非効率を追求する!

ダントツ製品、すなわち
「突き抜けたオリジナリティ」を持つ製品づくりは、
当然ながら一朝一夕でできるものではないですよね・・・


ザ・リッツ・カールトン東京のスイートルームに
設置されるほどの圧倒的に魅力的な音を放つエムズシステムの

「波動スピーカー」

にしろ、一口食べただけで違いがわかる「男前豆腐店」の
豆腐にしろ、酒販店の店主に「今までで一番感動した」と
言わせた濃醇旨口の日本酒「十四代」にしろ、

「突き抜けたオリジナリティ」

を実現するためにとことん手間をかけています。


つまり、ダントツ商品の根底には「効率」とは真逆の

「非効率」

の追求があります。
(標準化可能なプロセスでの効率は追求するにしても)


人が面倒臭いと、あまり考えようとしないこと、
やろうとしないことをあえてやる。

手間を抜けば楽なところを
あえてとことんやりぬく。

こんな非効率なこだわりから、
自社製品のみがオンリーワンで存在する
独自のカテゴリーが生み出されるのだと思います。


もうひとつ具体例を紹介しましょう。

日本人の国民食である「お米」。

ありふれた食材ながら、

「全国 米・食味分析鑑定コンクール」

で4年連続最高得点、つまり
「日本一おいしい」と認められた米があります。

山形県高畠町、上和田有機米生産者組合の
遠藤五一さんがつくる「完全無農薬米」です。


稲作りで一番やっかいなのは雑草。
農薬を使えば楽に雑草が除去できます。

でも、遠藤さんは、人の体が蝕まれ、また
自然の生態系を破壊する農薬を使わない米作りに
取り組んできました。

田植え後の約3ヶ月もの間、
遠藤さんは毎日腰をかがめながら手作業で
雑草を取り除く日々だそうです。

しかし、これだけの手間と愛情を注ぐ

「遠藤さんの完全無農薬米」

は、一般に販売されているお米の4-5倍で飛ぶように売れる。

非効率を追求しているからこそ、
これだけの高い価値が生まれるわけですよね。


さて、こうした非効率を追求することによって
成功している企業事例が豊富に掲載されている本が
あります。

『非効率な会社がうまくいく理由』
(中島セイジ著、フォレスト出版)


同書には、無添加せっけんの「しゃぼん玉せっけん」や、
マルセイバターサンドの「六花亭」、イエローハットなど、
比較的よく知られてる事例も出てきますが、
私が特に「面白い」、というか「すごい」と思ったのが、
東京・江東区にある「丸山工務店」です。


例えば、建て替えをする場合、
施主は数ヶ月は仮住まいをしなければなりませんよね。

丸山工務店に頼むと、自社所有のマンションや住宅を
無料で提供してくれるのです。

維持費などを考えると、
多少とも賃貸費をいただいてもよさそうなものですが、

“施主に余分な出費を抑えていただき、
 その分をよりよい家づくりのために回してもらいたい”

という丸山社長の思いがあって無料にしているのだそうです。


また、住宅建築後のアフターケアは、
通常10年保証ですよね。

ところが、丸山工務店では、定期点検を始めた20年前から、
手がけた住宅すべてを欠かさず訪問し続けています。

毎年80棟ほど新築物件があるため、
年を重ねるほど大変になっていくわけですが、
現在は3日間かけて、約1,400件の家を訪問する
一大イベントとして実施しています。


丸山社長は当初、大変なことを始めてしまったと
後悔しました。

訪問するたびにあちこち不具合を訴えられる。
ところが、5年目を越えたあたりから、
ほとんどクレームが出なくなったそうです。

丸山社長はこんなことを語っています。

“大工をはじめ職人も一緒に行くので、不具合やクレームの
 ポイントがだんだん分かってくるんですね。これは、目先の
 利益計算をしていたら絶対に気づかないことですよ。
 手間をかけて初めて気づけることなんですね。”

なお、この定期点検、
ある意味格好の営業機会ともなっています。

年二回の定期点検を通じて、
リフォーム依頼や新築物件の紹介の受注が
得られることが多くなり、現在は年間受注の約半分が
定期点検をきっかけに生まれているのだそうです。


価格競争で生き残れるのは、
どの業界もせいぜい1-3社くらいです。

価格で勝負しないためには、
他の会社がやろうとしない非効率を追求して
ダントツ製品を作りだすしかないのでは?


『非効率な会社がうまくいく理由』
(中島セイジ著、フォレスト出版)

投稿者 松尾 順 : 2007年12月19日 12:38

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.mindreading.jp/mt/mt-tb.cgi/718

このリストは、次のエントリーを参照しています: 非効率を追求する!:

» なぜ効率化したがるのか? from 課長ほど素敵なショーバイはない!?
今年一年IT業界に身を置いて、つくづく感じたことの一つに なぜそこまで効率化したがるのか? が、あります。 市場・競合調査の一環でネットやセミナー情報を... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2007年12月23日 17:54

» บาคาร่าออนไลน์ from บาคาร่าออนไลน์
非効率を追求する! [続きを読む]

トラックバック時刻: 2014年02月04日 04:34

コメント

丸山工務店の事例が特に参考になりますね。

こういう取り組みは誰でも「するべき」だとは思っても、コストに対してどの程度の期間で採算が取れるのか、とかそれ以上のメリットが得られるのか、といった点を確信するのが難しいですから。

自分の勤める会社も「建築」に関する仕事をしているようなものですから、自社の活動に当てはめて考えてみる価値があると感じました。

--------
1位と2位の本は面白そうなので注文してみました。3位は[利益を3倍にするたった5つの方法]ですか・・・。
特殊な業態の小売の本であること、タイトルがあまりにも「アレ」であること、目次を見るとありきたりなことなどから敬遠していましたが、読んでみようかな・・・。できれば、面白そうな話を紹介していただけるとうれしいです。

投稿者 はぐれヲタ : 2007年12月19日 13:47

はぐれヲタさん、まいど!

「利益を・・・」は今日のブログでご紹介しましたけど、
部長クラス以上になった時に読めばいいと思います。

流通業の話が中心とはいえ、
別業界の方にも参考にはなります。

投稿者 松尾順 : 2007年12月20日 10:45

非効率とありながら、既存顧客の満足があがり、新たな営業もできて、多分クチコミもありそうで、めちゃくちゃ効率的なような?

投稿者 菅原 : 2007年12月21日 21:30

菅原さん、まいどです!!

これを効率的とみるか非効率的と見るかは、
時間の取り方の違いですよね。

優れた経営者は、長いレンジで物事を考え、
辛抱強く継続することができるということだと
思います。

投稿者 松尾順 : 2007年12月22日 01:51

事前に「効率的」だと思っていたことが、フタを開けてみると「非効率」だったなんてことは日常茶飯事です。^^;

今回の逸話はその逆を行くパターンで、今は「非効率」に見えるかもしれないけど、将来には財産になる。

そんな視野と先見性を持ったリーダーになりたいものです。

一家の長としても...

投稿者 課長007 : 2007年12月23日 18:18

課長007さん、まいど!

ビジネスにしろ、なんにしろ、まず投資が先行、その後に売り上げといった形で回収が始まるわけですよね。この投資と回収の時間的ギャップが短いことが「効率的」と間違って言われているのが現状でしょう。

忘れてはいけないことは、人の心は「効率」ではつかめないということじゃないでしょうか。ただし、ひとつだけ効率的に人の心をつかむ方法があって、それは「だます」ことです。これは長続きしないわけですけど。

投稿者 松尾順 : 2007年12月23日 19:41

「非効率な会社・・・」はすごく面白い本でした。
最近社内で来年に向けての「業務効率化」に注目が集まっているので、この本を読んだ自分なりの立場で提言していきたいと思います。本当にありがとうございました!

投稿者 はぐれヲタ : 2007年12月25日 20:02

単位インプットあたりのアウトプットを
最大化するのが効率化ということですよね。

問題は、アウトプットを顧客満足や顧客の信頼とした場合に
インプットとの関係で効率化をどう図れるのか、
どう図るべきなのかが難しいということでしょう。

投稿者 松尾順 : 2007年12月25日 20:50

コメントしてください




保存しますか?