命を賭けたデザイン 第3章:水面下の戦い

「やっぱり本当だったか・・・」

大友は、ジョージとひとみが楽しそうにカフェで話している様子を
見て、がっくりと肩を落とす。

激しい嫉妬の気持ちが起きる。
二人の関係は、デザイン原器を盗まれるかもしれないという危機感以上に
大友の心を揺さぶった。


「じゃあ、国枝がデザイン原器を盗むとしたらどんな侵入方法を
取るのか、可能性を全部洗い出そうじゃないか!」

大友は、ひそかに招集した社内ミーティングで、
デザイン原器持ち出し阻止の計画を討議する。


「しめしめ、俺の代わりにデザイン原器を持ち出そうとする奴が
現れたか。そいつが持ち出した後に横取りさせてもらう。」

その中には、K電機のスパイ田中智史もいた。


ジョージは、怪しい影がつきまとっているのに気付いていた。
CIAの訓練を受けた彼には簡単なことだった。

「計画がS電機にばれている可能性が高いな」

たとえそうだとしても、計画を中止するわけにはいかない。
もはや後戻りはできない。

ジョージは覚悟を決め、より一層入念に侵入計画を練るのだった。


ひとみもまた、職場での大友のひとみに対する態度が微妙に変化
していることに気付いていた。

「ジョージに言った方がいいかしら・・・」

しかし、ひとみは思い直した。
ジョージなら、たとえ相手が計画を知っていたとしてもきっと決行する。

ジョージはリスクを犯すことに、大きな喜びを感じるタイプの人間だということが
既にひとみにはわかっていた・・・

(続く)

投稿者 松尾 順 : 2007年01月03日 10:38

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