「対話」のマーケティングから「会話」のマーケティングへ

えーと、私は、マーケティングのお仕事以外に、
キャリア系(キャリアデザイン講師など)の仕事も
やっています。

ですので、キャリア系情報の収集のために、
リクナビのメルマガ『リクナビCAFE』なども
読ませてもらってます。
(リクナビさんの見込客でなくて申し訳ないんですけど・・・)


1年ほど前ですが、このメルマガの記事の内容で
ちょっと気になった点がありました。

そこで、感想というか意見を送ったんですね。


ところが、リクナビさんから帰ってきた返事は、

「このたびは貴重なご意見を賜り・・・云々」

という「定型文」だったのでがっかりしました。


このメルマガは、全体的に気さくで親しげなトーンで
書かれていて、読み手との距離感を近づけることに成功している
と思います。

しかし、メルマガ配信のような「1対多」ではなく、
ユーザーからの声に対する回答のように「1対1」の関係に
なった瞬間、生身の人間でない「無機質な法人」として
対応するというチグハグさを露呈してしまう!

リクルートさんでさえこの程度か・・・と
当時は思いましたし、以来、感想や意見を送る気が失せました。


上記の例でもおわかりのように、
消費者自身が自ら積極的に情報発信するようになった今でも、
個々のユーザーときちんと向き合う意思のある、
また向き合うことのできる体制を整えている企業(組織)は
まだまだ少ないのが現実でしょう。


さて、このところ、
マーケティング業界のバズワード(流行言葉)として、

「カンバセーショナル・マーケティング」

も注目を集めつつありますよね。


これは、文字通り訳すと

「会話マーケティング」

となりますが・・・


現時点ではまだ、この「会話マーケティング」を
どのように企画・実行すべきかという「定石」が
固まっていません。試行錯誤の段階だと言えます。


ただ、ふと、以前私の記事でご紹介した、
劇作家・演出家、平田オリザさんの

「会話」と「対話」の区別

の話を思い出しました。


平田さんによれば、
夫婦のような親しい関係で行われるコミュニケーションを

「会話」(カンバセーション)

と呼び、あまり親しくない関係でのそれを

「対話」(ダイアログ)

と区別しています。


「会話」は、基本的に同じ土壌に立つ者同士が、
相手にしてほしいこと、伝えたいことをストレートに
言うことが目的です。

一方、「対話」は、価値や情報の交換が主な目的です。
つまり、異なる人格・価値観を持つ同士が、
お互いの考え方をすり合わせることです。


この見方に立つと、
企業と対象顧客との「関係性の深さ」の違いによって、

「会話」と「対話」

を使いわける必要性がありそうです。


すなわち、企業と顧客との良好な関係性が
十分に確立していない段階では、

「対話」のマーケティング

を行う。

「対話」では「冗長さ」が大切です。
単刀直入に用件に入るのではなく、もろもろと雑談を
入れながら、時間をかけてお互いを理解しあう。


そして、十分に良好な関係性が確立した段階で、

「会話」のマーケティング

へと移行します。

この段階で初めて、
企業と対象顧客はお互い腹を割った話ができますし、
またそうすべきです。

「本音」の情報交換こそが、
強固な「信頼関係」づくりへとつながっていくからです。


*マーケティングコミュニケーションの冗長率

投稿者 松尾 順 : 2007年12月06日 13:20

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コメント

移行、面白いですね。

ぼくは、なんとなく「会話」から「対話」へ、「対話」から「会話」のへ行きつ戻りつを想像していたので、刺激になりました。
ありがとうございます。

投稿者 喜山 : 2007年12月07日 10:50

喜山さん、コメントありがとうございます。

対話と会話の行きつ戻りつというイメージは、
それぞれの言葉の定義というか見方が、
平田氏とはたぶん違うからでしょうね。

突っ込んだ話は飲みながら話しましょう!

投稿者 松尾順 : 2007年12月07日 10:53

リンク先でも書いてたんですが、

「会話しない人」、「会話できない人」

どんどん増えてるように感じてるのは私だけでしょうか?

メールやメッセンジャーでは雄弁な人など、最たる例ですかね?

ちなみに私が雄弁なのは飲み屋ですが..

投稿者 課長007 : 2007年12月08日 20:32

テキストだけのオンライン会話と違い、リアルな場で対話、会話するのが難しいのは、五感を総動員しなければならないからでしょう。

そうなると、対話、会話が苦手な理由は、感覚が鈍化しているということかもしれません。

投稿者 松尾順 : 2007年12月10日 10:12

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