ナチュラルローソンの探索型マーケティング
コンビニ業界は、もはや成長産業ではありません。
有望立地には、競合店舗がひしめき、
一部の商品では価格競争さえ始まっています。
要するに、コンビニ店は量的には飽和状態。
今後も、売上を維持・拡大するためには
「質的な転換」
を図る時期が来ていると言えますよね。
とはいえ、
徒歩5分以内商圏、24時間営業、100平方メートル程度の店舗面積、
3000-4000アイテムの多品種少量の品揃えと、
チケット販売、公共料金支払い、ATMなど多様なサービスを提供
といった、これまでの成功モデル(型)を
打ち破るのは簡単ではありません。
最大手のセブン-イレブンでさえ、
まだ、コンビニの新たなスタイルを打ち出せずにいます。
しかし、若きリーダー、新浪剛史氏率いるローソンでは、
「ナチュラルローソン」
という2001年に立ち上げた新業態で、
脱コンビニの新たなスタイルを生み出すための、
さまざまな試行錯誤を重ねる
「探索型マーケティング」
を行い、一定の成果を上げているようです。
(PRESIDENT 2007.7.2)
ナチュラルローソンのメインターゲットは、
20-30代の働く女性です。
従来のコンビニが、20-30代の男性をメインターゲット
としていましたから、対極にある人たちをターゲットに
置いているわけです。
店内には「おでん」は置いてありません。
代わりに、焼きたてのパンの香り。
また、いかにも女性が好みそうな可愛い輸入雑貨や文具が
工夫を凝らした展示で置いてあります。
ヌードが踊るアダルト雑誌は昨年末に撤去。
一人で軽食がとれるイートインスペースあり。
そそくさと必要なものを買うために、
ついでに立ち寄る存在だった従来型コンビニとは異なる、
高品質な空間づくりにある程度成功していると思います。
日販は約60万円。従来のローソン(青ローソン)より
2割ほど高いそうです。
なお、平均的なコンビニの日販は40万円台です。
そして、約60万円というのは、酒・たばこを販売
している店舗がようやく達成できる水準です。
ナチュラルローソンの場合、
かなり客単価が高いんでしょうね。
さて、立ち上げからこれまでの経緯を追うと、
同業態の基本コンセプトである
「美と健康」
を売る店としての輪郭が鮮明になるためには3年を要し、
さらに業態としての完成度が増してきたのは、
この2年ほどとのこと。
つまり、およそ5年に渡る試行錯誤の中から、
新たなコンビニのモデル(型)を彫りこんきたわけです。
もちろん、さまざまな失敗も。
たとえば、軍手やクラフトテープは、
ナチュラルローソンらしくないといったんカットしたものの、
女性客の要望で復活。
一方で、イメージに合うキッチン雑貨は売れないそうです。
(ターゲットの働く女性は、忙しくてキッチンに
あまり入らないんじゃないかと思いますが。あるいは、
両親と同居しているので料理は母親任せかも・・・)
また、伊藤園の「おーい、お茶」を撤去して、
保存料の入らないオリジナルの緑茶を入れたところ、
客からクレームがつき、元に戻さなければならない
ということもありました。
こうしたことは、実際やってみないことには
見えてこないことばかりですよね。
基本コンセプトを核に、
現場でのテストマーケティングを繰り返すなかで、
顧客ニーズを探索し、「ナチュラルローソン」
らしさをすこしずつ打ち出していく。
顧客の振る舞いを予測するのがますます難しい昨今、
ナチュラルローソンの「探索型マーケティング」のアプローチが
成功の近道なのかもしれません!
投稿者 松尾 順 : 2007年06月11日 20:27
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