生活職人になれ!
ユニークなカタログで知られる『通販生活』はご存知ですよね?
同社における新商品の開発で
6年連続トップの座を保持しているヒットメーカー、
吉川美樹氏は、次のように発想のキモを述べています。
売れる商品を生み出せるようになるには、
ただ、漫然と生活を送る
「生活人」
ではなく、
「生活職人」
になれ!
「生活職人」は、
どうやったら日々の生活を居心地よく過ごしていけるか、
つねに生活を意識し、さまざまな努力や工夫ができる人。
つまり、生活の達人のことです。
リクルートの創刊男、くらたまなぶ氏や、
作詞家の秋元康氏、TVプロデューサーのおちまさと氏なども
同様のことをおっしゃってますが、要するに
「一所懸命、生活する」
ということでしょう。
吉川氏もまた、一人娘を抱えるシングルーマザーとして、
自分にとって身近なところ(半径1メートルの生活圏)から、
不満センサーを働かせ、新商品のネタを拾っています。
吉川氏によれば、
「悩み解決」
が売れる商品のキーワード。
悩みのあるところに商品ができる。
だから、開発担当者は、
一消費者としての自分の悩みを認識し、
それを解決できる商品を生み出せばヒットになる可能性が
高いというわけです。
さて、吉川氏が、新商品の発想のためにやっている
具体的な行動は次のようなことです。
・初心にかえって、あちこちの売り場を見て歩き、
頭に映像をプリントしていく
・いろいろな世代の人を観察する。とくに商品のターゲット
になる層の行動を、街や電車の中などさまざまな場所で
観察する
・新聞に折り込まれているチラシを眺め、ジャンル別に
「欲しいものベスト10」を出していく
・書店を回って、本や雑誌の表紙を眺めたり、特集記事を読む
・朝起きてからの「生活動線チェック」をする
(起きてからの自分の行動を細かく思い出していく)
上記の行動を見ると、ポイントは
「現場での注意深い観察」
だということが言えますね。
デスクや会議室に座ったまま、
「一消費者になったつもり」
になっているだけじゃダメなんです。
たとえば、私の推測なんですが、
「一消費者になったつもり」
で失敗した事例だと思われるのが、
東急の会員制リゾート施設、
「ビッグウィーク」
の価格設定です。
(日経産業新聞、2007/01/25)
「ビッグウィーク」は、いわゆる「タイムシェア型」。
つまり、1年の好きな期間の施設利用権を購入できる仕組みです。
現在8カ所に施設を展開しています。
ビッグウィークの一番目の施設(99年開設)は「京都」ですが、
桜や紅葉シーズンの週は、20年間利用権が300万円超、
底冷えのする冬場は同80万円台と設定。
ところが、冬場の分は即日完売したにもかかわらず、
春、秋はいまだに売れ残っているそうです。
東急担当者は、おそらく、会議室にこもったまま、
従来の旅行シーズン(繁忙期・閑散期)の常識を引きずり、
思い込みで価格設定したに違いありません。
実際、売り出し当時の顧客の反応は
次のようなものでした。
「東急さんは京都の楽しみ方を知らないね。
我々は春秋の混雑した京都なんて行きたくないんだよ。」
現在、東急さんはこうした過去の失敗を踏まえ、
3千人の会員調査を行ってユーザーのニーズを把握している
そうです。
(ということは、以前は顧客ニーズ調査を
やってなかったってことでしょう・・・!)
商品開発に当たっては、担当者自身がまず、
「自分が顧客だったらどんな商品が欲しいか」
という思考を働かせ、
同時に現場に行ってみる、体験してみることが大事ですが、
それが難しいのであれば、素直に顧客に聞く(調査する)
べきですよね。
*吉川氏の話は、下記の本からです。
『半径1メートルの「売れる!」発想術』
(吉川美樹著、サンマーク出版)
投稿者 松尾 順 : 2007年01月26日 10:31
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