ボールパークのセンターピン

「ボールパーク」とは野球場のことです。

今日は、メジャーリークの事例をご紹介するので、
あえて英語で表現してみました。


さてさて、

ボールパークのセンターピン(成功のカギ)

は、なんだと思いますか?


実は以前にも書いたんですが、その答えは、

「混んでいること」

です。

参考>人の集まるところに人は集まる


大観衆で埋まった野球場の熱気、地面が揺らぐような大歓声は、
野球を観戦する楽しさを倍増させてくれます。

逆に、閑散とした客席に座って、
応援もまばらな中でみるゲームほどわびしいものはありませんよね。


福岡生まれの私は、小さいころ、年に1度は今は取り壊された
平和台球場に野球観戦に行ってました。

その頃の地元球団はライオンズです。

しかし、ライオンズの黄金時代ははるか昔のこと。
当時は、毎年最下位争いをするチームに成り下がってました。

さすがに、地元でも人気は低迷。
球場は閑散としていて、どうも盛り上がらない。
しかも、たいてい負けてしまう。

7回が終わった頃には、

今日も負けているし、混む前にそろそろ帰るか・・・

などと、見切りをつけて帰るのは本当にわびしいものでした。

そんな状況の中、ライオンズのエース、
東尾投手が孤軍奮闘していた姿を思い起こすと
泣けてきます・・・


おっと、感傷に浸っている場合じゃないですね。
本題に戻しましょう。


「混んでいること」

がセンターピンとなるのは、サッカーやディスコも同じです。

上記の過去記事で書いたように、
「ジュリアナ東京」がブレークしたのも、
「アルビレックス新潟」がJリーグ最大の観客動員数を
誇るようになったのも、当初、タダ券を大量にばらまいて、
とにかく人を集めて、「混んでいる感」を演出したからです。


つまり、こうした娯楽施設においては、
たくさんの人が来場していることが、大衆にとっては
人気度を判断する尺度であり、また、活気を生み出し、
興奮や感動を高めてくれる要素になるのです。

また、実際に人気が高まってくれば、
今度は、チケットなかなか手に入らなくなりますから、
価値が高まり顧客単価も上昇しますよね。
(いわゆる「プラチナチケット化」)


さて、野球場に例を絞りますが、
「混んでいる」状態に見せるための打ち手は、
次の2つ(の組み合わせ)になりますよね。

・人を大量に集める
・野球場のサイズ(座席数=収容人数)を小さくする


ただ、野球場のサイズを小さくするというのは、
従来のビジネスの発想からはバカげたことに感じます。

なぜなら、野球場からの売上は、

顧客単価x座席数(=来場者数)

で決定されるからです。

すなわち、座席数を減らすということは、
自ら売上機会を減少させていることになります。


しかし、「混んでいること」
というセンターピンに照らし合わせると、
むやみに野球場のサイズを大きくしてしまうと
逆効果になることがわかります。

というのも、そこそこ人が入っていたとしても、
施設が大きすぎるために、相対的にスカスカに見えてしまい、
「混んでいる」ように見えないからです。

つまり、収容人数だけではなく、座席の稼働率、
端的に言えば「埋まり具合」も考慮しなければならないわけです。


このことに気づいたのがメジャーリーグの各球団でした。
(日経ビジネス、2007年6月25日)

たとえば、ニューヨーク・ヤンキースが建設中の新球場の
客席数は現在の1割減の5万1千人。今でもチケット入手が
困難な人気チームにも関わらずです。

同様に、ニューヨーク・メッツの新球場「シティーフィールド」
の客席数は、なんと2割減の4万5千人。

ボールパークは狭くしたほうが、稼動率が高まり、
結果的に総売上が高くなるというロジックですね。


実は、このロジックは、地方球団のサクセスストーリーに
よって証明されたことでした。


クリーブランド・インディアンズの本拠地、
クリーブランド市営球場は観客席7万4400の巨大施設でした。

アメリカンフットボールのクリーブランド・ブラウンズとの
共用施設として建設されたこの施設は、野球場としては
あまりに大きすぎたようです。

観客と選手との距離が遠く臨場感が味わいにくい。
また、ホームランが出にくいために、ゲームの面白さも
足りなかったようです。

しかも、チーム力も低迷していたこともあって、
1試合あたりの平均観客数は、1万人ちょっと。

テレビに映るガラガラの客席は、地元の人に

「いつでも入場できる」

という意識を植え付けて、さらに足を遠ざけることに
なっていました。
(また、あんなガラガラの球場で試合を見てもぜんぜん楽しくない
 という気持ちも当然湧いたでしょうね)


しかし、94年に建設した野球専用の「ジェイコブス・フィールド」
では、客席数を4万3千人に絞りました。

また、ファウルグランドも狭めて、迫力あるプレー観戦も
実現しました。


そして、客席を埋め尽くしたファンの声援に押されて、
同チームの選手も大活躍します。

有名選手を獲得できるだけの資金がない分、
有望な若手を育成する方針もちょうど功を奏し始めてました。

結局、94年には1ゲーム差の2位という成績を収めます。
翌年も満員のゲームが続き、とうとうアメリカンリーグを制覇。


ちなみに、同チームの1試合あたり平均チケット収入(ドル)は、
93年のクリーブランド市営球場時代は約25万ドル。

ところが、94年、ジェイコブスフィールドに移った年は、
約57万ドルに達しています。


座席を約半分に絞って、売上は倍増したのです。

投稿者 松尾 順 : 2007年06月26日 11:03

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コメント

リニューアルスタートのため、ネット検索していた会社の人間が、興味深い内容が書いてあるサイトを見つけ、私にプリントしてくれました。
「当初、タダ券を大量にばらまいて、とにかく人を集めて、「混んでいる感」を演出する事」は、ネットビジネスでもあてはまるのでしょうか?

バックナンバーにある「とんがり」をつくること。よーくわかるのですが、それがなかなか難しい。どうやって作っていくかが一番の課題です。

ちなみに、私の会社があるのも、もつぶれたスペインレストランの隣ビルです。

投稿者 Anonymous : 2007年06月26日 13:10

ネットビジネスでも「混んでいる感」を演出することはある程度可能でしょうね。そのネットビジネスが提供するコンテンツやサービスが魅力的であることが前提でしょうけど。
ただ、実際に人がリアルに集まっている場所で生まれる臨場感を再現することは相当難題でしょう。

また、もともと有料なのを無料にするから「お得」と感じて集まってくれるのであって、単に無料にすればどんどん集まるというものではないことはおわかりですよね。入場料はタダでも、自分の時間を投下するという意味でのコストはかけてますから、それに見合うものがそこにないとだめですよね。

「とんがり」の作り方については、安易な答えはないというのが正直なところです。ほかの人が真似できない、独自の何かを作り上げた結果を「とんがり」と呼ぶのであって、どっかからひょいと「とんがり」を持ってくることはできない。

とんがりを作るためには、茨の道を歩く決意と粘り、手間と労力を惜しまない覚悟が必要なことだけは確かです。

投稿者 松尾順 : 2007年06月26日 13:23

この記事でメルマガ400号でしたね。おめでとうございます。
記事の内容もタイムリーだったので、一部引用させていただきました。

投稿者 金森努 : 2007年06月27日 15:43

金森さん、まいど!

祝福のコメント、ありがとうございます。
毎日書くのは、実際大変ですよね。

でも続けてるうちに、この大変さが快感に変わってきました。
こうなると少し楽です。(笑)

今後ともごひいきに!

投稿者 松尾順 : 2007年06月27日 17:50

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