ロボットがサービス業界を席巻する日
私の事務所の近くに、大規模スパ施設があります。
このスパ施設のハードは、とても素晴らしいです。
天然温泉もある広々とした温浴施設、
お風呂上りには、1人1台の液晶テレビ付の
リクライニングソファでゆったりとくつろげます。
しかし、「ソフト」は、
ひどいとは言わないまでもお粗末。
人的サービスに改善の余地が大いにアリです。
当施設では、
リピート促進のためのロイヤルティプログラムとして、
「スタンプカード」(スタンプ10個で1回分の利用料無料)
が運用されています。
でも、人的サービスがもうひとつなので
愛着がわかないのですよね。
もっとサービスに優れた競合施設が近くにできたら
あっけなくそちらに移ってしまうと思います。
先日ここに行った時の話です。
靴をシューロッカーに預けた後、
バッグから「スタンプカード」を取り出しながら、
受付カウンターに向かいました。
カウンターに着くと、
受付のお兄さんは間髪を入れず、
「初めてのご利用ですか?」
と聞くのです。
(いや、だからスタンプカードを取り出そうとしてるでしょう・・・)
と内心思いながら、カウンターにスタンプカードを置きました。
今回でちょうど10個目のスタンプだとわかっていたので、
「次回は無料だな!」
とちょっとうれしい気持ちでしたが、
このお兄さんのマニュアルどおりのセリフでがっかりです。
いつもいつも一見さんで扱われるのは残念なものです。
以前も同じようなことを書きましたけど、
誰に対しても、同じセリフを機械的に仏頂面で繰り返すだけなら、
生身の人間よりも、
「ロボット」
の方がいいです。
人の気持ちが読めないことが前提の
無生物のロボットなら、腹は立たないですからね。
ただ、近年の情報通信技術、およびロボットの進化が著しいため、
本当の意味で人の気持ちが理解できなかったとしても、
少なくともお客さんを気分よくさせるコミュニケーションは
可能になりつつあります。
たとえば、イメージ認識技術を用いて、
既存客の顔を記憶させ、プロフィール(基本属性)や
過去の利用履歴データベースとひもづける仕組みは
もはや簡単なこと。
こんなITシステムと連動したロボットを
先のスパ施設のカウンターに設置したとします。
私がカウンターに向かうとロボットは私の顔を認識し、
データベースのプロフィールデータを参照して、
「松尾さん、こんにちは!」
と名前で呼びかけてくれるでしょう。
さらに、先週来たばかりだったら、
「いつもありがとうございます!」
などと言うことで常連客として扱い、
私を喜ばせてくれるでしょう。
もし数ヶ月ぶりの来場だったら、
「お久しぶりですね。
また来ていただいてありがとうございます。」
といった言葉をかけてくれる。
ロボットなのに、思わずハートがジンとします。(たぶん)
さらに、ロボットをもっと擬人化して、
見かけや声が異なる男性風、女性風ロボットの
それぞれを設置するというのも面白いのではないでしょうか。
男性客に対して女性ロボットには、
「また来てくれてありがとー!うれしい!!」(と黄色い声で)
「しばらくお顔が見れなくて、寂しかったわ・・・」
などと言わせるのもいいかもしれません。
(あくまでジョークとしてですけど・・・)
お客さんは、
「これらの会話がプログラム化されたもの」
であることは百も承知です。
それでも、お客さんは決して悪い気はしない。
いや、むしろ「KYな人」との味気ない会話よりも、
はるかに喜んでくれるでしょう。
既に、企業の受付用として
ロボットを派遣する事業が開始されているのは
ご存知でしょうか。
同様に、サービスの現場に、
優れたコミュニケーション力を持つロボットが
登場するのは、すぐそこにある未来だと思います。
サービス現場におけるロボットの普及・浸透は、
人手不足に悩むサービス業にとっては福音です。
しかし、一方でサービス提供者としての資質に欠ける
生身の人間が働ける職場が、ロボットによって
次々と奪われていくことを意味します。
従来、人手不足ということもあり、
比較的職を得やすい業界であったサービス業界の仕事が
ロボットに席巻された結果、さらに多くの失業者が
世の中にあふれることになるのではないでしょうか。
(関連記事)
投稿者 松尾 順 : 2008年07月14日 10:22
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.mindreading.jp/mt/mt-tb.cgi/879
コメント
コメントしてください