ねじの穴・・・セオドア・レビットの慧眼

マーケティングを勉強している人なら、

「ねじの穴」

というフレーズにはピンとくる方が多いでしょう。


マーケティング界のドラッカーと称された、

故セオドア・レビット氏(元ハーバードビジネススクール教授)

は、1960年代に発表した論文

『マーケティング発想法』

において「顧客志向」の重要性を認識させる

“顧客は、「ドリル」が欲しいのではなく、
 「ねじの穴」が欲しいのだ”

という名文句を残しています。


すなわち、顧客が買いたいのは、

「製品」

そのものではなく、その製品が与えてくれる

「便益」

であるということですね。


さて、セオドア・レビット氏は、

「マーケティングの神様」
(私に言わせると、「マーケティングテキストの神様」)

と呼ばれるフィリップ・コトラー教授ほどは
日本では知られていませんよね。


しかし、レビット氏の慧眼、
そして、ねじの穴の名文句でわかるように、
ものごとの本質を付くわかりやすい説明力には
驚くべきものがあります。


このことを再認識させられたのが、
2001年6月に行われた彼のインタビューです。

同インタビューの内容は、

『マーケティングの針路』

というタイトルで、

DIAMONDハーバードビジネスレビュー最新号
(November 2008)

に収録されています。


インタビューの中から、
いくつかレビット氏の言葉を引用してみましょう。


“ビジネスを突き詰めれば、たった二つの要素、
 つまり「金」と「顧客」をめぐるものです。
 立ち上げるために金が必要で、続けるために顧客が必要で、
 既存顧客を維持し新規顧客を獲得するために、
 またお金が必要となる。

 したがって、どのようなタイプのビジネスであろうと、
 「財務」と「マーケティング」が二大活動なのです。”

“そして、マーケティングとは(中略)、
 顧客を獲得し、維持する活動すべてを意味しています。
 さまざまなニューコンセプトが提唱されてきましたが、
 そのいずれもが必然的かつ本質的には

 「顧客の獲得と維持」

 へと行き着くのです。”


“私が以前から主張していたことの一つですが、
 「変化と適応こそ生存する唯一の方法」なのです。

 これはインターネットが登場する以前からの真理ですから、
 「何をすべきか」の答えは、マネージャーの頭の中や社内に
 存在するのではなく、外部環境によって決まるのです。”

“商品やサービスのライフサイクルの短縮化、消費者の
 ハイブリッド化など、不断に変化し続けるニーズや嗜好、
 これらに合わせて「バリュープロポジション(提供価値)
 の中身を変えていかなければなりません。(中略)

 ただし、常に兆候があります。
 「自然は飛躍しない」。ミクロ経済学の父、アルフレッド・
 マーシャルはこのように述べています。
 「変化することも多いが、変わらないことはもっと多い」と。

 物事の変化は速いが、瞬時に変わることはめったにないのです。”


そういえば、田坂広志氏は、

“未来を「予測」することはできないが、「予見」はできる”

と述べていますね。


ビジネスを持続するためには、
変化の兆候をかぎとり、その変化の方向に合わせて、
自社の製品や組織、人材を柔軟に作り変えていくことが
必要なのです。

このことは、言われて見れば当たり前のことですが、
今売れている製品、できあがった体制を創造的に破壊し、
将来の変化に備えるのは実際は簡単ではありません・・・


レビット氏の含蓄のある言葉に、
私たちはしばしば立ち戻ったほうがよさそうです。


『ハーバードビジネスレビュー 2008年11月号』
(ダイヤモンド社)


『T.レビット マーケティング論』
(セオドア・レビット著、有賀裕子訳、ダイヤモンド社)

投稿者 松尾 順 : 2008年10月16日 08:46

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コメント

発言者の「レオ・マックギブナ」って人がどんな人だったのか興味ありです。

投稿者 課長007 : 2008年10月16日 11:04

課長007さん、まいど!

レオ・マックギブナって誰でしょうねぇ・・・

ひょっとして、

「レジス・マッケンナ」

の間違いじゃないでしょうか。

ところで、ドリルの穴というタイトル、
「ねじの穴」が正しいですね。

課長007さんのブログを見て思い違いに
気付きました。ありがとうございます。

投稿者 松尾 順 : 2008年10月16日 19:31

まつおっちさん
まいどっ!
このお話しは、うちのマーケティングセミナーでもよく使ってますう♪

投稿者 しがっち : 2008年10月17日 09:29

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