「ホスピタリティ」が求められる理由
竹中平蔵氏(慶應義塾大学教授)は、
「サービス経済化」
を読み解くキーワードとして第一に
「ホスピタリティ」
を挙げます。
「ホスピタリティ」とは、端的に言えば、
一人ひとりの多様な欲求を深読み・先読みして、
かゆいところに手が届くような、
「心のこもったおもてなし」
を顧客に提供することです。
竹中氏によれば、「サービス経済化」、
すなわち経済活動の重点が、
製造業から非製造業に移行する社会
では、
「ウォンツ」と「ニーズ」
に着目することで、
「ホスピタリティ」
の重要性が明らかになると言います。
ここで、
「ニーズ」
とは、経済的に何を購入したいか、
という具体的な製品・サービスのこと。
一方、
「ウォンツ」
とは、ニーズに先立つ人々の欲求そのものです。
経済発展段階が低い社会であれば、
「ウォンツ」と「ニーズ」の結びつきは単純・明快です。
「お腹を満たしたい」という単純なウォンツは、
「とにかく食べれさえばよい」
というレベルですから、
対応する「ニーズ」も簡単なもので済みます。
ところが、サービス経済化が進む豊かな社会では、
「ウォンツ」
の幅が広がっていくのです。
「もっとおいしいものを食べたい」
「すばらしい環境で食事を楽しみたい」
「美しい器に入れて食べたい」
などなど。
こうしてウォンツの幅がどんどん広くなっていくと、
顧客本人でさえ、どんな商品・サービスが自分のウォンツを
充たせるニーズなのかわからなくなっていきます。
ウォンツが複雑であいまいになるため、
「どんなものが欲しいですか?」
と聞かれても、
具体的なニーズ(商品・サービス)に
置き換えて答えることができないわけですね。
この幅の広がっているウォンツを正確につかみ、
それを充たせるニーズに対応するサービスを提供することが
「ホスピタリティ」
なのです。
「ホスピタリティ」の優劣が、
「強み・弱み」
として明快に現れるのは、言うまでもなく、
ホテル・旅館、レストランなどのサービス業です。
しかし、製造業においても、
「ユニバーサルデザイン」
への注力や顧客サポート体制の充実は、
「ホスピタリティ」
に基づく動きと解釈すべきなんでしょうね。
竹中氏の話は、下記文献を元にしました。
『Works 82号』(リクルート、2007.06-07)
投稿者 松尾 順 : 2008年04月01日 10:18
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