旭山動物園の必然(2)コンセプトのリメイク

動物園って何のために必要なんでしょうね?

硬い言い方をすれば、

「動物園の存在意義」

は何かということです。


動物園の起源は調べていませんが、
おそらく、自国には生息していない珍しい野生動物を眺めて、

「へぇー、世の中にはこんな変わった動物がいるんだねぇ・・・」

と驚いて楽しむことから始まったんだと思います。


つまり、一言で言えば、

「珍獣の見世物小屋」

これが、そもそもの動物園の「コンセプト(基本思想)」
だったと言えるんじゃないでしょうか。

ただ、従来の動物園は、このコンセプトの枠を出ることは
ほとんどなかったように思います。


しかし、このコンセプトには問題があります。

それは、「珍しさ」が最大のウリであるために、
珍しさが薄れてしまうとすぐに人気が低下してしまうという点。

このため、次々と新たな珍獣を導入し続ける必要があります。

上野動物園に日本で初めて「パンダ」がやってきた時の
フィーバーぶりを覚えている方も多いんじゃないでしょうか。

とはいえ、珍獣を紹介し続けるのは限界がありますよね。
また、そもそも資金力のない地方の動物園にはできない相談。

旭山動物園もまた、例外ではありませんでした。
同動物園には昔から、「パンダ」はもちろん、「ラッコ」
さえいない。

飼育されているのはどこの動物園でも見ることのできる、
もはや珍しくない野生動物たち。
珍獣を揃えることで、人をひきつけることはできなかった
のです。


旭山動物園では、低迷する人気を回復させるため、
大型の遊具を導入し、敷地の一部を遊園地化したことも
ありました。

しかし、遊園地も結局、新しい遊具を次々と導入しないと
すぐに飽きられてしまうもの。同動物園内の遊園施設も
短期間しか効果のないカンフル剤で終わりました。


こんな、動物園の存在意義が揺らぎ、またいつ廃園になるかも
知れない不安な日々が続く中、旭山動物園の人たちは、
内部での勉強会を熱心に続けていましたが、この勉強会で
まずやったことは、

「そもそも動物園はどのようなものであるべきか」(存在意義)

について徹底的に議論することでした。

つまり、動物園の基本コンセプトのリメイクを行ったわけです。


そして、

・レクリエーションの場
・教育の場
・自然保護の場
・調査研究の場

という、4つの役割を再認識しました。


上記の役割について、小菅園長は具体的には
次のように説明しています。(<旭山動物園>革命より)

--------------

動物たちと一緒の楽しい時間をすごし、
その中で動物たちの素晴らしさを感じてもらい、

それがきっかけとなって、
『動物たちを保護したい』、

あるいは、

『動物の生きる地球環境を守るためには、
 何をすべきなのか』

などを考える意識を育てる。

また、動物園は、『希少動物の保護・繁殖』に関わり、
さらには野生動物医学など、『学術研究の場』でもある。

--------------


小菅園長によれば、この4つの役割は、

「動物園に携わる者としての基本スタンス」

であり、いまでも朝礼や勉強会など、
さまざまな機会で徹底し、確認しているそうです。


言うまでもなく、旭山動物園の現在の姿は、
この4つの役割を基本において作られてきたものです。

マーケティングにおいては、優れた製品を生み出すために、

「明確なコンセプト」

を定めること重要性が強調されます。

旭山動物園は、その成功事例のひとつと言えますよね。


では、実際にどんな動物園づくりが行われていったのかは
次回以降で!

投稿者 松尾 順 : 2007年04月23日 11:44

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