影響力を解剖する(10)影響方略-3
相手に影響を与えるための具体的な「働きかけ方」のことを
「影響方略」
(Influence tactics、Influence strategy)
と呼びます。
この「影響方略」においては、
これまで紹介した6つの影響力の源、すなわち、
・賞影響力
・罰(強制)影響力
・正当影響力
・専門影響力
・参照影響力
・情報影響力
を有効に活用することにより、
相手に影響を与えることに成功しやすくなります。
『影響力を解剖する』
では、18種類の「影響方略」が挙げられていますが、
これら18種類を
・賞影響力に関連する影響方略
・罰影響力に関連する影響方略
・賞罰に関連しない影響方略
の3つに分類して説明が行われています。
今回は、
「賞罰に関連しない影響方略」
の9項目をご紹介します。
[単に頼み込む]
影響の受け手にとって依頼に応諾することに
たいしてコストがかからない場合、シンプルに依頼
するだけで十分な場合があります。
まあ、わざわざ説明するまでもないことのようですが、
「断られたらいやだな」とか、「頼むのが恥ずかしい」
といった理由で頼めないことってありますよね。
ところが、実際頼んでみたら、
拍子抜けするほど簡単に承諾してくれることが
多いものです。
その結果、頼まなかった場合より、
ずいぶん得することもあります。
なにか頼みごとがあったら、
あまり深く考えずに、ダメモトで頼んでみるのが
いいんじゃないでしょうか。
(相手との間合いとか図りつつ)
[受け手が応じるまで依頼を繰り返す]
ようするにしつこく頼み続ける。
昔の押し一手の営業マンのやり方でした。
熱意が伝わるという意味で相応の効果が
ありますが、いまは大変いやがられますね。
でも、あなたが、落語家に弟子入りしたかったら、
これしかありません。あなたの熱意と決意が
試されているからです。
[理由をつけて頼み込む]
これもわざわざ説明しなくても良さそうですが、
そうでもありません。
依頼の理由が必ずしも正当なものでなくても、
効果があるのです。
「影響力の武器」でも紹介されていますが、
「コピーを取らなくてはならないので、
割り込ませてくれませんか」
といった、全く理由になっていない理由をつけても
割り込ませてくれる可能性が高いのです。
このあたりは人の心理をうまく突いているんですね。
(詳細説明は、「影響力の武器」をご参照ください)
[与え手と受け手の役割関係を指摘する]
お互いの役割関係を強調、つまり思い出させて
影響力を行使しようとするもの。
上司・部下の関係などにおいて存在する
「正当影響力」
を背景に、
“上役である私の命令には逆らえないはずだが・・・”
などと言う。
セクハラ、パワハラの現場を思わず連想してしまいます。
しかし、こうして自ら役割を強調しなければならないのは、
受け手がその人を認めていないことの裏返しでもあります。
尊敬に値する上司なら、
「私が上司なんだから・・・」
などとわざわざ言われなくても、素直に従うものですよね。
[第三者から支援してもらう]
自分よりも正当影響力や専門影響力が大きい人の
パワーを借りる方法。
恩師などに「推薦状」を書いてもらうといったことが
これに該当するでしょうね。
この方法は常日頃の人脈づくりが鍵になります。
[社会的な規範の存在を指摘する]
「困っている人がいたら、助けてあげるというのが
人の道というものではないでしょうか」
などと、社会的に共有されている考え方や常識を
持ち出して相手を説得しようとするもの。
このテクニックは、代議士先生が多用しますね。
[頼みたいことを暗にほのめかす]
影響の受け手に対して、
頼みたいことを直接言わず、相手が察してくれるような
表現をする方法。
たとえば、窓を開けてほしい時、
「この部屋ちょっと暑いね」
と相手に言うのはこれです。
直接依頼事項を伝えてしまうと
角が立ってしまったりする場合によく使いますね。
逆に言えば、これがうまく使えないと、
「きつい人」(ストレートすぎて)
という印象を周囲に与えてしまう可能性がありますね。
[受け手をだます]
にせの依頼事項を伝えたり、嘘の理由を述べたりするもの。
明らかなにせもの、嘘だとわかる真性ブラックな話なら、
受け手もだまされることは少ないでしょう。
しかし、霊感商法的なもので、
“この「壷」を床の間に置いておくと
幸運がやってきますよ”
などといった話は、その効果の検証が不可能です。
つまり、受け手がこの話を信じるかどうかにかかっているため、
周囲から見ると、明らかにだまされているとしか思えませんが、
本人はだまされているとは感じていないという点が厄介ですね。
ビジネスのシビアな交渉でも、
自分たちにとって有利な条件を引き出すため、
結構平気で嘘をつきあってますね。
[受け手と話し合い、妥協点を見つける]
お互いに歩み寄るやり方。
ピアノの音がうるさいと文句を言いにきた隣人と話し合い、
夕方6時以降は練習をしないと取り決めるといったことです。
民主的な方法ですよね。
ただ、駆け引きが発生しますから、
人間心理をよくわかっている交渉上手が相手だと、
自分にとって不利な依頼を飲まされてしまうということが
多々あります。
『影響力の武器-なぜ、人は動かされるのか』
(ロバート・B・チャルディーニ著、誠信書房)
投稿者 松尾 順 : 2007年09月12日 10:46
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