ネット視聴率白書2008-2009を読む(1)インターネット視聴率の調査方法

「2007年日本の広告費」から、
既存マス媒体の広告費について見ると、

・テレビは約2兆円で横這い
・新聞は約1兆円で減少
・雑誌は約4千5百億円で微減
・ラジオは約1千7百億円で微減

であるのに対し、

「インターネット(広告)」

は急拡大中で約6千億円。

すでに雑誌を抜き、テレビ、雑誌に次ぐ3番目に大きな
メディアとなっています。


このように、インターネットが存在感のあるメディアとして
成長するに従って、

「メディアとしての広告効果検証」

の重要性も高まっています。


さて、

『ネット視聴率白書2008-2009』

では、新聞、ラジオ、雑誌の既存マス媒体別の調査方法を
説明した上で、インターネット視聴率調査の調査方法を
詳述してあり、調査方法の違いがよくわかります。


以下、簡単に既存マス媒体の調査方法のポイントを
ご紹介します。


[テレビ視聴率調査]
 *ビデオリサーチの「ピープルメーターシステム」の場合

(対象エリア)

 全国32の放送エリアのうち27エリア

(対象チャンネル)

 地上波各局とその他(BS,CS,CATVなど)

(調査対象世帯数)

 関東、関西、名古屋地区は各600世帯、その他24エリアは各200世帯
 合計6,600世帯

(調査方法)

 「ピープルメーター」と呼ばれる機械をテレビに接続し、
 毎分毎にどの番組が見られているかを自動的に記録、送信する。

 (個人視聴率は、家族のうち誰が見ているかを本人が入力、または
 日記式で記録する仕組みでデータを取得する)

[ラジオの聴取率調査] *ビデオリサーチの自主調査の場合

(対象エリア)

 首都圏、関西圏、中京圏の限定エリア

(対象者)

 12~69歳の男女個人

(調査数)
 
 3,000人

(調査方法)

 日記式郵送留置調査


[新聞・雑誌等紙メディア調査]

発行・販売部数の把握については、第三者機関である、

新聞雑誌部数公査機関(社団法人ABC協会)

が、発行社における発行部数、注文部数、発送・返品部数、
および流通段階(新聞販売店など)における仕入れ部数、
返品部数の調査の結果をとりまとめて、各新聞・雑誌等の
部数を発表している。

また、

・閲読率(実際にどの程度読まれているか
・回覧率(会社などで購入した雑誌は何人で回し読みされているか)

など、実際の購読状況やどんな属性を持つ人たちがどんな雑誌を
購入しているのかについては、ビデオリサーチが毎年実施している

「MAGASCENE(マガシーン)」

と呼ぶ調査(訪問による質問紙留置法)で把握することができる。


既存の4大マス媒体についての調査は、
以上のような方法を用いて行われてきたわけですが、
媒体としてのインターネットを測定する

「インターネット視聴率調査」

は、現在以下のような方法で行われています。
(調査モニター(パネル)を共有(統合)している
‘Nilsen online’、および‘ビデオリサーチインタラクティブ’の場合)

*「RDD」(Random Digit Dialing)と呼ばれる、
 電話番号をランダムに生成する方法で電話をかけ、
 インターネット利用状況についての電話調査を行い、
 インターネット利用世帯については、インターネット視聴率調査
 へのモニター(調査パネル)協力依頼を行う。

*インターネット視聴率調査へのモニター協力が得られた世帯については、
 インターネット利用状況を自動的に捕捉するトラッキングソフトを
 PCにインストールしてもらい、利用状況データを収集する。

 (世帯でインターネットを利用する全個人の属性を記録してもらう
  ことで、個人別の利用状況を把握可能)

*モニター協力者(調査パネル)数は現在約13,000人


トラッキングソフトを利用する方法は、
テレビ視聴率調査において、

「ピープルメーター」

と呼ばれる機械を接続することでテレビの閲覧状況を
自動的に捕捉する方法と似ていますね。


なお、PCにインストールされたトラッキングソフトを通じて
自動的にインターネット利用状況を捕捉し、

「インターネット視聴率調査」

と類似のデータを提供するものに、

「Alexa」

というサービスがあります。

これは、無償で提供されている同社のブラウザー用ツールバーを
インストールした全世界のインターネットユーザーが調査対象と
なっています。

調査対象者数は非公開であり、同社ツールバーをインストール
した人だけの集計データのため、統計的な信頼性に欠けるものの、
全世界の国別の人気サイトランキング等が同社Webサイトで無料で
閲覧可能です。


*参考リンク
『2007年日本の広告費とMC戦略の課題』


『ネット視聴率白書2008-2009』
(衣袋宏美著、翔泳社)

投稿者 松尾 順 : 2008年08月19日 18:55

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コメント

それぞれの媒体の広告費ってどうやって算出するんですかね?媒体にヒアリングなどを電通がするんでしょうか?雑誌やネットなんかは小さいところが多くあるんで、ほんとにすべての広告費をカバーできているかどうか疑問に思います

投稿者 tom : 2008年08月20日 08:07

あらゆる媒体を100%カバーした調査は実質的に無理ですので、すべての広告費を含んだ数値であるとは電通としても言ってはいませんね・・・(調査の限界ですね)

投稿者 松尾順 : 2008年08月20日 09:02

「ネット視聴率」は世帯を対象としていますが、“職場”での利用は計算に入れなくて良いのですかね?
利用頻度=宣伝効果では、大きなパイのような気がするのですが・・・

投稿者 rivereast : 2008年09月04日 14:59

rivereastさん、コメントありがとうございます。

確かにご指摘の通り、職場からのアクセスは
かなり大きなパイであることはまず間違いないですので、
利用動向を把握すべきですよね。

ネットレイティングス社では、職場からのネット利用状況
レポートする「ワークパネル」を01年から開始しています。
(あまり表立って宣伝されてませんが・・・)

ただ、そもそも、企業内でのネット利用者を
調査サンプルとして確保するのは容易ではありません。

というのも、視聴率調査会社にサイト利用データを送信する、
専用のトラッキングソフトのようなものをインストールを
セキュリティ上の方針から禁止する企業があるからです。

このため、サンプルの偏りが大きくなる可能性があります。
データの信頼性に影響してくるわけです。

投稿者 松尾順 : 2008年09月04日 15:19

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