影響力を解剖する(7)影響力の源-3

過去2回でご紹介してきた6つの影響力の源、すなわち、

・賞影響力
・罰(強制)影響力
・正当影響力
・専門影響力
・参照影響力
・情報影響力

は、影響の与え手が、なんらかの

「資源」

を持っていることによって発揮されるものです。


ここで、「資源」とは、その人固有の

「強み」

と言い換えることができるでしょう。

たとえば、

・「賞」、あるいは「罰」を与えることができる(賞、罰影響力)
・地位が高い(正当影響力)
・専門知識がある(専門影響力)
・尊敬に値する行動力や好意を抱かせる魅力がある(参照影響力)
・理路整然と話せる、具体例を示せる(情報影響力)

といったことです。


しかし、こうした「資源」を持たなくても
影響力を行使することが可能です。


『影響力を解剖する』

では、与え手が「資源」を持っていない場合の影響力の源
として、次の3つが示されています。

・対人関係影響力
・共感影響力
・役割影響力


[対人関係影響力]

これは、ことわざで言えば、

「虎の威を借る狐」

のようなものです。

つまり、影響力を持つ他人を自分の見方につけて、
影響を与ようとすること。

企業内では、実力のある上司や同僚などに
あらかじめ根回ししておくことで、会議で自分の意見を
首尾よく通そうと画策することがありますが、これは

「対人関係影響力」

の駆使にあたります。


[共感影響力]

端的にいえば、

「泣き落とし作戦」

のこと。


自分の苦境を訴えることによって、
相手の共感(というより「同情」ですかね)を得て、
相手の行動を引き出そうとすること。

たとえば、資金繰りに行き詰まり、倒産目前といった時、

「今の私では、なにもお返しできませんが・・・」

と開き直って頭を下げるしかありませんが、
変にやせ我慢するよりも、
かえって相手が受け入れてくれやすいのです。


この意味で、

「共感影響力」

は、逆説的な影響力です。


[役割影響力]

これは相手との社会的な関係に基づいて、
影響を働きかけること。


たとえば、市民が市役所に対して、
駅前に駐輪場を設置するように要求したり、
あるいは、会社の上司に対して、部下たちが
新規事業の行く末について、明確な方向性を
示してほしいと依頼すること。


すなわち、市役所や上司といった立場において
一般に要求される役割や義務が果たされていないような時に、
市民や部下は、彼らよりもある意味、弱い存在でありながらも、
影響を与えることができます。

もちろん、相手が聞く耳をもっていなければ効き目がありません。


しかし、役割影響力を無視し続けてしまうと、
国(企業)によっては、反乱が勃発し、

「革命」

という体制側にとって最悪の事態を生んでしまうわけですけど。


『影響力を解剖する』
(今井芳昭著、福村出版)

投稿者 松尾 順 : 2007年08月21日 13:34

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