「マニュアル」に不備はありませんか?
「マニュアル」に依存しすぎることの弊害を示す例として
よく知られた次のような話がありますね。
(ハンバーガーショップにて)
客「えーと、ハンバーガー20個ください!」
店員「こちらでお召し上がりですか?」
この店員は、自分の頭を働かせず、
マニュアルどおりに「口パク」しているだけ。
だから、ハンバーガー20個も注文したお客さんが、
その場で「お召し上がり」するわけはないだろうという
状況判断ができないというわけです。
ただ、「ハンバーガー大食い競争」で上位を狙う人なら、
いちどに「60個」とか食べられる力量が必要ですから、
「こちらでお召し上がり」
ということもありえないことではないですけど・・・
さて、マニュアルは、端的には、
最低限遵守すべき「基本行動」を記述したもの。
言い換えると、スタッフに期待する行動に対する
「最低要求水準」
を示したものです。
マニュアルの意義は、主に新しいスタッフに対して、
最低要求水準の行動を短期間で身に付けてもらうこと
にあります。
マニュアルのおかげで
まだまだ未熟な新人さんの技量の底上げが図れます。
ですから、
「マニュアルなんて役に立たない、不要だ!」
などと頭から否定する人は
ある意味、考え違いをしています。
「マニュアル」で最低限のところを押えた上で、
さらに、マニュアルを超えた臨機応変で柔軟な行動や
サービスを行えるようにするために必要な人材教育に
注力するのがポイントなのです。
ただ同時に、そもそもマニュアルに記述された
「最低要求水準の行動」
は永久不変、固定的なものではない点を認識しておく
必要があります。
日々変化する外部環境に応じて、
マニュアルの内容を頻繁に見直して改訂し、
最低要求水準自体を引き上げていくべきなのです。
(現実には、ほとんど改訂されないままのマニュアルが
多いですよね)
「外務省のラスプーチン」と呼ばれた佐藤優氏が
次のようなことを書いています。
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「マニュアルがだめだ」という事例で、
次のような事例があげられることが多い。
<ファミレスで、「急いでいるから、カレーライスにして」
と言った。カレーライスがすぐにでてきたのはいいが、
ウェイトレスが「ごゆっくりどうぞ」と言った。
癇にさわる。だからマニュアル型の教育はだめだ>
この事例は、マニュアル型の教育の欠陥を示すものではない。
マニュアルの不備を示すものに過ぎない。マニュアルを
次のように改訂すれば、解決することができる問題である。
<お客さんに食事を出すときは、「ごゆっくりどうぞ」と
言うこと。ただし、お客さんが「急いでいる」という場合には、
この言葉をかけてはいけない>
出典:『30歳ビジネスパーソンのためのインテリジェンスの技法』
(Think! 2008 No.26)
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近年は、昔なら教えなくても良かった基本的なマナーや振る舞い
を知らない新人さん、また‘KY’な新人さんが増加しています。
もし、現行のマニュアルだと業務上のトラブルが絶えない、
あるいは、お客さんからのクレームが多いということであれば、
それはマニュアル依存傾向の強まっている新人さんだけの問題でなく、
マニュアル自体に不備がないか再検討すべきではないでしょうか?
投稿者 松尾 順 : 2008年08月01日 16:06
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