性能破壊型ノートPCに日本メーカーはついていけるか?
日経産業地域研究所がまとめた
「2008年第三四半期の新製品ランキング」
で、台湾アスーステックコンピュータ
「EeePC(イーピーシー)」
が総合1位に選ばれていますね。
(日経産業新聞、2008/10/23)
「EeePC」はパソコンに求められる性能・機能を絞り込み、
小型化と低価格化を実現。
「5万円パソコン」
の新市場を開拓した製品です。
さて、この製品は、イノベーションのタイプとしては、
「パラダイム持続型―性能破壊型」
に分類できます。
「パラダイム持続型」というのは、
EeePCは、PCとしての基本的な枠組みは既存のものと
変わらないという意味です。
一方、「性能破壊型」というのは、
意図的に性能を引き下げることによって別のベネフィット
(EeePCの場合、「携帯性」と「安さ」)を高めたという
意味です。
「パラダイム持続型―性能破壊型」
に分類される他のIT関連製品としては、
以前紹介したように、
ハードディスクやフロッピーディスク
などがあります。
ハードディスクについて言えば、
14インチから始まり、8インチ、5インチ、3.5インチ
へと小型化が進みました。
こうした小型化は、当初は記憶容量が減るため、
実質的な性能低下になるわけです。
しかし、「記憶容量」ではなく「小サイズ」という
ベネフィットを評価するユーザーによって受け入れられ
普及が進んだ結果、旧製品を淘汰してしまいました。
注目すべきは、
上記のような性能破壊型イノベーションの場合、
従来製品でトップを走っていたメーカーの多くが、
小型化の流れについていけず、新興メーカーに道を
譲ったことです。
現在売れている製品を売れなくするような新製品を
出すことは社内的な抵抗が大きいからですね。
また、あえて性能を低下させるような製品を設計するのは
技術者としては面白みがないという点もあるでしょう。
いわゆる「イノベーションのジレンマ」です。
「EeePC」によって開拓された5万円パソコン市場の拡大に
よって、従来のノートPC市場はかなりの影響を受けています。
さすがに静観していられなくなった
日本の大手PCメーカーも追随しつつありますが、
おおむね価格設定が高めですよね。
同じ土俵で勝負できる製品をまだ出せていません。
やはり、
「イノベーションのジレンマ」
に直面しているのではないかと想定されます。
一方、PC最大手のHPは動きが速い。
イノベーションのジレンマを乗り越えることに
成功してます。
本日の日経本紙に15段全面広告で、
4万円台まで価格を引き下げたノートPCの発売を
告知していました。
これはかなり衝撃的・・・
デルなども近々、
同じ水準のノートPCを投入するのは
間違いないでしょうね。
ハードディスクドライブやフロッピーディスクのように
5万円パソコンが従来パソコンを完全に代替してしまう
ことはないと思われます。
しかし、既存ノートPC市場の縮小、
あるいは縮小はしないまでも成長が鈍化することは必至です。
「イノベーションのジレンマ」
を乗り越えて、低価格ノートPC市場で勝負できない
日本メーカーは、今後窮地に追い込まれることになるでしょうね。
投稿者 松尾 順 : 2008年10月23日 17:38
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