吉兆ブランドの再生なるか?・・・お詫びの力

高級料亭「吉兆」のブランドイメージも
ずいぶん墜ちてしまいましたねぇ・・・


吉兆といえば、九代目林家正蔵氏(前林家こぶ平さん)
に似て親しみやすい雰囲気を持つ徳岡邦夫氏が有名です。

今年7月に徳岡氏の話を聞く機会がありましたが、
とても深い話をされてました。

*徳岡氏の講演レポートがこちらにあります。
→夕学五十講 受講生レポート
→夕学五十講 トップページ


さて、ご存知かと思いますが、
吉兆には次の5の料亭(法人)があります。

・本吉兆
・船場吉兆
・神戸吉兆
・京都吉兆
・東京吉兆


上記の店は、グループ会社とはいえ、
それぞれ独立経営です。

したがって、同じブランド名を共有しつつも、
お互いの経営内容についてそうそう口をはさめません。

ところが、不正が発覚した「船場吉兆」のおかげで
他の吉兆まで多大な悪影響(とばっちり)を
受けるという結果になってますよね。


徳岡氏は、京都吉兆の総料理長。
やはり今回は相当苦慮されているようです。

彼のブログでは、船場吉兆問題発覚後、
繰り返し3回もお詫びの文章を掲載しています。

*京都吉兆 三代目徳岡邦夫のブログ
http://kyotokitcho.seesaa.net/


徳岡氏の真摯な文章を読むと、
同じ吉兆でも、「京都吉兆」は、また他の吉兆は、

「船場吉兆」

とは違うと信じたいところです。


まあ、お互いに資本的な影響力はほとんどない別会社
だったわけですから、他の吉兆の不正がこれ以上暴露
されない限りは、吉兆ブランドの再生は大丈夫じゃないかと
思います。


しかし、万が一、他の吉兆のどこかで不正が
行われていたなら、第三者から暴露される前に、
いさぎよく自ら告白し、心からお詫びすべきでしょう。


というのも、日本では特に、

「心からのお詫び」

つまり誠意を感じさせるお詫びには、
相手の赦しを得る魔術的な力があるからです。


古典的名著、

『「甘え」の構造』(土居健郎著、弘文堂)

によれば、

日本人の場合、自分が属している社会・集団の中での
信頼関係を裏切るのが最も大きな罪悪感を感じること

だと説明されています。


だからこそ、逆説的ですが、

「内輪の中での信頼の裏切りが重大な罪である」

ということを自覚していることが伝わる

「心からのお詫び」

が効果的です。


私たちが最も嫌う、
信頼の裏切りという罪を犯したことを自覚し、
心からすまないと思っているのなら、
もういいだろう、赦してあげようか・・・

と聞き手は寛容になれるわけです。


上記の本の中には、こんなことが書かれています。

日本人に罪の赦しを説くべくやってきたキリスト教の宣教師が、
日本人の間では心から詫びれば容易に和解が成立するということ
を知って感心している。


ですから、逆に、不祥事発生時に言い逃ればかりして

「心からのお詫び」

を示すことのできなかった企業・個人のブランドは
失墜したままであり、信頼回復は極めて難しいものになります。


「心からのお詫び」を感じさせた石屋製菓は、
「白い恋人」の製造再開(11/22から)を果たし、
信頼回復の道を歩み始めましたね。


しかし、現状では「赤福餅」のブランド再生は無理です。
「船場吉兆」も不可能でしょう。

投稿者 松尾 順 : 2007年11月19日 11:39

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