「オフィスグリコ」・・・3年かけた仕組みづくり

私事で恐縮ですが、私の事務所に本心では置きたいが、
絶対に置かないことにしようと固く心に決めているのが、

「オフィスグリコ」(富山の置き薬的お菓子販売システム)

です。


というのも、私は、

「(酒を)飲むこと」「(なんにせよ)食べること」

については、抑制ができない性質(たち)なもので・・・(^^ゞ


もし本能の誘惑に負け、うっかり置いてしまったら、
お菓子箱1ケース分のお菓子(1ケースに24個入ってます)
を一人で数日中に食べ尽くしてしまうこと必至!

ですから、継続的ダイエット中の私としては、
以前2度ほどグリコさんの営業訪問を受けましたが、
ぐっとこらえて思いとどまったのです。


さて、私事はさておき、「オフィスグリコ」はすばらしい!

2007年3月末現在で、東京や大阪のオフィス8万5千箇所に
菓子箱を設置。単価100円の小銭商売ながら年商は

「26億円」

を達成してます。(日経情報ストラテジー、JUNE 2007)


しかも、全体ではまだ赤字ですが、
全国50箇所の販売拠点のうち、開設から3年以上を経過した
拠点の多くが、営業利益ベースでは黒字化を果たしています。


私がなにより「すばらしい」と思うのは、
事業の立ち上げ・展開に当たってじっくり腰をすえて
取り組んだという点です。

オフィスグリコの構想検討開始は97年頃でした。
そして、99年2月に大阪に第1号販売センターを設置。

その後、本格展開を開始したのは2002年の3月ですから、
実に3年間もの間、薄利商売で利益をだす「仕組みづくり」
に取り組んだのです。

さすが、1粒で300メートルのグリコです。実に粘り強い。

性急に結果を求めるあまり、有望な事業の芽をつぶして
しまいがちな昨今の企業とは違いますね。


さて、この3年間の仕組みづくりの中で、
オフィスグリコでは、多くのものを捨ててきました。
利益を確保するために。


たとえば、代金回収方法。

社員が自由に飲めるオフィスコーヒーシステムは、
企業の総務部門に対して一括請求することができます。
(福利厚生費扱いにできますし)

しかし、お菓子はそうもいかない。
企業から代金をまとめて回収することは困難でした。


そこで、野菜の無人路上販売方式を参考にして、
菓子箱についた貯金箱に、
ユーザー自身で代金を入れてもらうことにしました。

買い手の善意に頼るやり方ですね。

しかし、うっかり入れ忘れたり、ずるして払わない人も
いるのでしょう、回収率は95%だそうです。
(つまり、5%の売り上げロス、しかし意外に回収率は
 高いですね)

でも、確実に回収しようとするための手間が発生しません。

電気代がかかる自動販売機にする必要もなくなったため、
お菓子箱には、普通のプラスチックケースが使えて、
結果的に効率的でした。


また、「単品管理」も捨てました。

単品情報の入力の手間をかけていると
採算が合わないことがわかったからでした。


また、そもそも「単品管理」をする必要性も
低かったのです。

というのも、単品管理の主たる目的は、

売れ筋・死に筋

を把握して在庫の適正化を図ることですが、
お菓子は飽きられやすい商品であるため、単純に、
売れ筋・死に筋という判断はできないからです。


そこで、オフィスグリコでは年間52週分の商品配置計画を
作成し、3回の巡回訪問(商品補充と代金回収のため)で
すべての商品が入れ替わるようにしています。

ただ、単品管理をせず、在庫と販売の効率を最大化を
目指しつつ、商品を頻繁に入れ替えるという「方程式」を
解くのは相当の難題だったようです。

実際、この方程式を解くために発見した一定の「法則」に
ついては、特許申請も行っているそうです。

オフィスグリコでは、上記以外にも、
捨てるべきものはいさぎよくどんどん捨てていきました。


「この事業は一筋縄では行かない」

とわかっていたからこそ、同事業を担当された方々は
とことん頭を絞り、試行錯誤を通じて

「必勝パターン」

を生み出していったのでしょうね。


オフィスグリコのような地に足についた仕事のやり方が、
私は本当に大好きです。


でも、ごめんなさい、
オフィスグリコは、置きたいけれど置けないの。

体重があと10キロ減らせたら考えてもいいんですけど。(笑)

投稿者 松尾 順 : 2007年05月11日 02:10

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コメント

松尾さん、こんにちは。

昨日、本社にいる私は隣の駅の支社にだけ「オフィスグリコ」があるのに、気づきました。ずるい!って叫んだんですけど、何かが違う!グリコ製品だけじゃなくて、亀田製菓や他のメーカーのものもあるんです。提携してるのでしょうね。もちろんグリコとバッティングする企業のものはないと推察しますが、グリコも乗せてもらう他メーカーも、購買者もみーんな幸せ方程式なのでしょうね。

でも、会社にはないんです。(ちょっとほっとしてる部分も)

投稿者 Abby Jane : 2007年05月11日 13:34

今回のブログ&メルマガでは割愛したんですが、
オフィスグリコで捨てた他のこととして、

「自社製品だけで囲い込むこと」

があります。

アスクルさんと同じ戦略を採用したというわけ。

つまり、グリコ製品が手薄な部分を他社製品で
補うことにしたんですね。

売り上げの3割は他社商品だそうです。

飽きられやすいスナック菓子ですから、
自社製品だと売り上げが頭打ちになる可能性がある。

他社製品も販売すれば選択肢が増えてお客さんも
うれしい。

全体の利益率は若干低下してしまいますが、
ご指摘のとおり、グリコ、他社、顧客、みんな
幸せ方程式です。

投稿者 松尾順 : 2007年05月11日 19:14

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