現場は「プロセス」で評価すべきでは?
ある事業(会社)がもうかるかどうかは、
「事業立地の選択」
次第。
すなわち、「だれに何を売るか」という基本的な
「戦略」
の適切さで決まります。
この「戦略」を決めるのは経営者ですから、
儲からないのは経営者の責任だと言えます。
ただ、収益を上げる鍵となる「競争力」は、
戦略が書かれた分厚い中期経営計画書や本社の会議室からは
生み出すことができません。
戦略を確実に実行できる
「現場」(オペレーション)
こそが「競争力」を生み出す。
ですから、経営者としては、
適切な「事業立地」を選択すると同時に、
現場を強くするための仕組みづくりが求められるわけです。
さて、このことを深く理解している経営者のひとりが、
昨年、ドトールと経営統合を果たした
ドトール・日レスホールディングス」
の会長、大林豁史(ひろふみ)氏です。
日本レストランシステムが運営する主力業態としては、
「洋麺屋五右衛門」「にんにく屋五右衛門」
が有名ですよね。
大林氏によれば、
毎日店舗ごとの成績表とにらめっこし、
赤字の店がどうやったら儲かるようになるかを
四六時中考えているそうです。
(日経ビジネス、2008/01/21)
でも、各店舗の売上ノルマがあるわけではありません。
営業成績を店長に問うこともありません。
そもそも店長自身が、
自店の営業成績を知らないのだそうです。
大林氏は、
“店の営業成績が振るわないのは店長など店舗スタッフの
せいではありません。赤字は、出店や業態を決めた本部の
戦略部門の失敗であり、私の失敗です。
店舗スタッフは本部が定めたちゃんとしたことをきちんと
やればいい”
と述べています。
赤字は、本社、つまり経営者の戦略上の失敗だから、
どうしたら挽回できるかを大林氏自身が考えているんですね。
では、大林氏は現場をどうやって評価しているかというと、
「本部が定めたモデルケースにどれだけ近づいたか」
だそうです。
「モデルケース」の詳細は不明ですが、
現場のオペレーションを最適化するための標準的な仕様、
たとえば、食材の量や調理方法、接客方法などのことだと
思われます。
端的にいえば、
「成功パターン」(=マニュアル)
のことでしょう。
すなわち、同社の店舗では売上という
「結果」
ではなく、現場のオペレーションという
「プロセス」
がどれだけ理想に近い形で実行できているかを
評価しているのです。
よく考えてみれば、
きちんとした商品・サービスが提供できてこそ、
結果としての売上がついてくるわけです。
ですから、売上目標を現場に押し付けて、
ケツをたたくだけの本部は戦略思考に欠けていますし、
現場側としては、売上げのために不正だって何だって
やるしかないということになりかねませんよね。
多くの会社では今でも、
「売上目標」
に基づく管理(評価)が主流でしょう。
ドトール・日レスホールディングスのように、
「成功パターン」(モデルケース)
をどれだけ着実に実行できているかという
「プロセス目標」
に基づく管理(評価)の重要性を理解しているところは、
まだまだ少ないのではないでしょうか?
投稿者 松尾 順 : 2008年01月28日 11:34
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コメント
大林氏の話、興味深いです。
「本部が定めたモデルケースにどれだけ近づいたか」は、仮説と検証でしょうか。
私は、「成果を出したプロセスの再現性」が評価対象なんだと思います。もう一回うまくやれ、あるいは別のことで同じようにうまくやれ、と言われたときに、まぐれではないことが大切だと思うのです。
投稿者 y : 2008年01月28日 22:10
店長が店の成績を知らないっていうのはすごいですね。
それにしても、実際、日本レストランシステムの店はどこもオペレーションが確実で、安心して入れます。
投稿者 開米瑞浩 : 2008年01月28日 23:15
yさん、コメントありがとうございます。
仮説と検証というより、どこかの店舗でうまくいった「成功パターン」の横展開ではないかと思います。ご指摘の通り、大事なのは、再現性ですよね。まぐれではなくて。
投稿者 松尾順 : 2008年01月28日 23:51
開米さん、まいど!
店長が自店の売上を知らないというのは
驚きですよね。詳しいことはわかりませんが、
例えば、来店客が満足してくれるオペレーションに
注力できるとしたら、店長にしろスタッフにしろ
仕事が楽しいと思うんですよね。
このことが、安定したオペレーションにつながり、
安心して入れる店づくりが実現しているのだと
思いますよ。
投稿者 松尾順 : 2008年01月28日 23:53
mixiの足跡から来ました。
プロセスとオペレーションの見解についてはまったく同感です。
世の中、結果だけを追い求める傾向が強いですが、なぜうまくいったのか、あるいは失敗したのか、という本質的な原因を見極めないと結果オーライで企業も組織も個人も成長しない。
僕も以前は画期的な商品やサービスを、と試行錯誤していた時期もありましたが、プロセスの標準化やオペレーションの最適化のほうがずっと簡単で効果的であると気づきました(もちろん新商品やサービス開発は必要ですが)。いわゆるベストプラクティスの手法ですね。
まずは最終的なゴールである「頂上目標」を決めて、そこからプロセスを細分化して数値目標に置き換えれば、短期的に収益改善や顧客満足度の向上につながると思います(特にサービス業では有効)。
それを繰り返していけば、バラつきがなくなり、標準的なモデル(成功パターン)が出来上がってくる。商品開発のような当たり外れも少ないし、結果として商品開発の精度もあがってくる。人や組織の成長にもつながる。
でも、なかなかこういう考え方って理解されづらいんですよね。近年ようやくこうしたプロセスコンサルティング的な課題解決の手法が注目を浴び始めましたが、経営者がまだまだ理解できないケースが多い(笑)
投稿者 Flat Drive : 2008年02月02日 01:45
Flat Driveさん、コメントありがとうございました。
経営者が地道なオペレーション改善よりも、
一発大逆転の革新的商品を期待してしまうのは
気持ちとしてわからないでもないですが、
「やるべきことをちゃんとやる」ということに
まずは取り組むべきですよね。
投稿者 松尾順 : 2008年02月02日 13:18
そうそう、当たり前のことができていない。
なのに、「何か画期的な商品や施策はないのか?」とのたまう(笑)
当たり前のことを当たり前にやろうとしないのに、難易度の高いことをやってうまくいく可能性は低いですね。
それと、マネジメントとは「管理すること」と勘違いしている経営層・中間層が多いですね。本来は「工夫する」「うまくやる」「何とかする」みたいな意味なのですが・・・
投稿者 Flat Drive : 2008年02月03日 00:48
最近、つくづく思っていたのですが、
マネジメントが「管理」と訳されたのは、
ものすごい悪影響を及ぼしてますよね。
ご指摘の通り、本来は、工夫する、
うまくやる、何とかする、という活動で
あるべきものが、「管理」という言葉からは
そんな発想がまったく出てこないですから。
投稿者 松尾順 : 2008年02月04日 05:03
世の中、管理されたい人間なんていないですから(笑)
マネジメントには創造性とチャレンジが必要だと思っています。
マネジメント層ほど柔軟なアイディアが出てこないと・・・
やる気を引き出すモチベーションマネジメントと、
正しいやり方を導くプロセスマネジメント。
両方が上手くかみ合うと、個人や組織のパワーが何倍にもなるように思います。
特に営業現場でこれをやらないで数字数字だけで縛るとロクなことにならないですね(そういう例を身近で見て、ただいま改革中^^;)。
mixiで話題に上っていた「インナーマーケティング」による社内コミュニケーション向上と、プロセスマネジメントの組み合わせ。意外にやっている人がいなさそうなので、自分なりに考えてみようと思います。
P.S.
メルマガ購読させていただきました。
ネタが豊富で面白いですね。
勉強になります。
投稿者 Flat Drive : 2008年02月04日 22:57
モチベーションマネジメントとプロセスマネジメントは
ようやくこれからというところですよね・・・
メルマガ購読ありがとうございます!
投稿者 松尾順 : 2008年02月05日 12:04
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