「切る」「捨てる」発想(2)

今回は、スーパーマーケター、森行生さんが説く、

「ヒット商品の生み出し方」

の手順のご紹介です。


まずは、新商品のアイディアを200-300くらい出します。

それを、次の段階で150案、さらに50案、
そして最終的に「10案」程度まで絞り込んでいきます。


これこそが「ヒット商品」を生むために、
ばっさりと

「切る」「捨てる」

作業です。


森さんによれば、この作業において
アイディアの良し悪しを判断する「ポイント」は、
次のたった二つだけです。

・「好きか・嫌いか」(優位性)
・「ありきたりか・ありきたりでないか」(差別性)

この2つの軸は、

「5段階評価」
(ex. かなり好き、やや好き、どちらでもない、
    やや嫌い、かなり嫌い)

で評価します。


そして、様々なアイディアを評価した結果を

縦軸:「好き-嫌い」(優位性の軸)
横軸:「ありきたり-ありきたりでない(差別性の軸)

のマトリックスに展開し、
「ポジショニンブマップ」(分布図)を作成するのです。
(いわゆる「ポートフォリオモデル」)


このマトリックスを大きく4つの象限に分けて
それぞれの象限に入ったアイディアの評価を表現すると
次のようになります。(右上から時計回り)

------------------------------------------------

◎第1象限(好き・ありきたりでない):スター企画

優位性も差別性も共に高いアイディアですね。


◎第2象限(嫌い・ありきたりでない):偏屈企画

優位性は低いが、差別性は高い。
くせのある企画という言い方もできそうです。


◎第3象限(嫌い・ありきたり):クズ企画

優位性も差別性も、共に低いアイディア。
売れないアイディア。


◎第4象限(好き・ありきたり):定番企画

優位性は高いが、差別性は低い。
どの企業も参入してきやすいので競争が激しい
ことが予想されるアイディア。

------------------------------------------------

これらのうち、当然ながら

「スター企画」

は最終候補に残します。


一方、言うまでもなく、

「クズ企画」

は早々と捨てる。


残る2つのうち、

「定番企画」

は、競争が激しいだけに大手じゃないと
体力的に戦えない。


そこで、森さんが最も注目するのが

「偏屈企画」

です。

ここにこそ、

「ヒット商品のねらい目」

が眠っていると、森さんは指摘しています。


さて、こうして絞り込んだアイディアは、さらに

「下線分析」

と森さんが呼ぶ調査にかけます。


これは商品コンセプトをA4数枚に、
詳しく書いて、消費者に読んでもらいます。
そして、読んだ人が気になった部分に

「アンダーライン」

を引いてもらうという調査手法だそうです。


この調査結果は、クロス集計してグラフ化。
すると、消費者が気になっていること、
求めていることが浮き彫りになってくる。

そのうえで、アイディアをさらに絞ったり、
似ているものを統合したり、男性と女性向けに
う分割するなど「洗練」させていくのだそうです。


以上のプロセスを森さんは、
次のように簡潔にまとめてくれています。

1 まずはアイディアを徹底的に「広げる」
2 次にそれを無慈悲に「切る」
3 そして残ったものを作り込む、すなわち「洗練させる」


ちなみに、この3つのプロセスのうち、
2の「切る」が最も重要なのだそうです。

あれやこれやと「付加価値」をつめこむのではなく、
ターゲットを明確にして「切る」という

「減産価値」

こそ重視すべきだからです。


なお、2回にわたってご紹介した森行生さんによる、

「ヒット商品の見極め方、生み出し方」
について詳細を知りたいかたは、

『予測する力養成講座』
(講談社MOOKセオリーVol.11)

を読んでみてください。


*(ご参考)森行生さん主要著作

『シンプルマーケティング』
(森行生著、ソフトバンククリエイティブ)

『ヒット商品を最初に買う人たち』
(森行生著、ソフトバンク新書)

投稿者 松尾 順 : 2007年08月10日 12:15

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コメント

こんばんは。

好き嫌い、という軸はやはり大事なのですね。

結局のところ、自分の考えと好き嫌いは切り離すことが出来ないということなんでしょうね。

投稿者 s2 : 2007年08月11日 03:13

s2さん、まいど!

そうですね、実際、感情で商品にしろ、つきあう相手にしろ決めてますよね。合理的な判断だけで動かないのが人というわけです。

投稿者 松尾順 : 2007年08月11日 07:37

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