューロマーケティング(1)

*ホンネが読める?ニューロマーケティング(2)

*ニューロマーケティング コークvsペプシ

投稿者 松尾 順 : 16:09 | コメント (1) | トラックバック

会場調査の事前リクルーティング

都内に住んでる方は
しょっちゅう遭遇されてると思います。

渋谷、新宿、銀座の街頭や私鉄沿線の駅前などで、
おばさんたち(失礼、妙齢の女性たち)が道行く人に

「アンケートご協力ください」

ってやつ。


あれ、会場調査(CLT:Central Location Test)です。

タバコやお酒など嗜好品の新製品の調査が多いですかね。


アンケート協力を承諾すると、
近くの会場に案内されます。

そして、対象商品を試した後、
所定のアンケートに回答するだけです。

所要時間は長くても30分程度。謝礼は数千円です。
ちょっと時間があればいい小遣い稼ぎになりますよ。


会場調査は、
私もたまに企画・実施することがあります。

ただ残念なのは、アンケート協力率が低いんですよね。

そもそもおばさんたち(リクルーター)の声かけに立ち止まって、
アンケートの主旨を聴いてくれることすらほとんどしてくれない。

キャッチセールとかの
下心アリのアンケート依頼も多いですから、
最初から避けられてしまうのでしょう。


調査を実施する側としては
アンケートの目標回収数(100件とか)があるため、
協力者が順調に増えないと胃が痛くなってきます。


というわけで最近は、
事前にネットモニターで調査対象者を絞り込み、
指定の日時に所定の会場に出向いてアンケートに
協力してくれる人を確保して実施する方法が
増えているようです。


もちろん、調査会場周辺の通行人ならではの特性
(青山を歩いているファッションセンスのいい女性限定とか)
が調査対象者抽出の条件に入る場合は、上記のような

「事前リクルーティング」

の方法は採用できませんが。

投稿者 松尾 順 : 12:30 | コメント (0) | トラックバック