「ユーザビリティ」から「デザイアビリティ」へ
昨年(2006年)11月1日、
「日本で始めて」という触れ込みで、
「ペルソナデザインセミナー」
が開催されました。
私も、「これは見逃せないぞ!」と
満を持して当セミナーに参加したのですが、
「ペルソナ」
をデザイン(作成)するための基本的な知識と、
最新の動向を知ることのできたすばらしい内容でした。
さて、当セミナーの講演者、
フォレスターリサーチ社のハーレー・マニング氏が詳述した
「ペルソナデザインの基本的な手順」
については、
にも紹介されていますので省略します。
ここでは、
「導入企業は、どのようにペルソナを使用しているのか」
について、マニング氏の話などを元に再度確認し、
さらに最近の新たな視点も併せてご紹介します。
マニング氏は、ペルソナを導入している欧米企業として
次のような著名企業を示しています。(講演当時)
--------------------------------
・Chrysler
・Ford
・Mini Cooper
・Bank of America
・Discoverer
・Fidelity
・Amazon
・Best Buy
・Staples
・FedEx
・UPS
・Adobe
・Microsoft
・SAP
---------------------------------
そして、こうした企業がペルソナを利用する目的としては、
次の4点を挙げています。
・ユーザーに対する間違った認識を改める
・デザインについての議論を短縮できる
・機能要件の優先順位づけ(削除)
・品質の改善
架空の存在ながら、
最も重要で象徴的な顧客像をリアルに描いた
「ペルソナ」
は、企業の担当者にとって異なる
ユーザーに対する認識の違いを埋めてくれます。
そして、
デザインの方向性や要件の絞込み、製品改良
を行うにあたっての
「統一された判断基準」
となるというわけです。
さて、最近はさらに別の視点が提示されています。
それは、Webサイトのデザインについてです。
フォレスターリサーチ社のアナリスト、
ケリー・ボーディン氏によれば、
従来の企業サイトは、
・役に立つ(useful)
・使いやすい(Usable)
という概念が中心にありました。
ここで、
「役に立つ」
というのは、
「価値の提供」
であり、
「使いやすい」
というのは、
「提供供する価値への簡単なアクセス」
を意味します。
というのも、これまでは企業サイトの目的が、
企業や製品の紹介、あるいは
買い物、各種予約といった取引機能を提供するものであり、
とりわけ
「利便性」
が重視されたためです。
しかし、近年は単に使いやすい、つまり
ユーザビリティが高いだけではだめで、
「望ましい」(Desiable)
なものでなければならなくなってきたと、
ボーディン氏は主張しています。
「望ましい」とは、端的には
「感情へのアピール」
ができていることです。
たとえば、ダンスビデオなどの動画が
ふんだんに使われている
「ナイキ」
のサイトは、単なる商品紹介やeコーマスに止まらず、
ユーザーの気持ちをかきたてることを意識した
「望ましいサイト」
のひとつです。
すなわち、「望ましいサイト」とは、
「理想的な顧客体験」(カスタマーエクスペリエンス)
を提供できるサイトです。
ただ、従来の
「粗いターゲットセグメント」
では、「理想的な顧客体験」を
設計することが困難でした。
そこで、「ペルソナ」の登場となります。
まるで実在の人物であるかのように詳細なプロフィールを
生き生きと描く「ペルソナ」を中心に置くことによって、
「理想的な顧客体験が提供できるWebサイト」
の設計が可能になるというわけです。
ちょっと気取った言い方をさせてもらえば、
サイト構築のトレンドは、
「ユーザビリティ」から「デザイアビリティ」
へと移りつつあるということでしょうか。
*ケリー・ボーディング氏の話は以下の記事から
投稿者 松尾 順 : 2007年09月07日 11:06
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コメント
たびたびお邪魔いたします。
「ペルソナ戦略」は発売直後に気になってすぐ購入したのですが積んだままになっています。
CRMにも通暁される松尾さんにこんなことをいうのは口幅ったいのですが、ペルソナが日本で普及するのはいい面と同時に、いまの多くの日本企業の顧客接点に対する意識の弱さ(=目の前の顧客がまるで見えていない)がそのまま温存されて、ペルソナべったりなアプローチのみで事態をつまらない方向に向かわせるんではという懸念も感じます。
ペルソナは事前調査に基づいて設計される、という部分でもう一つ強引に話をもっていって教えていただきたいことがあるのですが。
社会調査の教科書などを読むとデルファイ法もしくはデルファイ・メソッドといわれる調査手法がありますよね。ぼくは最初にこれを知ったときに名前の由来やその方法など非常に興味を持ったんですが、実際に調査でこれをつかったという実例を知りません。本にも、「手間やコストがかかるので使われない」という説明があったように記憶しています。
これって、インターネット調査を前提にすれば今は十分実現可能だと思うんですが、やはりあまり意味がないのでしょうか。
投稿者 衰弱堂 : 2007年09月07日 12:36
衰弱堂さんの危惧、よくわかります。
ペルソナ作成のためにわざわざアンケート調査やインタビューをしなくても、顧客接点からいくらでも顧客情報は吸い上げられるだろうということですよね。
ただ、現状の顧客としっかり向き合うということができない企業に対しての即効薬となるのが「ペルソナ」であり、その意味では、顧客接点に対する意識変革はまた別のアプローチを平行してやるべきなんだろうと思います。
「デルファイ法」については、国からの委託を受けた社会調査・研究(予算が潤沢にあるもの)では、近年までたまに採用されていた方法ですよ。主にシンクタンクが実施していました。一般ビジネスパーソンにとっては縁遠いテーマが多く、なかなか気づかないのですけど。
デルファイ法は主に、長期的な将来予測に使われていましたが、昨今のように技術が専門分化・深化し、一方で応用分野ではさまざまな技術の複合体となるため、予測がきわめて困難、しかも変化が急激・急速になると、その有効性(予測精度)は大きく低下してしまっていると思います。
結果的に21世紀になってからはあまり採用されなくなった調査手法ではないかと感じています。(これはあくまで推測です。調査手法の変遷をウオッチしているわけではないので・・・)
投稿者 松尾順 : 2007年09月07日 14:46
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