星野リゾート「白銀屋」のサイトリニューアル事例

ある企業さんのプレゼント企画に応募したら、運よく当選して賞品の

「日経ネットマーケティング」創刊号(2007.11)

をいただいたので、早速読んでみました。

事例が豊富に掲載されていて、
なかなかいい専門誌に仕上がっていると思います。


さて、同誌の事例のひとつとして、
星野リゾートのユーザビリティテストの詳細が
紹介されていました。


ちょっと前に書いた記事、

*ホームページのユーザビリティテスト結果をどう解釈するか?

で、星野リゾート代表取締役、
星野佳路氏の講演内容をご紹介しました。

この中で、星野氏は、同社が運営する宿泊施設のWebサイトに
対して行ったユーザビリティテストの結果、

・想像以上に、写真のインパクトが大きいこと
・一生懸命書いた文章にはあまり目を向けてもらえないこと
・アクセスマップも非常に重要だということ
・デザイン的に素晴らしいホームページが、
 予約獲得に直接結びつかないケースがあるということ

などがわかったと話されているのですが、
具体的に、どのサイトにどんな問題点が発見できたのかを
日経ネットマーケティングの事例記事で知ることができます。


対象サイトは、山代温泉の「白銀屋」です。

*白銀屋
http://www.shiroganeya.co.jp/


このWebサイトではユーザビリティテストの結果を基に、
現在のWebサイトにリニューアル(2006年11月)したところ、

予約率55%増(2007年8月の前年同期比)

という成果を収めています。


リニューアル前のWebサイトは、白銀屋の新装オープンに
合わせて2005年8月にオープンしたばかりでした。

旧サイトのデザインは、残念ながらネット上で
閲覧できない(archive.orgでも表示されず)ので、
日経ネットマーケティングの記事をぜひ見てください。

確かに、旧サイトは、
洗練されたカッコいいデザインではありました。


しかし、星野リゾートが、
サイトの効果測定や設計、開発を行っている「ビービット」
に依頼して、サイト上のユーザーの視線を追う

「アイトラッキング調査」

を旧サイトを対象に行ったところ、
以下のようなことがわかったそうです。


・写真から写真へと目線が移動していた

・「時の旅人になる」といった抽象的なキャッチフレーズは
 ほとんど目に留まらずスルーされていた


また、ユーザーインタビューの結果、
旅館サイトに求めている情報は、

食事、客室、風呂

の3つに集中していることが確認できています。


これらの結果を受けて、星野リゾートでは、
92項目のユーザビリティガイドラインを作成し、
サイトのリニューアルを行ったわけです。


記事で紹介されている改訂のポイントは次の3つです。


1.トップページの改善

 関心が高い、「食事」「客室」「温泉」を目立つ位置に置く。
 
 現サイトをみていただくとわかるように、画面中央に
 大きくこれらの見出しが置かれていますよね。

 旧サイトでは、「北大路魯山人ゆかりの宿」といった
 コンセプトの解説がメインに置かれており、上記のような
 見出しは左下に小さく表示されていてあまり目立たなかった
 のです。


2.ナビゲーションの改善

 すべてのページに、宿泊予約へのリンクを
 上部、下部、右サイドの3箇所に表示
 こうすることで、ユーザーの予約行動を容易にしています。

 旧サイトでは、予約は右下に1つだけ控えめに置かれて
 いただけでした。


3.泊まりたくなる演出

 ユーザーの目線で写真を選択。おいしそうな料理や清潔感
 あふれれう広々とした風呂の写真を掲載。

 旧サイトでは、木々の間から部屋を望む構図や、
 照明を落とした食事処を遠巻きに撮影したものなど、
 えん曲なイメージがほとんどでした。

 確かに、こんな写真ばかりでは、ユーザーの泊まってみたい
 という欲求をかきたてるのはなかなか難しいでしょうね。


結局のところ、白銀屋の旧サイトでは、

“ガイドラインに沿って旧サイトを見ると、
 デザインの良しあし以前に、ユーザーが期待する情報が
 提供できていなかった”(サイトを手がけた黄日錫氏)

ということです。


Webサイトにおける「デザイン」は、
そもそも、ユーザーの求める「情報」や「機能」を
的確に提供するための

「手段」

であるという基本が、
旧サイトでは押さえられていなかったということでしょうね。


最後に、この事例記事に掲載されている
星野リゾートの「ユーザビリティガイドライン」(要旨)
の一部を引用しておきます。

---------------------------------------------------

・全ページから宿泊予約のページにアクセスできる

・注目度の高い「客室」「食事」「風呂」のメニューが
 目立っている

・写真は抽象的なものでなく、被写体が明確になっている

・写真の近くに訴えたいフレーズ(言葉)が置かれている

・Flash 動画などでの再生待ち時間がストレスにならない

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投稿者 松尾 順 : 2007年11月01日 10:22

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山代温泉へ行くのに便利。 [続きを読む]

トラックバック時刻: 2011年03月09日 23:01

» the original source from the original source
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コメント

デザイナとして55%UPには、反論しがたいです。

> 旧サイトのデザインは、残念ながらネット上で
> 閲覧できない(archive.orgでも表示されず)ので、
もしかしてこれは違いますか。
http://7779.net/award/2005/shiroganeya.html

投稿者 Anonymous : 2008年05月22日 10:36

旧サイトのデザインは、
確かにご指摘のURLのものです。

情報提供ありがとうございました!

投稿者 松尾順 : 2008年05月22日 14:51

たしかに予約率55%増は無視できないことではあるでしょうけど、
それ以前のデザインが脳裏に染み着くほどインパクトが
あったことも無視できないのでは?
口コミが広がっていた土壌があってのことではないのでしょうか?
以前のデザインが単体のデザインとして集客に結びつかなかった
ことには問題はあるでしょうけど、
現時点の特に特徴のない普通のウェブデザインにとりたてて力が
あるということではなくて、美味しいところを
いただきましたってことですよね。
洗練されたカッコいいデザインと一言でかたづけてはいけないほど
以前のデザインには衝撃があったなー。

投稿者 kk : 2008年12月05日 03:56

kkさん、コメントありがとうございます。

確かにkkさんの見方もありますね。

最初のデザインでブランドイメージを向上させて
土台作りができた。

だからこそ、販売促進効果の高い現行サイトの効果が
上がったということかもしれません。

投稿者 松尾順 : 2008年12月05日 12:43

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