シニアライフの未来形・・・カレッジリンク型シニア住宅
私の義母、つまり妻の母親は昨年、自ら自分の資産を処分し、
千葉房総の鴨川に近い山の中に建つ
「介護付マンション」(端的に言えば「有料老人ホーム」)
に居を移しました。
そこは、栗を拾いに野生のサルが顔を出すような、
自然にあふれた素晴らしい場所です。
幸い、私の自宅は千葉・松戸にありまして、
鴨川・勝浦近辺には年に何度も旅行に行く場所でした。
ですので、家族旅行の度に義母のところを訪ねています。
さて、このマンションの入居者は、当然ながら全員ご老人です。
ロビーで見かけるのはご老人の方ばかり。
(受付の方とか、介護士の方々は皆さんお若いですが)
入居者の間で様々なサークル活動が盛んのようですし、
夏祭りなどの行事も盛大にやってます。
しかし、やはりお年寄りしかいない食堂で
お昼をいただいている時などに感じるのですが、
いわゆる「老人専用マンション」は、正直言って、
あまり活気のあるものではないですね。
ある意味「現世」から隔離されているとも言える、
刺激の少ない大自然の中で、老人たちだけで固まって
毎日を過ごすというのはどうなんだろう?
よっぽど自分で自覚してないと、あまり頭も体も使わなくなり、
老化の進行が早まるんじゃないか?
といった疑問がよぎります。
年をとれば誰もが体力・気力が衰えはしますが、
従来理想とされてきた「静かな余生」は、
人にとって本当に望ましいものなのでしょうか?
「必ずしもそうではない」
と言える興味深い事例があります。
それは、「カレッジリンク型」のシニア向け住宅です。
カレッジ、すなわち「大学」と連携したシニア住宅。
米国では10年ほど前に登場し、じわじわと普及しつつある、
いわばシニアライフの未来形と呼べるものでしょう。
「カレッジリンク型シニア住宅」の具体例としては、
ボストン郊外の高級住宅地、ニュートンにある
「ラッセルビレッジ」
があります。
ここは、「ラッセルカレッジ」という大学と一体となって
運営されているシニア住宅です。
ラッセルビレッジは、
入居者を募集開始したとたん即売。
現在も100人以上の空き待ちの方がいる人気だそうです。
この住宅、他とちょっと違っているのは、
入居の条件として、なんと年間450時間以上、
大学の講義を受講しなければならないという点。
金さえあれば入居できるわけではないのがユニークですね。
もちろん、入居者は大学の施設を自由に利用できます。
カフェテリアでは、若い学生たちと共に食事を楽しむ
入居者の老人たちを見ることができます。
大学の授業は、若い学生と共に受講しますが、
歴史の授業などでは、ご老人たちは文字通り
「生きた歴史の教科書」
となり、学生たちに自分の経験談を語ることができます。
また、詩の朗読のクラスなどでは、
入居者の老人がリーダーとなって学生をまとめることも
あるそうです。
しかも、人生の先輩として、
入居者たちは、学生のキャリア・人生相談役も務めます。
すでに引退しているとはいえ、
現役のころは様々な職業を経験してきている人がいます。
学生にとってはとてもありがたいアドバイスが得られますよね。
さて、以上は学生にとってのメリットですが、
入居している老人にとってのメリット、それは、
授業で頭を使い、学生たちと交流して彼らの若いエキスを
吸収できることで(笑)、いつまでも若々しく元気で
いられることです。
実際、入居者の方々の写真を見ましたが、
90歳近くの方でも、60歳代にしか見えないほどでした。
通常、老人ホーム入所5年後の要介護率は、
約10%だそうですが、ラッセルビレッジでは、
同3%に止まっているそうです。
つまり、老化のスピードが明らかに減速する。
かなり強力なアンチエイジング効果ではないでしょうか。
私は、決して従来型の介護付マンションがダメとは
思いませんが、年を取っても元気いっぱいでいられて、
若い人にとっても人生の先輩の知恵が得られる、
「カレッジリンク型のシニア住宅」
は、日本でも今後人気を集めるのは確実だと思います。
実は、来年(2008年)5月に、
日本初のカレッジリンク型のシニア住宅がオープン
するそうです。関西大学との連携です。
*クラブアンクラージュ御影
http://www.encourage.co.jp/
以上は、シニアビジネスの第一人者、
村田アソシエイツ代表、村田裕之氏のお話を元にしました。
投稿者 松尾 順 : 2007年11月22日 15:53
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コメント
周りや環境が、「老人への気遣い」から中腰になり、その「衰え」にレベルを合わせても、介護予防にはならない。
鍛えてこそ、衰えは予防できる。
その点、体力・知力共に高度に活用できる場があるのはイイことだと思う。
投稿者 らっこ : 2007年11月29日 17:00
らっこさん、コメントありがとうございます。
現在の老人ホームは、老いへの対応がメインですよね。
老いないための、あるいは逆に若返るくらいの「予防」
という方向性での環境づくりが必要だと思います。
投稿者 松尾順 : 2007年11月30日 00:00
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