乳児でも区別する「良い人」「悪い人」
私たち人間は、「群れ」(集団)を作り、
共同生活をすることで世代をつないできた社会的動物。
共同生活を維持するためには「相互扶助」の関係が必要です。
ですから、茂木健一郎氏も述べていますが、
「他人のため」
に何かをすることを
「喜び」
とするように脳の報酬系ができあがっています。
つまり、誰かのために役立つこと(利他的行動)が、
脳に「快感」を与える仕組みが組み込まれています。
そしてまた、私たちは生まれながらにして、
・誰かを助ける人は「良い人」(好きな人)
・そうでない人は「悪い人」(嫌いな人)
と区別することが、
イェール大学のハムリン博士の実験から
わかっているのだそうです。
以下の実験内容は、脳研究者の池谷裕二氏が、
日経新聞夕刊(2007/12/05)の「あすへの話題」で
紹介されていたものです。
生後6カ月の乳児に、円盤に2つの目が描かれた
かわいいキャラクター「クライム君」を見せます。
クライム君は、斜面を登ろうと努力しているところ。
ここで、別のキャラクターAとBが登場します。
Aは、クライム君を後ろから押して
坂を登るのを手伝います。
一方、Bは坂の上にいて、
登ってくるクライム君を押し戻そうとします。
つまり、クライム君の邪魔をするのです。
この様子を見ている乳児はといえば、
Aを長く眺めたり、Aに手を伸ばそうとします。
言葉をまだ話せない赤ん坊ですが、
こうした態度・動きによって、
「BよりもAが好き」
ということを示しているわけです。
そもそも、クライム君の動きを見た乳児は、
「クライム君は坂を登りたいのだ」
という他者の欲求を理解しているらしい点も
驚きですよね。
これは、おそらくミラーニューロンの働きでしょう。
そしてまた、他人の欲求を叶えるために援助できる人を
「好き」
と感じるのもミラーニューロンの働きなのかもしれません。
他人を助ける人は、
自分に快感をもたらしてくれるわけですから。
さて、当然のことながら、
逆に利己的な行動を取る人は他者に不快感を与えるため、
嫌われ、社会から疎外される結果をもたらします。
ところが、このことがわかっていながら、
私たちはしばしば、「利己的」に振舞ってしまいますよね。
なぜなのでしょうか?
投稿者 松尾 順 : 2008年01月30日 07:26
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コメント
なぜなのでしょうか?
大脳新皮質が出来る前の動物単体としての「自己保存本能」が、得てして勝ってしまうということですかね。
しかし、「群れ」で生活する“人間”としては「相互扶助」こそが「自己保存」になるわけで、、、それは後で学習したことなのかもしれませんね。
「はるかな記憶 - 人間に刻まれた進化の歩み」カールセーガン&アンドルーヤン(著)朝日文庫とか、
一連の動物行動学の「竹内久美子」氏の本でも読み直してみたい気になりました。
以前ちょっと感じたことがあるのですが、例えば「嫌な取引先のやつ」とか「不可解な行動をする同僚」とか、相手を“動物”だと思って考えると、行動や考え方に疑問もわかずスッキリ理解できるなぁ、とそう思ったことがあります。
人間はけっこう根源的には“動物”として考え・行動しているんじゃないかと思います。
まあ、それを明確にするのがマーケティングなんでしょうね。
と、素人が連投、すみません。
投稿者 Chrosawa : 2008年01月30日 18:45
Chrosawaさん、まいど!!
>大脳新皮質が出来る前の動物単体としての「自己保存本能」が、得てして勝ってしまうということですかね。
私は逆だろうと思っています。
大脳新皮質の「観念」(自分さえよければいいなど)が、
相互扶助による自己保存本能を阻害してしまうのでは
ないですかね。
つまり、人間(霊長類)以外で集団行動をする動物は、
基本的に利己的な行動は本能的に取らないということです。
ですから、いやなやつがいたら、私の場合、
動物だからというよりも、人間なんだから仕方がないと
思うようにしています。(笑)
投稿者 松尾順 : 2008年01月31日 08:01
なるほどなるほど、逆ですか。それも一理あるような気がしますねぇ。
大脳新皮質での「知性」や「理性」が、悪行(?)を企てる訳ですね。
んん。。。
しかしながら、
新皮質の前に出来た動物脳の「大脳辺縁系」にストレスがかかると、「大脳新皮質」本来の機能と思われる「高等な理性」や「社会的な関係の中で上手に生きようとする」など、いわゆる"人間的な脳"が上手く作動しなくなるとの見解もあります。
言い換えると、特に"事象がその個体にとって根源的場合"は、一番新しい脳である「大脳新皮質」は上手く作動せず、もっぱらそれ以前に出来た「動物脳」が支配する。ということではないでしょうか?
人間は「大脳新皮質」が最も発達している動物ですが、
まだその脳は発展途上なんでしょう。
ミツバチなど「利他的」と見られる行動をとる生物もいますが、
果たして下等動物には、自分自身ではなく、誰かのために役立つこと(利他的行動)による脳の報酬「快感・喜び」があるのか?も疑問です。
基本的に「遺伝子は利己的」! まぁ本を読んだだけですが(笑)
でも、これからは僕も、いやなやつがいたら「人間なんだからしょうがない」と思うようにします。少なくても動物の方が"悪気はない"でしょうから(笑)
投稿者 Chrosawa : 2008年01月31日 20:20
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