JR福知山線事故の発生は100%予見できた!
2005年4月25日に発生したJR西日本・福知山線の事故は、
死者107名(運転手含む)、負傷者562名の大惨事となりました。
改めて、お亡くなりになった方のご冥福をお祈りします。
さて、事故発生から約2年後の2007年6月28日、
事故調査委員会が提出した「最終報告書」によれば、
当事故は、
「運転手の過失」
が引き起こしたものと結論付けており、
「JR西日本の過失」
には全く触れていません。
しかし、これはリスク管理の視点からは、
とても不可思議な結論です。
なぜなら、科学的に状況を分析していれば、
事故の発生は100%予見可能だったからです。
したがって、JR西日本が適切な対策を打っていれば、
事前に発生を予防することができたのです。
当事故発生の直接の原因は、
塚口駅から尼崎駅に向かう上り線のほぼ直線6.5km
(制限速度120k)を通過後にさしかかる
「右カーブ」
において、運転手のブレーキ使用が遅れたため、
減速が不十分だったことです。
(右カーブの制限速度は70km)
このため、遠心力が働いて車両が転覆(横転)してしまった。
(線路のゆがみなどによる「脱線」ではないので、
この事故を「脱線事故」と表現するのは適切ではありません)
この右カーブはR304(半径304メートル)です。
電卓でできる四則演算レベルの計算を行うだけで、
時速120km以上では確実に転覆することがわかります。
この計算には、カーブの大きさ、車両のスピードに加えて、
車両の重さ(乗客数)なども考慮しますが、時速120kmでも
転覆しないのは車両が空の場合だけだそうです。
ですから、右カーブの手前で運転手が確実に減速しない限り、
事故の発生は必然でした。
実は、この福知山線上りは以前別の場所を走っていたのですが、
JR東西線の開通に合わせて下り線と同じ経路に変更されています。
この以前の線路でのカーブは、
もっと緩やかなR600(半径600m)だったそうです。
上述の簡単な計算によれば、
R600のカーブの場合には時速150km近くで走っても
転覆することはありません。
もし、JR西日本が線路付け替えの際に安易に下り線の脇に
設置するのではなく、R600の十分な曲線半径を取っていれば、
仮に運転手が時速120km以上であの右カーブに突っ込んでも
転覆することはまずなかったと考えられます。
しかし、現状の上り線はR304のカーブであったため、
乗客の命は文字通り、運転手に預けられていました。
長い直線の線路を120kmで突っ走っている時、
もし、運転手が心臓発作を起こして人事不省に陥ったり、
あるいは、ちょっと居眠りしただけでも、確実に事故は
発生したわけですから。
まるでこれは、
地雷原を避けた道が作れないことはなかったが、
もはや、地雷原のある道を毎日通ってもらうしかないから、
「運転手くん、地雷を踏まないように上手に通ってくれよ」
と言うようなものではないですかね。
つまり、リスク管理を運転手という一個人にのみ
委ねていたのが実情だったわけです。
非常に初歩的なことですが、リスク管理における対策には、
・事前予防策:リスク発生を阻止する対策
・事前準備策:リスク発生に備える対策
・事後対応策:リスク発生後の対策
の3つがあります。
このうち、JR西日本が取っていたのは、
「事前準備策」
だけであったのは明白ですよね。
運転手のブレーキという
「事前準備策」
によって、
事故発生のリスクを低減することだけは
行ってました。
しかし、線路のカーブの大きさを適切に設計することで、
事故の発生原因そのものを除去、あるいは回避する、
「事前予防策」
は行っていなかったということです。
ですから、事故調査委員会の結論は、
リスク管理の視点からは極めて不可思議というのが
おわかりでしょうか。
もちろん、この結論に別の配慮が働いている
ということなら「何おかいわんや」ですが。
以上の話は、
『JR福知山線事故の本質-企業の社会的責任を科学から捉える』
の編著者、山口栄一氏(同志社大学ビジネススクール教授)のお話を参考にしました。
投稿者 松尾 順 : 2008年02月05日 11:13
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コメント
今の車はほとんどリミッターがついていて、スピードが出ないようになっています(外すことも簡単ですが)。機械で人間を抑制しようということですが、これに相当するのがATSでしょう。それもねえ、あの事故ではかなり問題になったはずですが・・・。
投稿者 グリーンエム : 2008年02月06日 20:47
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