これぞ戦略モデルの勝利
最近、29,800円程度の格安中古パソコン
のネット販売が目に付きます。
スペック的には、メインメモリがわずか256MB程度、
ハードディスクが20G程度ですから、
業務用としてはもはや役に立ちません。
しかし、個人の電子メール送受信や
ホームページ閲覧程度なら支障はありませんよね。
先日は、上記程度のスペックのノートPCが、
光ファイバー接続サービス新規契約のオファーとして
用意されており、
「ご契約の方には、中古ノートPCを
レンタルではなく無料提供します!」
というコピーが踊るチラシが私の事務所(マンション)
に入っていました。
さて、こうした格安中古パソコン販売における
新たなビジネスモデルで成長している企業があります。
「ブロードリンク」
です。(日経ビジネス、2008年4月7日号)
同社では、
ビジネスモデルの3つの構成要素うち、
核となる
「戦略モデル」
において新たなスキマ市場を発見、開拓したのです。
(ちなみに「ビジネスモデル」の残りの2つの構成要素は、
「収益モデル」「業務モデル」です)
戦略モデルは、
●誰に(WHO)
●何を(WHAT)
●どうやって(HOW,WHERE)
の3つの視点で定義できますが、
同社の場合は次のようになります。
●誰に・・・中高年のパソコン初心者
●何を・・・最新の高性能機ではないが日常の使用には十分
堪える中古パソコン
●どうやって・・・総合スーパーや百貨店の催事場で
以前は、総合スーパー(イトーヨーカドー、ダイエーなど)
や百貨店でもパソコンが置いてありましたよね。
ところが、パソコンの主要顧客である20-30代の男性は、
家電量販店(ビックカメラ、ヤマダ電機、ヨドバシカメラ)
など品揃えが豊富で安いところに行きます。
このため、総合スーパーや百貨店では、
パソコンはあまり売れず、売り場を縮小したり
廃止するところが増えています。
一方、中高年の初心者層が求めていた、
「高性能でなくてもいいから安いパソコンを買いたい」
というニーズを充たしてくれる店(場所)は
なかったのです。
もちろん、以前から中古パソコンの専門店はありました。
でも、ターゲットはやはり20-30代の主要顧客層。
ある程度高いスペックのパソコンが並べられており、
価格的にはそれほど安くはありませんでしたよね。
このことに気づいたブロードリンクの榊彰一社長は、
最初はフリーマットに中古パソコンを出品してみました。
ただしこれは失敗。
フリマに来るような人は、
数百円からせいぜい数千円の買い物のために来ますから、
いくら安いとはいっても数万円のパソコンを買うお金を
そもそも持っていません。
そこで中高年が行き交う大阪の地下鉄なんば駅改札の広場に
ワゴンを置いて並べてみるとどんどん売れたのだそうです。
ブロードリンクでは、そうした試行錯誤の後、
中高年層の比率が高い総合スーパー、百貨店での
店頭販売にたどりついたというわけです。
同社のビジネスは、
中古パソコンというありふれた商材であっても、
新たな戦略モデルを定義することによって、
肥沃な市場を開発することができることを証明した
良いケースですよね。
投稿者 松尾 順 : 2008年04月08日 15:15
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