私がホワイトハウスで学んだすべてのこと

ブッシュ前米大統領は、
これからどうするんでしょうか?

自伝は書く予定でしたっけ?


ブッシュ氏は当初から、
あれやこれやでずいぶんいじられる
大統領でしたよね。

日本の現総理以上だったかも・・・


ただ、引退間際の記者会見での靴投げ事件では、
意外な運動神経の良さを示してくれました。

あれ、もしまともに顔にぶつけられでもしていたら、
ある意味、彼らしい情けないエピソードとして
語り継がれたことでしょう・・・!


ところで、米国の雑貨店には、
ブッシュ氏の顔写真が表紙になっている

『Everything I learned in the White House』
(私がホワイトハウスで学んだすべてのこと)

という本が売られているそうです。


中身は白紙。つまりノートなんですけど。
彼は、何も学ばなかったという強烈な皮肉!

投稿者 松尾 順 : 14:30 | コメント (0) | トラックバック

男の視線は女性のどこに注がれるのか?

先日の記事(09/01/26)、

「できそこないの男たちが美しくなろうとするのはなぜか」

で書きましたが、
人間の場合、メスがオスを選ぶ他の多くの動物たちと違い、
男性が女性を選ぶ立場でした。(いまでも大勢はそうですが!)


おそらくこのためでしょうか、
最新の脳科学研究によれば、男性が好みの女性を選ぶ時、

「視覚」

に関係する脳の特定部位が特に活性化するのだそうです。


ちなみに、女性の場合、好みの男性を選ぶ際、

「言語」と「記憶」

に関係した部位が活性化します。


さて、男性が女性を選ぶ際に

「視覚」

を重視するということについては、
男性の方なら素直に「確かに!」とうなずけるでしょう。


では、男性は、特に女性の「どこ」に
視線を注ぐのでしょうか?

それは基本的には

「腰のくびれ度合い」(ウエストライン)

です。


人によって、

太めが好き、細い方が好き・・・

と体型に対する好みの個人差はあっても、

「腰がくびれているかどうか」

を男性はとても重視するのです。
(意識的にも、無意識的にも)


なぜ腰のくびれを男性が重視するのか?

これは、くびれ度合いが

「妊娠適齢期」

を表わすサインになるからだと考えられています。


女性は成長するにつれ、
女性ホルモンの影響によって、

「ボン(バスト)、キュ(ウエスト)、ボン(ヒップ)」

の体型へと変化していきます。

ただ、中年期以降は女性ホルモンが減少するため、
こうしたメリハリは残念ながら失われていきます。


したがって、最も腰が‘キュッ’となっている年齢が
ちょうど妊娠に適した時期となることから、
自分の遺伝子をデリバリーしたい男性は、
女性の腰のくびれ度合いで最適なタイミングを判断し、
求愛する女性を選ぶというわけです。


長い間、「選ばれる性」であり、したがって
「見られる性」であった女性が、とりわけ

「ウエストライン」

を磨くことに命を懸けてきたのも、
当然の成り行きだったと言えますかね。


ところで、長い間「オス優位」が
続いてきた人間社会において、

「見られる性」

としての女性は、どうしても

「身体的外観」

に関心を集中しがちになります。

この傾向のことを心理学では

「自己対象化」

と呼びます。


これは、別の言い方をすれば、

「自分が第三者からどう見えているか」

を常に考えてしまうということです。

この傾向が行き過ぎると、
しばしば外見を良く見せようとすること
以外の活動への関心を低下させる結果に
つながることがわかっています。


こんな心理学の実験があります。

さまざまな衣料品(厚手のセーターから水着まで)
を試着室で着てもらった後で、難しい数学試験を
受けてもらうというものです。


実験に参加した人たちのうち、
水着を着た人は、男性、女性のどちらも

「自意識過剰状態」(=自己対象化)

が見られました。

裸に近い状態ですから、どうしても

自分の体型

がどう見えるかに関心が向かってしまったわけですね。


さて試着後の数学の試験の結果ですが、
男性の場合、厚着だろうが薄着だろうが、
試験の点数に差はありませんでした。

ところが、女性の場合、
薄着になればなるほど点数が低下したのです。

外見を気にする意識が、
他のことに集中する気持ちを低下させてしまう
自己対象化の傾向は、女性において顕著なことが
検証されたわけです。


よく、難しい資格試験等の勉強のため一時的に

‘女を捨てて’(=外見にかまわない)

がんばったという女性がいますが、
女性の場合、まさにそうしないと他の活動への集中が
難しいということなんでしょうね。


そういえば、男性の場合、

‘男を捨てて’

何かをがんばるということはありませんね。


さて、女性の地位向上により、男性が

「選ばれる性」、すなわち「見られる性」

へとなりつつある現在、
外見ばかりに気をとられて他のことに身が入らない
男性も増えつつあるんでしょうかね?


(参考情報・文献)

*NHKスペシャル
 シリーズ 女と男 最新科学が読み解く性
http://www.nhk.or.jp/woman-man/

*『ヒルガードの心理学(第14版)』

投稿者 松尾 順 : 10:58 | コメント (4) | トラックバック

ワニの肉はおいしいか?

いや実際、ワニの肉は結構いけますよ。

以前、レッドロブスターで

「オーストラリア料理フェア」

をやっていた頃、

「ワニ肉の串焼き」

みたいなメニューがあったので、
たまにオーダーしてました。

淡白で癖のない味、
鶏肉に近い食感だったことを覚えています。

鶏肉に近いと言えば、
食用カエルの肉もそんな感じですね。


静岡では「食用ワニ」の養殖も行われているとか。

ワニ肉は高たんぱく、低カロリー、コラーゲン、
DHA(ドコサヘキサエン酸)も豊富で、
身体にいいとされている成分が多いのだそうです。
(R25、2008.12.11)


とはいえ、多くの人は、
あのワニのグロテスクな肢体を想像してしまうと、

「おいしくなさそう」

という先入観を持ってしまいそうですね。

そして、この先入観があるがゆえに、
食べてもあまりおいしく感じないということに
なりそうです。


ではワニ肉の普及のためにはどんな工夫を
したらいいでしょうか?


『予想どおりに不合理』
(ダン・アリエリー著、熊谷淳子訳、早川書房)

には、この答えのヒントになりそうな実験が
紹介されています。


MIT(ミシガン工科大学)内にあるパブ

「マディー・チャールズ」

において行われた実験です。

アリエリー教授は、やってきた客(学生たち)に
以下の2種類のビールを試飲してもらい、
もし大きなグラスで飲むならどちらがいいか選ばせました。

・バドワイザー
・MITブリュー


MITブリューは、
バドワイザーにバルサミコ酢を1オンス(30ml)当たり2滴
加えた実験用オリジナルビールです。


MITブリューが

「バルサミコ酢入りビール」

だと事前に知らされないで飲んだ学生の中には、喜んで

「MITブリュー」

を選んだ者がいました。
(つまり、酢によってビールの味がまずくなっていたわけでは
 ありません。むしろ、かくし味でおいしく感じる可能性もありました。)


ところが、試飲する前に

「バルサミコ酢入り」

だと言われた人は「MITブリュー」を飲むとき
いかにも酸っぱそうな顔をし、大きなグラスに入れてもらう
ビールとしては、ノーマルなバドワイザーを選んだのです。


この実験は、人は自分が予測したとおりに認識してしまうこと、
今回で言えば、

「酢入りのビールなんてまずいに違いない」

という先入観に引っ張られた反応をしてしまうということが
実証されたということですね。


アリエリー氏はさらに追加の実験をしました。

まず何も教えずに「MITブリュー」を飲んでもらいます。
その後、これは実はバルサミコ酢入りなんだと伝えるのです。

すると、酢入りと聞いた後でも、
何も知らないで飲んだ時と変わらずに

MITブリュー

を気に入って選んだのです。

つまり、先入観なしで飲んで「おいしい」と思ったら、
その後で「酢入り」の事実を聞かされてもその認識は
変わらなかったということです。


さてこの実験に基づくなら、ワニ肉の普及のためには、

「ワニ肉と教えないでともかく試食してもらう」

という工夫が望ましいことがわかりますね。


考えてみれば、ウニ、ナマコなど、
冷静になって眺めてみれば見た目気持ち悪い生き物を
私たちは喜んで食べていますよね。
(私は苦手ですけど・・・)

まずは、否定的な予測をさせないで試してもらう、
というのがワニ肉の本当のおいしさを味わってもらうために
有効なのです。外見はじきに慣れる。


なお、上記の実験は、

「ブランディング」

の有効性を支持するものでもありますね。


ペプシ・コーラがコカ・コーラになかなか勝てないのは、
長年のブランディングを通じて、

「コカ・コーラのほうがおいしい、ほんもの」

という予測(ブランドイメージ)を
多くの消費者に持たせることに成功しているからです。


『予想どおりに不合理』
(ダン・アリエリー著、熊谷淳子訳、早川書房)

投稿者 松尾 順 : 10:35 | コメント (1) | トラックバック

できそこないの男たちが美しくなろうとするのはなぜか?

分子生物学者の福岡伸一氏によれば、

「オトコ(オス)は、メスが自分の遺伝子を他のメスに
 伝えるための‘使いっぱしり’にすぎない」

のだそうです。


本来、生物はすべて「メス」として発生します。

そして、メスだけでも、
自分の遺伝子を単純コピーすることで
子孫を残すことは可能なのです。
(無性生殖)

実際そうしている生物種がいますね。


ただ、同じ遺伝子を持つ子供たちだと、
強力な病原体などが登場すると、
一網打尽でやられ、全滅してしまうかもしれません。


そこで、メスの「できそこない」とも言える

「オス」

を生み出し、自分の遺伝子を他の「娘」のもとに運ばせる。

そして、

「自分」と「その娘」の遺伝子

を交尾によって混ぜ合わせた子孫を残すことで、
多様性を高め、病原菌や他の脅威を乗り切ることができる

「有性生殖」

というメカニズムを発生させたというわけですね。


オスは、他の娘に遺伝子を無事運び終えれば、
とりあえず役割は果たしたことになります。

交尾が終われば早々と死んだり、
メスに食べられてしまう生物がいるのは
この本来のオスの存在意義を表しているといえます。


ところが、多くのオスは、
運び屋としての役割を終えても長生きします。

福岡氏によれば、
これはメスが欲張ったためだとのこと。

オスには、生殖以外にも、
自分を守らせたり、エサをとってこさせたりと、
いろいろと使い道がある。

そこで、オスも長生きさせてもらえるように
なっていったということらしいです。


さて、冒頭に述べたように、
そもそも、生物においては「メス」が主役であり、
オスは単なる運び屋ですから、どのオスに
自分の遺伝子を託すかはメスが選びます。

メスとしては、
生命力にあふれた美しいオスを選びたい。

クジャクなどの鳥類を想像してもらえれば
おわかりになると思いますが、多くの生物では

オスの方が美しい

のはそのためです。

選ばれるためには、
美しくなければならないから。


ところが、人間の場合、女性のほうが美しく、
また美を追求する志向が強いですね。


これは、女性を上回る体力を持つオスが、
「力」によって地位や財産を築き、
生活力を高めることに成功したからだと
考えられています。

力では勝てず、生活力を持てなかった女性は
男性にしたがうしかありませんでした。

このため、人間においては、
例外的に男性が女性を選ぶ権利を得たというわけです。

古代ギリシャでは、女性は男性のできそこないだと
考えられていたほど。日本でも「男尊女卑」の発想は、
根強いものがありますね。

つまり、人間の場合、
生物の本来のあり方とは逆転現象を起こしたわけです。


しかし、近年、先進国では、強さを求めず、
むしろ自らを磨き、美しくなることを志向する男性が
増加中です。

これは進化論的に言えば、男性が再び、

「選ばれる性」

になりつつあることを示唆しているのかもしれません。


この背景には、本来生命力の強い女性が、
社会進出によって十分な経済力を得るように
なってきた点があります。

自活能力を高めることで、
再び「選ぶ性」になった人間の女性にとって、
男性に求めるのは、生活力につながる強さよりも、

美しさや優しさ

なのです。


基本的に中身重視であり、
外見に無頓着な私たち、男性にとっては、
なかなかつらい時代がやってきましたね・・・(笑)


(参考書籍)

『できそこないの男たち』
(福岡伸一著、光文社新書)

『通勤電車の人間行動学
 男がきれいになる時代 女がかわいくなる時代』
(小林朋道著、創流出版)

投稿者 松尾 順 : 17:44 | コメント (2) | トラックバック

「非正社員」のネガティブな響き

昨今の景気低迷で、
突然派遣を打ち切られたり(派遣切り)、
契約更新が見送られて(雇い止め)、
生活に困っている人たちのことが社会問題に
なっていますね。


さて、派遣社員やパート・アルバイトのことを一般に

「非正規社員」

と総称しますが、マスメディアでは、

「非正社員」

という言葉も同じ意味で多く使われています。


以前も書いた覚えがありますけど、

「非正社員」

いう言葉にはネガティブなひびきがあると思います。

「非正社員」というと、そもそも
まっとうな社会人じゃないみたいに聞こえるため、
あまり使うべきではない、と思うのは私だけでしょうか。


最近、日経新聞では

「非正規社員」

で用語がほぼ統一され、

「非正社員」

はほとんど使われなくなりましたけど、
こうした微妙な印象に配慮した結果でしょうかね・・・?

投稿者 松尾 順 : 09:59 | コメント (0) | トラックバック

便乗祝日!?

とうとうオバマ新大統領誕生!

予備選のころから続いたお祭り騒ぎも、
ようやくひと段落。

Now, let's get down to business!
さあ、仕事に取りかかろうぜ!

といったところでしょうか。


今回の大統領就任まで、わが日本でも、
福井県・小浜市が勝手に応援して楽しんできましたね。


“小浜の中心で‘オバマ’と叫ぶ”

 (オバマを勝手に応援する会公式サイトより)


まあ、「オバマまんじゅう」を作ったり、
フラダンスをやるくらいは可愛いものです。


オバマ氏の出身地、ケニアでは大統領当選日を

「オバマ・デー」

として国民の祝日に制定しています。

これはまあ当然ですね。


ところが、オバマ氏とのつながりがよくわからない
アフリカの他国、たとえばタンザニアのオバマ・デーは
2日間、ガーナでは4日間の祝日ができてます。


便乗するにもほどがあります・・・

なんでもいいから、とにかく休みが欲しいのか?

投稿者 松尾 順 : 10:00 | コメント (0) | トラックバック

ハイタッチな口コミ・マーケティング~カイタッチ・プロジェクト

「愛」とはなにか?


心理学では次のように説明されることがあります。

「愛とは、相手本位に時間を与えることである」

つまり、相手のために、
自分の限られた時間を奉げることです。

私たちにとって最もうれしいのは、
金さえ払えば誰でも買えるモノをもらうよりも、
わざわざ時間を取って助けてくれたり、一緒に過ごしてくれること。
(ちなみに、相手が望まないのに自分の時間を奉げるのは、
 単なる「ストーカー」ですね)


ビジネスにおいても同じです。

へたな「おまけ」や「プレゼント」も、
ないよりはマシですが、簡単でもいいから、
手書きのカードをもらうほうがよほどうれしい!

自分のために時間を割いてくれたということが
わかるから。

こうした意味で、
キッチン用品やカミソリ等のメーカー、貝印が
昨年(08年)10月から続けている、

カイタッチ・プロジェクト - KAI TOUCH Project! -  

がなかなか面白いと思います。


当プロジェクトは、端的には

「ネット口コミ促進施策」

と言えますが、
従来になかった取り組みを行っています。


それは、上記プロジェクトサイトで出されている
各種のお題にユーザーがブログで答えると、
担当者がその回答を探し出して当該ブログを訪問、
個別のコメントをつけるという点です


当プロジェクトの対象はエンドユーザーであることから、
このプロジェクトが成功すればするほど、
担当者の負荷は相当なものになります。

一日中コメント対応に追われるという状況に
なりかねません。ひょっとしたら、もうそんな状況に
近づいているかも知れませんね。


わたしも、たまたま年末に、

貝印の替刃式カミソリ

を購入し利用していますので、
お題のひとつにブログで答えましたが、
まだコメントがつきません!(笑)

・カイタッチ・プロジェクト!(KAI TOUCH Project!)参加


あるブロガーは、お金をもらうよりも、
担当者からコメントをもらうほうがよほど
記事を書く気になると言っていますが、私も同感です。


マーケティングは、

「効率性」

を重視しすぎるあまり、
しばしば、いかに手間をかけないか、
楽をするかを考えがちになりますよね。

効率性を追求することはもちろん間違いではありません。


しかし、お客さまの信頼や好意を得るためには、

誠実な愛

を行動で示すことが最も有効です。

それには、お金ではなく、
もっと時間を使うべきなのです。

この場合、

効率性の追求

をあきらめなければならない。


カイタッチプロジェクトは、
当の担当者にとっては、目先の成果にもすぐには
つながりにくいし、正直面倒な作業かもしれません。

しかし、こうした

ハイタッチなコミュニケーション

は長く続ければ続けるほど、
見返りが大きくなっていきます。

貝印製品について書かれたブログ記事が増えるだけでなく、
そこには、貝印という顔のない法人ではない、
生身の人間である担当者の人となりがうかがえるコメントも
増えていく。


半永久的にネットに残り続けるこうした口コミ情報が、
貝印のブランドイメージアップに漢方薬のようにじわじわと
効くのではないでしょうか?


*カイタッチ・プロジェクト
 KAI TOUCH Project!
http://www.kai-group.com/jp/kaitouch/

投稿者 松尾 順 : 13:50 | コメント (1) | トラックバック

思わず買いたくなる?佐藤さんCD

‘カクテルパーティ効果’ってご存知ですか?


立食パーティなどでたくさんの人が集まっていて、
ざわつく部屋の中で話している時、
他のグループの話し声はまったく聞こえないものです。

ところが、

“実は、松尾さんがね・・・”

などと、自分の名前が呼ばれると、
突然、鮮明に隣の人たちの話し声が聞こえてきます。


つまり、自分に関係がありそうなことだとわかると、
瞬時に注意を向けることができる働きのことを

「カクテルパーティ効果」

というんですね。

人にとって「自分」が最大の関心事。
自分の名前は聞き逃せません。

また、常連になってるお店に行ってうれしいのは、

「あら、松尾さん、いらっしゃい」

などと、名前を呼んで迎えてくれることですよね。

ですから、

「あなたは私(当店)の大切なお客さまです」

という気持ちを顧客に伝える第一歩は、
そのお客さんの名前を呼んであげることです。

これは、トップセールスパーソンなら
誰もが実践している点です。


さて、こうした「名前」の持つパワーを活かした
CDが1月28日に発売されますね!

『佐藤さんCD』

です。


女性の声優やアイドルが出演する当CDには、

「佐藤さんのことが大好きです」
「佐藤君のバカバカバカ・・・」
「佐藤先輩、尊敬しています」
「私の好きなものは、ケーキと・・・佐藤さん・・・」
「どんな病気も私が治してあげるね、佐藤さん」

などと、佐藤さんをメロメロにするセリフが
たっぷり収録されています。


開発・販売元の「NRPRO」によれば、

“ある佐藤さんという男性に「僕のためのCDを作って」
 となんとなく言われたことがきっかけ”

とのこと。


全国の「佐藤さん」に明確にターゲティングされた
当CDですが、果たしてどの程度売れますかね?


販売価格は、1,200円(税込)。

衝動買いできるギリギリの価格に抑えたそうですが、
「1000円ポッキリ!」が良かったのでは?


佐藤さんの苗字を持つ人は、
全国に約200万人いるそうです。

当CDの内容的には、男性(中学生以上?)が
メインターゲットですから、その半分以下として
100万人弱が潜在市場規模でしょうか。

購入率1%で1万人、2%で2万人くらいの販売数。
初期コストは十分回収できそうな感じです。


「佐藤さんCD」は一見バカバカしい企画ではあります。
しかし、着想は素晴らしいと思います。

佐藤さんの気は確実に引くでしょうし、
このCDを聞けば、くだらないと思いつつも脳内では

「ドーパミン」

が放出され、元気・やる気が高まるのは間違いありません。


なお、2月には「鈴木さんCD」、
3月には「高橋さんCD」が発売予定だそうです。


おそらく、

「松尾さんCD」

は出ないでしょうね・・・
潜在市場規模が小さすぎるから。


*発売元 NR PRO
http://nrpro.co.jp/

*佐藤さんCD

投稿者 松尾 順 : 11:42 | コメント (0) | トラックバック

レーザーディスク再生機の終わり

パイオニアが、

レーザーディスク(LD)再生機

の生産を今年(09年)3月末で終了しますね。


「とうとう生産中止か・・・」

という感慨よりも、

「まだ、作ってたの・・・?」

という驚きの方が大きいなあ・・・


最盛期の100分の1とはいえ昨年(08年)も

4,000台

は売れていたとのこと。

誰が、何のために買ったんでしょうね?

投稿者 松尾 順 : 07:55 | コメント (2) | トラックバック

花粉症はガン予防に効果あり?ハァ?

年が明けて、
花粉症の季節も近づいてきましたねぇ・・・

私も以前より症状が軽くなったものの、
毎年、花粉症に悩まされるひとりなので戦々恐々です。


さて、以下は先日掲載された、
ダイヤモンドオンラインの記事タイトルです。


日本の国民病「花粉症」に、
“ガン予防の効果あり”という意外なメリット


このタイトル、素直に読むと、

「花粉症になれば、ガンが予防できる」

と「花粉症」と「ガン」の間に因果関係があるように
解釈できてしまいますよね。


記事の内容を読むと、
実際のところはそんなことではありません・・・!


花粉症のようなアレルギー疾患は、
通常は無害な物質や刺激に対して「免疫システム」
が過剰に反応するために発生するもの。

つまり、

免疫システムが敏感すぎる

ということです。

こうした敏感な免疫システムを持っている人
すなわち、「アレルギー症状を持つ人」は、
通常細胞が異常細胞化した

「ガン細胞」

を早めに察知して撃退する能力も高い。

このため、ガンになりにくいと考えられているそうです。


まあ、花粉症患者にとっては、
「症状」は軽くならないものの、
少なくとも「気分」は軽くしてもらえる記事です。


ただ、当該記事のタイトルは
なんともミスリーディングなものですよね。

上述したように、

「免疫システムが敏感である」
(=体内の異常物質に対する監視機能が強い)

という共通の「原因」によって

・花粉症になる(アレルギーが起きる)
・ガンになりにくい(ガンが予防できる)

という2つの「結果」がもたらされています。


したがって、

花粉症とガン予防の間には、

「相関関係」
(同時に発生や変化が観察される関係)

はあっても、

「因果関係」
(一方が原因で一方が結果の関係)

はないのです。

要するに、花粉症になれば、
ガン予防ができるということにはなりません。


もちろん、当該記事のタイトル、

日本の国民病「花粉症」に、
“ガン予防の効果あり”という意外なメリット

をそのまま素直に受け取った方は、
そう多くないでしょうけどね。

明らかに変ですからね。


しかし、世の中には、
単なる「相関関係」に過ぎない現象について

「因果関係」

があるかのように言われ、
人々がすっかり信じきっていることが
山ほどあります。


マスコミが掲載する記事の場合、
目を引くキャッチーなタイトルにするため、
当該記事タイトルのような、あたかも因果関係が
あるような表現を狙ってつけることが多いのです。

また記事の内容自体も、
明確な根拠もなく、因果関係があるような説明を
されているものをよく見かけます。

ネット記事の場合、特にこの傾向が顕著のようです。


ですから、各種記事のタイトルや内容に、
因果関係について書かれているものがあったら、

「それは本当に原因と結果の関係があるのかな?」

と確実に言えるのかどうか、疑いながら読んでくださいね。

論理的思考能力を鍛える、
よいトレーニングにもなりますよ。


*ダイヤモンドオンライン
 知って得する! カラダとココロの「健康ナビ」
 第6回(2009年01月14日)

 日本の国民病「花粉症」に、
 “ガン予防の効果あり”という意外なメリット

投稿者 松尾 順 : 14:43 | コメント (0) | トラックバック

「不気味の谷」は本当にあるのか?

ディズニー映画、

『WALL-E ウォーリー』

はご覧になりましたか?


ゴミ処理ロボットの

「ウォーリー」

と、彼が一目ぼれした卵型の美しいロボット

「イブ」

のラブストーリー。


どちらも見かけはいかにも「ロボット」ですが、
とても愛らしいですよね!

2体の顔には「目」しかなく、
口は持たないため言葉はしゃべれません。
(機械音は出せますが)

でも、目の動きだけで、
不思議と十分に気持ちが伝わるんですよね・・・

思わず泣いちゃった人もいるのでは!


同映画では後半、
CG(コンピュータグラフィックス)で制作された

未来の人間たち

が登場します。

生活の全てにおいて、
コンピューターと各種ロボットたちが面倒をみてくれるため、
皆、移動可能なチェアに座りっぱなしの毎日。

このため、ぶくぶくと太り、
すっかり堕落してしまった人々という設定になっています。

ただ、映画を見た方ならお分かりいただけると思いますが、
CGの人間たちはかなり「リアル」に描かれているため、
ちょっと気持ち悪いですよね。


さて、人型ロボットやアニメのキャラクターが、
本物の人間のイメージにかぎりなく近くなればなるほど、

「不気味だ・・・」

と感じられてしまい、
そのロボットやキャラクターに対する親しみやすさが低下する
現象のことを

「不気味の谷」

と呼びます。


この考え方を提唱したのは、
ロボット工学者の森政弘氏でした。

森氏は、人型ロボットを制作するに当たっては、

「不気味の谷」

に落ちないよう、むしろ人間そっくりになるのを
避けるべきだと提唱したのです。


ところが最近は、技術力が向上したこともあり、
この「不気味の谷」の理論を無視して、

「人間そっくりのロボット」

が制作されるようになってきているそうです。
(日経サイエンス、2009年2月号)

実際、本物の皮膚のようなシリコーン樹脂を利用した
6,500ドルもするセックス人形が誕生しているとか。


最近の研究では、「不気味さ」を感じる度合いは、
ロボットやキャラクターのリアルさとは関係していない
という実験結果もあるそうです。

「不気味の谷」

とは矛盾する結果ですよね。


とはいえ、
ロボットやキャラクターがリアルになればなるほど、

「目や頭などの大きさを変えられる許容範囲が狭くなる」

こともわかっています。

これは、

「不健康や生殖不能」

を示すような異常な形質を
人が本来的に忌避するようにできているためではないか
と考えられています。


ウォーリーと同じCGアニメ映画、

『ポーラー・エクスプレス』

でも、リアルな人のキャラクターが薄気味悪いと
批判されました。

そこで、同映画製作責任者を務めたソニー・ピクチャーズ・
イメージワークスのマクドナルド氏は、今後の作品では
「眼球の動き」を工夫することにしています。

“目さえちゃんとしていれば、ほかはどうでもいい”

とのこと。

どうやら、不気味さを避けるポイントは

「目の動き」

だと経験的にわかったようです。


「不気味の谷」が本当に存在するのかについては、
まだ結論は出ていませんが、なかなか興味深いですよね。


WALL-E ウォーリー公式サイト
http://www.disney.co.jp/movies/wall-e/

(参考)
日経サイエンス(2009年2月号)
ニューススキャン

投稿者 松尾 順 : 12:59 | コメント (0) | トラックバック

カイタッチ・プロジェクト!(KAI TOUCH PROJECT!)参加

貝印が実施しているWebプロジェクト、

「KAI TOUCH PROJECT」
http://www.kai-group.com/jp/kaitouch/

に参加します。

これは、KAI TOUCH PROJECTで出されているお題に
自分のブログ上で答えると、貝印の担当者がコメント
しにきてくれるというものです。

カイタッチ・プロジェクト!
#002 あなたのお宅にも貝印製品
-----------------------------------

K-4 TETRAシリーズ

-----------------------------------
(リンクを許可)


私は、かれこれ約20年間、

ひげ(口ひげ、あごひげ)

を伸ばしています。

1年前までの手入れ方法は、はさみでささっと切るだけ。
できるだけ長いままにしたかったのです。

ところが、ある人に言わせると私の顔は、

「満月の夜に変身途中のオオカミ男」

でした。
つまり、暑苦しく見苦しいヒゲだったわけです。


そこで、1年ほど前にイメチェン!

電動シェーバーを購入し、
ヒゲを思い切り短く、軽めのヒゲオヤジに変身したのです。

さすがにもはや「オオカミ男」とは言われません・・・!


さらに、昨年末には、
20年ぶりに貝印の替え刃式カミソリと
シェービングクリームを購入しました。

電動シェーバでは無理な、
ほおのあたりのひげをさっぱり剃りあげることで、

つるつる⇔ジョリジョリ

のメリハリのあるヒゲ面(笑)を現在は維持しています。


替え刃式カミソリは外資系メーカーのイメージが強いですが、
貝印のTETRAは、ロボットライクというか、メカニカルな形状が
店頭で目を引きました。

なにしろ20年ぶりにカミソリを使うので、
顔が血だらけになるのではないかとちょっと不安でしたが、
TETRAはグリップ部分が持ちやすくスムーズに扱えました。

TETRA、これからも愛用させていただきます。

投稿者 松尾 順 : 19:08 | コメント (1) | トラックバック

ビジョナリーハンドブック(5):時間のパラドックス

時間のパラドックスは、端的には次の一文で表せます。


“短期的に成功を収めるためには、
 長期的な視点で考える必要がある”

- To succeed in the short term,
   you need to think long term.


そして、その逆もまた真なりです。


“現代において長期的に成功するためには、
 今過ぎ去っていく毎分毎分を細かくマネージする必要がある”

- To succeed in the long term today,
  you need to micromanage every passing minute.


第2回のビジョナリーのパラドックスでご説明したように、
現在と未来は、しばしばお互いに相容れません。

例えば、未来のための新商品開発は、
現在の既存商品の顧客を奪うことにつながりやすく、
事業の収益基盤を不安定にする可能性が高いですよね。

一方、現在の事業にのみに経営資源を投下し続けると、
未来の収益源を育てることに出遅れてしまい、
将来において淘汰されてしまう可能性が高くなります。


したがって、事業を未来にわたって継続するためには、
短期的な視点と長期的な視点を併せ持つこと、すなわち

「2元性」(Durality)

が必要なのです。


ただ、1人の人間が、

「現在」と「未来」

という2つの時制の中で、
同時並行的に生きるのは簡単ではありません。


ビジョナリーハンドブックでは触れられていませんが、
脳科学や心理学の研究によれば、人は本来的には

「短期志向」

なのだそうです。

動物はおしなべて短期志向です。

なぜなら、今、飢えないためには、
目先の獲物をつかまえることが最優先だからです。

人間もまた、太古の狩猟時代に経験した飢えに対する
恐怖から、「短期志向」がDNAに刻み込まれています。

ダイエットが続かないのは、
「体重減」という長期的な目標よりも、
目の前のケーキ1個を食べたいという短期的な欲求に、
私たちが屈しやすいからですね。

したがって、ビジネスにおいても、
長期的な視点で考え、また行動することは、
相当意識的に行う必要があります。


『The Visionary's Handbook:Nine Paradoxes That Will Shape
The Future of Your Business』
(Watts Wacker,Jim Taylor,Howard B. Means著,Harperbusiness)

・ハードカバー


*ペーパーバックもあります。
*現在は、出品者からしか手に入らないようです。

投稿者 松尾 順 : 13:31 | コメント (0) | トラックバック

「リエータカフェ」サービス終了!

ダイエット食品、「リエータ」の購入者を対象としたSNS、

「リエータカフェ」

が今月(09年1月)末でサービス終了だそうです。


おやおや・・・!
やはり、費用対効果の実証が難しかったんですかね。


製品の通信販売も終了。
今後は、ドラッグストアなどリアル店舗での
販売のみになるとのこと。


オンラインを活用した、
顧客つなぎとめ(リテンション)施策の成功例として
評価されていただけに、ちょっと残念です。

投稿者 松尾 順 : 21:50 | コメント (2) | トラックバック

(PR)マーケティング・フレームワークのセミナーご案内

ちょっとおしらせ!


「インサイトナウ」のビジョナリーの1人、
金森努さんがセミナー(インサイトナウ主催)を開催します。

*1月28日(水)13:30~@汐留駅そばの会場


入手した情報を整理・分析するために役立つ各種フレームワーク
の使い方を実践演習を通じて身に付けることができる内容です。

詳細は以下のURLでご覧くださいね!

https://www.insightnow.jp/events/seminar0128


すでに申し込み殺到しているそうです。

募集人数は25名。グループ演習をやるため、
増員はなし。

関心のある方はお早めに!

投稿者 松尾 順 : 13:58 | コメント (0) | トラックバック

足下に不景気の影響がやってきた・・・?

私の事務所の隣のビル1階にあった高級レストランが
昨年末で店を閉めていました。

まだオープンして1年ほど・・・
半年ほど前には大幅な改装をやったばかりでしたし、
突然の閉店という印象です。

とうとう不景気の影響が自分のすぐ足下まで来たか!

などと考えてしまいました・・・!


まあ、不況のせいにするのは簡単ですけど、
正直、この店はサービスがいまいちだったんですよね。

客単価がそれなりに高い店は、
やはりサービスもある程度優れていないと
繰り返し利用する気になりません。


不景気になればなるほど、
たいしたことのない店から切られていくのは当然。

こういう時こそ、
本当に優れている店(企業)だけが生き残るのでしょうね。

投稿者 松尾 順 : 13:55 | コメント (0) | トラックバック

ビジョナリーハンドブック(4):規模のパラドックス

“蝶のように舞い、蜂のように刺す”
 - Float like a butterfly, sting like a bee -


これは、米国ヘビー級プロボクシングにおける
往年のチャンピオン、

モハメド・アリ

の言葉として有名ですよね。


モハメド・アリは、
ヘビー級の相手をKOできる強烈なパワーと同時に、
華麗なフットワークを持っていました。

従来の力任せに殴りかかるだけの他のヘビー級ボクサー
とは一線を画した、このボクシングスタイルによって、
彼は19度もの王座防衛に成功したわけです。


ビジョナリーハンドブックでは、
現代の企業経営の理想的な在り方として、
冒頭のモハメド・アリの比喩ほど適切なものはない
と述べています。


企業は大きくなればなるほど、
できるだけ小さくなるべきであるのです。

ここで「小さくなる」というのは、
そうすることで、環境変化に対してより敏感になり、
また俊敏な動きが可能になるということを意味しています。

特に、マスマーケットが細分化され、いわゆる

「マイクロマーケット」

が多数出現している現代において、
全体としての規模は大きくとも、活動単位としての組織の
大きさは可能な限り小さく構成されるべきでしょう。


この点について、同書では別の面白い比喩を示しています。

それは、大企業の組織は、

「チキンナゲットモデル」

を採用すべきであるということです。

チキンナゲットのような一口サイズまで、
組織を細分化せよということですね。

もし、チキンナゲットモデルの採用が難しい場合、
大企業は鈍重な恐竜のまま止まり、環境の急激な変化に
あっけなく滅びてしまう可能性が高くなるからです。


一方、規模の小さい企業は、
対外的にはより大きく見える必要があります。

ここで大きく見えるというのは、
たとえ小さくとも、業務を最初から終わりまできちんと
完結できるという仕組みを確立しており、顧客として
信頼を寄せることができるということを意味しています。


ですから、小企業の運営は、

「ローストチキンモデル」

を採用しなければなりません。

丸ごと1体の企業として見えるということですね。

このため、組織運営としては、

「万能」

に近いものを求められます。

起業したての会社を想像してもらえればいいのですが、
多くの場合、生産、マーケティング、財務、物流等、
多岐にわたる企業の機能をしばしば一つの組織や人で
こなさなければならないのです。

また、小企業はより外部の環境変化の影響を
受けやすいため、保守的になることは許されません。

積極的に変化を受け止めると同時に、
こちらからも大胆な挑戦をしかけていくことも
必要となります。


このことはとても厳しい試練ですが、
この状況を乗り越えられるかどうかが、
成長の鍵を握っていますよね。


『The Visionary's Handbook:Nine Paradoxes That Will Shape
The Future of Your Business』
(Watts Wacker,Jim Taylor,Howard B. Means著,Harperbusiness)

・ハードカバー


*ペーパーバックもあります。
*現在は、出品者からしか手に入らないようです。

投稿者 松尾 順 : 10:45 | コメント (0) | トラックバック

ビジョナリーハンドブック(3):価値のパラドックス

ビジョナリーハンドブックでは、

「価値のパラドックス」

を説明するために、

「ホットドッグ」

が例として取り上げられています。


販売者にとってのホットドッグの「価値」、端的に言えば

「価格」

は、ホットドッグ用のパンや、
中に入れるソーセージ、レタス等の仕入価格の合計ですよね。


販売者は、
これに自社の費用(店舗賃貸料、人件費など)や
利益分を上乗せした

「販売価格」

を設定して消費者に売るわけですが、
ホットドッグに限らず、同じ製品なのに場所や時間に
よって価格が高い場合があります。

例えば、空港、ホテル、百貨店、観光地などです。


なぜ高い価格設定が可能になるかというと、

・時間がない時にすばやくおなかを満たしたい
・豪華な雰囲気も味わいたい

など、購入者側のニーズが、
製品にもともと備わっている基本的な価値以外にも
あるからですね。


本書の中では議論されていませんが、
マーケティング理論として私も以前紹介したことのある

「価値の構造」

を考えてみれば当然のことではあります。


価値の構造は、一般に以下の4つです。

・基本価値
 当該製品が有する基本的な品質や機能

・便益価値(ベネフィット)
 当該製品の使用や消費によって得られる便益

・感覚価値(情緒価値)
 当該製品を使用・消費するに当たっての感覚的な楽しさ、
 形態的な魅力

・観念価値
 企業の経営方針や製品コンセプト(環境保護など)が
 生み出す価値


大事なことは、販売者ではなく、

「顧客」

こそが、製品の最終的な価値=購入価格を決めるのであり、
それには基本価値以外の要素が考慮されるということです。


ただ、本書で述べられている最も重要な指摘は、
製品の基本価値や購入時の状況(場所、時間など)
だけでなく、

「情報の(量、質)」

によって価値=価格が変化することです。


これは、インターネットが浸透し、
一消費者が手軽に情報収集が行えるようになった現在、
より顕著な傾向になっていると言えるでしょう。


わかりやすい例を挙げましょう。

つい先日、私は近くの家電量販店で、
外付けハードディスクを購入しました。

いつもならネットで調べてから行くところですが、
お正月特価だから安いはずだと勝手に思い込み、
よく調べずに購入しました。

ところが、家に戻り、
インターネットで調べてみると、
もっと安く買えるところがいくらでもありました。

つまり、ネットを活用して情報を集めれば、
同じ製品を安く手に入れることが可能だったわけです。


このことは、売り手、すなわち企業側の立場で言えば、
自社が考える価値にふさわしい価格で売ることが
容易ではないということを意味しますよね。

これが、「価値のパラドックス」です。


では、売り手として、
このパラドックスにどう対処すればいいのでしょうか?

ひとつには、以前から行われてきたことですが、
原材料調達コストや生産コストを削減し、
低価格での販売でも利益を確保できるようにすることが
あります。

しかしコスト削減には限界がありますね。


売り手としてより重要なことは、

消費者の購入サイクル(Buying Cycles of Consumers)

をより深く理解することです。


そうすれば、消費者の

ショッピングのリズム(The rhythm of their shopping)

に応じた価格設定がより適切に行えるようになります。


『The Visionary's Handbook:Nine Paradoxes That Will Shape
The Future of Your Business』
(Watts Wacker,Jim Taylor,Howard B. Means著,Harperbusiness)

・ハードカバー


*ペーパーバックもあります。
*現在は、出品者からしか手に入らないようです。

投稿者 松尾 順 : 08:43 | コメント (0) | トラックバック

ビジョナリーハンドブック(2):毎日のパラドックス

ビジョナリーハンドブックの著者は言います。

“私たちは、複数の現実(multiple realities)が、
 同時に真実であり、また信頼できる世界で生きることを
 学ばなければならない。”

これは、前回の冒頭に述べたこと、つまり、

「この世の中に、絶対的な真理や正解はない」

を受け入れましょうということですね。


具体的な例を挙げましょう。組織の規模についてです。

・組織は大きいほうがよい
・組織は小さいほうがよい

どちらが真理でしょうか、あるいは正解でしょうか?

答えは、どちらも真理であり、正解といえます。

組織は大きいほうが、
簡単には外界の変化の影響を受けにくく、
安定しています。

一方、組織は小さいほうが、
外界の変化に対して機敏に対応できます。

どちらにも優れた点(同時に弱点も)があるので
どちらが正しい、間違っているということは言えません。

もちろん、時と場所、場合によって、
どちらがより最適かというのはありますけどね。


さて、ビジョナリーハンドブックでは、

日々直面する矛盾=
毎日のパラドックス(Paradoxes of The Everyday)

として以下の7つのパラドックスを挙げています。

-------------------------------------

1 価値のパラドックス
- The Paradox of Value -

2 規模のパラドックス
- The Paradox of Size -

3 時間のパラドックス
- The Paradox of Time -

4 競争のパラドックス
- The Paradox of Competition -

5 行動のパラドックス
- The Paradox of Action -

6 リーダーシップのパラドックス
- The Paradox of Leadership -

7 レジャーのパラドックス
- The Paradox of Leisure -

-------------------------------------

今回は、この7つのパラドックスそれぞれについて
ポイントを簡単にご紹介しておきます。


1 価値のパラドックス

商品が本来の持っている固有の価値は、
ますます低下している。

商品の価値は、
ニーズの有無やニーズのタイミングで決まる。


2 規模のパラドックス

あなた(会社)が大きければ大きいほど、
小さくならなければならない。

一方、あなた(会社)が小さければ
小さいほど、大きく見えなければならない。


3 時間のパラドックス

光の速さでは何も起こらない。

短期的な成功のためには、
長期的に考える必要がある。

現在は未来に抵抗する。
したがって、現在と未来の両方を
同時に考慮しなければならない。


4 競争のパラドックス

あなたの最大の競合は、
あなた自身の未来に対する見方である。

敵は、外側だけでなく内側にもいる。


5 行動のパラドックス

あなたは、手に入らないとわかっているものを
目指さなければならない。

未来は、現在思い描いたとおりにはならない。
しかし、自らが描いた未来像への到達を目指して
行動を起こさない限り、未来は創造できない。


6 リーダーシップのパラドックス

先頭に立って率いるためには、
物語の中にいなければならない。

リーダーは、将来のあるべき姿=ビジョンを
追うと同時に、日々の矛盾だらけの現実に
対処しなければならない。


7 レジャーのパラドックス

いい仕事をするためにはよく遊べ。
よく遊ぶためには、よく働け。

仕事と遊びは不可分になりつつある。


次回は、「価値のパラドックス」を掘り下げます。

余談ですが、
私たちは社会に出るまで基本的に

「真理探し」「正解探し」

のトレーニングしか受けませんよね。

ところが、いったん社会にでると、
そこは、矛盾だらけの混沌とした不合理な場所。

多くの若者が、適応に苦労するのも当然ですよね。
(私も、大変な思いをした1人でした・・・)


『The Visionary's Handbook:Nine Paradoxes That Will Shape
The Future of Your Business』
(Watts Wacker,Jim Taylor,Howard B. Means著,Harperbusiness)

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・ペーパーバック1
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投稿者 松尾 順 : 15:11 | コメント (1) | トラックバック

ビジョナリーハンドブック(1):ビジョナリーのパラドックス

ビジョナリーハンドブック(The Visionary's Handbook)は、

「そもそも世の中は矛盾だらけである」

ということを大前提に置いています。

言い換えると、

「この世の中に、絶対的な真理や正解はない」

ということです。


もちろん、「特定の瞬間」や「特定の場所」といった
限定条件付きであれば、

一時的な真理や正解

がありえるかもしれません。

しかし、常に状況・環境が変化し続けているため、
いつでもどこでも、常に通用する真理や正解といったものは
存在しえないのが現実の世界でしょう。


だからこそ、
自分(自社)はこうした前提を踏まえた上で、

状況・環境の変化に応じて最善の選択をし続けること

が必要になってくるわけですね。


さて、ビジョナリーハンドブックが示す

9つのパラドックス(矛盾)

のうち、最初に説明されているのが

「ビジョナリーのパラドックス」

です。


ちなみに、「ビジョナリー」は、日本語では

「先見の人」あるいは「予見の人」

と訳せるでしょうか。


ビジョナリーのパラドックスの第1番目、
それは次のようなものです。

“あなたが描くビジョン(未来像)が、
 より確かな真実(Truth)になればなるほど、
 それは、単に現実の延長で未来を語っているに
 すぎない。”


同書の著者らは、
未来について書かれた本の多くは、

「想像力の失敗作」(failure of imagination)

とこきおろしています。


なぜなら、現在すでに起こりつつある変化を踏まえただけの
ビジョンを語っているに過ぎないことが多いからです。

例えば、世界がネットワークでつながり、
リアルタイムの情報交換ができるようになるというビジョンは、
今日のインターネットの原型である

「ARPANET」

が30年以上も前に構築された瞬間から始まった変化を
敷衍すれば、簡単に予見できたことでした。

こんなビジョンは、未来における変化を見越すという
本来の意味での

「予見」

としてはそれほど価値のあるものではありません。
(私としては、こうしたビジョンも十分に役に立つと
 思いますが・・)


現在の延長線をはみだす多様な未来像を描けてこそ、
真のビジョナリー(先見の人)と呼ぶことができるでしょう。

しかし、これは言うは易し、実際には極めて難しい・・・


もしあなたの予見が確実なものになりつつあったとしたら、
それはもはや予見ではなく、現実に起こりつつある変化を
語っているにすぎないという認識が必要でしょう。


では、2つめのビジョナリーのパラドックスを紹介しましょう。

これは、「イノベーション」への取り組みの難しさを
説明しているものだと言えます。


“あなたが未来をより正しく予測できるようになればなるほど、
 さまざまな面で、現在(の経営)を不安定にさせていく”


例えば近年、コダックや富士フィルムなどのフィルムメーカーは、
デジタルカメラの普及によって、従来の「銀塩フィルム」は、
ごく一部の利用者にのみ必要とされるだけの

「過去の製品」

になってしまうという予測が確実になればなるほど、
未来の技術であるデジタルイメージング関連の技術の
開発と製品化に力を入れざるを得なくなりました。

これは、当然ながらこれまで会社を支えてきた
銀塩フィルム関連製品、関連部門の縮小や人員の配置転換
といった経営・組織の不安定化に対処せざるを得ませんでした。


このように、様々な企業(個人)において、

・将来の収益製品・部門

と、

・現在の収益製品・部門

との間でさまざまな点において利害の対立が
しばしば発生します。

もし、現在の収益製品・部門の力が強すぎると、
次世代製品への移行が遅れてしまい、未来においては
淘汰されてしまうわけです。

こうして消滅してしまった企業はたくさんありますね。

ですから、ビジョナリーとしては、
こうした将来と現在の間で発生するパラドックスを
見逃してはいけないわけです。


ビジョナリーハンドブックでは、
前述した2つ以外にも、いくつかの

「ビジョナリーのパラドックス」

が示されていますが、
最後にあと1つだけ紹介しておきたいのが
次のパラドックスです。

“自分(自社)の将来像がどのようなものであれ、
 その通りになることはないと予想しなければならない”

要するに、

「自分が描いたとおりの未来になることはないと
 最初から覚悟しておけ!」

ということですね。

これは、前回も書いたように、
周囲の環境変化に応じて

「予見」

そのものをしばしば見直すことの重要性を示唆するものであり、
また、予見に依存しすぎることを戒めるパラドックスだと
言えそうです。


そもそも、未来を予見することは、
未来がどうなるかを的中させることが
最大の目的ではありません。

極端な話、予見が外れてもいいのです。


『未来学』の著者、根本昌彦氏が主張しているように、
未来を予見することは、

“現在の条件を元に、未来のあらゆる可能性を考えること”

であり、

“将来の危機を回避するためや、未来を創造するためのもの”

だと言えるでしょう。


『The Visionary's Handbook:Nine Paradoxes That Will Shape
The Future of Your Business』
(Watts Wacker,Jim Taylor,Howard B. Means著,Harperbusiness)

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・ペーパーバック1
・ペーパーバック2


*現在は、出品者からしか手に入らないようです。


『未来学』(根本昌彦著、WAVE出版)

投稿者 松尾 順 : 16:12 | コメント (2) | トラックバック

ビジョナリーハンドブック(0):イントロダクション

今年の正月休み、
私はあえてインターネット、パソコンから遠ざかり、
以下に示したタイトルの本を読み返していました。

『The Visionary's Handbook:Nine Paradoxes
 That Will Shape The Future of Your Business』


この本は、企業として、また個人として、
不確実な未来に対してどのように行動すべきかについて
有益な示唆を与えてくれるガイドブックです。


変化が激しく、一歩先さえ見えない、
そんな混沌とした今、こんな本が必要とされているのでは
ないでしょうか?

というわけで、ずいぶん前から本書の内容をご紹介したいと
考えていましたが、いかんせん翻訳版がありません。

残念ながら、洋書を読み、その内容をすらすらと
要約することは私の能力を超えています・・・

そこで、この正月にじっくり読み直して十分に準備し、
ようやく年明けからご紹介できるというわけです。

ちょっと難しい内容ではあります。

でも、理解しにくい点があったとしたら私の責任です。
どうかご指摘くださいね!


“Welcome to the Age of Possibility”
   -可能性の時代へようこそ-

Visionary's Handbookの第一章の冒頭は、
この文で始まっています。


現在でも、
自分が生まれた場所・家、育った環境などに基づく
様々な制約があります。

それでも、以前に比べると私たちははるかに自由な
生き方ができますよね。すなわち、

・自分(自社)は将来どうなりたいか
・何をしたいか
・何を知りたいか
・どこに行きたいか

といったことについて多くの選択肢があります。


ただ、自分(自社)の可能性が拡がった分、
自分の進むべき方向を自ら決めなければならなくなりました。

自由だからこそ、可能性が大きいからこそ、
むしろ不確実な未来に立ち向かわなければならない
というのはある意味皮肉なことです・・・


でも、生まれ持っての宿命や運命に従うしかなかった
時代はとうに過ぎ去っています。

次々と生まれる新たな思想や技術、体制によって、
これまでの古い思想や技術、体制が破壊(更新)され続ける今、
周囲の環境変化に対して、

「受身」

でいるだけではただ翻弄されるばかりです。

自分(自社)は、自らの運命の管理人となり、
周囲の変化を能動的に乗り切ることが求められているのです。


Visionary's Handbookでは、
未来を予測する方法を教えてくれるわけではありません。

そもそも、未来を正確に予測することは不可能です。
とりわけ変化が加速している現代においては・・・

しかし、将来を予測することを止めてしまうのでは
ありません。

物事が変化し続けることを「常態」として受け入れ、
将来の変化についての予測を頻繁に見直しつつ、
柔軟に自分(自社)の行動も変化させていくのです。


以前のように、例えば10年先の未来を予測したら、
それを固定的なものとしてみなし、現在にさかのぼって
今後10年間の活動計画を立てるという方法は、
もはや役に立たないということですね。


さて、Visionary's Handbookでは、
混沌とした現代を生き抜く上で理解しておくべき9つの

「パラドックス」(矛盾)

が取り上げられています。

次回以降、各パラドックスのポイントを
ご紹介していきますね。お楽しみに!


『The Visionary's Handbook:Nine Paradoxes That Will Shape
The Future of Your Business』
(Watts Wacker,Jim Taylor,Howard B. Means著,Harperbusiness)

・ハードカバー

・ペーパーバック1
・ペーパーバック2

*現在は、出品者からしか手に入らないようです。

投稿者 松尾 順 : 10:26 | コメント (0) | トラックバック