CRMと次世代マーケティングプラットフォーム

「CRM」(Customer Relationship Management)

が最初に注目を浴びた90年代後半、私は、

『CRMをひとことで表現するなら、

‘IT-supported Communication’

 である。

 すなわち、「情報技術」の支援を受けて行われる
 コミュニケーション活動がCRMである。』

と言う説明をしていました。


CRMの直接の目的は、

顧客1人ひとりの深い理解に基づく良好な関係形成

です。

そして、その究極の目的(すなわちビジネス上の目的)は、

「顧客生涯価値」

の拡大にあります。

つまり、市場シェアよりも、

「顧客シェア」(財布シェア)

にフォーカスします。


さて、CRM的な関係形成は、基本的には

カスタマイズされたコミュニケーション

を通じて行うべきものでしょう。


なぜなら、

[1:多]

のマスコミュニケーション的なものではなく、

[1:1]

の関係において行われる、

パーソナル・コミュニケーション

でなければ、

「顧客愛顧」(ロイヤルティ)

を勝ち取ることはできないからです。


この点において、CRMの原型は、
以前から再三指摘されてきていますが、

個人商店と買物客との間で行われるコミュニケーション

にあります。


買物客の購買行動や嗜好、家族構成などを
抜群の記憶力で覚えている店のオヤジさん、オカミさんが、
買物客に対して適切な提案を行うことで、
固定客を増やし、購買頻度、購買単価を引き上げている
という話です。


しかし、対象となる顧客が、数百人くらいまでは
個人の脳力でなんとかカバーできますが数千人、数万人、
数百万人となると、もはや人力での対応が不可能になってきます。

そこで、ITの助けを借りるしかなくなってくるわけです。

すなわち、脳の記憶を補完するデータベース、
そして適切な提案(レコメンデーション)を可能にする各種
アプリケーションを導入して、人力では対応不可能な多数の顧客の
1人ひとりに対してできる限り個別(に見える)コミュニケーション
を行う仕組みを構築する。

これが現代のCRMであり、私が

「IT-supported Communication」

と表現した理由です。


さて、時事通信編集委員、湯川鶴章氏は最新刊、

『次世代マーケティングプラットフォーム』

において、CRMという言葉は使っていないものの
同様の主張をされています。

“わたしはこれまでの取材活動を通じて、
 「IT革命の本質の一つは、20世紀後半のマス文化の中で
 失われたきめ細かなサービスを、テクノロジーの力を
 持って取り戻すことだ」と考えるようになった。”


まさにその通りですね。

90年代後半の時点では、
CRMが実際の業務にどの程度まで応用され、
どのくらいの効果を上げるのか、
まだはっきりとは見えていませんでした。

しかし、現在の私たちの消費活動に関連した
テクノロジーの進歩には目覚しいものがあります。

CRMにおいて理想と考えられる

コミュニケーションのあり方

が着実に実現しつつあるのではないでしょうか?


湯川氏は、
20世紀に失われてしまったきめ細かなサービスを

「三河屋さん的顧客対応(サービス)」

と呼んでいます。

そして、三河屋さん的サービスを
現代によみがえらせることを可能にする
システム共通基盤のことを

「マーケティングプラットフォーム」

と名づけ、前掲書、

『次世代マーケティングプラットフォーム』

において豊富な事例を元に解説しています。


同書はテクノロジー、すなわちITの側面から、
CRMの今後を読む上で有益な示唆を与えてくれます。

興味のある方はぜひ読んでみてくださいね。


『次世代マーケティングプラットフォーム』
(湯川鶴う章著、ソフトバンク クリエイティブ)

投稿者 松尾 順 : 2008年12月12日 18:10

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