「思えばなる方式」からの脱却
昨日ちょこっとご紹介した、
「マーケティング・リテラシー」
(プレジデント最新号(2007.6.4)
「ビジネススクール流知的武装講座」)
について、ちょっと内容が難しくなるのですが、
記事全体のポイントをまとめておきます。
(私の方で、多少言い回しを変えたり補足説明してます)
なお、同記事は、
主にメーカーのリサーチ部門を念頭に書かれています。
執筆者の石井淳蔵氏(神戸大学大学院教授)は、
専門部署としての「リサーチ部門」を持たない企業の問題点
として、次の3点を挙げます。
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(1)やるべきリサーチをやらずにすます。
これは昨日引用した部分です。
コンセプト、パッケージ、試作品、広告コピー等々、
新製品が導入されるまでには、本来多くのリサーチが
行われるべきところ、リサーチ専門部署がないと、
「時間がない」「費用がない」
といった理由で、いくつかのリサーチをなしで済ますことが
起こります。
石井先生は、発売を急ぐあまり、「時間が惜しい」という理由で
リサーチをやらないのは「主客転倒」と指摘されていますが、
まったくおっしゃるとおりですね。
(2)不明確なリサーチ課題の下にリサーチが実施される。
独立したリサーチ部門があれば、
商品開発を担当するマーケターからの調査依頼を受ける際、
リサーチ課題が明確になっているかをまず確認するはずです。
すなわち、マーケターとリサーチ担当者のやり取りを通じて
仮説立案をしっかりやるという手順が踏まれることで、
リサーチがより価値あるものになります。
しかし、同一部署でリサーチも担当してしまうと、
馴れ合いが起こります。その結果、リサーチ課題があいまいな
まま、とりあえず調査を始めてしまったり、場合によっては、
企画を通すために都合の良いデータを集めるといった、
やはり主客転倒の調査が行われてしまう可能性があります。
(3)「リサーチ標準」を定着させることができない。
外資系のある企業では、「7:3」の原則があるそうです。
これは、発売したい新商品を消費者リサーチにかけた結果、
回答者の7割以上が「前の商品より優れている」と答えないと、
その新商品の導入は行わないという原則です。
独立したリサーチ部署であれば、こうした
「リサーチ標準」
を確立し、また維持できるのですが、そうでない場合、
結果をどのように判断するかの基準が調査のたびに変わってしまう
といったことが起き、調査をやる意義が低下してしまいます。
そうなると、調査担当者は、マーケターの意向に従って
数字を作るだけの単なる「便利屋」に成り下がってしまうのです。
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以上は、リサーチの専門部署を持たない企業が陥りやすい問題点
でしたが、逆に言えば、リサーチの専門部署を持つことのメリット
は次の3点です。
(1)仕組みとしてのリサーチ・プロセスの確立
(リサーチに基づいたマーケティング決定)
(2)マーケターとリサーチ担当との良い緊張関係
(3)リサーチ標準(手法、プロセス、基準)の維持
さて、石井先生は、日本企業では、ことのほか
「思えばなる方式」
が評価されると指摘しています。
「マーケターもデザイナーもクリエーターもリサーチャーも
侃侃諤諤議論しながら一緒にやれば何とかなる」
というやり方のことです。
しかし、良い商品を作りたいと思う人が集まって、
良くない商品が生まれているのが現実。
「これだけ複雑になった現代のマーケティング世界では、
思えばなる方式だけで渡っていけるほど簡単ではない」
と、石井先生はバッサリ。
売れる商品づくりに本当に役立つリサーチを行うためには、
「思えばなる方式」からの脱却が必要でしょう。
投稿者 松尾 順 : 2007年05月22日 08:03
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