異端者の快楽

今週月曜日(08/10/06)から
青山・スパイラルホールで開催されている

「劇的3時間SHOW」

の2日目、つまり火曜日のゲストは、

幻冬舎社長の見城徹氏

でした。


この劇的3時間SHOWは、
ゲスト本人だけで3時間もたせるのはつらいと思われるのか、
おおむね、ゲストの親しい知人・友人を呼び、

対談(雑談?)形式

でやることが多いです。


見城氏も、講演の前半では、25年のつきあいだという

中森明夫氏

を壇上に呼び、中森氏が「インタビュアー」のような役割で
アレコレ突っ込んでもらっていました。

ちなみに、中森明夫氏は、

「おたく」

という言葉を生んだコラムニスト&編集者として有名ですね。


見城氏は、若い頃はずいぶんケンカ好きだったようです。
(実際に殴りあうケンカですよ)

当時、毎日2時間半もボディビルのトレーニングをやって
筋肉隆々の体を造り上げたのも、ケンカが強くなるためだったとか。


見城氏自身は、若い頃の逸話をあまり話したくなかったようですが、
見城氏をよく知る中森氏にうまく刺激されてしまっていました。

例えば・・・

見城氏と山田詠美がとあるバーで飲んでいたら、
写真家の加納典明が入ってきて山田詠美にからんできたので、
店の外でタイマン勝負することになったけど、2、3発パンチ入れて、
崩れ落ちるところをヒザ蹴りして、店の壁に2度ぶつけたらダウン
しちゃったとか、本筋とは関係のない話が実に楽しかったです。


なお、あくまで以上のような武勇伝は何十年も前の話であり、
加納氏は後日、悪かったのは自分の方だと見城氏に詫びられ、
その後、見城氏と加納氏は大の仲良しになったということを
付け加えておきます。


見城氏は上場企業の社長ですから、
ほんとはこんな話を公の場ではしてはいけないのでしょうけど、
せっかく来場してくれた方を楽しませなければ申し訳ないという

「サービス精神」

でついつい口を滑らしてしまっただけなのです。


さて、見城氏は、自著

『編集者という病』

でも、触れられていたと記憶していますが、
自分は他人とは違うという意識を小さい頃から持っていました。

つまり、一言でいえば「異端者」です。


見城氏は、異端者であるがゆえのせつなさ、つらさ、苦しみ、
悲しみをずっと抱き続けてきたとのことですが、そもそも、

「表現」(クリエイティブな表現という意味)

は、異端からしか生まれないと見城氏は考えています。

マジョリティからこぼれ落ちるものが表現であり、
すなわち「マイナー」なもの、また、中心部ではなく、
周辺部の「エッジ」からこそ独自性のある表現が生まれる。


だから、自分のような異端者にこそ、
優れた表現、また優れたクリエーターを発見できるのだと
いう自負をお持ちです。

若い頃、見城氏が「ケンカ」に向かったのも、
異端者であることの重圧を軽減するための

「ハケ口」

だったのかもしれません。


さて、見城氏は、講演の後半でも、
やはり付き合いの長い次の2人の方を呼んでいました。

・エイベックス・グループ・ホールディングス社長、
 松浦勝人氏

 (エイベックスについては補足説明不要ですね)

・オフィスオーガスタ社長、森川欣信氏
 (山崎まさよし、スガシカオ、元ちとせ、スキマスイッチ
  などの才能を発掘、育てた方です。)


エイベックスの松浦氏も、オーガスタの森川氏も、
売れるかどうかわからないクリエイターを発掘し育てる仕事を
やっているという点において見城氏と共通しているところが
あります。


オフィス・オーガスタの場合、

山崎まさよし、スガシカオ

などは当初、「絶対に売れない」と言われ、
ほとんどのレコード会社に断られてしまったことを
ご存知の方も多いでしょう。


しかし、3人とも、マジョリティが見向きもしない

「マイナーなもの」

をいち早く見つけ、
マジョリティが動く「ブーム」を巻き起こすのが
最高の喜びなのだそうです。


これが、見城氏の講演のメインテーマであった、

「異端者の快楽」

なのでしょう。


(参考書籍)
『編集者という病』
(見城徹著、太田出版)


*劇的3時間SHOW

投稿者 松尾 順 : 2008年10月08日 13:39

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コメント

まつおっちさん
まいどっ!
普通の中の真の普通っていうのも異端児かもって思いました。

投稿者 しがっち : 2008年10月09日 08:45

しがっちさん、まいど!

「普通の中の真の普通」という人も、
おそらくあまりいなくてマイナーな存在
でしょうから、確かに「異端児」ですね。

要するに中心部というのは物理的な場所の
ことじゃなくて、人との心理的距離でしょう。

普通な人はたくさんいて中心部に集まっているけど、
普通の中の真の普通は、一見中心にいるように見えて
実は心理的距離では周辺部においやられてしまうのです。

投稿者 松尾順 : 2008年10月09日 09:06

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