顧客の声の掘り下げが使える情報を生む

カスタマーセンター(コールセンター)に
寄せられたお客様からの感謝や意見、要望、苦情等は、
活用する価値のある貴重な情報です。


だからこそ、コールセンターに蓄積された

「テキストデータ」(いわゆる生の会話、自然文のデータ)

から、サービス改善や新商品開発に使える新たな「知見」を
取り出すための

「テキストマイニング」

に対する注目も高まっているわけです。


ただ、カスタマーセンター内に
本当に使える顧客情報が豊富にあるのかというと、
必ずしもそうではありません。

単にお客さんが電話してきた用件を忠実に記録しただけでは、
価値ある情報とはなりえないことが多いのです。


例えば、カルビーのお客様相談室には、

「○○がおいしかった」

という「感想」を伝えるだけの電話が、
多数寄せられるそうです。

従来、同社のオペレーターは、
こうしたお客さんに対して感謝の言葉を述べるだけで
通話を終えていました。


しかし、

「○○がおいしかった」

といった表面的な気持ちを記録しただけのデータ
をいくら集めたところで、

「人気度ランキング」

には使えても、それ以上の活用が不可能です。

商品改良のヒントや新商品のアイディア創出には
まずほとんどつながりません。


そこでカルビーでは、

「なぜ、わざわざ電話をかけてくれたのか?」

といった理由をうまく聞き出すための対応表を作成し、
オペレーターが顧客の声を深堀りする対話を行うように
しました。

これには、トヨタ流改善活動にヒントを得た

「なぜなぜ5回」

の手法を応用しており、「なぜ」を繰り返しながら、
顧客の表面的な言葉の奥にある本質的な問題や原因を
あぶりだすことを狙ったのです。


具体的には、上述の

「○○がおいしかった」

というお客さんの声に対しては、

「何がお気に召しましたか?」

とオペレーターが突っ込んだ質問をすることで

「その商品のどんな点を評価したからおいしいと感じた」

という「原因と結果のセット」の情報を蓄積することが
可能になっています。


こうした深堀りする質問は、
マーケティングリサーチにおけるインタビュー技法や
コーチングなどでも重視されますが、
カスタマーセンターに勤務する多数のオペレーターが
マスターするのは簡単ではありません。

カルビーでは有志による勉強会を開催して、
顧客の声の掘り下げに有効な対応を工夫しているそうです。


コールセンターに限りませんが、
企業に対して最初に届くお客様の声の多くは、

「結果」「事実」「行動」

を述べているだけの場合が多いのです。

ですから、企業側からさらに深堀りする質問をして、

「原因」「感情」「背景」

などを上手に引き出していくことが必要なんですね。


*カルビーの事例は、

 『日経情報ストラテジー』(SEPTEMBER 2008)

 を元にしました。

投稿者 松尾 順 : 2008年07月29日 12:59

コメント

この手法では、「トヨタ」のWhy Why ダイアグラムが有名ですね。

投稿者 しがっち : 2008年08月02日 07:00

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