ネットビジネスの勝者:オートバイテル・ジャパン

「インターネットで、家や自動車は売れるのか?」


90年代後半、インターネットが普及し始めた頃、
こんな議論が盛んに行われましたよね。

実際のところ、こうした高額商品は、
やはり自分の目で確かめ、試してみた後じゃないと
購買を決めるのは難しい。

ネットで見つけた家(部屋)を買い物カゴに入れて、
ポンと購入ボタンを押すなんてことはできませんよね。

なので、インターネットでできることは、
基本的に情報収集、比較検討段階、モノによっては
価格交渉までということになります。

とはいえ、ネットによる消費者の情報収集や比較検討行動が
企業のマーケティングのあり方を大きく変えてしまったのは
確かです。


さて、当初多くの企業が参入した

「インターネットによる自動車販売仲介サービス」

ですが、現時点で唯一の勝者となっているのが、

「オートバイテル・ジャパン」
http://www.autobytel-japan.com/

です。

私は最近まで知らなかったのですが、
すでに他の競合企業は撤退してしまっていたんですね。
(I.M.Press Vol.139(2007-12)、トップインタビュー)

やはり、この業界でも

「Winner takes all」

の法則が当てはまったということでしょうか。


「オートバイテル」では、
現在発売されている400-500車種のカタログ情報を掲載。

メインのサービスは、

「新車見積もり仲介サービス」

で、複数車種の比較検討、見積もり依頼、eメールによる商談
までを簡便に行えるのがウリです。

現在、同社に加盟しているカーディラーは900社以上、
店舗数では約5,000店に達しているそうです。


上記インタビュー記事の中で、
同社代表取締役社長、加登吉邦氏は、
次のような数字を披露してくれています。

---------------------------------

・日本における年間の新車販売台数(軽自動車含む)は、 
 500-550万台程度(2007年度)

・見積もり依頼者の2人に1人は新車を購入、つまり、
 年間で1000-1200万人の方が新車購入を検討
 (同社アンケート調査の結果に基づく推定値)

・オートバイテルのWebサイトユーザー数は年間2000万人、
 月間で150-200万人

・上記ユーザーの10%が新車見積もりボタンをクリック

・ユーザープロフィールは、性別で見ると
 男性7割、女性3割。女性ユーザーの比率が増加傾向にある

--------------------------------


加登氏は、

「インターネットによる自動車の販売仲介サービス」

において、同社だけが生き残れた要因は、

「継続」

という言葉に尽きると答えています。


このサービスの成功のカギ(KFS:Key Factors for Success)は、

「見積もりを提出できる加盟ディーラーの数」

ですよね。

利用者としては、最終段階で現物を見に行ける
近場のディーラーから見積もりが取れなければ意味ないですから。


結局、1999年のサービス開始からこれまでの8年もの間、
風雪に耐えながら(加登氏の言葉)、地道な訪問営業を通じて
900社まで加盟社を増やすことができたのが同社だけだったのです。


ところで、同社には

「567の法則」

というものがあります。

・見積もり依頼者の商談への移行率:50%
・うち、店舗への来店につながる率:60%
・来店者が、最終的に成約に至る率:70%

のことですが、これらを掛け合わせた

「21%」

「目標成約率」(見積もり依頼者が実際に購入する率)

としているそうです。


加登氏によれば、
この3つの数字のうち最も大切なのは、

「新車見積もり依頼から商談への移行」

です。

見積もり依頼が行われてから、
6時間以内にeメールを返信した商談の成約率を100とすると、

24時間以内では60%
48時間超では20%

に成約率が激減するというデータがあるのだそうです。


最初のユーザーからのコンタクトに対する反応スピードの速さが
いかに後々に大きな影響を及ぼすかを実感できる数字です。

投稿者 松尾 順 : 2007年12月03日 11:04

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