イノベーションとしての「カラー」

3月15日にデビュー予定。

小田急ロマンスカーの新型車両、

「MSE」

は、清涼感や透明感、豪華さを
感じさせる車体色のブルーが美しい!


この青色は、

「フェルメール・ブルー」

と名づけられています。

そう、17世紀オランダの画家、

「フェルメール」

が好んで用いた色が採用されているのです。
(日経デザイン、March 2008)


デザインを担当した建築家の岡部憲明氏によれば、
当初から大きな課題として挙げられ、

「車体のスタイリング」

と同一レベルで検討を要求されたのが、

「車体色」

だったそうです。


さて近年、商品デザインにおける

「色」

の重要性がますます高まっていますよね。


この背景には、
商品が持つ「本質的な価値」とも言える

「機能や性能」

の次元では、
他社との十分な差別化が図れないから
という企業側の事情があります。


一方、ユーザー側の立場で言えば、
ほとんどの製品カテゴリーにおいて、

現在保有・利用している製品で十分に用が足りている

ということがあります。

機能面や性能面を現行機種より多少向上させたからといって、
それは

「買い換える理由」

になりにくい時代だということです。


実際、現在家にある様々な製品のことを考えてみると、
自分の解決したかった元々の問題やニーズはすでに
ほぼ解決・充足されていますよね。

新たに買う理由が
ロジカル(論理的・理性的)に考えるとありません。

つまり、「本質的な価値」のレベルでは、
消費者を購入に踏み切らせることができないわけです。


そこで、付加価値的な部分、とりわけ

「カラー」(色使い)

のバリエーションによって、感性を刺激し、

「欲しいから欲しい!」(理屈抜きに・・・)

と消費者に思わせることが
必要になってきたということです。


機能・性能本位だったノートパソコンの世界でも、
スタイリングに加えて、「色」にこだわった製品が
増えてきました。

ソニーやHP(ヒューレットパッカード)は、
花柄やグラデーション入りの製品を相次いで投入してます。


昔からのPCファンは、

「見た目は本筋ではない」

という非難が。

でも、メーカーの機能・性能向上競争にワクワクし、
石(CPU)の処理速度が速くなったからというだけの理由で
買い換えるのは一握りのイノベーターだけですよね。


ソニーの直販サイトでは、
柄入りが選べる機種の販売台数のうち4割が柄入りと、
目標(2割)を軽く超える予想外の売れ行きだそうです。
(日経産業新聞、2008/02/22)


使い勝手の向上にも関連する

「スタイリング(形状のデザイン)」

と比較して、

「色」

は、製品の本質的な価値を高めることには
ほとんど寄与しません。

しかし、「色」は、見た目の心地よさや
好きな色の製品を所有する喜びや満足感を
与えてくれますよね。


そういえば、
イノベーションの切り口として、
従来言われてきた

・技術イノベーション
・経営イノベーション

に加えて、

・アイステシス・イノベーション

という軸が必要だという考え方を
ちょっと前にご紹介しました。


「アイステシス・イノベーション」

とは、

美しさ、心地よさ

といった、
生活の質の向上に寄与するイノベーションです。


商品デザインにおける「色」の重要性が高まったこと。

これは、企業がこれまで力を入れてきた

・技術イノベーション
・経営イノベーション

については、情報化等の進展によって
均質化が進んだため、これからは、

「アイステシス・イノベーション」

により一層力を入れざるを得なくなってきた
ということなんでしょうね。

投稿者 松尾 順 : 2008年02月25日 12:45

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コメント

まつおっちさん。こんにちは。

私の会社は鉄道ファン向けの公式サイトを作成中です。

来週、小田急の新規車両の試乗及び撮影に行く予定です。

フェルメールブルー素敵ですね。

でも東京メトロに特急ロマンスカーが走るって驚きです。

投稿者 rie。 : 2008年02月27日 14:20

rie。さん、コメントどうもありがとうございました。

ロマンスカー新車両に試乗されるんですか。
私も連れて行ってください。(笑)

小田急線にはあまり縁がないのですが、
通勤に千代田線を使ってますので、地下鉄内で
フェルメール・ブルーに出会う機会もありそうです!

投稿者 松尾順 : 2008年02月27日 20:38

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